まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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ウイルスの影響凄まじいですね。大々的に報道されたからか、どこもかしこも自粛ムード。大相撲も無観客試合で不自然感パなかった。
マスクはしてもウイルス素通りだと思ってるんで作者は手洗いうがいを徹底させてます。あとアルコールも。皆様もお気をつけて。




今回のあらすじ

シャミ子は ねむっている!
桃は やみおちした!




シャミ子を救え! 魔族の覚醒と桃の決意……かくして、魔法少女は闇に堕ちる。

 

 

 シャミ子の家に来た白澤さんに、シャミ子と千代田は話す。行方不明になっているという千代田桜さんの話を。

 千代田はずっと姉の桜さんの事を探し続けていた。色んな方法で多魔市を捜すもなかなか見つからない。今はおそらくコアの状態なんじゃあないか、と。

 夏休みの自由研究で桜さんのことをプロジェクタでまとめようとしている良ちゃんがすごく気になるが、今は記憶をひねり出そうとしてる白澤さんに集中だ。

 

「桜どのとは僕も数回しか会ってない。最後に会ったのは10年前のクリスマス……喫茶店開店直前のことだ」

 

 10年前のクリスマス……それで俺は母さんの事を思い出した。確か…『10年前のクリスマス・イブに桜さんから電話を貰った』と言ってたはずだ。ただ話の脱線を防ぐため今は白澤さんの話の続きを聞こう。

 

「当時、僕はこの町に来て間もなく桜どのの斡旋で働く準備をしていた。開店準備中……桜どのは結界のバージョンアップを教えてくれたのだ。なんでも『天災らしいもの』が来ると言ってな、戸締まりをするようにと顔を出したのだ」

 

「天災………? それは、どんなものだったのですか?」

 

「さぁ……僕も詳しく聞く前に行ってしまったから分からないな。ちなみに、その時桜どのから押し付けられたのがリコくんだ。

 ……それ以降、僕たちは桜どのには会っていない」

 

「ウチの料理、食べに来てくれんかった。約束やったのに……」

 

 参ったなぁ。10年前のクリスマスに見たという証言、ほとんどちょこっと顔を出した程度じゃあないか。

 

「桜はん……どこにおるんやろ。コアは動くし探すのも難儀やなぁ」

 

「………コアって動くものなのか?」

 

「うちが見たもんはチョウチョと子猿さんだったの。どっちも味方の巫女はんに抱えられて逃げてったわ」

 

 衝撃的な事を口走るリコ。俺達は、今までコアは動かないものとばっかし思ってたので意外だ。千代田も動物形態は知らなかったみたいで、「()()()()()()()水晶の形で動かなかった」と言う。

 

 しかし……動いて逃げる「動物系」のコアか。母さんに訊けばまたなにか分かるかもしれないな。

 

「そうだ。お近づきの印にこれを……」

 

「……わー! たまさくらちゃんだ! 桃が大好きなんです!ね、桃?」

 

「……好きではないです。生活に差し障る程度に気になるだけで」

 

 それを大好きというのだぞ、千代田。

 それにしても、あのたまさくらちゃんを好き、かぁ。大ファンたる千代田の前で考えるのは申し訳ないが、俺にはちょっとその感性は理解できない。アレは特技と設定が謎すぎるんだよなぁ。バク宙からのあつあつおでんとか想像できないし、子供を洗脳するアメちゃんとかテレビで放送できるもんじゃないと思う。

 

「いやぁー嬉しいなぁ、こんな所にもファンがいるなんて。実はたまさくらちゃんをデザインしたのは僕なんだよ」

 

「店長がたまさくらちゃんの生みの親!?」

 

 ごめんなさい、生みの親の前で結構失礼なことを考えてました。こんな簡単に町のゆるキャラの生みの親に会えるとかどんな確率なの。

 俺がそんな考え事をしているうちに千代田は、シャミ子の労働力を白澤さんにたまさくらちゃん限定グッズの数々で買収される。

 

「でもどうしてそんなにたまさくらちゃんが好きなんですか?」

 

「たまさくらちゃんが……お姉ちゃんに似てたから」

 

 たまさくらちゃんとは、紅白のしめ縄のような首輪がデザインされている猫のゆるキャラである。その容姿や設定から考え出される『似てる』とは、つまり………

 

 ―――桜さんは、中毒性のアメちゃんを出せる猫耳…?

