忍びの王   作:焼肉定食

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壊して欲しい少女の応援

ハジメと別れたその夜俺は適当に食べ物とジュースを持って夜中に外に出ていた

綺麗な月が空に浮かんでいる

 

「月に叢雲、花に風って言葉を知っているかい?」

 

すると恵里の声が聞こえてくる。今日呼ばれた理由は分からないが何か重要なこと

 

「よいことには邪魔がはいりやすく、長続きしないもののことだっけか?」

「正解だよ。」

「なんか食うか。適当に用意したけど。」

「ううん。少し話したいことがあったから。」

 

まぁそうか。だから俺を呼んだんだよな

 

「んで、何のようだ?相談なら乗るけど。」

「……」

「ん?」

「……ちょっと隣座ってもいいかな。」

「いいけど。本当にどうした?なんか変だぞ。」

 

どろっとした感情がないっていうか

熱っぽい視線であることには変わりはないけど、どこかいつもの恵里とは違う気がする

 

「……本当に僕のことよく見ているよね。」

「見るっていうことが癖になっているんだよ。少し間違うと壊れる奴がずっと近くにいたからな。」

「…雫かやけちゃうねぇ〜。……やっぱり雫のことが好きなのかな?」

「好きだぞ。」

 

俺はあっさりと答える

隠していても仕方ないしな

恵里もおそらく分かっていたのだろう。そっかといい俺の隣に座ってくる

 

「…やっぱり僕はダメなのかな。」

「分からん。正直なところ俺は恵里のことは嫌いじゃないし俺は恵里のことは好きな方だぞ。」

「……壊れているのに?」

「壊れているなら治せばいいし、不良品を集めるマニアだっているんだぞ。ガラクタだと思ったらちゃんと価値のあるものなんていくらでもある。……俺の中では恵里も大事な人の一人なんだよ。クラスメイトでいうならハジメのちょっと上くらいか?」

「それは結構な高評価だね。はぁ。こんなことでも嬉しくなるって本当に恋って気持ち悪いよね。」

「……恋は病気ってよく言うもんな。確かにお前にとったら気持ちが悪いものかもしれないな。」

 

俺も苦笑する。でも同じ恋をする身から

 

「でも、悪いものではないだろ。」

「そうだね。嫌なことではないよ。」

 

たった短い呼びかけに肯定する。恵里は少し呆れたようにそして拗ねたようにしながら

 

「……それでもあっちに戻ったら僕も一緒にいるって思っているんだね。」

「ん?違うのか?」

「酷いね。振るんだったら見捨ててくれたら少しは楽になるかもしれないのに。光輝くんでさえ見捨てたんだよ。壊れているんだよ。食事に毒だって入れていたんだよ。それなのにいつも側にいて。気遣ってくれて。頼ってくれて。僕を見てくれて。」

 

震える声が聞こえてくる。とりあえず俺はずっと聞き続ける

恵里の声を。恵里の想いを

 

「ずっと一人だったのに。僕はずっと一人だったのに。こんなに苦しいのならば一人の方がよかったのに。」

「……」

「……どうして僕をそんなに守ってくれるの。何で僕を壊してくれないの。」

 

嗚咽が聞こえてくる。やっぱりか。

俺は大体予想ができていた

恵里は壊れたかったのだ。

俺と会った時確かに恵里は壊れていた。今でも壊れていると思っていることもあるし結構ブッとんだ発言をすることが多い

……おそらくそれを意図的にやっていることも気づいている

それでも

 

「俺には恵里を見捨てるって選択肢はない。」

 

俺は断言する

 

「一応これでも恵里のことは知っているつもりだし一応俺の家に住んでいるんだぞ。言っとくけど俺は面倒臭いんだよ。一度気にかけた人物なら最後まで面倒を見るのが当たり前になっているんだ。お前も一度関わったから縁が切れるまでは見捨てない。そう決めているんだよ。光輝があんなんだろ。だから後々被害が強くなる人も結構見てきたし、実際に虐めが強くなった人だっていたしな。俺だって小学校のころは女子から虐められていたんだぞ。」

 

多分あの時からだ。あの時味方になってくれたクラスメイトの声が嬉しくて、もし困った時でも一人になっている人がいるのなら支えてやろうと思ったんだ

俺が御節介とか苦労人って呼ばれるようになったのは

 

「俺は絶対に友達を見捨てない。相手にうざがられようが嫌がられようが関係ない。絶対に一人になんかさせてたまるか。」

「……そっか。」

「まぁ恵里はちょっと踏み込み過ぎている気がしないでもないけどな。それでも俺の家に居座っている間はちゃんと居場所を作ってやる。つーか……さすがにあんだけ長く同居生活してたらもう一人の友人ではなく家族として扱っているからな。」

