走馬の2人組が接触してから2日後、アリナの工房に9人が揃った。
それまでにみたま達にも事情を説明して、こよみのアンテナに引っ掛かったからという理由で、天使組が満場一致で首を突っ込むことになった。
しかも、全員が色々な目的で参加するから、ただの人助けにはならないのがこいつらの特徴だ。
「2人のことは聞いたけど、一応ソウルジェムを調べさせてもらうわね」
みたまがいつもの調子でそう言うと、シノブとヒガンは許可してくれた。
それでみたまが触れると、いつも以上に濃い記憶が見えた。
「確かに走馬市は存在するみたいだけど、正確な場所は記憶から消されてるわね」
これで位置が分かればいいと思ったけど、やっぱり当事者でもダメだった。
「私は自分が走馬市で希望を作った3人の1人なのは覚えてるんだけど、後の2人が突然私に別れを告げて消えたんだよね」
「シノブ様、
2人の記憶はあてにできないと思ったこよみは、仕方なく天使の認識操作で一時的に記憶を認識させて、それをみたまに読み取らせた。
「場所は分かったわ。途中から歩きにはなるけど、駅は見滝原からでも行けるみたいよ」
その場所を詳しくみたまに聞くと、ゆかりがそこならワープできると言ってすぐに変身して発動した。
走馬市の一番近くの駅に移動すると、みたまは読み取った記憶に従って道を歩いて行った。
そして、走馬市に続く道の手前に行くと、道は途切れてその先が森になっていた。
「この先にあるはずなんだけど」
「八雲の記憶違いじゃないか」
「まあ!かなちゃんがそんなこと言うなんて信じられない!」
こよみ達は消えた道を見つめているが、その端っこでバカップルが喧嘩を始めた。
みたまと十七夜はゆかりを証人にして、あの後新しい住処で勝手に付き合い始めた。その詳細は三人とも恥ずかしがって教えてくれなかった。
「これならこよみがどうにか出来るの」
「これはかりんの言うとおりだヨネ」
「こよみ、彼女からの頼みじゃなくてもやってくれるよね」
「ここは頼むんよ」
走馬の二人は静かに見守り、バカップルはみたまの機嫌を取って、残り四人はこよみを頼った。
これはやるしかないと思ったこよみは、天使の姿になって認識操作を自分達にかけた。
すると、今まで森だったものが街に変わった。
「これは私以外の誰かに認識を歪められてた。そのせいで森に見えてたみたい。しかも、私以上の力で世界から隔離してたみたい」
みんながこよみの方を見て驚いた。
あの超危険な天使以上に存在を消せる者がいるなんて。
そう思っているのもつかの間、走馬市の内部から複数の魔力が感じられた。
「行っておくけど、この先は私の認識操作をかけてなければ森に見えてるよ。だから、私達に何かあっても助けは来ない。しかも、ここまで出来るやつがいる。それでもやれる自信があるなら私達について来て」
こよみが真由子と走馬組と一緒に一歩前に出るとそう言った。
その背中を見て、自分達は覚悟が出来てるという様子で残りも一歩前に出た。
9人が先に進むと、一切
二人には記憶があるからその景色を懐かしそうに見つめている。
「あれからそんなに経ってないけど、ようやく帰って来れたんだよね」
「はい。私達の世界から消えたふるさとです。二度と戻れないと思ったのに、こんなにあっさり戻れるなんて」
二人はここに戻れるまで1ヶ月もかかっている。だから、帰れたことに感動している。
だが、天使組はあっさりとしすぎているから警戒した。
しかも、入り口より魔法少女の魔力が強まった。
警戒を解くわけにはいかなくなった。
「とりあえず、ここから近い方の家に案内して。そこでこれからどうするか考えるよ」
そう言われてヒガンの方が近いからと、彼女がみんなの前に出て案内してくれた。
そこは普通の家だった。そこに9人が揃った。
そこを拠点にすることに決まった。
次回、天使の罪は走馬市の憎しみを買っている
一応これが最終章です。
最後までお付き合いください。