あっさりと走馬市に着いてヒガンの自宅を拠点にした一行は、次にどうすればいいのかを考える必要があった。
外には複数の魔力反応があるから確かめる必要もあるし、ドッペルの用意をした3人のうち2人も探してみる必要もある。
「走馬市の魔法少女達に伝えた政清の最後の言葉は、私にも知らされずに言われた言葉なんだよね。その真相を確かめに行って私も姿を消したことになったんだ」
「だから、もしかしたら今回の犯行理由には、元々仲良くなかった走馬市の内部の問題があるのかもしれません」
次の行動に迷っていると、走馬組はそう言った。
「元々仲良く無かったワケ?」
「自分達に詳しく話してくれ」
アリナは自分の作品のために知るべきことがある。
十七夜は神浜でのことがあったので、同じように分かれてるんじゃないかと思って聞いた。
「シノブ様の代わりに話しますが、走馬市は元々『葬魔市』と書くように魔法少女と魔女が多く倒されていました。それを直球な字から同じ音の『走馬市』に変えたのです」
ヒガンはシノブの顔色を見てから、代わりに詳しい説明を始めた。
「ここは北、中央、南に元々分かれていて、今では魔法少女の願いで仲良くなっていますが、昔のあの人がいなければ今もぶつかっているはずです。ドッペルをここでも使用できるようにした3人はこの三つ全てに分かれていました」
「ただ、中央の走馬中央学院は優秀だったので、出身に関係なく入る人が多かったんだ。そこで私達は出会って、ある日学校の屋上でキュゥべえから力を奪った」
「北の政清様、中央のコトハ様、南のシノブ様、三名が揃って希望のマギアという組織を魔法研究部で作りました。活動目的は魔法少女にとってより良い世界の実現方法を探ることでした」
ここまでは2人とも少し笑顔で話してくれてたけど、突然2人の顔が曇った。
「だけど、私達は途中でその目的を達成したらどうなるのかを理解してしまったんだ。パンドラの箱は政清が勝手に言ったことだけど、まさにその例えがぴったりだったんだ」
「私はよく知りませんが、全ての魔法少女が魔女化の運命から解放されたら、キュゥべえは敵になるかこの星を捨てるかとかの数パターンの行動をとることが予想されました。それは里見灯花いわくよくないそうです」
「だから、希望のマギアはマギウスの翼と連携しようとした。でも、残念ながら絶望の魔法少女によってその道は閉ざされた。これが原因で内部のぶつかり合いが戻ってきて、自分達の意見を通そうとし始めた。それ以降は思い出したくもない」
2人の口から出たあり得ないこと、出てこないはずの人の名前、こよみが悪いように言われていること、謎が余計に増えてしまった。
「なるほど、つまり内部の問題は魔法少女の行く末で、私とうちの灯花も悪いことをしたわけだ。それについては謝るよ。ごめんなさい」
当時はマギウスで魔法少女の救いの邪魔になってしまったなら、こよみにも非があると言える。
しかも、ドッペルやキュゥべえのことを教えてくれた灯花との繋がりも消してしまったことになる。
恨まれても仕方ないからこよみは真剣に頭を下げた。
2人は理解できてなかったので、みたまが捕捉した。
「この子がその絶望の魔法少女で、4人目のマギウスで灯花ちゃんの仲間だったのよ。内部に潜入しながら徐々にダメージを与えて潰したの」
そう聞いてヒガンの方が変身して大鎌をこよみの首に当てた。
「そうか。全てを引っ掻き回すのが貴様のやり方か。随分と酷いじゃないか」
その目は憎悪で真っ黒に染まっていて、いつでも殺せると意思表示している。
だが、その手をシノブが震えながら握って止めた。
「この人は確かに憎い。でも、神浜をあれで救えたのなら、私達も最後の希望にすがるしかない。魔女を使って内部からむしばむのも、天使の力で人を救うのもこの人の勝手なんだから」
そう言うシノブの目にも、こよみへの憎しみがあった。
マギウスの翼がなくなって、灯花の記憶も戻ったから走馬との繋がりが消えた。それは神浜を救うために偽善的行為をしたこよみのせいだ。
こよみさえいなければ、キュゥべえから奪ったいくつかの力で世界を変えられたかもしれない。
キュゥべえが居なくても宇宙を救えて、魔法少女も救えたかもしれない。
2人が神浜と見滝原と違って恨むのは仕方ない。
でも、本当に消えた走馬市を元に戻したいなら、こんな天使でも頼るしかない。
「悪いと思ってるから言わせてもらうけど、今回の一件に南は関係ない。やったとすれば北か中央で、共犯の可能性もある。友達が敵でも耐えられる覚悟がないならやめな」
正体もバレたことだから天使の皮をかぶった化け物は普通に進めることにした。
主のくれた役目は全うするけれど、その過程に関してはマギウスの時と同じように進めようとしている。
2人はこの人を信用として、首を縦に振った。
次回、アホな天使と見滝原のベテランの侵入
なんかうちの元おばさんがすんません。