ダンブルドアは自由に生きられるか   作:藤猫

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なんか、何が面白いのかだんだんわからなくなってきた。
ともかく、山が越せるように頑張ります。

感想、いただける嬉しいです。


前兆

「・・・・ニゲルに婚姻を断られてしまって。いったい、何がだめだったと思いますか?」

 

それは、もちろん全てではないだろうか。

思わずそう言いかけたが、さすがに良心というものがあった。ムーディーは言葉をごくりと紅茶と共に飲み込んだ。

もう一度カップを置いた。そうして、ちらりと青年を見た。

その表情。

見たことがないような、悲しそうな表情だった。

それに、ムーディーは固まってしまう。子供のような顔に、ムーディーはなんとなしに目の前のそれが彼の素直であることをなんとなしに察した。

 

(彼は、何というか。そうか。)

 

アルバス・ダンブルドアというのは、変なところで幼いのかも知れなくて、そうして、案外思った以上に平凡な青年なのかも知れないと察した。

そうして、恐る恐るという体でアルバスに話しかける。

 

「アルバス、婚姻というのはそれ相応に理由という物が必要だ。その、私も見合いで妻とは結婚したが、それでもそれ相応の理由という物がある。何というか、君のそれは突発過ぎる。何よりも、君は彼女へ、恋愛感情みたいなものがあるのかい?」

「いえ、結婚をすればよりスムーズに私に何かあったとき、妹や弟のことを頼んだり、それに財産の移行ができるでしょう。何よりも、彼女は未だにリンデムです。ダンブルドア、その名字になるだけで彼女の味方は多くなります。そうして、顔が知られればそれだけ監視の目も多くなることになる。」

 

もう、二度と、あんなことが起こらないために保険は必要だ。

 

ムーディーは、青年の瞳孔がゆっくりと開かれていくのを見た。ぎちりと、握り込んだ拳の強さにそっと目を伏せた。

 

闇祓いは確かにエリートが集まる。けれど、それは危険なものであるためでもある。

アルバスに起こった悲劇は、可能性がないわけではない。

ニゲル・リンデムが闇の魔法使いに襲われたことは魔法省でもすぐに話が広まった。もちろん、同情の言葉もあったが、それ以上にニゲルへの非難の言葉は聞こえていた。

アルバス・ダンブルドアという有名な、そうして闇祓いの身内でありながら安易に一人で行動する彼女へ非難する存在がいた。

アルバスがそれにどんな思いをしたのかはわからない。彼自身、滅多に本心をさらさないのだから、欠片のような本音を時折すくい上げる程度だった。

アルバスという少年が、案外平凡で、なかなかに普通で。

ムーディーはじっと、その青年の顔を見た。

 

「・・・・そうだな。まあ、そういった契約的な結婚をする可能性もあるだろうが。ただ、君の望む繋がりというのはもっと温かなものじゃないのか?」

「別に、ニゲルとは十分に確かな繋がりがあります。私は、それを自分たちが理解できていればいいのだと思っていました。」

 

そう言った後、アルバスはそっと視線を下におろした。

 

「でも、それではだめなのですね。」

 

その声が、やたらと静かであったからムーディーは返す言葉もなく、それを聞いていた。

 

「悪党でなくとも傷つけられる人も、善人であっても誰かを傷つける事実も。確かにどこにだって存在することだったんです。信じていたんです、無邪気に思っていたんです。正しい行いをして、平凡の中にいる人間を傷つける者なんていないなんて。」

そんなことはありはしないのに。

 

キラキラとした、青い目が無邪気に真摯にじっと、ムーディーを見ていた。

淡く笑ったそれは認めるべき好青年だった。

幼子のようなそれを見ていると、ムーディーは何か、見てはいけないという奇妙は寒気に襲われた。

 

「ダンブルドアという私の名は、確かに不利益も混じっていますが、それと同時に彼女にとって有益なものでもある。」

 

好青年であると、素直に感じるそれの中にぽつりと浮かんだ思慮深さが奇妙な暗がりとしてそこにある。

 

