忍びの王   作:焼肉定食

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ベヒモス

あれから一ヶ月が経ったある日のこと

俺達勇者一行は、再び【オルクス大迷宮】にやって来ていた。但し、訪れているのは光輝達勇者パーティーと、小悪党組、それに永山が率いる男女五人のパーティーだけだった。

理由は簡単だ。話題には出さなくとも、ハジメの死が、多くの生徒達の心に深く重い影を落としてしまったのである。〝戦いの果ての死〟というものを強く実感させられてしまい、まともに戦闘などできなくなったのだ。一種のトラウマというやつである。

結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティーと小悪党組、永山重吾のパーティーのみが訓練を継続することになった。そんな彼等は、再び訓練を兼ねて【オルクス大迷宮】に挑むことになったのだ。今回もメルド団長と数人の騎士団員が付き添っている。

 今日で迷宮攻略六日目。

現在の階層は六十層だ。確認されている最高到達階数まで後五層である。

 

目の前には何時かのものとは異なるが同じような断崖絶壁が広がっていたのである。次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。それ自体は問題ないが、やはり思い出してしまうのだろう。特に、香織は、奈落へと続いているかのような崖下の闇をジッと見つめたまま動かなかった。

 

「香織……」

 

 雫の心配そうな呼び掛けに、強い眼差しで眼下を眺めていた香織はゆっくりと頭を振ると、雫に微笑んだ。

 

「大丈夫だよ、雫ちゃん」

「そう……無理しないでね? 私に遠慮することなんてないんだから」

「えへへ、ありがと、雫ちゃん」

「気張るな。困ったことがあればすぐ相談しろよ。」

「それはこっちのセリフよ。あんた一回倒れているんだから。」

 

と雫の言葉に苦笑してしまう

事実働きすぎの疲労とリリィの証言で俺が裏で動いていることが雫にバレ。俺は説教プラス恵里に監視付きのさらに膝枕をされる羽目になった。

 

「香織……君の優しいところ俺は好きだ。でも、クラスメイトの死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、南雲もそれを望んでる」

「ちょっと、光輝……」

「雫は黙っていてくれ! 例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ。……香織、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。香織を悲しませたりしないと約束するよ」

「はぁ~、何時もの暴走ね……香織……」

「あはは、大丈夫だよ、雫ちゃん。……えっと、光輝くんも言いたいことは分かったから大丈夫だよ」

「そうか、わかってくれたか!」

 

 光輝の見当違い全開の言葉に、香織は苦笑いするしかない。

俺は頭を抱え少し胃がキリキリしてきた胃痛薬を取り出す。もはやストレスは薬で解決するしかないのだ。

最近俺はパーティーや貴族との会談でかなり神経を使っており、よりによって10代くらいの女性にハニートラップを仕掛けられているのだが全くの無反応でないと雫と恵里が物凄く怖い表情で俺を睨んでくるので絶対に引っかからない自信がある

 

「香織ちゃん、私、応援しているから、出来ることがあったら言ってね」

「そうだよ~、鈴は何時でもカオリンの味方だからね!」

 

光輝との会話を傍で聞いていて、会話に参加したのは中村恵里と谷口鈴だ。

 

「それと快斗くん薬最近飲みすぎだよ。」

「……そうでもしないとストレスでハゲるのと胃痛が治らないんだよ。」

「…あんた本当に一回休みなさい。」

「まぁ、後少ししたらホルアドに帰るからな確か皇帝陛下の謁見のため戻るらしいし当分は休めないだろうなぁ。」

 

と苦笑する。

 

「うぅ~、カオリンは健気だねぇ~、南雲君め! 鈴のカオリンをこんなに悲しませて! 生きてなかったら鈴が殺っちゃうんだからね!」

「す、鈴? 生きてなかったら、その、こ、殺せないと思うよ?」

「細かいことはいいの! そうだ、死んでたらエリリンの降霊術でカオリンに侍せちゃえばいいんだよ!」

「す、鈴、デリカシーないよ! 香織ちゃんは、南雲君は生きてるって信じてるんだから!」

「……」

 

