絶望の魔法   作:黒野真琴

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7人+2人は走馬市を目指して突き進む。


第37話 走馬市への侵入作戦!

 走馬の2人組が接触してから2日後、アリナの工房に9人が揃った。

 

 それまでにみたま達にも事情を説明して、こよみのアンテナに引っ掛かったからという理由で、天使組が満場一致で首を突っ込むことになった。

 しかも、全員が色々な目的で参加するから、ただの人助けにはならないのがこいつらの特徴だ。

 

「2人のことは聞いたけど、一応ソウルジェムを調べさせてもらうわね」

 

 みたまがいつもの調子でそう言うと、シノブとヒガンは許可してくれた。

 それでみたまが触れると、いつも以上に濃い記憶が見えた。

 

「確かに走馬市は存在するみたいだけど、正確な場所は記憶から消されてるわね」

 

 これで位置が分かればいいと思ったけど、やっぱり当事者でもダメだった。

 

「私は自分が走馬市で希望を作った3人の1人なのは覚えてるんだけど、後の2人が突然私に別れを告げて消えたんだよね」

 

「シノブ様、政清(まさきよ)様、コトハ様、この三名が走馬市でドッペルを広げた張本人ではあるのですが、私もお二方の行方については記憶にありません」

 

 2人の記憶はあてにできないと思ったこよみは、仕方なく天使の認識操作で一時的に記憶を認識させて、それをみたまに読み取らせた。

 

「場所は分かったわ。途中から歩きにはなるけど、駅は見滝原からでも行けるみたいよ」

 

 その場所を詳しくみたまに聞くと、ゆかりがそこならワープできると言ってすぐに変身して発動した。

 

 

 

 

 

 走馬市の一番近くの駅に移動すると、みたまは読み取った記憶に従って道を歩いて行った。

 そして、走馬市に続く道の手前に行くと、道は途切れてその先が森になっていた。

 

「この先にあるはずなんだけど」

 

「八雲の記憶違いじゃないか」

 

「まあ!かなちゃんがそんなこと言うなんて信じられない!」

 

 こよみ達は消えた道を見つめているが、その端っこでバカップルが喧嘩を始めた。

 みたまと十七夜はゆかりを証人にして、あの後新しい住処で勝手に付き合い始めた。その詳細は三人とも恥ずかしがって教えてくれなかった。

 

「これならこよみがどうにか出来るの」

 

「これはかりんの言うとおりだヨネ」

 

「こよみ、彼女からの頼みじゃなくてもやってくれるよね」

 

「ここは頼むんよ」

 

 走馬の二人は静かに見守り、バカップルはみたまの機嫌を取って、残り四人はこよみを頼った。

 これはやるしかないと思ったこよみは、天使の姿になって認識操作を自分達にかけた。

 

 すると、今まで森だったものが街に変わった。

 

「これは私以外の誰かに認識を歪められてた。そのせいで森に見えてたみたい。しかも、私以上の力で世界から隔離してたみたい」

 

 みんながこよみの方を見て驚いた。

 あの超危険な天使以上に存在を消せる者がいるなんて。

 

 そう思っているのもつかの間、走馬市の内部から複数の魔力が感じられた。

 

「行っておくけど、この先は私の認識操作をかけてなければ森に見えてるよ。だから、私達に何かあっても助けは来ない。しかも、ここまで出来るやつがいる。それでもやれる自信があるなら私達について来て」

 

 こよみが真由子と走馬組と一緒に一歩前に出るとそう言った。

 

 その背中を見て、自分達は覚悟が出来てるという様子で残りも一歩前に出た。

 

 

 

 

 

 9人が先に進むと、一切人気(ひとけ)のないシノブ達の故郷に着いた。

 二人には記憶があるからその景色を懐かしそうに見つめている。

 

「あれからそんなに経ってないけど、ようやく帰って来れたんだよね」

 

「はい。私達の世界から消えたふるさとです。二度と戻れないと思ったのに、こんなにあっさり戻れるなんて」

 

 二人はここに戻れるまで1ヶ月もかかっている。だから、帰れたことに感動している。

 

 だが、天使組はあっさりとしすぎているから警戒した。

 しかも、入り口より魔法少女の魔力が強まった。

 警戒を解くわけにはいかなくなった。

 

「とりあえず、ここから近い方の家に案内して。そこでこれからどうするか考えるよ」

 

 そう言われてヒガンの方が近いからと、彼女がみんなの前に出て案内してくれた。

 そこは普通の家だった。そこに9人が揃った。

 そこを拠点にすることに決まった。




次回、天使の罪は走馬市の憎しみを買っている

一応これが最終章です。
最後までお付き合いください。

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