僕のヒーローアカデミアー麗日お茶子の兄ー   作:トガ押し

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第17話 屋内戦闘3

 間段のない攻撃をその剣を盾とすることで徐々に距離を詰める。

 

「立っていられないほどの……威力じゃない!」

 

 腕にかかる衝撃に加え、大剣からはみ出してしまった体の一部をかすめる瓦礫の弾丸。さすがに強靭な防御力を誇る鎧を装着しているため、痛みを感じるものの出血を伴うほどの怪我にはならない。

 

 さすが、雄英高校と提携しているスーツ制作会社だ。

 

「これでも、ダメですか」

 

「瓦礫のサイズを大きくしたところで!」

 

 止められないと見るや、弾丸に使用する瓦礫のサイズを大きくするヒミコ。だが、それは逆に。

 

「隙を作るだけだっ!」

 

 一瞬の隙だった。大剣を捨て、体を大きく開く。

 

「何をするんです!!」

 

「全弾持っていけっ!」

 

 

 手の中に仕込まれているギミックを作動させた。瞬間、全身に搭載されたクレイモア弾を圧縮した空気で打ち出した。隙間なく通路全体に広がるクレイモア弾に対して、ヒミコは体の前に重力の壁を展開させることによってほとんどの攻撃を防ぐ。

 

 さすがに、この程度では倒れてくれないだろう。

 

「危ないです!」

 

「ああ、だがこれで!」

 

 重力制御に集中しているタイミングでできた二つ目の隙。これが、これこそが待ち望んでいた勝機だった。

 

「パイル!! バンカー!」

 

 真正面のドストレート。圧縮した空気を一点に穴をあけることによって繰り出された杭打機は、最後の最後ヒミコの太ももにつながれたアンプルを貫いた。

 

 そう。真正面に打ち出したパイルバンカーは、ヒミコが張った重力の盾により阻まれ狙い通りに貫いたのだ。

 

「あっ!」

 

「そろそろ、制限時間だろ?」

 

 おおよそ5分。それがあの血液量からヒミコが変身の能力を使っていられる時間だ。二人分で約10分、アンプルさえ壊してしまえば、残るはヒミコの驚異的な身体能力だけだ。

 

「そして!」

 

 おおよそ能力が使えなくなったヒミコでは上から叩きつけられる重力には逆らえない。

 

 

 そう、思っていた。

 

「残念ですね! 茶虎!」

 

 そういったヒミコの口の中。唇に加えるようにして、一本のアンプルをこちらに向けて見せる。いったいいつの間に弾帯から外していたのか。

 

「くっ、なんで!」

 

「さすがに、能力の制限時間くらい私でも把握してるです。茶虎からもらった血、無駄にはしないです」

 

 にかっと口元に笑顔を浮かべて、アンプルから血を口の中へと運ぶとすぐに立ち上がっり始めた。

 

「負けないです!」 

 

「だが、もうタイムリミット……」

 

 言いかけた瞬間だった。爆音と共に天井に穴が開いた。

 

「緑谷かっ!」

 

 嫌な予感がした。チリチリとした感覚が首筋に走る。

 

「多重重力!」

 

 舞い上がる瓦礫を地面に叩きつけるように、重力を操作するが時すでに遅し。

 

「回収~!」

 

 お茶子の声が聞こえた。おそらくもうすでに、仮想核兵器は回収されてしまっただろう。

 

「ヒーローチームWIN!」

 

 スピーカーから響く、オールマイトの声。がっくりと膝をつく。自分が負けたことが無性に悔しくて、歯がゆくて、何とも言えない感情が込み上げてきた。

 

「私たちの勝ちです。茶虎! でも、個人としては勝てなかったです」

 

 そう言いながら手を差し伸べられたヒミコの手を見つめる。

 

「負けたのか……いや、負けたんだな」

 

 悔しさを押し殺し、戦術的に敗北してしまったこと。これを次につなげなければいけない。

 

「次は絶対に負けない」

 

「次は個人としても買って見せるです。茶虎の血の飲み放題はその時までお預けです」

 

 こんな時でもそんなことを考えていたのかと思わず、笑みがこぼれた。差し伸べられたヒミコの手を取り、立ち上がる。悔しさをバネにさらなる高みへ。

 

「プルスウルトラ……いい言葉だよ」

 

 誰にも聞こえない声でつぶやいた。

 

 ◇

 

 一旦ヒミコと別れて、オールマイトの後ろを歩く爆豪の頭を叩いた。

 

「……」

 

 しかし、それでも爆豪は反応することなく、どこか茫然自失といった表情で虚空を見つめていた。

 

「独断先行、対策不足、慢心。負ける理由はいくらでもあるが……」

 

「うっせぇ……」

 

「別にやりたいならそうしてくれてもいい。だが、サポートしてほしいなら言えよ」

 

「うっせぇ……」

 

「緑谷と戦いたいなら、初めからそういえって言ってんだよ!」

 

「うっせぇ! お前に何がわかんだよ!」

 

 緑谷という言葉に反応して、こちらに振り返った爆豪の胸倉を思い切り掴んだ。

 

「これが実戦だったらどうするつもりだって聞いてんだ! 私怨で一般人殺す気か!」

 

「何を……」

 

「お前はこの先に何を見据えている! 俺たちはなんのために雄英にいる! クラスメイトに勝つためか?私怨を晴らすためか?違うだろ! 力ない人たちを守れるようになるためにここにいるんだろうが!」

 

 一発、右のストレートを爆豪の頬に打ち込んだ。自分の拳が痛い。もしかしたら、これは負けた八つ当たりかもしれない。だが、そうだとしても。

 

「俺たちは今日チームだった! だったら一声かけろ! やりたいこと、できること……」

 

 そこで一呼吸入れて大声で叫んだ。

 

「俺は悔しい! お前は悔しくないのかよ勝己!」

 

「悔しいに、決まってんだろ!」

 

 大人しくしていた爆豪が同じように頬を殴り返してくる。ヒーローを目指すために一番を目指す。だからだろう、悔しさも、後悔も、同じように持っているからこそ声を荒げて、殴りあう。

 

「なんで俺が負けなきゃいけねぇんだ!」

 

 胸倉を掴んでいた左腕を振りほどかれ、右手も抑えられた。

 

「それはこっちのセリフだ馬鹿野郎!」

 

 両腕が使えないならと、フルフェイスマスクを付けていることも忘れて、爆豪に頭突きをする。

 

「いってぇ、な!」

 

 すかさず飛んでくる左のストレート。恐ろしい威力のはずなのに、それすら気にせず当たりに行く。

 

 結局、オールマイトが止めに入るまでの短い間、もみくちゃになりながら殴り合った。

 

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