私は疲れ果てていた。
ダ・ヴィンチ特製テントは偉大だった。テントでありながら、シャワーとトイレが備えつけられていたありがたみを感じる。
それがない今は全て海で済ませている。身体は塩の所為でベタベタして気持ち悪いし、昼間は降り注ぐ直射日光が酷い。幸い、アヴェンジャーが火を使えるおかげで夜の寒さはなんとかなっている。
「マスター」
夕陽を見ながら黄昏ていると、アヴェンジャーに呼ばれる。
「なに?」
「雨が来ます」
一週間目にして、私の悪運も遂に尽きたらしい。
◆◆◆
鎧を外したアヴェンジャーと私は一つの毛布に包まっていた。
「臭くない?」
「水浴びしてるだけマシです」
「そこで嘘でも臭くないって言わない正直なところは、好きだよ」
体温を奪われることだけは避けなければならないと判断したアヴェンジャーの提案で、私達は同衾することとなった。
雨は降っているが、近くで燃えているアヴェンジャーの黒い炎と布越しに伝わってくる彼女の体温のおかげで寒さは感じない。むしろ温かい。
「ねむい」
「どうぞ。おやすみなさい」
「おやすみ」
今日は久しぶりにゆっくり眠れそうだ。
◆◆◆
「マスター、起きてください」
耳元で囁かれ目を開けると、光が眩しい。
「おはよう」
「おはようございます。起きて早々ですが、こちらに近づいてくる船の気配を感じます」
船の気配がわかるって凄いな。
「サーヴァントが乗っています」
「なるほど」
道理でわかるわけだ。
「敵?」
「それはわかりませんが、戦闘態勢を整えた方が良いでしょう」
「そうだね。……私のことは気にせず戦って大丈夫だから」
「どういう意味ですか」
アヴェンジャーが底冷えするような声を出す。
「ここじゃ前みたいに逃げられないから、私を庇いながら戦う羽目になるでしょ。それだと絶対に勝てない」
「余計な気遣いです。マスターを庇いながら戦うことに負担は感じません」
「……わかった」
最悪は令呪を使おう。
「令呪を使ったら一生呪いますから」
バレてる。
◆◆◆
「おやおや、こんななにもない島に美少女が二人も居るとは、デュフフフ。黒髭、参上ですぞー!」
開口一番、船から降りてきたサーヴァント達の一人である片手がフックのオッサンが嬉しいことを言ってきた。
「アヴェンジャー、私、美少女だって」
「どうでもいいです」
「随分と肝っ玉のあるお嬢ちゃんだねぇ」
アヴェンジャーと軽口を叩き合っていると、緑色のオッサンが面倒そうな気の抜けた声を出す。
「海賊に向いてるね」
「そうですわね」
黒色の服を着た少女と赤色の服を着た少女は、よくわからない話をしていた。
「ではでは、蹂躙しますぞー!」
黒髭がふざけた声音を上げるが、その眼は本気で他のサーヴァント達も同様。素人である私から見ても強いとわかる。
ダメ元で試してみるか。
「パーレイ!」
アホみたいに澄み切った青空の下、私の声が響き渡った。