まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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おはようございます。
4月からは、社会人として投稿していきます。あと、活動報告ではまちカド暗黒神に登場するモンスターの募集をしております。詳細は活動報告にて。




今回のあらすじ

実況の人「これはァーーっ! 必殺技を放つようです!」



力の開発!? まぞくの必殺技を作り出せ!……占いって、当たり障りのないこと言ってればいい訳じゃないんですけど?そんなの占いですらないんだけど!?

「闇の女王らしい“ひっさつわざ”を考えたいです!」

 

 

 始まりは昼休み中に放ったシャミ子の一言からだった。

 千代田がガタッとシャミ子に急接近し、佐田がスマホのカメラを立ち上げる。

 

「私さいきん追いかけられる事が多くって。ピンチの時に出せるとっておきの一発があればなって」

 

 シャミ子いわく、自分自身の記憶に潜入した時も、いやな記憶に追いかけ回されたのが原因で迷子になったそうだ。自分自身の嫌な記憶に追われるってなんか嫌だな。

 

「『シャドウなんちゃら』! みたいな技名がいいです」

 

「技を考える前に……シャミ子がピンチの時堅実に出せるモノを把握しないと」

 

 そんな話を聞きながら、俺がピンチの時堅実に出せるモノはなんだろうかと考える。思い出されたのは、チキーラさんに1秒で追い抜かれた時。あの時出てきたのは……純粋な魔力だったな。紫電のような魔力を利用した技とか良いかもしれない。

 ちなみに、シャミ子がピンチの時堅実に出せるモノって……

 

「……夢無しとなると…………………………堅実に出せるのは涙くらいです」

 

「…じゃあシャドウぽろぽろ涙で行こっか」

 

「いいのかそれ」

 

 完全に負け犬ムードじゃねえか。必殺技放つ前に必殺技放たれて敗けそうなんですけど??

 

「ピンチの時は焦ってるから普段の力は出せない。状況によって適切な対処法も違う。」

 

 だが千代田のその発言はあまりにも理にかなっていた。流石、ワールドワイドで百戦錬磨な魔法少女だ。説得力が違う。どこぞの暗黒神が同じ説明をしたところで、ここまで納得しただろうか。

 

「ちょっと練習しよっか。

 まず胸倉を掴まれた時はこう!」

 

「もぺっ」

 

「暴れる人を無力化する時はこう!」

 

「ぬぺっほ」

 

「うわぁすごい」

 

 口頭で説明した後実践練習をする。

 千代田がキレのある格闘技でシャミ子を振り回していく。佐田はその間写真を撮るだけだ。助けてあげてもいいのに。

 

「シャドウぽろぽろ涙が止まらない……」

 

「じゃあ交代ね」

 

 ……ん? 今「交代」って言った? ミカンにでも代わるのだろうか?

 周囲を見渡してみる。しかし、この場にミカンはいない。関係ありそうなのは泣いているシャミ子とスマホを構える佐田、あとはこっちに近づいてくる千代田しかいない……

 

 こっちに近づいてくる千代田…

 すぐさま席を立つ。しかし、千代田に左手を掴まれてしまった。これでは逃げられない……!

 

「神原くん」

 

「イヤです」

 

「シャミ子の為なの、お願い」

 

「イヤです」

 

「…………」

 

「…………??」

 

「……逃げる人を取り押さえる時はこうッ!!!」

 

「ギャア゛ア゛ア゛アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーっ!!!?」

 

 床に押さえつけられ関節を極められた。イヤですって言ったよねぇ!!?

 ちなみに、佐田はやっぱり写真を撮るだけである。助けてくれてもいいよねぇ!?

 

「だ、大丈夫、ですか……?」

 

「全身がまんべんなく痛い……」

 

「…今の経験を踏まえて………

 相手は基本格闘技で攻撃してこないので今までの技は使えません。一旦忘れよう」

「おい千代田」

「きさま」

 

 散々シャミ子を振り回し、俺の関節を極めた千代田が言ったことはこれである。キレていいかな?

