真由子チームは様子見で走馬市を見て回っていた。
仮面をつけた魔法少女は、希望のマギアに手を貸してくれる『下っ端』と呼ばれる協力者らしい。
その下っ端は全部で100人はいるようだ。
これはシノブの下っ端を抜きにした。あの2人のを合わせた人数になる。
「あの下っ端がいるとなると、あの2人は敵なのかもしれないね」
シノブは悲しそうな目で下っ端を見つめている。
そうしていると、下っ端に見つかってしまったのでシノブが危機を回避してくれた。
派手なドレスの衣装で屋根の上から、増殖の魔法で分身を作って相手の目を誤魔化した。
大量の分身の紛れて3人は退散した。
様子見ついでに走馬市で一番重要な場所に向かった。
そこはかつて希望のマギアの三大将が話し合いに使っていた場所。
今は潰れた元プラネタリウム。そこは収入が激減して潰れることになった。
そこをお嬢様のシノブが大金を支払って買ったのだ。
だから、営業はしてないけれど、今でもプラネタリウムは使える。
「ここには私達の覚悟がある。魔法少女を救おうと決めた覚悟が」
そう言うシノブの目は、憎しみに揺れる瞳よりおぞましい憎悪に染められていた。
「アハハハハ!こんな簡単に行ってくれてよかったよ!これで分散できた!後は天使を捕獲するだけだ!」
真由子とかりんの前に出ていたシノブは、振り返ると狂気に取り憑かれたような顔で笑っていた。
「どういうことなのか説明してもらおうか」
かりんは困惑して何も言えなかったが、冷静な真由子は真っ直ぐシノブを睨みつけながらそう言った。
「そうだね。準備は万端だから話していいかな。まぁ、簡単に言えば、一部嘘を交えて話してここに連れてきたんだよ。天使の力は素晴らしいからね。世界中の魔法少女を救うための生贄になってもらうの」
シノブのこの言葉でハッキリした。
ここまで上手くいきすぎていた。
何かの目的で全てから場所を消したとして、記憶が残ってたら戻ろうとするのが普通。
記憶から完全に走馬市を消せばやりやすいはずなんだ。
それなのにそうせずに走馬に招き入れた。
しかも、天使をわざと探していた。
こよみを頼ったところでどうにかなるとは思えないし、頼るならもっと大人数に声をかけた方が効率がいい。
それもしないでこよみ達の元にやってきた。
他の魔法少女には目もくれないで。
あぁ、全てが仕組まれてたんだ。
この走馬市の3人のボスによって。
「あー、なるほどね。最初っからこのために探してたわけだ。私達を分散させて取り押さえれば脅威では無いし、天使を孤立させておいて味方の振りをして近づけるようにしたなら、簡単に誘拐してその計画に使えるもんね」
かりんが横目で真由子を見ると、今にも殺しにいきそうなくらい怒りで煮えたぎっていた。
その目は野獣のように獲物を狩る側の目だった。
刀を抜いて握りしめているその手は力が入りすぎて震えている。
その刀身も主の怒りが伝わって黒から燃えるような赤に変色している。
「理解してくれてるようでよかったよ。何も知らせずに潰すのだけは嫌だったからね。これで心置きなくやれる」
シノブがそう言って手を前に伸ばした時、我慢できなくなった真由子がその腕を切断した。
「こよみを支配するつもりね。そんなの許さない!」
怒りで完全に鬼の力を発揮した真由子は、愛と怒りと恨みで別物に変わった。
目の下のくまはよりハッキリして、さっきまで怒ってたのが嘘みたいに落ち着いている。
「どうせまだ生きてるんでしょう。出てきなさいなぁ」
進化した鬼の殺気と魔力は天使と同等になったので、そのせいでシノブは一切を押し殺して隠れた。
だが、相手はルールを使う鬼。逃げられるわけがない。
「分身は消したんだから、さっさと出て来なよぉ」
そう言いながら腕を切られて倒れてる分身を容赦なく突き刺した。
それでも出てくる気配がないので、刀を腕に当てて少し切り、呪いのようなルールを展開した。
「呪詛ルール、1分ごとに範囲を狭める。最初はこのプラネタリウムで、その範囲から出たら死ぬ。スタート」
このルールはソウルジェムに溜まった穢れと自分の血を使って発動する。
発動したらターゲットの手に真由子の鬼の紋章が浮かぶ。
そのルールの拘束力は元々一番だった血の誓いを遥かに超えて、命を簡単に奪えるくらいの強制力がある。
このルールの発動で逃げられなくなったから、後は出てくるのを待つだけ。
だから、かりんそっちのけでプラネタリウムの席に座って待ち始めた。
これが怒りの先に到達した鬼だ。
愛も憎しみも表裏一体。
さて、どっちが先に折れるのか。
次回、地下施設で解説タイム
こういう展開が好きだからこうなりました。