「何よりも、私に愛されているという事実をより鮮明にすれば、敵が増えると同時に味方も同じように増えるでしょう?」

 

柔らかな声であると同時に、腹にくるような重さにムーディーは襲われる。

 

「・・・・ですが。」

 

一気にやってきた沈んだ声にムーディーは肩すかしを食らったような気分になる。声の主の方に視線を向けると、肩を落として悲しそうな顔をしたアルバスがいた。

 

「この結婚がどれほどいいものか語っても、ニゲルはあほなことを言うなって怒るんですよ?理由についてしっかりと説明しようとしてもまったく聞き入れてくれず。」

 

すねたような口調で語るそれを見ていると、ムーディーは脱力感に襲われる。今までの威圧感など、それこそ夢のように消え失せていた。

アルバスは背もたれに体を預けて、ムーディーにまた何がいけなかったのかと嘆いている。

ムーディーは頭痛がしそうになる頭を抱えた。

信用、信頼、アルバスというそれは人の前での振る舞い方を理解している。ただ、それをニゲルという少女の前では忘れてしまう。

 

(それは、危ういのか?)

 

ムーディーは考える。それこそ、彼がどれだけ優秀であるのか、そうして内に隠した野心と賢しさをムーディーが理解できるが故になおさらに。

その化け物が、化け物として育ち、そうして羽ばたく瞬間というものをみたいと思う。そんな欲求が腹の奥でムクムクと育っていく。

 

(だがな。)

 

ムーディーちらりと幼子のようにすねたそれを見た。

目の前に座る青年は、ホグワーツ魔法学校を首席で卒業し、その名を知らぬ者はそうそうなく、闇祓いとしても、それこそ学者としての知名度もあり、さりとて偉ぶることもなく、人への理解を持ち、弱者を受け入れ、強者を受け流す。

なるほど、どんな人間でさえも、憧れを持つだろう。

完璧に近く、けれど完璧ではないそれ。

ムーディーは、彼の完璧でない部分を知っている。

当たり前のように身内に甘え、彼の言うわがままも、それを受け入れられるという普遍的な傲慢さも、ムーディーは知っている。

 

「婚姻というのは、ひどく覚悟のいるものだということはわかるね?」

「はい、それは。」

 

首をかしげるその様はひどく幼い。それに、男は苦笑する。

 

「まあ、確かに婚姻というものは利己的なものも存在するだろうがな。家同士の繋がり、政略的なものも。恋を必要ともしないときもあるだろうが。ただな、お前のそれを何故、彼女が断ったかわかるかい?」

「・・・・・局長にはわかるんですか?」

 

それにムーディーは少し笑ってしまった。自分とて正直に言えばらしくないとわかっているが、それでも思った通りの答えを返した。

 

「アルバス、お前はもう少し、常識というものを身につけなさい。」

 

ぺしりと言い放った言葉に、アルバスはまるで初めて言われたかのようにきょとりと目を瞬かせていた。

 

 

 

 

「局長、どうされましたか?」

「ああ、いや。」

 

ムーディーは他部署の職員に生返事のように声を出した。

ムーディーは次の任務に向かったアルバスについてを考えていた。答えを言った後、アルバスはひどく不服そうにどういう意味かと聞いてきた。

ムーディーはそれについて自分で考えなさいと突っ返すことにした。

それは、きっと、当人が気づかなくてはいけないことだろう。それと同時に、ろくに記憶も無い状態でアルバスに契約結婚のプロポーズをされたニゲルについて考える。

相当に戸惑ったことだろうし、困ったことは予想される。

 

(だが、それ以上に頷かなかったのか。)

 

それについても少しだけ意外だった。

記憶とは、その人間を人間たらしめる基盤だ。それがなくなった彼女もまた相当に不安定になるなど予想していた。けれど、アルバスから聞く彼女は、なんというか彼女のままだ。

面倒見が良く、善くも悪くも優しい。

それが虚勢なのか、それとも元々持って生まれた性質なのか。

それでも、己がどんな人間であるかを忘れてしまったそんなとき、君を守りたいと恋はなくとも愛を持って結婚を申し込まれたならば、それ相応にぐらつくこととてあるだろう。

何よりも、アルバスというそれは認めるべきほどに人を引きつける魅力がある。

 

(その人間から、どんな理由があるにせよ、唯一と選ばれる心地はどんなものだろうか?)