 

 

『貴様ら、さっきから何をしているのだ?』

 

 そんなキレそうになっているところに、先程までは教室にいなかったラプソーンが現れる。昼休みが始まった瞬間に教室を出ていたから、一体どこで何をしていたのか気になるけども。

 

「ゴミ先祖。実はな―――」

 

 戻ってきたラプソーンに俺はシャミ子が必殺技を欲しがっている事を説明する。

 一通り説明を終えると、ラプソーンはうぅむと唸ってから話しだした。

 

『よいかクロウ、そしてしゃみ子よ。必殺技とは切り札の一つだ。発動したらある程度こっちの有利に持っていけるような技にしなければならん。

 例えばクロウの極大爆裂呪文(イオナズン)なんかは必殺技といっていいだろう』

 

 …確かに、アレはなかなか強力だ。千代田との戦いで消耗してたとはいえ、不二を戦闘不能にできる程の威力の魔法など、そうそうあっていいわけがない。

 

「く、クロウさん……必殺技持ってるんですか!?」

 

 あ、シャミ子が反応した。

 

『必殺技が欲しいか、シャドウミストレス優子よ……』

「欲しいです!!」

「シャミ子を誑かさないでラプさん」

 

 千代田の冷徹な声で咳払いをするゴミ先祖。止めてくれなかったら何か吹き込みそうな勢いだったから助かる。

 

『落ち着くのだ千代田桃よ。なにもしゃみ子を籠絡したい訳ではない。我が知っている必殺技を少々、必殺技を作る参考として教えたいだけだ』

 

「必殺技の参考!! 教えて教えてー! 教えよ!!」

 

 長い時を生きた暗黒神から必殺技のサンプルをご教授できると聞いて、シャミ子のしっぽが暴れだす。スイッチが入って興奮気味の彼女を見たからか、千代田も止めるタイミングを失っていた。

 かくいう俺も、ゴミ先祖がどんな必殺技を見てきたのかを知りたい。たとえ闇の世界の必殺技だったとしても、学ぶ価値はあるとみた。…………教える必殺技がマトモだったらの話だけど。

 

 

『まず教えておくのが“全体死の呪文(ザラキ)”や“全体昇天呪文(ザラキーマ)”といった魔法だ』

 

「ざらき…?ざらきーま?」

 

『然り。死の言葉を投げかけて、敵の集団を戦わずして葬ることができる上級魔法―――待て、二人とも!?手をおろせ!魔力を収めよ!』

 

 

 

 ……前言撤回。コイツの辞書に「マトモ」の文字は存在しなかった。いくらなんでも必ず殺すタイプの必殺技は求めてねーっつーの。

 咄嗟に出せる魔力の紫電とどこからともなく取り出したステッキをゴミ先祖に向けて、俺は笑顔で、千代田は無表情で威圧する。

 

「ごめんごめん、いくらゴミ先祖でも冗談が悪質だったなぁって思って、つい」

「そうですよラプさん。シャミ子の教育に悪すぎます」

 

『……………そ、そうだな! 流石に我も冗談が過ぎたと思っている!』

 

 ゴミ先祖は、俺と千代田の殺気を感じ取ったのか、長い沈黙ののちにそう言い切った。コイツの言い方からして本気で俺とシャミ子に危ない呪文を教えようとしたみたいだが、口にしたらまた粉々にされると思ったからか話を合わせたのだろう。いい進歩である。

 

『えー、では………しゃみ子とクロウの参考になりそうなものとなると…アレだな。

 まずしゃみ子よ。お前、確か家に伝わる武器があったな?』

 

「なんとかの杖の事ですか?」

 

『杖の名前を知らぬのか……? とにかく、ソレはどういった能力を持っているのだ?』

 

「え……でも、うちの杖ですし……おいそれと能力を教えるわけには………」

 

 改めてゴミ先祖が先日シャミ子が手に入れたという杖について言及してきた。やっぱりというべきか、プライベートが強いので杖の能力を教えるのを渋っているシャミ子である。

 

『では必殺技は教えられぬなぁ。杖の力が分からなければ、手っ取り早く手堅い必殺技を作ることも叶わぬ』

「で、でも……」

『我の知識には貴様らでは記憶しきれぬ程の武器の記憶も魔法の記憶も、果ては必殺技のノウハウもある。それを借りたいと思わないのか?』

「う、うぐぐ……わ、私は私の力で」

『闇の女帝になると? では我が知識は後継者たるクロウのみに教えるとしよう。そして貴様を圧倒してみせよう。せいぜい、我が後継者の下で甲斐甲斐しく働いてくれたまえ。

 ……あぁそうだ、その際は千代田桃は我の眷属として闇堕ちさせて、消えない程度に飼いならしてやろう』

 

 ……………コイツ、止めるべきだよな?