 

「千代田桜さんがわからなくなってきた……」

「なぁ千代田……桜さんって人間、だよな?」

「…似てたかなぁ」

 

「色合いとかパーツが似てるの!! 姿かたちじゃなくて! それと神原くんちょっと後でお話があるんだけどいいかな!?」

 

 ヤベェ。俺終わった。ちぎなげコースじゃないかどうあがいても。

 

「たまさくらちゃんって姉がモデルなんですか?」

 

「違う。僕は桜どのの変身姿は見たことがない。たまさくらちゃんのモデルは僕が見た妖精さんだ」

 

 白澤さんはたまさくらちゃんの元となった『妖精』とやらについて話し始める。

 なんでも、開店日にショッピングセンターマルマまで買い物に行ったとき、紅白の変わった首輪をしたネコを見たのだという。足跡がなく歩いた道に花びらが散る神秘的なネコだったそうで、白澤に一礼してから隣の建物の壁に溶けるように消えていったのだそうだ。

 

「ソレを見てから店は繁盛! あれはきっと、幸運を運ぶ妖精さんだったん―――」

 

バクさんいまの話もういっかい!!!

 

「ピエエェェェェェェェッ!!?」

 

「「「!!?」」」

 

 突然、良ちゃんが白澤さんの鼻をしぼりだした。白澤さんのとんでもない高音な悲鳴が響く。シャミ子の妹とは思えない行動にただ混乱する。

 

「り…良! お客様の鼻を絞るのは……」

 

「だって、バクさんものすごい大切なこと言ってる!

 バクさん、そのネコさんを見た日はいつ!?」

 

「か、開店日は10年前の12月28日だ……」

 

「キツネさんは『コアは動く動物型もある』って言ってた。それに普通のネコは足跡に花びらは出ないし壁に溶けるように消えたりしない……

 桜さんがあすらに来たのは10年前の12月25日……だから、そのネコさん、桜さんのコアだったんじゃないかな!?」

 

 良ちゃんのその推理で、俺を含めた全員が息を呑む。

 確かに、良ちゃんが今言ったことはほとんど当たっている。リコは動物系のコアもあると言ってたし、桜さんのコアがネコである、というのもありえない話じゃあない。

 良ちゃんは小学生とは思えないほどの猛烈な勢いでキーボードを叩き、なにかを記録したあと円柱状に丸めてあった紙を広げる。そこには、駅前のマップがこと細かに描かれていた。

 

「……地図? クオリティ高くない?」

「良の自由研究です」

「バクさん、ネコさんはどこを歩いてどの建物に行ったの?」

「ええと確か……ショッピングセンターマルマ前の噴水広場を通って、向かいの建物……」

 

 白澤さんの言葉通りに地図の上を指でなぞる。良ちゃんが指をさしたその場所とは―――

 

「―――せいいき記念病院」

 

 え、病院?

 マルマ付近の様子を思い出して……あぁ、確かにあったな、大きめのあの病院か。しかし、桜さんのコアだと思われるネコちゃんが病院に何の用なんだ?

 

「あっ……ここ、私が小さい頃入院してたとこです」

 

「「!!」」

 

 なんと、シャミ子がポロリと言ったのだ。

 しかし、どうして入院なんかしていたんだ?

