僕のヒーローアカデミアー麗日お茶子の兄ー 作:トガ押し
そうしてつつがなくとはいかなかったが、全ての種目が終わり結果が相澤先生のスマホから空中に映し出された。結果を一覧でみると、茶虎は5位、お茶子は11位、そしてヒミコは20位だった。
最下位は緑谷だ。だが、あの怪我で残りの種目をやり切った根性は素直に脱帽する。確実に骨が折れていた。普通であれば、動くのも激痛が伴うほどなのに、だ。
相澤先生が次に、何を言おうとしてるのか、それ次第ではと思っていたが、相澤先生の口から出た言葉はとても予想外のものだった。
「ちなみに、除籍は嘘な。君らの個性を最大限引き出す合理手虚偽」
「あんなの少し考えればわかりますわ」
相澤先生の言葉にクラス中がどよめく中で、八百万だけがわかっていたと言わんばかりの態度だった。
だが、恐らく。相澤先生はこの結果ではなく過程をみて判断している。もしその過程が意に沿わぬものだったとしたら、除籍というのは本当になるだろう。
そう考えるとゾッとする。あの時、八百万がいなければもしかしたら、ヒミコは除籍になっていたかもしれないのだから。
「これにて終わりだ。教室に書類があるから戻ったら目を通しとけ」
相澤先生はそう告げると緑谷の元へと歩みよって、なにか紙を手渡していた。
「ああ、それと。麗日兄、渡我、ちょっと来い」
教室に戻ろうと、歩みを始めようとした足が相澤先生の言葉によって止められる。何かした、と言えばした。握力計の破壊、不正かもしれないがヒミコへの血液提供。
もしかしたら、何やら罰が待ち受けているかもしれないと冷や汗が背中を伝った感触がした。
「はい」
「はーい!」
できうる限りの声で返事をして相澤先生の後をついて歩く。校舎の陰に隠れたところで、授業をみていたと思われるオールマイトがそこにいた。
一旦、オールマイトの横で立ち止まってため息をつく相澤先生。
「渡我、お前の個性は知っている。他人の血を摂取することでその人間の能力を得るんだったな」
「はい!そうです」
「今回、結果だけ見れば22人中20位。最下位ではないが、もっと上を狙えたはずだ。今後は、他の人間の協力を仰げ」
「えーっと……」
相澤先生の言葉に、言葉をつぐんで言い淀み、困ったように茶虎の方に視線を送るヒミコ。それがどういった意図でなのか、茶虎はすぐに分かった。
それは小さい頃にした約束の一つだ。
「相澤先生。すみません、ヒミコに俺とお茶子以外の血は摂取させることはできません」
「どういうことだ?」
若干、相澤先生の目線が険しくなった。今にも、人を射殺せそうな目だ。
「それは……」
それはヒミコ本人の前ではとても言いづらいことだ。それを何とか、理解してもらおうと身ぶり手ぶりで表わそうとして、呆れかえったように相澤先生は次の言葉を告げた。
「合理的じゃあない。それで渡って行けるほど、ヒーローってのは甘いものじゃないよ。渡我は、もう大丈夫だ、先教室帰ってろ」
「わかったです」
相澤先生に促されて玄関の方へと向かっていくヒミコ。時折、こちらに振り返っては心配そうにこちらを覗いていたが、やがてその影も下駄箱の陰へと消えていいた。
「それで、どういうことだ。麗日」
どうやらさっきの身ぶり手ぶりで伝わったようだ。改めて相澤先生の観察眼には恐れ入った。
「これは、戯言程度に聞いてください」
そう前置きをして、相澤先生とオールマイトに話を始める。
「ヒミコ……いえ、渡我さんは、渡我さんの個性はかなり変わり種です。他人の血を摂取しなければ発動すらできない……じゃあ、なんで彼女は自らの個性を知ることができたと思いますか?」
「それは小学校と中学校で行われる全国一斉個性診断でじゃないのかい?麗日少年」
オールマイトの言葉に茶虎は首を振る。
「個性は使えるようになってすぐ、発動原理を知れるものじゃない。だからこそ、発動したては怪我をしたりする人も数多くいる、緑谷くんみたいな感じで体を壊す人も稀ではない……血を吸わないと発動しない個性の彼女は本当なら自分の個性をしるのに時間がかかったはず。なのに、彼女はすでに小学校三年生には自らの個性について知っていた」
「まさか、吸ったのか?」
「人の、ではありませんでした。スズメなどの小動物程度でしたが」
「お前の言いたいことはわかった。歯止めが利かなくなる可能性があるってことか」
相澤先生の言葉にコクリと小さく首を縦に振った。
二人で納得したように話している横で、オールマイトだけが不思議そうに首を傾ける。
「ちょっとちょっと相澤君、なに自分だけ理解した風になってるの!」
「彼女、渡我被身子は恐らく生れ持っての破綻者の可能性があるってことですよ」
「抑圧され続ければ、ヴィランになる可能性だってあったと言う事かい?」
オールマイトの言葉に茶虎は深く頷くと、その言葉に付けたすように口を開く。
「はい。正直、ここまでヒミコが吸血衝動に囚われなかったのは奇跡に近い気がします。だからこそ、俺とお茶子の血液しか摂取させないつもりです」
「でも、それは抑圧にはならないのかね?」
「だから、ヒミコと一つ約束してるんです。俺を倒せたら、好きなだけ血を飲ませてやると」
「おい。麗日、お前……」
相澤先生の厳しい目がこちらに向く。その後に続く言葉を遮るように続けた。
「昔はそこまで考えていませんでしたが、それを背負って生きる覚悟はとっくにできてます。それに一生負けるつもりはありません」
精一杯、相澤先生の目を見ながら伝える。
「合理性に欠ける……が、そこまでの覚悟があるなら良いだろう。その条件を飲んでやる。ただし、もし渡我がヴィランになるようなことがあれば俺は容赦なく捕まえるからな」
「わかりました」
「後、これは本題にするつもりだったんだが」
相澤先生は頭を掻きながら疲れたように口を開いた。
「麗日、お前妹と渡我に甘過ぎる。自分の事よりも二人を優先させようとしてるだろ、そんなんじゃヒーローになれないぞ」
その言葉に口の端が勝手に持ちあがった。
「相澤先生」
「なんだ?」
「自分の大切な者を守れない人間が、見ず知らずの人を守れる。そんなことあるわけないんですよ、自らの大切な人を守り、見ず知らずの困っている一般市民を助ける。それが俺の目指すヒーローです」
茶虎の言葉に相澤先生が笑いをこぼす。
「だったらせいぜい頑張るんだな」
そう言いながら手のひらをひらひらと振って職員室の方へと歩いていく相澤先生。その背中を見つめているとオールマイトに肩を叩かれた。
「素晴らしい!立派なヒーローになるために、励めよ麗日少年」
「俺も、あなたみたいな立派なヒーローに……いや、貴方をも超えるヒーローになるつもりです」
今日、この言葉が現実になるように心の中でもう一度決意を新たにした。