 必殺技の参考を教えるだけのはずなのに、なんでコイツはここまで偉そうなの? なんでシャミ子をこれでもかと煽ってるの? そして俺を引き合いに出すのはやめてくれないかな?

 静かにキレた千代田が立ち上がり、ゴミ先祖に近づく。その手が杖をへし折る前にシャミ子は「待ってください」と声をかけ、杖の力を俺に教えてくれる事になった。なんでも、千代田桜さんを探すのを手伝ってくれたお礼だという。

 

 シャミ子の武器・なんとかの杖………その能力は、「あらゆる棒状のものに変化すること」。それを聞いたゴミ先祖は、何かを閃いたのか、堰をきったように考察しだした。

 

 

『強い……強いぞその力。

 棒状の武器………すなわち、剣・短剣・槍・斧・ハンマー・棍・杖・鞭、これらの殆どに変化できるのか…! 斧とハンマーはしゃみ子の貧弱さから考えないにしても、優秀な武器には違いない!

 その武器、我の知識をもってすれば最強だぞ。

 はぐれメタルの剣、銀河の(つるぎ)砂塵(さじん)の槍、閻魔(えんま)魔槍(まそう)如来(にょらい)の棍、キラーピアス、いかずちの杖、海鳴りの杖、復活の杖、グリンガムの鞭。

 ―――これらの全てを再現できるのだからな!』

 

「多いです情報が多い!!!」

「ゴミ先祖生き生きしすぎじゃねーか?」

 

 聞いたことのない武器達の名前が続出してシャミ子も俺も情報量がパンクする。ここまで長台詞を吐いたの、初めてなんじゃあないだろうか? ゴミ先祖の目には、シャミ子の杖がどう映っているのかが少し心配になるのであった。

 

「ちょっといいですか、ラプさん。私、魔法少女歴長いけど、今挙げた武器の名前はどれも聞いたことがありません。実在するものなのですか?」

『まことか、千代田桃よ? キラーピアスとかいかずちの杖くらい聞いたことはあるだろう?』

 

 ……で、魔法少女と暗黒神は何故スルー力高いのこんなに?

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 ゴミ先祖からの武器の詳細は後ほどシャミ子に連絡することになった。その際、ゴミ先祖から特徴を聞いて描きだす担当は俺になった。解せぬ。

 

 その後、話は戻って俺の必殺技はこれからゴミ先祖との修練の間に鍛えることで開発することにした。

 

「ウチらの必殺技?」

 

「はい! リコさんと店長にも何かないかなぁと思いまして……私のひっさつわざの参考にしたいんです!」

 

 他の人にも聞いてみようとなって、俺達は喫茶店『あすら』に向かい、リコと白澤さんにも必殺技を聞いてみることにしたのだ。

 

「ぼくは人間よりも弱いけど……一族の特技みたいなものはある」

 

 最初に答えてくれたのは白澤さんだ。バクの身体で皿を拭きながら説明してくれる。

 

「予言や占いだ。元々いた大陸では偉い人の家に居候してその能力で銀山を探り当てるとかして生計を立てていた。詳しくは『白澤(はくたく)』でググってくれたまえ」

 

「占いですか…!? 見てみたいです!!」

 

「最盛期ほど力はないが……お見せしよう」

 

 白澤さんは、店のテーブルの一つに占いの館にありそうな紫のテーブルクロスをのせ、占いに使うのであろうそれっぽい道具を取り出すと、シャミ子を座らせ、自分も反対側の席についた。そして、占いを始めた……

 

「時々自信がなくなる」

「凄い!当たってます!!」

「よく断れないタイプって言われる」

「凄い!!当たってます!!」

「シャミ子はん簡単やわぁ」

 