 

俺が少し苦笑し少し頭を撫でる

 

「……はぁ。本当にお人好しがすぎるね君は。」

「それが俺だしな。苦労人って呼ばれるのは嫌いじゃないんだ。」

 

まぁ、わけのわからないトラブルや異世界転移に巻き込まれるのはもってのほかだけど

 

「うん。僕……私ももう少し色んなことに頑張ってみようかな。日本に戻ってもずっと近くで見てくれる人がいるし。」

「まぁ、家族としてだけどな。」

「……今日のところは雫に譲るけどそれでも諦めないから。もうみんなにはバレちゃったしこれから覚悟しておいてね。快斗くん。」

「あんまり誘惑してくんなよ。」

「大丈夫そうなったら雫と鈴と分け合うから。」

「俺はケーキかなんかかよ。」

「こっちだったら重婚できるのだよね?それなら私たちにも勝機はあると思うんだよね〜。快斗くんの性格から言ったら断ることなさそうだし、多分雫の許可を取れたら多分受け入れるだろうし。」

「……」

 

やばい。こいつ完全に吹っ切れやがった

元々こいつの思考の回転力や発想力は明らかにピカイチで妙に鋭い意見をしっかり答えることができる

……そしてほぼ正確に俺のことを言い当てられていた

 

「……私絶対諦めないから。絶対に逃がさないよ。」

 

軽く舌を出し俺を熱っぽい視線で見てくる。

でもさっきまでとは違い粘っこいや気味の悪いものではなくただ一人の女子みたいに純粋で本当に恋する乙女だ。

こりゃ逃げられないかもな

俺は地球に戻ってもトラブルに巻き込まれるんだと思うと少しため息を吐くしかなかった。

 

 

 

しばらく待つと雫がこっちに向かってくる

というのも雫から言われて少し話せないかと言われたのだ

自然と俺の隣に座りいつもよりも近くにいるような気がするがまぁ無視していいだろう

 

「終わったか?」

「えぇ。」

「どうだった?」

「それはもう凹んでいたわ。ずっと自分の物だと思っていた香織が南雲くんに取られたのだもん。」

「あいつ恐らく香織のことが好きだったからな。まぁしばらくは落ち込んだままだと思うけど。」

「それに完全にあなたに協力する人が多くなったわけだし、仕方ないっていったら仕方はないと思うけど。」

「……まぁそうか。でも光輝のせいで俺たちの最初の目的が変わっていたからな。」

 

すると少しため息を吐く。

 

「…まぁ。俺のことについてなんか言っていたか?」

「えぇ。人殺しのくせにみんなを誑かしてとか恵里や鈴のこと、それとわたしのこととかね。」

「……そっか。」

 

俺は少し苦笑する。

 

「……やっぱり合わないよな。俺は別に嫌いって訳じゃないんだけど。」

「えぇ知っているわ。ただ。相性が悪いだけだから。」

「お互いに統率者だもんな。普通なら女子があいつで男子が俺って別れていたから。」

「最近鈴や恵里、辻さんがあなたの味方になったから剥れているだけよ。すぐにいつもの光輝に戻るわ、」

「いつもの光輝に戻ったらダメだろ。ちゃんと現実を見れる光輝にならないと。」

「……いつもよりも辛辣ね。」

「さっき恵里と話してきたばっかりだからな。……あいつだって光輝の被害者の一人だよ。」

 

俺はジュースを飲むとすると苦い顔をする雫

 

「そういえば自殺行為って。」

「あいつが俺の家に住み込んでいる問題と関係あるからな。あんまりいい話じゃねーぞ。」

 

恵里には許可を取っているので話し始める

 

「あいつの家結構やばいんだよ。今母親も父親も娘に暴行を加えたとして逮捕されている。母親が恵里をDV、今の父親は娘にレイプ未遂をしてな。」

「えっ?」

「一応探偵であいつの事件について警察から依頼が来たんだよ。元々5歳の時に前の父親が恵里を庇って死んだんだってさ。」

 

そして後々恵里から聞いた情報も合わせて話していく

あいつの中学生時代の事件。暴行事件。多分初めて話した橋での話や。そして探偵の手伝いをした俺が証拠を見つけて恵里の母親を逮捕の原因になった話を。

そして話終わると

 

「……あんたどれだけ巻き込まれたら済むのよ。」

「知るか。俺だって巻き込まれたくて巻き込まれる訳じゃないんだぞ。」

 

第一声の呆れた口調に俺は苦笑いしながら答える

 

