忍びの王   作:焼肉定食

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救出

雫side

 

あれからどれ位の時間が経ったのか分からない。

今私と愛子先生は薄暗く明かり一つ無い部屋の中に鋼鉄造りの六畳一間、木製のベッドにイス、小さな机、そしてむき出しのトイレというどう見てもどう見ても牢獄にしか思えない部屋のベッドの上で二人は座っていた

この部屋に連れて来られて三日が経とうとしている。

 私たちの手首にはブレスレット型のアーティファクトが付けられており、その効果として全く魔法が使えない状況に陥っていた。それでも、当初は、何とか脱出しようと試みたのだが、物理的な力では鋼鉄の扉を開けることなど出来るはずもなく、また唯一の窓にも格子が嵌っていて、せいぜい腕を出すくらいが限界であった。

 

「……私の生徒がしようとしていること……一体何が……」

「愛子先生……。」

 

 僅かに顔を上げた愛子が呟いたのは、攫われる前に銀髪の修道女が口にしたことだ。愛子が、ハジメから聞いた話を光輝達に話すことで与えてしまう影響は不都合だと、彼女の言う〝主〟とやらは思っているらしい。そして、生徒の誰かがしようとしていることの方が面白そうだとも。

私はその時快斗が言った言葉を思い出していた

ハジメを殺そうとした犯人が分かると

 

……もしその犯人が動き出そうとしているのなら

 

快斗は気づいているはずだ。その狙いが快斗であることも。

きっと、あの銀髪の修道女が何かをしたのだと愛子は推測していることを聞いた。彼女が言っていた、〝魅了〟という言葉がそのままの意味なら、きっと、洗脳かそれに類する何かをされているのだ。

 クラスメイトや友人にどうか無事でいて欲しいと祈りながら、思い出すもう一つの懸念。それは、〝イレギュラー達の排除〟という言葉。意識を失う寸前に聞いたその言葉で、私は二人の少年を思い出していた。

一人は親友の想いびとで私の彼氏の親友である南雲ハジメ

そしてもう一人はいつも私が困った時は助けてくれる。私の誇りでできれば今回だけは助けに来てきて欲しくない人物。

しかし逢いたい気持ちに押されて、ポロリと零すように彼の名を呟いた。

 

「快斗。」

「…………南雲くん」

「何だ先生?」

「助けに来たぞ。雫。」

「「ふぇ?」」

 

 半ば無意識に呟いた相手から、あるはずのない返事が返ってきて思わず素っ頓狂な声が上がる。部屋の中をキョロキョロと見回すが自分以外の人などいるはずもないのだが声の先にした方からはほっとしたような快斗と南雲くんと一緒に立っていた。

 

 

快斗side (雫sideの5分前)

 

「……物理的なトラップはないな。潜入するか」

「お前手慣れているなぁ。てかお前迷宮攻略者じゃないのに気配感知も気配遮断も俺よりも上手って」

 

俺がいつものように潜入し気配を消しながら高速で進んでいるとハジメが苦言してくる。でも

 

「俺は日本でもこういうことやってたからな。」

「……お前の家って本当に忍者なんだな。」

「俺の家っていうよりも雫の家なんだけどな。」

 

気配を隠し俺たちはそうやって潜入していく。ハジメが驚いているのはその気配の消し方であったのだがこれは俺にとって基本中の基本だ。

 

「てか王都あいつらに任せた大丈夫か?あいつら独断先行でいうことを聞かないし制御できるか?」

「…大丈夫だろ。多分。」

 

心配だなと思いながらも俺は進む。

すると気配感知じゃなくても感覚的に雫の位置は分かる。

 

「……これ病気だよなぁ。」

「……何がだよ。」

「別にってここだな。これ終わったら陽動いくから。」

「……本当に大丈夫か?」

「大丈夫さ。例え神が敵だろうが俺は俺の道を進むだけ。例え敵がお前並みの強さでも変わらない。敵なら殺す。大切な人は守る。それだけだろ。」

 

ハジメは少しだけ苦笑してしまう。実は夜間にユエさえいないときに模擬戦をやった。助けるだけならハジメ一人で十分だろうが無理やり俺も連れていくに限っては実力を見せつなければなかった。

ハジメ自身俺のことを舐めていたのもあるだろうでも、その一瞬がハジメの唯一の負ける敗因になった。

たった一瞬でハジメの服を手裏剣が切り裂いた。いつ投げたのか分からなかったのだが手元がハジメに向けられていることから初動のない攻撃であることだけを気づいている。

殺意も視線も気づいていただろう。

ただ初動が全くなかっただけで動けなかっただけのが意外だったから

殺し合いであれば殺されていた

その事実に衝撃を覚えたらしい。

実はこれは至って簡単で相手の絶対動けない波長に合わせたのだ。

俺の対人戦はハジメと同等、いや明らかに一対一では俺の方が強い。

 

なぜなら俺は地球のころから戦闘慣れしているのだ。

 

明らかに地球でも殺し合いに近い何かをやってきた身であり人を傷つけるのを慣れている。

それどころかただでさえ化け物に近いレベルに強い。人を殺すことに躊躇はなくただ完全に敵を殺す。

その強さが誰を守るためなのか、ハジメも鈍感ではないため気づいているだろう。

強くなりたい

小学生の時に俺が決めたこと

ずっと誰かを守れる強さを

大切な友達を守れる強さを

 

雫が困った時にいつでも頼ることができる強さを

 

そうしてやっと俺は雫の姿を確認するとハジメにもハンドサインで送る

もはや油断することなくハジメも先導する。そして辿りつき俺は少し笑顔を見せる

 

「快斗。」

「……南雲くん。」

 

すると少し俺は苦笑してしまう。そういえば前に助けにいった時も雫がかなりピンチの時だったか?