 

「お姉は昔、体が弱かったんだって。おかーさんが言ってた」

「そ、そうだったのか。じゃあ、シャミ子はもしかしたらそのネコを見ていたかも知れないぞ」

「いや、ぜんぜん覚えてないです!」

 

「……私、病院で優子がネコさんの話をしたのを覚えています」

 

 その時、ずっと話に入ってこなかったシャミ子のお母さんがそう言いながらやって来た話に入ってきたのだ。ご丁寧にお稲荷さんと野菜炒めの乗った皿を持ってきながら。

 ……持ってこなくてもいいのに。

 

「ある日、目を覚ました優子が私に言ったんです。

『へやに白ネコがきました』って。『お話したけど、すぐにいなくなっちゃった』って。

 当時の優子は呼吸器も良くなかっ(アレだっ)たので看護師さんと病院を探したんですが……ネコどころか、痕跡さえも見つからなかったんです。

 時期は良子の臨月だったので…10年前の年末です」

 

『白澤の目撃情報の直後だな。それが正しければ……しゃみ子は千代田桜のコアと会っている可能性がある。しかも、何らかの会話もして、な。』

 

 野菜炒めを備えられてるゴミ先祖が言うとおり、シャミ子はもしかしたら千代田桜さんに会っているのかもしれない。もちろん確定とは言えないが、まさか、こんな近くに重大な手がかりがあるなんて思わなかった。

 

「…う〜ん、優子君の夢だったんじゃあないか?

 動物が喋るなんてありえないよ!」

『……白澤よ、それは新手のまぞくジョークか?』

「鏡見るんや、マスター」

 

 ……シュールなコントを繰り広げているあすらの二人とリリスさんをよそに、俺は一足先に失礼することにした。

 ちなみに野菜炒めは少しだけ分けてもらった。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 翌日。俺がチロルとゴミ先祖と共に千代田の部屋にお邪魔すると、部屋の主とシャミ子とミカンが集まり、シャミ子の記憶の会議を繰り広げている最中だった。

 

「……シャミ子、なに食べてるの?」

「レモンです。でも何も思い出せません。」

「うーん、マヨネーズが足りないからだろう。どれ、かけてやる。マヨネーズとレモンって、意外と会うん゛っっ」

「間に合ってる! 間に合ってるから!!」

 

 流れるように懐からマヨネーズを抜刀したらミカンに羽交い締めにされた。ふわっと柑橘系の香りが鼻をくすぐり、柔らかいものに動きを縛られる。

 

「み……ミカン…離して……離して……」

「ならマヨネーズをしまいなさい、クロ」

『柑橘馬鹿とマヨネーズ馬鹿はほっといて、シャミ子の記憶については他に手は打てぬのか?』

『打てるには打てるのだが……シャミ子の力はまぞく的に部外秘だから桃とミカンの前で説明したくなーい』

 

「リリスさん、ここによりしろチケットのおかわりがあります」

『詳しく説明しようッッ!!!』

 

 ミカンと俺がレモン・マヨネーズ論争をしている間にリリスさんが千代田に能力を買収されてた。よりしろチケットってなんぞ?千代田が依代を作る券か?

 

『シャミ子の力は「夢に潜る力」と言ったが……アレは実はものすごく噛み砕いた説明なのだ。ちゃんと説明しても多分シャミ子はついてこれないからな』

 

「大丈夫です! ちゃんとついてこれます!」

 

『余たちの能力を正確に表現すると、人・生物・無生物―――「あらゆる有情非情の無意識に侵入する能力」だ』

 

 ふむ。あらゆるうじょーひじょーのむいしきにせんにゅー。

 有情非情の無意識にせんにゅー。

 有情非情【うじょう-ひじょう】:人間や動物、植物に加えて、命を持たない石や水などを含めた世界に存在する全てのもののこと。

 

『無意識というのは人間でいうと個々の心の中のスッゴい深い所で、記憶とか先天的知識とかが蓄積されてる。余たちの一族はそこに入り込んで勝手に覗き見たり改ざんしたりできるわけだ』

 

 夢というのは、そんな無意識と入り口みたいなものゆえ、リリスさんの一族を『夢魔』とも呼ぶらしい。

 有情非情の言葉の意味と、そんなリリスさんのいう『無意識』とを考えて、俺は思った。

 

(………強すぎないか!?