「…まぁ、あなたらしいっていえばあなたらしいけど。」

「まぁ出来るだけ隠してきたからな。あいつ自分の欲であれば魔人族に裏切ってもおかしくはなかったし。」

「裏切るってまさか。」

「ありえるだろ。あいつの天職は降霊師だ簡単な会話くらいならできるのを俺は見ているからな。まぁ裏切ったら裏切ったで俺は助けると思うけどな。」

「……本当にあなたらしいわ。」

 

多分俺のお人好しのところを言っているんだろう。

 

「まぁな。まぁついでにあいつは今日堂々と告白してきたから。」

「……」

「ついでに断ったからな。」

「何でそれを私に?」

「お前自分の顔を鏡で見てみろ。明らかにニヤついているぞ。」

「えっ?」

 

すると顔をペタペタと触る雫に苦笑する

でも顔が緩み明らかに機嫌が良さそうだ

 

「……幼馴染って残酷だよな。相手の知らなきゃよかったことですらわかってしまう。だから光輝や龍太郎。雫に香織の好きな人は分かってしまうし。」

「私のも?」

「分からないと思うか?というよりも分からない振りをするの大変なんだぞ。お前の親父さんに頼んだとか言われるし。」

「……」

 

するとかぁ〜と顔を真っ赤にする雫

 

「……いつから気づいてた?」

「多分小学生最後の学芸会かな?お前から初めて俺にお願いしたからな。光輝だと思っていたから完全に油断してたけど。」

「……懐かしいわね。」

「俺が騎士でお前がお姫様役。香織の支援もあって過去一の反響だったらしいぞ。あの時のビデオ今でも小学校で見られているらしいし。まぁ騎士役なんてやりたくなかったけどな。」

「クラスメイトの男子が進めてきたのだったわよね。」

「でもあの時の女子の顔かなり傑作だったよなぁ。雫完全に似合っていたし。あれからじゃないか?確か雫が告白増え始めたのって。」

「あんたもでしょ?」

 

と雫はいうけど俺はそうでもなかった。

 

「俺は光輝の影に隠れていたしな。あの時の主役は完全に雫だったよ。まぁその時の香織の暴走でなぜか俺がお前に告白するシーンをアドリブで入れられたんだよなぁ。その時まんざらじゃなかったのを見てもしかしてって思い始めた。」

「そんなに分かりやすかったかしら。」

「お前が香織センサーをついているみたいに俺には雫センサーがついているし、それに香織だってハジメセンサー付いていたっぽいだろ。大体の雫の考えていることは分かる。というよりも俺も小学生の頃から雫一筋だったしな。」

「…えっ?」

 

驚いたように俺を見る。いやマジで?

俺結構分かりやすかったと思う

 

「気づいてなかったのか?」

「い、いつから?」

「多分一目惚れ。あんまり思い出したくないかもしれないけど。泣いている時の笑顔がすごく綺麗だったんだよ。あの時は自覚なかったけど、俺も学芸会の時に俺も気づいたし。あん時雫がなんというか。可愛すぎて。」

 

あの時の雫は本当に破壊力が高すぎた。その場にいた香織が抱きつき男子の大半が鼻血を流してしまうほどに威力が高かったといえばその大惨事がわかるだろう

 

「雫のことが好きです。」

 

そして俺は自然とその言葉を。自分の想いを告げた

 

 

「多分、これからも迷惑をかけると思うし俺が持って来たトラブルに巻き込まれるかもしれない。でも、ずっと俺のこの先の人生を支えて欲しいし、支えていきたい。頼りないかもしれないけど。それでも。ずっと隣にいてほしい。」

 

だから

 

「好きです。俺の彼女になってくれませんか?」

 

 

笑って、笑顔でちゃんと言い切ることができたと思う。

告白するって気持ちはなかったけど、

それでも

『今日のところは雫に譲るから。』

 

この言葉で言うならば明日からはおそらくこういう空気になったのなら恵里が全力で邪魔してくるだろう。

何となくわかる。

あいつは俺と住んでいた時でも欲しいものは容赦はしない。

特別でなくて俺のそばにいたい。

彼女になりたいと思っている以上多分どんな手を使っても掴んでくるだろう

 

多分俺の応援なのだ。今まで気持ちを伝えてこなかった。

まぁお互いに恋愛に関しては草食系なだけあってお互いに遠慮がちになっていた。

 

「……」

 

目からは潤んだ視線でそして一度頷くのが見える。

 

「えぇ。私も好き。ずっと好きだった。」

 

すると軽く座りながら抱き寄せる。雫はもちろん抵抗せずにただ抱きしめられた

 

……暖かくどこかホッとする。その雰囲気が心地よく。そしてどこか柔らかい気がした

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