忍びの王   作:焼肉定食

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原作前
出会い


「グッチ。今日遊ばないか?」

「ごめん。今日道場あるから」

 

僕は掃除のほうきでゴミをチリトリの中に入れる

 

「そっか。でも全国大会が近いもんな。すげぇな!!天之河を倒しての全国大会だろ?」

「あのいけ好かないやろうに一本とったのは最高だったな」

「ざまぁ見やがれ」

「あはは。そんなつもりはないんだけど」

 

僕は苦笑いしてしまう。

一緒の道場に通っている僕は遠目でしか見ていないんだけど、天之河くんは正直苦手だけどそこまで悪い人ではないと思う。

でもみんなは女子からモテている所為なのかは分からないけど、どうやら目の敵にしている人が多いんだよなぁ。

 

「でも天之河くんは運動や勉強ができてかっこいいからモテるんだと思うよ。僕は剣術を習っているけどそこまで運動も勉強も得意じゃないし。それにそこまでかっこいいわけじゃないし」

「本当理不尽だよなぁ〜。でもグッチには俺たちがいるからな」

「グッチは神様異論は認めん」

「……小林くんそれどこのネタ?」

 

するとワイワイ話していると僕は時間を見る。時刻は四時を過ぎた辺り。剣道は五時からなのでもうそろそろ道場に向かったほうがいいな。

 

「ごめん。もう行くよ」

「じゃ〜な〜グッチ。掃除手伝ってくれてありがとう」

「本当女子は何やってんだか」

「そうだよなぁ。どうせ天之河のところに行っているんじゃね?」

「本当先生も女子には甘いし。何で俺らばっか」

 

するとブーブー文句を言っている人たちをほっといて僕は急いで帰宅するために帰りの帰路へとつく。

そして教室からでたときに数人の女子が通り過ぎる。

 

「あの子調子に乗っているよね」

「本当。地味なくせに何で光輝くんのそばにいるんだろう」

 

この学校は比較的女子が強い傾向にある。

男子に一人スターがいるために一つの塊ができていたのだ。

小学三年生に上がって後少しで夏休みに入ろうとしていた。

夏のせいか未だに陽が高く暑さで学校の外に出るのが嫌になる

そうして階段の近くの教室を通り過ぎようと思った時だった。

 

「ひっく」

 

すると泣き声が教室で聞こえてきた。

そこは空き校舎の一室ですでに帰っているはずの教室。明かりもすでに消えていて、真っ暗な教室から啜り泣く声が聞こえてきただけだった。

 

「……」

 

足を止めると啜り泣く声が聞こえてくる。

僕はどうしようかと考える前にその教室に入るとそこには一人の女の子がいた。

泣いているの所為かドアの音が聞こえなかったみたいだった。

しゃがみこんでいるから見えずらいが目からは涙が出ている。

静かにドアを閉じると僕は女の子に近づく

 

「……どうしたの?」

「……えっ?」

「大丈夫?」

 

座り込んで話しかけてみると僕の方が少し高いので上目づかいで僕を見る

顔を上げる女の子はどこか夕日が背後で涙の雫が輝いている

顔つきは整っていているのもあってとても幻想的に見えてしまい見とれてしまう

 

「……誰?」

 

すると女の子の声で僕は意識を戻す

 

「僕は三年四組の原口快斗です。」

「快斗くん?」

「うん。君は?」

「……八重樫雫。」

「八重樫さんか。……どこか怪我したの?」

「えっ?」

「いや。八重樫さん泣いていたから。もしかしてどこか痛いのかなって。」

 

僕が聞くとキョトンとしたように八重樫さんは俺の方を見る

 

「……八重樫さん?」

「えっ。あっ。うん。何でもないの。」

「……嘘だよね。」

 

僕は少し強い口調で答える

するとぎょっとしたような顔をする八重樫さんに少しだけ苦笑してしまう

 

「お節介かもしれないけど。八重樫さん泣くほどのことがあったんでしょ。さすがにそれで何もないっていうのはちょっと無理があるかな。まぁ大体は分かるけど。」

「えっ?」

「……いつから?」

 

遠回しに聞いてみる。八重樫ってどこかで聞いたことある名前だとは思ったけど。正直記憶はよくないほうだし思い出せない。

それでもさっきの女子の会話から大体予想はついていた

 

「……二年生のころから。」

「……そっか。」

 

僕は少しだけ目を伏せる

しばらく無言が続き僕たちは少し地べたに座りながら少しだけ考える

カチカチっという音が聞こえ僕は少し自重気味に答えた

 

「僕も同じだよ。今、女子から結構悪口言われているんだ。」

「えっ?」

「……4月から本格的に剣道を始めたんだ。元々お父さんが剣道やっていたからお父さんが入っていた剣道場に入ったんだけど。普段は勝てないんだけどその試合で天之河くんに勝っちゃって。」

「光輝に勝ったの?」

「うん。お父さんに小学生のころから教わっていたから。」

 

国体っていう大会に出て優勝経験があるらしく、ぼくのお父さんが自慢げにぼくに話してくれる。

 

「だから不正だとか。卑怯者ってブーイングを浴びせたりしてくるんだ。今も時々不幸の手紙とかロッカーに入っているよ。」

「……酷い。」

「まぁ天之河くんはモテるから。それとは違ってぼくは剣道くらいしか特技がないからね。」

 

実際それだけの違いはあると思っている

 

「……快斗くんは辛くないの?」

「…まぁ、ぼくは友達がいるからね。正直どうでもいいかな。元々ぼくのクラスは男女仲最悪だったし。」

「……でも、私は。」

 

八重樫さんは少し落ち込んでいる。多分八重樫さんには頼る人がいないのかもしれない

 

「……八重樫さんさえよければぼくが話を聞くよ。」

「えっ?」

「正直僕は苛めを無くすことはできないし、もしかしたらいじめがひどくなるかもしれない。でも、少し話をすれば楽になると思うんだ。」

「……できないの?」

「正直言ったらなんだけどこういうのって気にしないのが一番だと思っているんだ。反応したり何か暴力なんかふったら相手の思う壺だし。それに僕はヒーローじゃないからね、なんでもはできないよ。余計に八重樫さんのいじめがひどくなるかもしれないしね。」

 

ヒーローじゃない。

その一言を言った途端八重樫さんは少しは驚いていた。

何で苛められたか理解はできる。

でも解決やちゃんとしたことはやっぱり僕にはできないだろう。

自分のことくらい分かっている

 

「……でも話を聞いたり、八重樫さんの側にいることはできると思うよ。まぁ、気休め程度だと思うけどね。」

「……えっと、どうして?」

「僕が八重樫さんと友達になりたいから。」

 

正直に答える。

 

「それだけじゃダメ?」

「……ううん。ダメじゃないけど。」

「そっか。んじゃここにいたら先生に怒られちゃうから帰ろう。」

「うん。」

 

時間を見るとすでに五時を回っており既に道場には遅刻が確定している

……師範に怒られるだろうなぁ

そんなことを思いながら僕は帰路についた


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