 

少しだけ、夢想する。誰もが求め、誰もが認める、特別な誰かの唯一になれるということ。

ムーディーはそれについてくすりと笑った。

 

(あまり、理解ができないからな。)

 

他人にとって特別な誰かではなく、自分にとって特別な誰かに選ばれる方がずっと難しいことをムーディーはすでに知っている。

そうして、ニゲルという存在の振る舞いを、一度だけの邂逅の内に思い出す。

なんとなくわかるのだ。

ニゲルというそれにとって、アルバス・ダンブルドアという男はきっと、優秀でそれでも手のかかる青年なのだ。

多数の人間が彼を特別とする理由なんて興味は無く、ただ、ひどく些細な理由によって彼女にとってアルバスは特別なのだろう。

 

(まあ、アルバスの場合は独占欲が表出した部分もあるのだろうが。)

 

常識を知れという言葉で突き放したのは、自分で気づかなければいけないだろうという考えからだ。他の口から言ったとしてもアルバスはムーディーの言いたいことを理解しないだろう。

 

「・・・・・恋人でもない存在からのプロポーズは赦されると思うか?」

「はい?」

 

ムーディーはぼそりと吐き出してしまったそれに対して首を振る。ムーディーの目の前にいる、魔法警察からの報告書を持ってきた彼女はひどく不思議そうな顔をしていた。

アルバスと入れ違いの形でやってきた彼女に対して突然すぎると反省した。

 

「いや、何でも無い。気にしないでくれ。」

 

ムーディーは魔法警察から送られてきた書類に目を通しつつ、アルバスからできるだけ目を離さないようにすることを決めた。

 

 

 

「・・・・・どうしたもんかなあ。」

 

ニゲルはぐったりとした口調で乾いた洗濯物をたたむ手を止めた。その言葉に、ニーズルのラピスが面倒くさそうに尻尾を振った。

ニゲルが頭を抱えている理由というのは、昨日より仕事に飛び出したいとこの青年についてだ。

 

(何故、結婚。いや、責任をとるって意味でのそれか?なら、十分に責任は果たしているし。いや、というか、アルバス・ダンブルドアはそういうキャラクターか?)

 

ニゲルはうーんとうなり声を上げた。ずるりと、ソファになだれ込むようにもたれかかった。

 

(なんか、そういう繋がり自体好まなさそうな印象っていうのか。いや、違うか。私が知ってるのはたくさんの、もろもろの破滅と断ち切れた何かの前に諦めたアルバス・ダンブルドアか。)

 

知る限り、自分が知るダンブルドア像と、自分が供にいるアルバスというのは徹底的にかけ離れている。

それこそ、弟妹やグリンデルバルドの不和が起こっていないことが何よりだろう。

母親やニゲルについてはまあ、確かに心が折れるかも知れないが。

 

(つーか、なんでアルバスはグリンデルバルドとくっついてないんだよ。私のせいか、いや、別にアルバスとはそういう関係性じゃなかったはずだ。日記を見る限り、いや、完全に御小屋みたいだったけど。)

 

思えばニゲルの現在の年齢感覚は二十歳過ぎほどで年格好を考えれば母親じみた感情があっても不思議ではない。

だからこそ、おそらくアルバスの発言は疲れ切った思考による妄言と、そうして責任感によるなにかであると当たりをつけた。

だが、そうはいっても気まずいものは気まずいのだ。

あれが一時の戯言とわかっても、それでもなお、居心地が悪くてたまらない。そわそわするような、そんな感覚だ。

鬱々とした気分のまま、はあとため息を吐いていると玄関のインターホンが鳴った。それに、ニゲルは思わず飛び起きる。

そうして、恐る恐る、玄関の方を見た。

 

