空からベランダに帰宅したこよみは、夕飯のことを2人に任せてから真由子を家に送るつもりだった。
そのつもりだったのに、真由子が袖を掴んで。
「誰もいない家には帰りたく無い」
と言ったので、このまま帰すわけにもいかなくなった。
仕方ないから中に入れて話を聞くことにした。
その間はアリナとかりんには買い出しに行ってもらうことにした。
「それで、誰もいない家ってのはどう言うこと?」
誓いの補強でルール『質問には嘘でも答えなくてはいけない』が追加されているので、真由子には黙ってやり過ごすと言う選択肢はなかった。
「家族は誰もいない。私が気付くのが遅かったから、魔法少女になった一週間後に殺された。
その魔女は私の配下の中にもいない。
なら、すでに討伐されたのだろう。
この感じからして、名も知らない誰かの手で。
「それで、今は心細くなったんだ」
「しょうがないじゃん。ちょうど殺されてから2ヶ月経ったんだから」
私はちょうど2ヶ月が経過したというのを聞いて、だから今日は家にいたく無いんだなって理解した。
確かに、親が殺された日に1人で家に居たら、自分が気付かなかったせいで死なせたと思って、自責の念に絡め取られて苦しんで呪いに飲まれてしまうかもしれない。
だったら、私がすべきことは一つだ。
「ならさ。うちに居なよ。その方が私も安心できるし、毎日すぐに会えるからさ」
私の提案は当然のことながら、流れでそうなったとはいえ同棲しようと言ってることになる。
だから、本来ならすぐに答えは出ないだろうが、家族の死に責任を感じている真由子には、断るなんて選択肢はなかった。
「家にいると私が呪い殺されそうで怖い。だから、その申し出を断る理由はないよ」
そう言ってくれて(後でアリナとかりんにも許可を取らないといけないけど)一緒に暮らすことになった。
帰ってきた2人にも許可を取れたので、明日にはここに真由子が引っ越すことになるけど、今日のところは一緒のベッドで寝ることになった。
夕食を終えて少しのんびりして、それから寝る支度をしてベッドに入った。
それで、夜中に気づいたことだけど、寝てる時の真由子は何かを恐れて悪夢を見てるようだった。
恨みを持って鬼になるよう人が何かを恐れて悪夢を見るなんて、本来ならあってはいけないことなんだろうけど、私にはその姿が守ってあげたくなるほどに幼く見えるだけだった。
それから数日は何事もなく過ぎていった。
全員学校は登校拒否だけど、アリナの絵とかりんのバイトと親の遺産?で生活を切り盛りしている。
「うーん、最近の出費一番でかいのは、やっぱり真由子の存在だね」
「えっ?私がお荷物状態?」
この家の家計簿をつけていくと、アリナは絵を描いて売るのに少しお金がかかって、かりんは欲がそんなにないからお金がかからない。
それで、私は魔女と恋人と仲間がいればいいから何もいらないのに、真由子はよく買い食いするし意外とお金がかかっている。
「この家で暮らしていいけど、私達の迷惑も考えてよね」
私がそう言うと真由子は頬を膨らませて、ブーってしたきた。子供かな?
まぁ、私と真由子には血の誓いがあるから、互いに何かやらかせばルールと認識操作でいじれるんだけどね。
2人で家に残ってそうしてると、ピンポーンとインターホンが鳴ったので、私がダサい私服の姿で出ることにした。
玄関の扉を開けると、そこには十七夜が立っていた。
「言われた通りに、滅びのために頼りに来たぞ」
彼女によく似合うかっこいいファッションで、ダークサイドみたいなセリフ言われると、よりその姿がクールに見えた。
「中に入って、他の魔法少女に見つかったらまずいから」
中に入ることを勧められた十七夜はそれに従ってなんの躊躇いもなく入っていった。
それでリビングまで案内すると、さっきまでぐでーとしていた真由子が、正座してしっかりと待ち構えていた。
「ようこそ。こちら側の世界へ」
そう言って真由子は十七夜の話を聞く前から、あっちの世界に入るつもりなのを理解して迎え入れた。
その時の2人の顔は、どちらも何かの覚悟を決めた顔をしていた。
次回、第一回神浜滅亡会議
今回は鬼の真由子に可愛らしい要素を足そうとしてこうなりました。
和泉十七夜さんでも認識操作からは逃げられないってことです。
どっちも許してください。