僕のヒーローアカデミアー麗日お茶子の兄ー   作:トガ押し

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第16話 屋内戦闘2

「こんな序盤で使うつもりなかったです」

 

 そういいながら唇に付着した血液をなめとるヒミコ。振り下ろした大剣をヒミコは短刀で受け流し、こちらを見つめる。重力から解放された直後だというのに、立ち上がり切れてないお茶子とは違い素早く反応するヒミコはそもそも戦闘センスがあるのだろう。

 

「こんな簡単に抜けられるとは、思ってなかったよ!」

 

 地面に触れる瞬間に今度は振り上げるが、それもヒミコの短刀を弾くまではいかなかった。だが、隙を作らないように振り上げた威力を殺さずに構えなおす。

 

「キャラが崩れてるです!」

 

「おっと……そうでしたね」

 

「もうそんなキャラ捨ててしまえばいいです」

 

「やっぱり、ヴィランの気持ちにならないといけないだろ!」

 

 剣を構えたままの状態でヒミコの後ろで移動しようとしていたお茶子に向けて自身の短刀を投げつけるが、それもヒミコによって弾かれてしまう。

 

「お兄ちゃん、私よりヒミコちゃんの方が強いんよ」

 

「それはそうだ、な!」

 

 空気の圧縮、開放を使いながら速度を上げてヒミコに肉薄しつつ、こちらを捕まえようと背後に回ろうとするお茶子に向けてけん制狙いで剣を振るった。

 

「当たらないよ!」

 

「だろうな!」

 

 剣の勢いを殺さず一回転する勢いでヒミコに向けて大剣を投げつける。向かってくるお茶子を投げ飛ばしてヒミコにぶつける。さすがに重力を使って重くする余裕はなかったが。

 

「なんなの!?」

 

「くっ! お茶子ちゃん!」

 

 剣をよけ、お茶子を難なく抱き留める。

 

「ガンヘッドマーシャルアーツ……」

 

「それって……」

 

「そういえば入学初日からバイトやっててな。バトルヒーローガンヘッドの事務員だ」

 

「まったく、茶虎はいつもそうですね! 気が付かないうちに強くなってる!」

 

 ヒミコの口元がニヤりと歪んだ。

 

「負けないです!」

 

「俺だって負けないよ」

 

「お茶子ちゃん大丈夫です?」

 

「大丈夫、やっぱりお兄ちゃんは強いな」

 

 お茶子がつぶやいた瞬間、巨大な爆炎が通路の向こうで起こる。おそらく、爆豪だろう。

 

「デク君!」

 

「いかせない!」

 

 緑谷のところへ向かおうとするお茶子の足止めをするべく、体を動かすが。

 

「残念です! 私もいかせないです!」

 

「やっぱりそう来るよな!」

 

 バックステップで大剣を拾いなおし、重力で体を軽くして壁面を蹴ってお茶子の前に踊り出る。なんとも、疲れるが。

 

 どうしたら、二人を上回れるか。出し抜けるか。頭の中で考えながら剣を構えなおす。

 

「やられたです! お茶子ちゃん!」

 

「うん!」

 

 ヒミコと目線を合わせたお茶子が階段の方へ向けて走り出した。しまった。

 

「最初から狙いはこれか……」

 

「ヒーローは市民を守るものです! この状況においてもっとも恐ろしいことは核兵器がヴィランの手に渡ったままであることです」

 

「ヒーローらしくなったじゃないか」

 

 出会ったときのことを思い出し、ふっと笑いが込みだしてきた。

 

「私にその道を示してくれたのは茶虎です」

 

「じゃあ、ヴィランとして相手させてもらおう!」

 

 ◇

 

「テンヤ! すまない、そっちにお茶子が言った」

 

『麗日くんが?』

 

「頼んだ」

 

 素早く通信を切って息を吐きだした。

 

「まったくやり辛い」

 

 お茶子の能力と自分の能力を交互に使用し、爆豪が爆発させたことによりできた瓦礫の破片を無重力で浮かせて重力による射出。

 

 それにより瓦礫がまるで銃弾の嵐のように茶虎に向かって降り注いでくる。

 

 もともと盾としての使用を検討していた大剣だからこそ防ぐことができるが、実際盾として考慮してなければすでに剣は折れていただろう。

 

 自分の手の内をある程度把握されている戦いがこんなにもやり辛いものだとは正直思ってもみなかった。

 

「瓦礫を射出している間に、新たに瓦礫に触れることで銃弾となる瓦礫の補充とは……考えたな」

 

 正直、今の状況では打開策が思い浮かばない。一点突破で突き破るしかないだろう。しかし、相手はヒミコだ。身体能力も高い。

 

 それにこの戦いは長引けばこちらの勝ちだが、実際お茶子がテンヤの方に向かったのが気になる。

 

 正直に言えば、お茶子をこちらに残して、ヒミコがテンヤのところに向かった方がはるかに勝率が高いだろう。

 

「それに……俺とお茶子の能力を交互に使用するのにあのアンプルは一本づつしかまだ使ってない」

 

 能力の高速切り替え。近づいた瞬間に自分の腕へと変化させることでリーチを変えられるので目算を狂わされる。かといって、さらに近づくと変化なしでのハイスピードでの迎撃。

 

「どうする……」

 

 ヒミコに見せていない武装は両腕のパイルバンカーと全身に装填したクレイモア弾だが。訓練用装備なので、弾丸はゴム製へと変えられている。

 

 リーチに関してはパイルバンカーでどうにかできるかもしれないが、次の一手が思い浮かばない。クレイモア弾をおとりにして、テンヤのもとへと駆け付けるという方法もなくはないが、その場合仮想核兵器を守りながらの戦いになるためこちらも不利だ。

 

「緑谷も予想外の動きをしてくる可能性がある……」

 

 現在の状況であれば全員1対1の状況ではあるから、最悪個々の力量が勝っていれば負ける可能性は少ないだろうが、まだ向こう側にも策の可能性が残されている。

 

「あんまり時間をかけない方がよさそうだな……」

 

 戦闘訓練開始からそろそろ10分が経過する。このままではじり貧だ。

 

「動くか」

 

 降り注ぐ瓦礫の弾丸を大剣で防御しながら進むために、両足に空気を圧縮させる。

 

 圧縮が完了すると同時に、静かにその足を踏み出した。

 

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