 

 

 例えば、民衆一人ひとりの夢に毎晩入って、「この流行り病・不景気・社会の不安は全部現政権のせいだ」と囁けば、あっと言う間にデモ組織とテロ組織の温床が出来上がる。憎い相手が出てきたら別の人間にそいつへの憎しみや殺意を植え付ければ、勝手に不穏な芽を摘んでくれる。おまけに、能力を使った本人の両手は真っ白のまま。無意識に侵入する力だから、洗脳された本人も洗脳された自覚がなく、現実世界では足もつかないため、警察が捕捉するのはまず不可能だ。

 ありとあらゆる犯罪をリスクなく教唆できる、悪魔的な力だ。使い方次第では、国すら相手にできる。………なんでシャミ子みたいな根の優しい人がこんな力を持っているのか。

 

 でもこんなことを言うなら……俺の暗黒神の力も、余裕で世界を物理的に壊せる力なので悪魔度具合はどっこいどっこいだけどな。それに。

 

「えぇと……うじょーひじょーという、生物? むいしき? せんてんてきちしき………

 あのごせんぞ! うじょーひじょーの辺りからもう一回説明してください!」

『お主はまだそこで躓いてたのか!?

 ………つまり、だな。シャミ子の力をシャミ子自身に使えば、10年前の記憶を見ることができるかもしれない、ということだ』

 

 本人は自分の持った力の凄さに全く気づいていない。

 ホッとしたような、ちょっと怖いような。まぁ……しばらく彼女はこのままでいいだろ。

 

 

 

 シャミ子は自分自身の記憶から桜さんのコアの情報をサルベージするため、ソファに布団を敷いて寝る準備を始めた。「私の勇姿を見ているがいい!」とか言っているけど、昼寝している姿を勇姿といっていいものなのか。

 

「なぁリリスさん。うちのゴミ先祖や俺が、シャミ子がいまどこにいるかとかシャミ子の様子とかを見ることは出来ないんですか?」

『無理だな。シャミ子の身内でないクロウやラプソーンではシャミ子の夢には入れない。余のような魂の身内でないと干渉は難しいだろうな』

 

「そうですか……ねぇゴミ先祖、ゴミ先祖特有の力技でなんとかならない?」

『やったことはないが………仮に出来たとしても夢の中をマッピングした後で潜水艦のソナーのようにしゃみ子を探す、といった程度しか出来ぬだろう』

 

「……だって。どうかな、千代田?」

 

「うーん……ぶっつけ本番はちょっと怖いから、また後でね」

 

 そう言われては仕方がない。大人しくシャミ子が起きるのを待つしかないみたいだ。

 

 ―――そう思っていた。

 

 

『ま、まずい……シャミ子を見失った!』

「な!? ど、どうして……」

『本人も忘れてたいやな記憶が大量に出てきたのだ………想定外だ』

 

 リリスさんからそんな報告が出て来るまでは。

 

「シャミ子はどうなるの?」

『自分の心の深部でしばらく迷子になって……数日眠ることになる。

 その間ずっといやな記憶に追われるだろう。……初心者の夢魔にはよくある失敗だ』

「そんなのダメよ!! なんとかして起こしてあげないと…!」

 

 ミカンが眠るシャミ子を起こそうとレモン汁を振りかけるも、夢の中がすっぱくなるだけだ。そんな中、一番最初にシャミ子を助けに行こうとしたのは、やはり千代田だ。

 

「……迎えにいく方法を考えよう。」

 

『数日で自然に起きるのだぞ? 余だって助けたいのだ。だが捜索のコストを考えると―――』

 

『別に命を落とすわけでもなし、日程的にも問題ない。助けに行く必要などないだろう。エネルギーの無駄だ』

 

 リリスさんは、シャミ子を助けるのに手間がかかると、あまりいい顔をしていない。そしてゴミ先祖は、相変わらず言葉選びが最悪だ。まるで「積極的に見捨てる」と言ってるみたいだ。

 千代田が言葉を続ける。

 

「以前私はシャミ子に夢の中で助けられた……気がするんです。もしこの状況でなにもしなかったら、私はこの子の顔をまともに見れなくなる。それは嫌だから」

 

『だが、余だけで探すとそれこそ数日がかりだ。ラプソーンとクロウの手を借りても、シャミ子を簡単に見つけ出せるとは思えん』

 

『然り。潜水艦のソナーとて、万能ではない。それに我らのこのやり方は一度もやった事がないただの思いつきゆえ、安定して探すには向いていない』

 

「……じゃあ、血を出せばいいんだよね?