 

「何だ先生?」

「助けに来たぞ。雫。」

「「ふぇ?」」

 

驚いたような声が聞こえる。それはただに合図でしかない。

少し間抜けな顔に俺は少しだけ笑いがこみ上げてくる

 

「えっ? えっ? 南雲君と原口くんですか?えっ?ここ最上階で…本山で…えっ?」

「あ~、うん。取り敢えず、落ち着け先生。もうちょっとでトラップがないか確認し終わるから……」

「一応感知式トラップはあるらしい。一応鍵穴から出すとするなら強制的に魔力を流せば発動するから錬成以外の方法で開けるのがベストだ。」

「……さすが本職。それじゃあ壁は?」

「俺が確認したところはないな。……さすがにそこあたりは俺よりもそっちの方が詳しいだろ。」

 

 

と俺がそういえばハジメは苦笑している。

 

「なに、そんなに驚いているんだよ。俺が来ていることに気がついてたんだろ? 気配は完全に遮断してたはずなんだが……ちょっと、自信無くすぞ」

「へっ? 気づいて? えっ?」

「いや、だって、俺の名前呼んだじゃないか。俺が窓の外にいるのを察知したんだろ?」

「俺がいうのはなんだけど多分不安だったんだろ?俺がハジメに助けを呼びにきた時間を含めさらわれてから数日立っているはずだ。愛子センセ〜ってこういった風に人の前では自分の感情を隠すタイプだろうし。……まぁ一番頼れるのがハジメだったんだろうな。雫も俺の名前呼んでいたらしいし。」

「えっ?あっ。どうしてここに?」

「リリィに聞いた。一応下は香織と恵里、鈴がいるから大丈夫だと思うが。こっちもあっちもお互いに面倒なことばかりだからな。」

「でも、快斗と南雲くんが狙われて。」

 

俺は軽く雫の頭を叩く

 

「……アホ。そんなこと知っている。知っていて助けに来たんだよ。」

「……なんで。」

「ん?雫が攫われたっていうのに俺が動かないと思うか?」

 

雫がキョトンとしている。それに少し苦笑しつつ俺は雫にこう続いた

 

「何度だって助けに来るさ。お前が来てほしくなかろうが関係ねぇ。何度だって助けるし、ずっとお前の隣に居られる限りはお前の特別であり続ける。……ずっと一緒にな。」

「っ!!」

「だから時間かかった。悪い。すぐに助けにいきたかったけどそうすると俺が死ぬ可能性が高かった。……まぁ助けに来たってことで多目に見てくれると嬉しいけどな。」

 

俺は少しだけ苦々しく笑う。俺一人で行ったところでできることは限られている。だからこそハジメに助けに求めた

 

「……バカ。十分よ。」

「そっか。なら先に合流って言いたいけど……どうやら敵はそう簡単に逃してはくれないようだな。」

「えっ?」

「……なるほどいい気配の消し方だ。それでも師範に比べるとまだまだだ。ハジメ。雫をちょっと頼む。ちょっくら時間稼ぎしてくるから。」

「は?お、おい待て。」

 

俺は一人行動し自分の動きやすいところに向かう。そしてその元凶は俺の姿を見つけたのかこっちにやってくる。

 

「まさかそちらの方からやってくるとは思ってもいませんでした。」

 

鈴の鳴るような、しかし、冷たく感情を感じさせない声

代わりに白を基調としたドレス甲冑のようなものを纏っていた。ノースリーブの膝下まであるワンピースのドレスに、腕と足、そして頭に金属製の防具を身に付け、腰から両サイドに金属プレートを吊るしている銀髪の女性

 

「なるほど。あんたが神々の人形ってわけか。」

 

俺もハジメに聞いていたのでなんとも思わなかったが。

 

すると、ガントレットが一瞬輝き、次の瞬間には、その両手に白い鍔なしの大剣が握られていた。銀色の魔力光を纏った二メートル近い大剣を、重さを感じさずに振り払った銀色の女は、感情を感じさせない声音で俺にに告げる。


 

「ノイントと申します。〝神の使徒〟として、主の盤上より不要な駒を排除します」

「……へぇ〜やれるようならやってみな。」

 

それは宣戦布告だ。ノイントと名乗った女は、神が送り出した本当の意味での〝神の使徒〟なのだろう。ノイントから噴き出した銀色の魔力が周囲の空間を軋ませる。大瀑布の水圧を受けたかのような絶大なプレッシャーが押し寄せるが俺はそのプレッシャーに押されるつもりはなかった。堂々と宣戦布告を受けるとその瞬間俺はすぐさま後ろに飛んだ。

 

物が粉砕される轟音などなく、莫大な熱量により消失したわけでもなく、ただ砕けて粒子を撒き散らす。分解だろうか?

一度当たったら死ぬなこれ。

 

少し冷や汗を垂らしながら目標を見る。

そして俺にとって、そして世界の運命を決める戦いが今始まった

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