「・・・・あ、来たのか。」

 

ニゲルはそう言った後、いそいそと玄関の方に視線を向けた。

 

 

 

「・・・すいません。訪問がだいぶ遅くなってしまって。」

「あ!いえいえ!こちらこそ、わざわざ来ていただいて申し訳ないです!」

 

そうですか、とニゲルに微笑みかけているのは面談にやってきた魔法省の人間だ。アルマと名乗った彼女は首を振る。

本来ならば、ニゲルは取り調べとまでは行かないがある程度の聞き取りはされるはずだった。

事件当時のこと、何よりも被害者となった存在に対してのカウンセリング的なものが行われるべきだった。

が、ニゲル自身、事件の記憶など空の彼方に放り投げられていたし、彼女が彼女たり得る記憶だけはしっかりと頭の中にあった。

何よりも、神経質になっていたアルバスの考えのために面談はことごとく中止になっていた。

 

(あー。そういえば、アルバスに今日の面談のこと言ってない・・・・・)

 

少なくともなかなかに前から届いていたのだが、アルバス自体が家に帰られないこともあり言いそびれることが数度。

そうして、結婚騒ぎがあり、結局言いそびれているのだ。

 

(やべえ、怒られるかも。)

 

内心で冷や汗をかいているニゲルに面談の担当であるらしい魔法警察官は口を開いた。

 

「大丈夫ですか?今日のことは、いとこ君には?」

「すいません、伝えていなくて。」

「そうですか。彼からも改めて話を聞きたかったんですが。わかりました、改めてこちらからお話をお聞きします。」

「はい、お願いします。」

 

ニゲルはそんなことを思いつつ、後ろ側でかりかりと扉を掻く音に意識を向ける。

 

「・・・・何故か、昔から猫、というかニーズルには嫌われてしまって。」

「いえ、こちらこそ、すいません。」

 

自分の寝室に放り込んだラピスにニゲルは内心ですまないと謝った。出迎えた魔法警察官についてやたらと威嚇音を上げる彼女をニゲルは慌てて寝室に入れた。

邪魔をされるのは困るし、一時的な措置であった。何よりも、閉じ込められることに関して不愉快なのかラピスはずっとがりがりと扉をかいている。

気を取り直したらしい彼女は改めてニゲルにいくつかの質問を始めた。

 

事件当時のこと、覚えていること、いないこと。

それは、最初にアルバスに聞かれたことのためさほど戸惑わずに話をすることもできた。精神状態を慮るようなことも聞かれたが、それについても問題が無い。

 

「・・・・そうですか。思い出されたことも無いと。」

「はい、まあ、記憶が無いことに関しては呪いが起因しているらしいので。なんとも。」

「こちらとしても全力で捜査していますが、手がかりも掴めない状態で。」

「い、いえ。それについては、あの、アルバスも頑張っているみたいで。」

 

なんと返せばいいのかわからずに、ニゲルは肩をすくめた。アルマは、それに対して頭を深々と下げた。

 

「・・・・あの、生活については大丈夫ですか?その、あなたの保護者に当たる彼はお忙しいそうですし。」

「いやあ、まあ、なかなか帰ってこないので却って気楽というか。体だけは壊さなければいいんですが。」

 

そう言いつつも、ニゲルの脳裏に浮かんだのは疲労の果てにプロポーズをぶちかます青年だ。

 

(私よりも、あいつの方が大丈夫なんだろうか?)

