秘封道楽 ACT2 〜少女探訪〜   作:ユウマ@

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秘封倶楽部新連載、スタートでございます!
秘封が好きな方、まったりした話が好きな方、その他もろもろ良ければ楽しんでいって下さいませ〜


case0 秘封倶楽部
プロローグ


人には数多くの出会いというものがあるだろう。

勤め先で、学びの場で、あるいは全くの偶然から。そこから得られる経験というのは千差万別で、中には特に色の濃い人間に出会う時もあるかもしれない。

 

かくいう私も、その1人だ。

 

 

たまたま声をかけられた事をキッカケに、私と彼女(・・)は私の思いもよらぬ関係へとなってしまった。

その経緯は話すと長くなってしまうので、ここでは割愛させていただく。ただまぁ、覚えておいて欲しいのは。

 

 

 

これから綴る話は、私…マエリベリー・ハーンとその相棒が出会った、または出会うであろう話の、ほんの断片にすぎないのである──

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

「…何コレ」

「……」

 

道すがら、隣の彼女が呆れたような声を出す。その視線と、手には私に向けてひらひらと振ってみせる1枚の紙切れ。私はそれらから逃げるように、口元を引きつらせながら顔を背けた。

 

 

「……出し物、よ。…秘封倶楽部の」

「…メリーって、時々大胆な事するわよね」

 

 

トレードマークの帽子を抑えながら天を仰ぐその姿はまさしく我が相棒、宇佐見蓮子(うさみれんこ)に他ならない。

 

事の発端は単純だ。

 

 

 

単位を落とす事もなく進級出来そうだと2人で喜び合っていた所を教授に呼び止められた。聞けば、各サークルで新入生を迎え入れるための出し物をするから、案を考えろというものだった。

言うまでも無いかもしれないが、私が属するサークルたる秘封倶楽部は、私と隣の相棒の2名のみ。名目上蓮子が部長という事で、最初は蓮子に丸投げをしようとした。しかしこの相棒、初めて会った時より図太さを増したのか、2日足らずで怪しげなオカルトスポットを回ったレポ動画を作り上げ、それを新入生の集まる場で流す、などとのたまったのだ。

 

もちろんそんな事を許すわけもなく、私が新たに出し物を考える事と、なりはしたものの。

 

 

「だからって、原稿書いてしかも音読って…メリーって人が集まるところで話すの得意なの?」

「いいえ、苦手よ。けど少なくとも、蓮子の動画よりはマシだと思うわよ」

「メリーったらこの動画の良さが分かってないわねぇ。未知のオカルトを求めて刺激ある活動をする、それが私達秘封倶楽部の醍醐味ってもんじゃない」

 

やれやれと言う風に肩をすくめる蓮子に、私はため息を返す。ともかく、人の集まる集まらないに関わらず、最低限の物は作らなければ後々面倒なことになる。

だから今日は、蓮子を家まで引っ張って案を出そうというわけだ。

 

 

「えー、私と一緒にいたいならそう言ってくれればいいのにー」

「人の心を読まないで。そもそも私は何も言ってないわよ」

 

 

視線を向ければ、蓮子は意地の悪そうな顔でこちらを見ていた。

 

 

「いやいや、心でそんな事を思ってくれてるなんてね。あのメリーがよ?」

「…っ」

 

 

屈託のない笑顔で言われて、思わず顔を背ける。

 

 

ここ最近は、ずっとこの調子だ。何かと口実を作ってはどちらかがもう片方を家に招く日々。一緒がいいなぞ、蓮子に知れたらつけ上がりそうなので口に出しはしないが。

 

 

ほんの少し前から、私達は世間一般でいう“恋仲”と呼ぶようなものに、心境だけはなったと言っても良いだろう。実際には殆ど変わりはしていないけれど、その想いははっきりと分かって。

 

 

けれど、

 

 

「そうと決まれば、早く行くわよ!ちゃんと付いてきてよー!メリーしか鍵持ってないんだから!」

「分かったから、あんまり道端で叫ばないの!」

 

 

───目の前で笑う相棒には、散々振り回されたから。

 

 

恋という一面だけでも、私が蓮子を振り回しても良いだろうと、そう思うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

そうして、私の自室で2人揃ったまでは良いのだが。

 

「……」

 

肝心の相棒が着くなり人のベッドにダイブしてしまったおかげで、実質ここにいるのは私1人となっていた。

 

 

こうなってしまえば、“口実”が全うできる筈もなく。私は仕方なしにインスタントのコーヒーを作りながら、人の寝床で堂々眠る相棒を眺めていた。

 

 

最近は、こうして蓮子が時たま眠る事がある。蓮子の事だから、きっと夜までオカルトの事でも調べているのだろう。そこの趣味をとやかく言うつもりは、もちろん無いけれど。

 

 

「……」

 

 

こちらに向けられた寝顔を指で軽くつつく。少しだけひやりとした肌が今の時期にはこたえるけれど、それよりも不思議な中毒性のようなものがあってやめられない。

 

何度かつつく内に、蓮子は顔をしかめて寝返りを打ってしまった。私に背を向けて、全身を埋もれるようにベッドに沈めていく。

少しだけ名残惜しく感じながらも、私は指を引っ込めて出来上がったコーヒーをカップに注いでひと口すする。……砂糖を忘れて苦い。

 

 

それでも温かいコーヒーはそれだけで冷えた身体に染み渡って、私はほうと息をついた。

 

 

 

秘封倶楽部は本来、秘め封じられたものを暴くオカルトサークルだと、ずっと前に蓮子から聞いた事がある。今となっては色々な食べ物を探したりだとか、それらしい活動など殆どしてこなかったなと、ふと思う。

 

 

……私の前で眠る蓮子は、そこの部分をどう考えているのだろうか。もちろんオカルトに対する興味はさほども薄れていない事は想像はできる。

 

 

けれど。それは、つまり───

 

 

 

 

「ん……」

 

 

 

蓮子が再び、寝返りをうつ。こちらに向けられた顔は、とても安心しきった顔をしている。

 

…あまり考えるのも良くないだろう。私は蓮子の髪をそっと撫でると、自分も同じベッドの反対側に、背を向けて潜り込んだ。すぐに微睡みが襲いくる。

 

 

背中に体温を感じる。こんな事も最近は、良くある事。

以前の私なら考えもしなかったであろう。恋と呼べるであろう感情。それを私は、心から嬉しく思う。蓮子と共にいることにかまけて、秘封倶楽部本来の活動を疎かにしてしまうほどには。

 

 

けれど、もしも蓮子が、秘封倶楽部の活動を望むなら。私とこうして緩やかに日々を送る事よりも、オカルトを追いたいと言った時には。

 

 

 

 

 

 

───私とのプライベートな時間と倶楽部活動、どっちが大切なの?

 

 

 

 

 

 

そんな問いを投げかけてしまうであろう程度には、私はこの日々を、刺激のない、穏やかな日常が気に入っているのである。

 

 

 

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