僕のヒーローアカデミアー麗日お茶子の兄ー 作:トガ押し
物心ついた時には、すでにヒーローというものに憧れていた。理由はもう覚えていないが、ただただ人の笑顔が好きだった。楽しそうに笑う、その顔に元気をもらったから。
だからこそ、オールマイトというその存在は自らの中にとても大きな影響を与えてくれたのを覚えている。ヒーローに憧れ、自分の個性の発現を楽しみにしていた。そして先に個性を発現させた双子の妹を羨ましいと思い、妬ましいと少し思った。それから数か月後、自らも個性を発現した。
その名を『グラビティー』。
重力を自在に操る力。それが麗日茶虎(うららか ちゃとら)の能力だった。
それから数年後。小学2年生の時。
「兄ちゃんの個性、何で私と違うんやろ」
「そりゃ……なんでやろな。でも、似た個性やからええんやない?」
「兄ちゃん、個性使いすぎると気持ち悪くなったりする?」
「そうやなー、気持ち悪くなったりはしーひんけど、体が重くはなるな」
「そうなんやー、ええなー気持ち悪くならんで」
父親の仕事のついでで訪れた都会で父と母を待つため公園で妹のお茶子と共にベンチに座って話していた。遊ぶための遊具などは沢山あったが、その分子供も多いため遊具で遊ぶのは無理そうだった。
「……チゥ……」
不意に後ろでがさりという草木が揺れる音と共に何かを吸う音が聞こえた。
「なんやろ、兄ちゃん」
「お茶子、ちょっとまっとて」
「う、うん……」
お茶子をベンチで待たせて、こっそりと草むらを覗き込むとそこには。
スズメの血を吸っている同じ年くらいの子供がいた。
一瞬、ゾクリと背筋が震えた。
その表情はどこか狂気に満ちていて、それでいてとてもとても可愛かったから。だからこそ、我を忘れて声をかけてしまった。
「何をしとんの?」
「あっ……トガです……」
「いや……あの、名前聞いてるわけやないんやけど……」
「逃げないの?」
「は?なんで?わけわからん」
「周りの人たちは気持ち悪いって言うのです。やっぱり、私は変……ですか?」
「……」
現状、スズメの血を吸っている通称トガちゃんを見てぽかんと口を開くしかなかった。変かと聞かれれば当然。
「変だよ」
「やっぱり……」
「だけど。まあ、それが君の個性なんだろ?」
その言葉にトガちゃんの顔がぱっと明るくなった。出会ってから初めて、トガちゃんは笑顔を向けてくれたのだ。認められたとかそんな表情だったと思う。
「それで、ですね。私、人の血を吸ってみたい!」
「却下や、ド阿呆!」
間髪いれずに拒否した。誰だって、人に血を吸われたくはない。
「認めてくれたんじゃないんですか?」
「だれが認めるか!」
その瞬間、トガちゃんの表情が曇った。その危うげな表情に、反射的につい口が開いてしまった。
「わかった。いいぜ、吸わせてやるよ!」
「やった!」
「ただし、俺に勝てたらな!」
それが、幼馴染になる渡我被身子との出会いだった。
そして現在へ至る。