秘封道楽 ACT2 〜少女探訪〜   作:ユウマ@

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日を開けない投稿、かしこい だがみじかい


眼前に立つは

「ふぅ…」

大学からやや狭い我が家に帰宅し、荷物をそこらに放ってベッドに倒れ込む。別に何かに疲れた訳ではないが、自由な時間に目の前にベッドがあれば飛び込むだろう、誰でも。

時刻は昼を少し過ぎた程度。午前に講義が終わった私は蓮子の制止を振り切り、昼食を早めに食べて帰ってきたと言うわけだ。

 

「せっかく早いし、何か本でも…」

 

 

何か手頃な電子書籍は無いかと端末で検索をかけるが、どれも読んだことのあるものか興味を惹かれないものばかり。本棚の本は読み尽くしてしまったし、これは帰ってくる前に本屋に寄ってくるべきだったか。ここしばらく寄っていなかったので何か新作でも出ているかもしれない。

 

 

「…ま、今度でいっか」

 

 

1度部屋に腰を下ろしてしまえば動くのは億劫というものだ。また明日、蓮子と一緒に行けばいい。

さて、そうなると本格的にやる事に困る。蓮子はもうすぐ講義だから話せない、本も読むものがない。となると───

 

 

 

「……たまにはいいわよね、うん」

 

 

ささっと寝巻きに着替えて、ベッドの上に寝転がる。普段は昼寝など出来る身では無いし、夜の寝つきなんかも多少気にはなるのだがまぁ、他にやる事も無ければ仕方ない。

時刻は13時目前といったところ。これならば夕方前には起きられるだろう。掛け布団も無しに、瞼を閉じる。

 

 

 

 

程なくして。静寂に手を引かれるようにして、私の意識は落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

「……?」

 

風が吹きつける音がした。冷えた風が私の身体に染み渡り、驚きながらも目を開ける。窓は閉めた筈だし、今日は天気も穏やかだった。けれど、私の目に映るのは自分の部屋などでは無く。

 

 

「………」

 

けれど、特段驚きはしなかった。何度も訪れた影響か、或いは此処が夢なのだと分かっているからか。

 

 

 

私の前に広がるのは、鬱蒼と茂る植物群。無数に生えるそれは、どうやら竹のようだ。

 

 

そんな果てのない竹林の前に、私は1人佇んでいた。

 

 

 

「また、変な夢を…」

 

浅くため息をつく。思えば久しぶりにこんな夢を見た気がする。となればこの先には、また何か人ならざるモノでも潜んでいるのか。

 

 

「まぁ、進めば分かるわよね」

 

 

引き返すという考えは、微塵も浮かばなかった。どうせ夢なのだ、引き返した所で何かあるかなぞ分からない。ならば、いかにも何かがある場所に歩く方が建設的かと思うのだ。勿論、夢でなければこんな事はしないのだけれど。

ポケットから探り出した端末の淡い光を手に、私は竹林へと足を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

───それから、暫し歩いて。

 

 

「…ここ、どの辺りかしら」

 

見渡す限りに竹、竹、竹。今自分が歩いてきた道でさえ竹の中に沈んでしまっている。

 

 

 

有り体に言えば、迷った。

 

端末の充電も残りが少なくなってきた。やむなく電源を切り、辺りは一層暗くなる。

幸い、全く光が差し込まない訳ではない。だが、道らしい道の無いこの場所でこれ以上迂闊に歩くのは、いくら夢とはいえ危険かもしれない。普段通りに戻った警戒心がそう警鐘を鳴らす。

 

 

とりあえず、元きた道を引き返そうか。そう、足を踏み出して。

 

 

 

 

 

 

 

がさりと、草を踏みしめる音がした。

 

 

 

私ではない。もっと遠く、ちょうど私の背後から。

 

 

振り返りながら、後ずさる。どんどん音が近くなっていく。やがて、竹の間を縫うように現れたのは。

 

 

 

 

「……誰?初めて見る顔。里の人?」

 

 

 

暗がりに溶けるような、黒いマント。裏地に謎の模様めいた何かを刻まれたそれの下に、何故か何処かの制服を着込んだ少女だった。

 

 

「あ、えっと、私は…」

「あっ、もしかして迷子?それとも…私みたいに、外からの人?」

 

 

 

その言葉に、小さく息をのむ。だが私がそれを聞く前に、少女はついと私の前に歩み出た。

 

 

「まぁ、いいや。迷子は迷子みたいだし、私と一緒に行く?丁度此処から出る所なの」

「ええ…あの、貴女は」

 

 

ぐいぐいくる少女に戸惑いつつも口を開く。彼女は何者なのか、夢なのではないのか。少女は慌てた様子も無く、帽子のつばを弄りながら、答えた。

 

 

 

 

「私?私は宇佐見菫子。不思議な貴女の名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

「……んあー」

 

やる気のない声を出しながら机に伏せる。メリーは講義を変わってくれないし、ネットの掲示板にも楽しい情報はないしで完全に虚無だ。本当ならメリーと話したいのだが、教授に招かれた人とやらがどんな人かも分からないのでリスクが高い。常に単位がギリギリの身としては問題ごとを起こしたくはないのだ。

 

「教授が講義をサボりたかっただけじゃないわよねぇ…」

「あら、教え子にそんな事を言われるなんて心外だわ」

「んー…教え子……?」

 

 

伏せた顔をずるりと起こすと、そこには腕を組む岡崎教授の姿があった。何故か私の隣の席に腰を下ろしている。

 

「お、岡崎教授⁉︎いつから…」

「貴女が机に伏せた直後ね。もう講義が始まるし、切り替えないと単位落とすわよ?」

「じゃあ教授も早く準備して下さいよ…」

「私は良いのよ。今日の私の場所はココだから、ね」

 

 

そう言って、椅子に深く腰を下ろす教授。同時に、端末の時計が13時を示した。

 

講義が始まる時間だ。それを告げる電子音が講義室に響き、同時に誰かが部屋に入ってくる。

 

 

 

「───」

 

強烈な、既視感の様なものを、瞬時に感じた。その人が何か珍しい格好をしている訳でも、ない筈なのに。

 

教授の殆どが着用する長い白衣に身を包む、華奢な人物。俯き加減のため顔は見えない。いや、俯いて居なくても、顔を見る事は叶わなかっただろう。

 

 

何故か、その人は室内だというのに黒い帽子を深く被っていたから───

 

 

 

「……」

 

小さく、口を開く。何か、言葉を選んでいるような様子を感じる。と、俯いていた顔が、すっとこちらを見据えた。

 

 

 

「……暫くの間、岡崎夢美教授の代理(・・)として講義を担当します」

 

 

よく通る、凛とした声。けれど何故だかその声はひどく、疲れているように、私には感じられて。

 

 

 

 

 

 

「───宇佐見菫子です。よろしく」

 

 

 

そう言って、彼女は帽子を…私と全く同じ帽子のつばを、弄っていた。




<NEXT>
「この場所はね、とっても───」
「あの場所は、とても───」


少女達の前に現れたのは、同じ名を持つ2人。彼女達が語る世界は、秘封倶楽部に何をもたらすのか。

【case2.幻想を語るモノ】
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