絶望の魔法   作:黒野真琴

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真由子は愚かにも自分の首を締めながら戦い続ける。バックに自分を止めてくれる天使を置きながら。


第27話 奇跡も拒絶される『ルール』

 鬼の真由子は夕方に神浜についた。

 

 

 

 神浜はいつも通りに平和だったが、その様子に真由子は反吐が出る思いを抱いた。

 所々で魔法少女の反応があるが、そのほとんどが笑顔で楽しそうだった。

 

 街が夕闇に包まれて行く中、真由子は何気なく歩いて神浜の様子を見回った。

 

 

 

 そして、人気のない場所で仕掛けることにした。

 

「私の血を持ってルールを決める。『私が魔法少女を殺したら1人につきグリーフシードを1つ捨てる。私が殺し損なったら私の天使に救いを求める』実行開始」

 

 真由子は自分の腕を切って血を流して魔法を発動した。

 その瞬間、結界のようにルールという概念が神浜の全体に広がった。

 

 

 それから真由子は鬼の姿のまま、新しいマギウスの翼の1人を殺した。

 真由子の真っ黒な刀身は、その血で真っ赤に染まりながらソウルジェムを砕く。

 

「まずは1人、ルールに従ってグリーフシードを捧げる」

 

 そう言って真由子はグリーフシードを細切れにした。

 

「残り7個。私の死の可能性を上げながら、織莉子達に殺させて、魔女化もさせたみんなのために、この恨み後7人にぶつけてやるわ!」

 

 さっき決めたルールはこのためのもの。

 人を殺す勇気より、自分を殺す方が何倍も難しい。

 だから、魔法少女を殺すために、自分が魔女になる可能性と引き換えに、殺しをキリカのように簡単にできるようにした。

 魔女化するという自殺より、殺しの方が何の躊躇いもないようにした結果が最初の殺しだ。

 

 

 

 次に真由子は一気にハードルを上げて、東のトップである十七夜に喧嘩を売った。

 

「私はドッペルシステムに入らないように、ルールで適応外にする代わりにグリーフシードを獲得した。覚悟を持って切る私にあなたは勝てるの?」

 

 人気の無い工事跡地で真由子は本気で戦っている。

 

「そんなことに何の意味がある?ただ無駄に血が流れるだけじゃ無いか」

 

 至極ごもっともな意見だ。

 真由子にも恨みの感情がなければ、こんな無意味な狩りはしなかっただろう。

 

「その無駄な血が見滝原では流れた。今はこよみのおかげで平和になったけど、私はこの自分の血に誓って恨みを晴らすと決めた。神浜に魔女を取られたせいで私の親友は死んでいったんだ!」

 

 真由子は十七夜に本気で気持ちをぶつけた。

 神浜の歴史を恨んだ十七夜には、恨みを抱くということがどういうことなのかを分かっている。

 だから、その気持ちに応える気で相手することにした。

 

「そうか。自分達が気にしていなかった間に、知らぬ間にこちらの人間が傷つけてしまっていたのか。すまなかった」

 

「そんな軽い謝罪ごときで私が許すわけないでしょうが!」

 

「本当にすまなかった。自分も神浜の歴史を恨んでいる。だから、恨みたいという気持ちはよくわかるぞ。だから、落ち着いて話し合おう」

 

 ちょっとだけ話して真由子は、十七夜の『神浜の歴史を恨んでいる』という言葉で気持ちが揺らいだ。

 そのせいで自分が殺し損なったことになって、ルールで戦場の天使を呼ぶことになった。

 

 だから、もう戦えないと思った真由子は、十七夜との話に集中する方向に切り替えた。

 

「ねぇ…もう戦いは終わりでいいから聞かせてよ。歴史を恨んでるってのを」

 

 一瞬で戦意を失ったことに気付いて十七夜は武器をしまった。

 それは相手が攻撃してこないと信じての行動だ。

 

 そして、心を落ち着かせて今の言葉に返した。

 

「自分達が住んでいる神浜の東側は、東というだけで忌み嫌われていた。それは大人だけでなく子供にも根付いている。今では変わりつつあるが、ただ東出身というだけで嫌ってくる神浜の歴史を自分は恨んだ」

 

 この話を戦意をなくした真由子は静かに聞いている。

 その間に日は完全に沈んだ。

 

「だから自分は神浜の歴史の破壊を願ったんだが、あの頃はまだ青かったんだ。今ではその願いに後悔も感じている」

 

 そこに戦場の天使が降り立った。

 和泉十七夜のその背後に。

 

 十七夜が恨みと後悔を語った瞬間に現れた。

 

「あらら、なんで呼ばれたのかと思ったら、デート中に教えてくれた魔法のルールだったみたいだね」

 

 そう言いながら素早く十七夜に触れた。

 それからゆっくりと真由子に近づいた。

 

「恨みがあるから鬼になったんでしょ。でも、私がいる限りは恨みなんて晴らせない。永遠に恨みを背負いながら私を愛し続けなさい」

 

 今私が真由子に言ったのは、お互いの血の誓いでつけられた認識操作とルールを発動させるための言葉だ。

 今ので真由子は復讐できなくなった。認識も変えられたのだから。

 

「分かったよ。私のかわいい天使さん」

 

「誓いを守ってくれてありがとう。私の素敵な鬼さん」

 

 ゆがんだ愛で幸せを感じる2人は、あのほむらでも引くような恋愛観を持っている。

 そんな2人は戦っても強すぎる。

 

 十七夜は黙って2人を見守った。

 そして、真由子は私にお姫様抱っこをされながら空を飛んだ。

 

「和泉十七夜、私達はあなたの願いは間違ってないと思う。だから、神浜を滅ぼしたくなったら真由子を頼るといいよ。うちに来ればすぐに会わせるからさ」

 

 少し高いところからそう言ってあげた。

 その声を聞く十七夜は、悪人のような笑みを浮かべていた。




次回、魔法少女ストーリー こよみ

ここまでに何度か出ててきた『血の誓い』これについてこよみの話で明らかになります。
2人が縛るのに使った最上級のルールが運命に影響する。
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