 

疑問のように浮かんだそれの後、目の前の彼女は恐る恐るというように口を開いた。

 

「あの、不躾かも知れませんが、本当に困っていることはありませんか?」

 

困っていること、という単語にニゲルは脳裏によぎった青年のせいか少しだけ反応してしまう。一瞬だけ沈黙したニゲルに、アルマは恐る恐る言った。

 

「いくらいとこと言っても見ず知らずの男性と暮らすのはいろいろと大変ではないかと思いまして。」

 

ニゲルとしてはそう感じている部分もあるため、まあ、はいと曖昧でも返答をしてしまった。

 

「もし、よろしければほかの生活の場というものを考えてみませんか?」

「え、そんなことできるんですか?」

 

思わず聞き返したそれにええとアルマは頷いた。

 

「元々、闇の魔法使いに狙われて生き残った人たちに関してはある程度、守りの魔法を提供できるんです。ニゲルさんも、お望みなら適当な住居をご自分で見つけて守りの魔法をかけることもできますよ。」

 

それに対して、咄嗟に断ることも、頼むと言うこともニゲルにはできなかった。

純粋に、アルバスのことは心配だ。

けれど、心の奥底で思うことはあった。自分がいれば、アルバスの精神的な負荷が増してしまうんじゃないのかと。

もちろん、このままでは困る。できれば記憶を取り戻したい。

けれど、それと同時に自分の存在がアルバスという彼への負担になっている自覚もある。

ゆらゆらと悩む。意識を巡らせる。

元より、アルバスへの家族意識の薄いニゲルからすると彼からの奉仕染みた関わりに申し訳なさがあるのは事実だった。

 

「・・・・すいません、その、すぐには決められず。」

「そうですか。わかりました。ただ、考えていただけると嬉しいです。」

 

アルマは変わることなく穏やかに微笑んで、ニゲルに声をかけた。

 

「それでは、そろそろおいとまさせていただきます。」

「はい、わざわざ、ありがとうございました。」

 

挨拶のように握手を交わして、アルマはそのまま家から立ち去った。ただ、最後に一言だけこういった。

 

「・・・・すいません。あの、今日の提案に関しては彼には言わないでいただけますか?」「ええと、なんで?」

「お一人でじっくり考えてもいいと思いますから。」

 

それに対してはぐうの音も出ずにニゲルは頷いた。アルバスについて、確かに彼の意見に左右されすぎる自覚はある。

一人になった部屋の中で、ニゲルは出した紅茶のカップを片付けながら提案についてを考える。

 

(距離を、とった方がいいんだろうか?)

 

久しぶりに他人と話したせいか疲弊した意識のまま、ぐったりと考える。

そうして、ニゲルは閉じ込めていたラピスのいる部屋の戸を開ける。

彼女は不満を表すかのようにうなり声を上げた。

 

「ごめんよ、お客さんだから仕方ないだろう。」

 

思えば、家に人をあげたなんて初めてだ。大人しく、滅多に鳴かない彼女もあそこまでうなるとは思わなかった。

 

(なんか、疲れたなあ。)

 

ニゲルはラピスへの謝罪もそこそこにベッドに倒れ込んだ。そうして、そっと目を閉じる。何故か、やたらと眠かった。

 

 

 

夢を見ていると自覚した。自覚のある夢なんていつぶりだろうか。

ただ、ニゲルの体は行き先を知っているように動き出す。今よりもずっと低い視界は飛ぶようにかけていく。田舎の光景は、ビュンビュンと過ぎ去っていく。

どこだろうか?

ぼんやりとした疑問の中で、ふと、視界の果てに幾人かの子供が見えた。

数人の少年と、そうして見覚えのある少女がいた。どうやら少女は少年たちにいじめられているらしい。

それに、ニゲルは夢であることさえも忘れて、無意識のうちにたんと飛んだ。

流れるような、少年へのドロップキックが決まった。

 

どさ!

 

ニゲルは体に受けた衝撃の内に、ばっと目を開けた。ソファから転げ落ちたらしい自分の状態にも目を見開いて、驚いたラピスの顔を見た。

 

「・・・そうだ、私。アルバスの妹、アリアナ。死ぬはずだった彼女。そうだ、あの子のためにくそガキを吹っ飛ばしたんだ。」

 

全力疾走の後のようにびっしょりとかいた汗を拭って、ニゲルは呆然と呟いた。

 

 

 

 

 


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