 何ガロン必要?」

 

『待て待て待て待て待て待て待て待て待て!! 血はやめよ!!!』

 

 千代田が杖を腕の脈に当てる真似を始めたので、流石に俺もミカンの呪いで濡れるのを構わず千代田の手を押さえつけ―――強っ!? 力つよっ!!? 押さえられない、完全に力負けしてやがるッ!?

 

「…神原くん?」

 

「ううっ、強い…力強い……………ち、千代田。いくら何でも自分の為に血をドバドバ流したって知ったらシャミ子だって千代田の顔を見れなくなるだろ」

 

「そ、そうかな……………ごめん」

 

 シャミ子は闇の女帝たらんとしているが、基本的にいい子だ―――と思う。自分のために血を流したなんて思ったら絶対に気負ってしまう。

 だったらどうすればいいかといえば、一応考えてある。

 ちょっと後が怖いけど、この際千代田とミカンの希望に答えられれば何でも良い!

 

『もしもし? あなたの小倉でーす』

 

「今ヒマか? シャミ子がピンチなんだ、助けてほしい!」

 

『……今どんな状況になってるの?』

 

 電話をかけた相手―――小倉しおんに、俺はシャミ子達が現在置かれている状況の説明を始めた。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 小倉に事情を話すと、ラボに来てほしいと言われたので、眠ったままのシャミ子を背負った千代田とミカンと共に小倉のラボを訪ねる。

 出迎えてきたのは黒いローブを纏い不気味なトリのお面を持った小倉と元気になったのだろうトリタロウ君だ。サラッと「ボクハトリダッタ…」とか言った気がしたがそんな事を気にしている場合じゃない。

 

「だいたいの事情は神原君から聞いたよ〜、シャミ子ちゃんが夢の中で迷子になっちゃったんだよね?」

 

「あぁ。何とかならないかな? リリスさんによると魂の身内にしか夢の中に入れないみたいなんだけど」

 

「なら、誰かを眷属にすれば解決だね。夢の中に行くなら、精神だけをシャミ子ちゃんの眷属にすればいいし」

 

『流石だな、小倉しおんよ。どうだ、我が軍の専属研究者になって光と闇の世界を解き明かす気はないか?』

 

「ごめんねぇラプソーンさん、それは見送ってもいい?」

 

 流れるようにスカウトしようとするゴミ先祖を振りながら、小倉はてきぱきと準備を始める。立脚つきのカメラを立て、ビンに入った謎の黒い丸薬を取り出す。

 

「属性的に神原君が眷属になるのが一番カンタンなんだけど……」

 

「私が助けに行きたい」

 

「そう言うと思ったよ。今のシャミ子ちゃんは眠ってるから精神だけ闇堕ちさせてから寝ればいけると思うよ〜。

 まずはこの丸薬を全部飲んでもらいまーす」

 

「丸薬? 毒か猛毒かどくどくヘドロじゃなくて?」

 

「丸薬だよ〜。で、次にリリスさん主導のもと千代田さんには精神だけ闇堕ちしてもらいまーす。神原君とラプソーンさんは魔力を補ってね」

 

「がってん」

 

「……で、シャミ子ちゃんを救出した後は陽夏木さんが光の友情パワーで千代田さんをもとに戻す! 過去の伝承にもあるし、この方法がオススメだよ〜」

 

『そんな方法があるとは……

 ―――しかし本当に出来るのか…?』

「でも、もし戻れなかったらその後は―――!」

「分かってる」

 

 ミカンの懸念に千代田が頷く。このやり方は、千代田の精神―――つまりコアを一時的に闇に染めるやり方。魔法少女の肉体がエーテル体の塊である以上、すぐに光属性に戻さなければ消滅する危険もあるのだという。

 

「姉のコアを取り戻すとか、そのためにこの町を守るとか……今だって諦めてないけど。

 でも、それより大事にしたいものができたから。………やれるだけやってみる。」

 