俺は少し息を吐く。 鈴が暴走し恵里が諌める。それがデフォだ。

何時も通りの光景を見せる姦しい二人に、楽しげな表情を見せる香織と雫。ちなみに、光輝達は少し離れているので聞こえていない。肝心な話やセリフに限って聞こえなくなる難聴スキルは、当然の如く光輝にも備わっている。

 

「恵里ちゃん、私は気にしてないから平気だよ?」

「鈴もそれくらいにしなさい。」

 

香織と雫の苦笑い混じりの言葉に「むぅ~」と頬を膨らませる鈴

 

「でも降霊術苦手な檜山のパーティーの女子がいただろ?恵里まだ克服はできなさそうか?」

 

俺は聞いてみるとすると恵里はにがい顔をしながら頷く

 

「うん。倫理的な嫌悪感がまだあるみたい。」

「……まぁそうか。」

 

俺は頭を掻くと

 

「んじゃ行くか。」

 

俺は声を出し先頭で吊り橋を渡っていく。

そして俺に続き雫も覚悟を決め歩き始める

一行は特に問題もなく、遂に歴代最高到達階層である六十五層にたどり着いた。

 

「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

付き添いのメルド団長の声が響く。

 

そしてとある広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がったのだ。赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。それは、とても見覚えのある魔法陣だった。

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

 光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

「別個体だろ。魔物は恐らく魔力溜まりによる過剰な魔力の副産物だ。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にあるだろ。」

 

俺はあっけらかんに答える。俺はこの一ヶ月間なにもしてなかったわけではないギルドの依頼で高難易度な依頼を幾度もなくクリアして冒険者ランクを早すぎる金ランクまで実力だけでクリアしたのだ

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

 龍太郎も不敵な笑みを浮かべて呼応する。メルド団長はやれやれと肩を竦め、確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべた。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

 咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが光輝達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。

とみんなが戦闘準備をし始めた時には俺はもう

 

斬り終わっていた

 

「……ん?もう終わり?」

 

気配遮断と最近覚えた隠蔽。死角からの攻撃によりステータスの関係上俊敏と筋力、そして身体強化を使って無防備なベヒモスにちょうど10回の斬撃を与えたのだ

寝る間も惜しまず努力して技能を挙げていき、今や前衛では光輝やメルド団長を上回るくらいの攻撃力、元からあった剣の才能、実践の知識などを含め一種の極みに達していた

ついでに今のステータスはというと

 

 

原口 快斗 17歳 男 レベル:51

天職 王

筋力 540

体力 540

耐性 540

敏捷 1800

魔力 540

魔耐 540

 

技能 剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+連撃][+威力向上][+無拍子][+瞑想][+精神統一] 忍術[+小太刀][+毒物生成][+身代わりの術][+無音歩行][+高速移動][+分身の術] 体術[+身体強化][+部分強化][+集中強化][+浸透破壊] 回復速度上昇[+高速回復][+免疫上昇][+戦闘時回復] 気配遮断 気配感知[+特定感知] 壁歩[+効果継続大〕 投擲術[+必中][+威力拡大] [+複数展開] 統率[+範囲拡大][+育成][+忠誠心] 人心掌握 幻影魔法適正[+消費魔力減少]][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]限界突破[+覇潰] 毒耐性 女難 苦労人 言語理解

 

となっている

 

「「「……」」」

 

全員がこっちをみる中誰もが俺の方から視線を離さない

 

「……やりすぎだよ。」

「ん?だって明らかに剣を抜くの遅かったしな。召喚された直後はモンスターも一瞬の硬直時間があるしな。」

「……はぁ。そういう問題じゃないでしょ。」

「できれば私たちも戦いたかったかな。」

 

苦笑いしながら香織が苦笑する

 

「悪いな。ただちょっと雑魚すぎた。」

「多分それは快斗くんだけだよ。」

「まぁいいわ。それほど快斗は強くなっているのだしね。」

 

苦笑するとベヒモスをみる

 

「……んじゃ。解体っと。」

「なんか楽しそうだね。」

「お前もな。ベヒモスのツノもらってこ。もしかしたらナイフの頑丈なものできるかもしらないしな。」

 

恵里と軽口を叩く。そしてぽかんと未だに立っている光輝たちを尻目に戦利品の回収を行うのだった

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