秘封道楽 ACT2 〜少女探訪〜   作:ユウマ@

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ひと月って経つのが早いの


伝統のあるやもしれぬもの

「ねぇメリー」

「んー?」

「次の岡崎教授の講義私の代わりに出てくれない?」

「なんでよ、自分で選んだ講義でしょ」

「そうなんだけどさー…」

 

講義が終わり大学の門を越えたあたりで、蓮子は唐突に口を開いた。その口ぶりは講義そのものが面倒という訳ではなさそうだが。

 

「選んだのはそうだけどさ、私は教授がいるからとった訳で」

「あら、教授でも変わるの?」

「んーん、変わりはしないわ。ただ次の講義は外から人呼ぶって言うからさ」

 

ああ、なるほど。何の因果かは知らないが、うちの大学で外から招く講義は言ってはなんだがあまり質がよろしくない。ましてや大学内でもやや特殊な目で見られる岡崎教授が招くとなればまぁ、何が起こるか予想はつかない。

 

 

「というか、今岡崎教授って何の講義してるの?」

「んー?怪しげな薬品使って超常現象を起こそうとしてるわよ」

「ええ…そのうち爆発しそうね、それ」

「何度かアニメみたいな爆発してるわよ、もう。まぁ内容はともかくとして、面倒な試験もないし出席だけで単位とれるのが良かったのに…」

 

なかなか腐った根性をしているなぁとは、共に過ごす身なので度々思ってはいる。同時にそれが根治するようなものでもない事も、多少は理解しているつもりだ。

 

 

「で、代わりに出てくれないの?」

「だから無理よ。岡崎教授ならその場で貴女を呼び出すように言われたりしそうだもの」

「確かにメリーが目立つのはちょっとねぇ…」

 

 

そも蓮子がしっかり講義に出ればいいのであって。けれど本人はそんな事を気にしている素振りはなさそうで。唐突に端末を操作しだすと、この周辺の地図を私に見せてきた。

 

「ところでメリー、この後暇?」

「いいえ、ちょっと夕飯の仕込みを」

「オッケー暇ね。じゃあちょっと行きたいところがあるんだけど」

 

 

これである。流石に慣れてきたし、どうせ今日も家に泊まる気でいるだろうから出かけても問題ではないのだが。

 

「…それで、何処に行くの?近くならそのまま行っちゃう?」

「ええ、近いわよ。メリーの家の近くの路地、あそこに自販機がたくさんあるのよ」

「自販機?いつもの喫茶店でも行く?」

「いやいや、飲み物の自販機じゃないのよ。そこはね…お菓子が格安で手に入る自販機なのよ!」

 

 

はぁ、お菓子とな。私としては喫茶店でケーキを嗜む方が良いのだが。蓮子は嬉々として小銭入れを握りしめて歩き出している。私は何を言う暇もなく、その後をついていくしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

そうして歩く事暫くして。私達はその自販機があると言う路地を目の前にしていた。

「ん、地図によるとここね」

「というかまた路地なのね…」

 

以前に屋台か何かを調べに行った時も路地を歩いた覚えがある。あの時は夜中だったので懐中電灯で照らしながら歩いたが、今日はまだ夕焼け空のため普通に歩く事ができる。だからその路地にひっそりと置かれていたそれを目にするには、充分な明るさだった。

 

「これが…自販機?」

「少なくとも形はそうよねぇ…」

 

私達の前にそびえるのは、いかにもSF風といった見た目をした自販機らしきもの。商品ケースや通貨を入れる所などは変わりないし、電気もついているので機能はしているようだ。

そして、その中身は。

 

 

「確かにお菓子といえばお菓子だけど…こんなの私食べた事ないわよ?」

「私もよ…もっと近代的でオシャレな物だとばっかり」

 

 

そこに並んでいたのは昔ながらの棒状のチョコレートやスナック菓子らしき袋など、いわゆる駄菓子などと呼ばれていたものばかり。今のご時世意外と値が張るものでもある。

 

「値段は…そこまで高くないわね。というかむしろそこら辺のお菓子より安いわ」

「そうね。とりあえず、少し買ってみましょうか」

 

 

硬貨を入れて、丁度真ん中にディスプレイされていた棒状のスナック菓子を購入してみる。ラベルに書かれている商品名は「ウメー棒」らしい。軽い音を立てて落ちたそれを拾い上げる。

 

「私はこれ、っと」

 

 

蓮子が選んでいたのは何やらゼリー状のお菓子だった。私の菓子の包みを開けると、ほのかにコーンの香りがするスナック菓子にかじりついた。

 

「…んー?」

 

 

 

味はまぁ、ざっくり言ってしまえばコーンポタージュの味だ。ほんのり甘い味とスナックの軽い味でどんどん食べられる。気づけばもう2、3本購入していた。

 

 

「何、メリーったらハマったの?」

「ケーキ1つ分までならノーカウントよ」

 

2本目もそのままの勢いでぺろりと食べてしまう。味的には全然まだ食べられる段階だが、多少喉が乾く。鞄を覗くが、生憎買っておいた紅茶のボトルは空だった。

 

 

「蓮子、何か飲み物持ってない?」

「んー、私も切らしてて…あ、これなら」

 

 

そう言って差し出したのは、先程買っていたゼリー菓子。両手に2本持ったそれを、私はぱっと見て受け取って、飲み出した。

 

 

「あっ…そっちは……」

「ん?んー…」

 

 

味は少し薄いイチゴの味だ。冷たいゼリーが喉を通る感覚が気持ちがいい。ただ、1つ疑問に思った事。

 

 

 

 

……私はこのゼリーの封を切ってはいない。

 

 

蓮子が買ったのは2本、飲んでいたのは1本。つまり、私が受け取ったものが封の切られているものという事は。

 

 

 

「それ、私の……」

「……」

 

 

そういう、事である。私は慌てて蓮子にゼリーを突き返す。しかし蓮子も中々それを受け取ろうとしない。2人で慌ててゼリーを押し付け合うようになってしまう。

 

「メ、メリーがさっき飲んだんだから飲んじゃってよ!」

「元々は蓮子のものでしょう!」

「いや、でも…!」

「いいから!!」

 

 

そう言って押し付けて、蓮子は私を置いてもと来た道を走っていってしまった。残されたのは半分ほど残ったゼリーを手にたたずむ私。

 

 

「これ……残して捨てるのもあれ、よね?」

 

 

半ば自問自答の様な言葉を反芻して、残りのゼリーをぱくりと咥える。

 

 

 

 

 

 

錯覚か、さっきよりも甘く感じるような気がしてならなかった。




<NEXT>
「結局全部飲んだの?」
「勝手に渡しておいてその言い草なわけ!?」
「だってメリーがとっさに取るから…」


【次回 それぞれの眼前に】
お楽しみに〜
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