 千代田がシャミ子の手を握る。シャミ子はもう、千代田の中では大きな存在なんだろうな。

 

「それじゃあ、真夏のわくわく大実験(まつ)……じゃない、『シャミ子ちゃん救出大作戦』を始めるよ〜!」

「おいコラ小倉」

 

 そして、トリノバケモノのコスプレをした(小倉曰く中世の医者のコスプレらしい。どうでもいいな)小倉から丸薬の入ったビンを受け取ってフタを取ると、それを一気に口に放り込んだ。

 千代田の表情が苦痛に歪む。「まずい……」と呟いたことからおそらく小倉の丸薬がクソマズい味だったのだろう。そして、千代田が丸薬を飲み込んだら、次のステップに移る。

 

『千代田桃。闇の魔女リリスの名において……一時的に、シャドウミストレス優子の眷属となることを認める』

 

 俺の手に乗ったよりしろ人形のリリスさんが、闇のエネルギーを千代田に向ける。俺とゴミ先祖も、魔力をリリスさんに譲渡する。やりすぎには注意せねば。千代田を俺の眷属にしてしまっては意味がない。

 

「『『おいでませ……千代田桃!』』」

 

「……うっ!? ぐっ! ああああああああああああああああああああああっ!!?」

 

 エネルギーが千代田に直撃すると、少し苦しむ様子を見せたかと思えば、彼女の雰囲気が変わっていく。具体的には、ピンクで羽が生えたような髪飾りがコウモリの翼を彷彿とさせるデザインに変化していく……!

 肩で息をする千代田。ミカンがそこに駆け寄る。

 

「桃!! 大丈夫…?」

 

「うん。……これでシャミ子を助けに行ける…!」

 

『ならすぐさまシャミ子の隣で横になれ! 余が案内するぞ!』

 

 リリスさんの指示に従い、小倉の計画は第2段階に進んだ。

 

 

 

 その後しばらくすれば、シャミ子が目を覚ました。それは即ち、千代田のシャミ子救出作戦が成功したことを意味していた。

 千代田が目を覚ませば、変身したミカンが魔力の矢で千代田にショックを与え、光側に戻した。ただ、その時にかかったプレッシャーは凄まじいものだ。

 

「ミカン…嫌な役目させてごめん」

 

「いいってことよ! ……このミカンちゃんの偉大な友情ぱわーに感謝しなさい」

 

「みんな、さっさとここから撤退するぞ。ミカン、無理すんなとまでは言わないが、分かってるはずだろう」

 

「う、うん、そうね……呪いが…………もうダメです」

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁっ!!!!?」

 

 ミカンの手を引いてラボから避難する。

 直後、ミカンの呪いによって、小倉のラボが突如生えてきた木々に破壊し尽くされる。シャミ子が迷惑をかけたと謝っているが、「学校の備品だから大丈夫」と気にしてなさげだ。むしろそこが一番ダメなはずなんだけど。

 

「ううぅ……ごめんなさい………また、呪いが……」

 

「気にすんなミカン。俺達は全員無事だ」

 

『クロウー。我がぶじじゃないぞー』

 

「……あの、クロウさん。ラプソーンさんはどうしたんですか」

 

「……………………あ」

 

『クロウ〜〜、たすけてくれー』

 

「「「「「………………」」」」」

 

 小倉のラボ跡地を見れば、瓦礫の奥の奥に鳥を模した見慣れた杖が見事に埋もれていた。

 

『ひどいぞクロウ……我より陽夏木ミカンを選ぶなんて……』

 

「ちょっ!!? 言い方!!」

 

 なんてこと言いやがるこのゴミ先祖…!

 そういうつもりでミカンの手を引いたわけじゃあないのに、誤解されるだろうが!!

