今年もばりばり更新してきますよーばりばりー
「……」
早足で家に帰り、鍵をかけてそのままもたれるようにして息をつく。肩掛けの鞄は、心なしかいつもより重く感じた。物理的な原因か、それとも心因かは、別として。
ふらふらと机に鞄の中身……幻想郷縁起を置く。菫子さんの研究室から無断で持ってきてしまったもの。
「…持ってきちゃったものは仕方ない、わよね」
今から返しにいったところで入れはしまい。元々、ただ確認のために見たかっただけではあるのだ。メリーの夢と一致するものがあれば、いやいっそこの本全部を写真にでも収めて、明日戻しておけばいいのだ。
そう考えると、疲労感もたちまち飛んでいく気がした。メリーから届いたメールには、紅い舘の事やら屋台を営んでいる女の子やら、いくつか届いていた。
ともあれ、まずは中身を見てみない事には始まらない。私は早速、ぱらぱらと何度かページを捲り───すぐに、手を止めた。
「なにこれ…何も…」
何も、書かれていない。本のどこを見ても、何度見ても。全て、白。以前に見せられた様な中身は、何の痕跡も残さず消えてしまっていた。
「そんな…」
菫子さんは、私がこうするのを分かっていたのか?私がこれを取りに来ると予感して、偽物を置いていったのか?あの本は……幻想郷とは、彼女がそこまでする程に危険だと言うのか。
白紙の本は、何も語らず。私はただ、項垂れるしか無かった。
▼▼▼
目の前で、ぶんぶんと手が左右に振られている。見れば、やや呆れ顔のメリーが昼食を食べながら此方を覗いていた。
「大丈夫?目の下クマ出来てるけど」
「んー…寝れなくて」
あの後、すぐに本を放り出してベッドに倒れ込んだ私だが、やはりというべきか、一睡も出来ずに朝を迎えてしまったのである。おかげで無駄に大判な本と虚脱感を抱えて大学まで足を運ぶ羽目になってしまった。
「何かあったの?またレポート?」
「いやー…菫子さんの研究室で面白そうな本を見つけたまでは良かったんだけど」
白紙の本をテーブルの上に置く。取り出した際に少しページをめくってみるが、やはり白紙だ。
「これはまた古い本ね…見つけたって、まさか勝手に持ち出したの?」
「いやあほら、すぐ返すつもりだったから…」
「バレたら大目玉でしょうね…それで?熱中してたってこと?」
「逆よ、逆。真っ白なのよその本。私が来るの、見透かされてたのかもね」
半ば諦めの気持ちで首を振る。メリーはといえば、最大の呆れ顔でため息をついていた。
「ちょっと、何よ」
「いえ、別に。好き勝手やるのは今更変わらなかったな、って」
「好き勝手って何よ!私だってちゃんと引き際くらいは分かってるわよ!」
「引き際だけじゃダメでしょ…」
ぐうの音も出ない正論である。だが言い返すより先に、昼休みの終わりを告げる電子音が響いた。
「あ、時間…次のやつめんどくさいから早く行かなきゃ!」
話してばかりでろくに食べていなかった昼食をかき込み、鞄ごと器をひったくるようにして食堂の出口に向かう。
「ちょっと蓮子、コレ…!」
声に振り向くと、メリーが幻想郷縁起をぶんぶんと振っていた。出しっぱなしにしたままだったか、だが取りに戻るのも億劫だ。
「ちょっと持っておいて!帰る時に渡してー!」
「え、ちょっと…!」
面食らったようなメリーの声を背に食堂から駆け足で出る。岡崎教授の講義ほどではないにしろ、面倒な講義なので遅れるわけには行かないのだ。そのまま駆ける私の靴音が冷たい廊下に響いていた。
「幻想郷…妖、怪……?この人って………」