 

『我とは、遊びだったのだな……』

 

「やめろっつーの!! その言い方絶対わざとだろ!?絶対誤解される言葉を意図的に選んで話してるだろ!!」

 

 周りを見れば、千代田がシャミ子の目を塞いでこっちにかつてない目を向けている。小倉は楽しそうだ。誤解を招く発言を訂正する気はないらしい。ミカンはというと……

 

「え、クロ…………私のこと、す、いや、えっと……

 ……ラプソーンさん、ごめんなさい?」

 

『黙れ泥棒猫!』

 

 ……………。

 

「……俺、光属性に闇堕ちしようかな……」

「光属性に闇堕ちってなんですか!!?」

 

 シャミ子のツッコミが鋭く決まった事以外は思い出したくない。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 その後、シャミ子から俺と千代田とミカンに話された事は、桜さんの居場所だった。なんでも、桜さんのコアは、10年前にシャミ子の命を支えることにしており、今もシャミ子と共に生きているのだという。妹の千代田には既に話した事だが、協力してくれたお礼ということで話してくれた。

 俺は、心配しているであろう母さんにこの事を教えても良いか尋ねた。二人は少し悩むそぶりをしたが、最終的には許可してくれた。

 

『そうだったの…。魔法少女とまぞくが仲良くなることを夢見た桜ちゃんらしいわね………羨ましいわ』

 

「羨ましい?」

 

『私が自分のコアで同じ真似が出来るとは思えないもの。せいぜいまぞくを血祭(ちまつ)…じゃない、ボコることしか出来ないもの』

 

 いま血祭りって聞こえたんだけど。国際電話の調子が悪いのかな?もしくは現地の音を拾ったとかか? 頼むからそうだと言ってくれ。

 

「コアって戦えるの?」

 

「無理に決まってるわよ。クロは何を言ってるの?」

 

『そう? 私は意外とイケたわよ、ミカンちゃん。敵の攻撃に当たらないように敵を物理的にちぎって投げればいいんだし。

 これでも私、コアのまま30体くらいまぞくひねったわよ』

 

「玲奈さん基準で考えないでください………」

 

 え?どゆこと? 魔法少女って、コアになったら戦えないんだよね?戦っちゃダメなんだよね?

 そう目配せすれば、ミカンも千代田も全力で首を縦に振った。コアは魔法少女の心臓部のはず。その状態で敵と戦うなんて考えられない。

 

「……母さん。冗談だよね? 魔法少ジョークなんでしょ?」

 

『いいえ、違うわよ?』

 

「…即答かよ…………考えるのをやめたくなってきた」

「気持ちは分かるわ……」

「玲奈さんやっぱりおかしいです」

「お、おそるべきまぞくスレイヤー………これで勝ったと思うなよ……!」

 

 勘弁してくれよ。ウチのお母さんがこんなにチートなわけがない。マジで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ! 仲間と共に切磋琢磨し強くなっていくんだ!




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
シャミ子の救出作戦において、リリスさんの闇堕ち用の魔力庫的な役割を果たした暗黒神後継者。桜については、これからもシャミ子をよろしくお願いしますという感情を持っている。ラプソーンの誤解を招く発言と母親のチート具合に凹み、『光属性に闇堕ち』という意味不なパワーワードを作った。何気にシャミ子の力の凄さに初見で気づいている。

神原玲奈
桜の所在を知って安心した子持ち魔法少女。「まぞくスレイヤー」時代には、コアのまま30体ものまぞくを撃破したという。レティスに注意を受け手合わせしたことと言い、見事に人間をやめている。



アイテム大図鑑

どくどくヘドロ   種別:錬金素材
毒にまみれた泥のかたまり。くさったしたいなどのゾンビ系モンスターが落とす。毒蛾のナイフや毒針、おかしな薬などの素材になる。



あとがき
 お待たせしました。活動報告のほうに、「この作品に出してほしいドラクエのモンスターのリクエスト」を募集したいと思います。(感想欄に書くと運営=サンが消しにかかるため)奮ってコメしてくださいね。

クロウとこの娘との絡みが見たい!

  • まぞくのよしみシャミ子
  • 正統派魔法少女ヒロイン陽夏木ミカン
  • 闇深い系魔法少女千代田桃
  • ブルジョワ魔法少女不二実里
  • お兄と呼ばれたい幼き軍師良ちゃん
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