 

 ……なんか、俺の知ってる占いとはちょっと違う気がする。リコも何気にシャミ子をディスってるし。俺も手を上げて白澤さんに近づく。

 

「白澤さん、ちょっと俺も占って貰ってもいいですか?」

 

「もちろんだとも。優子くん、交代してもらってもいいかね?」

 

 そして、俺も占ってもらうべく、シャミ子と席を代わる。

 

「人との争いや競争を好まない」

「…当たってます」

「1つのものごとを好きでい続けられるタイプと言われる」

「……当たってます」

「どんな人とも仲良くなれると信じている」

「白澤さん」

「なにかな?」

「もっとこう、別のことを占って貰えますか?

 例えば……そう、今週の運勢とか、金運とか」

 

 

 思い切って言ってみた。占いや予言が特技とはいえ、最盛期の力がないという白澤さんにこんな事を言うのはやや心が痛む。でも、俺の知ってる占いのイメージがどうしても白澤の特技にフィルターをかけてしまうのだ。

 リコも意外そうな顔で驚く。白澤さんは少し間を置いて、口を開いた。

 

 

「………すまないね。それは専門外なんだ」

 

「銀山探り当てたのに!?」

 

 というか占いに専門とかあるんか。

 

「代わりと言ってはなんだが、少し昔話をしてあげよう」

「昔話?」

 

 白澤さんが申し訳なさそうにそんな話を始める。白澤さんやリコのようなまぞくは、総じて長生きなのだという。そんな彼が話す昔話とはなんだろうか。

 

「僕がこことは違う大陸にいた頃、聞いた話でね。闇の世界から真っ黒なまぞくたちが侵攻してきた話だ。暗黒神ラプソーンなるものが首領だったという」

「んぐふっ」

「黒男くん?」

「大丈夫です。つ、続けてください……」

 

 聞き覚えのある話だった。というかゴミ先祖の話だった。シャミ子も話していいのか迷っているのか、こっちをチラチラ見ている。千代田も困ったような顔をしている。シャミ子と千代田に「待て」の合図を出して、白澤さんに続きを促す。

 

「僕の元に黒いまぞくが来ることはなかったが、世界各地で被害が出てたからか全世界が自粛ムードだったよ。噂で聞く限りでは真っ黒な鳥や樹、影の魔物が出たという。

 1年後に暗黒神ラプソーンが封印されるまで、そんな空気が続いたかな。当時は僕も幼かったから、細かい事は覚えてないがね」

 

 白澤さんは懐かしむかのように「こんなことしか話せなくてすまないね」と締めくくった。謝りたいのはこっちなんですけど。俺その暗黒神の子孫なんだけど。なんなら暗黒神本人が杖としてここにいるんだけど。

 

「お………俺のご先祖がご迷惑をおかけしました……………」

 

「なに? 黒男くんのご先祖様が?」

 

「ええ。なんなら……」

 

 俺は指をさす。その方向には―――

 

 

「ふぅん。これが暗黒神かぁ。あんまたいそーなモンには見えへんけどなぁ」

『ま、待つのだリコよ!! わ、我は、何もしてないぞ! 貴様の主人にもしゃみ子にも何もしてない!!』

「別にどうでもええわ〜、折れたり壊したりしても再生するのがおもろいからしばき倒しとるだけやし」

『シャミ子! 千代田桃! 助けてください!!』

 

 

 ―――ラプソーン(杖)をへし折って、再生する様子を見つめながら面白そうな笑みを浮かべるリコと、そのリコになすがままにされてるゴミ先祖の杖が。

 

「……封印された挙げ句、いまリコさんに散々遊ばれていますが」

「リコ君!! その杖から離れたまえっ!!!」

 

 この後、リコがどうやって作るのか分からないが物理的に虹色をしている液体を取り出し千代田に飲ませようとしたり、店の床に落とし穴を掘って白澤さんに怒られたりした。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 『あすら』での必殺技取材を終え、帰路に着こうとすると、シャミ子は小倉と佐田にも必殺技について聞いてみることにするという。佐田は非戦闘員だし、小倉は小倉だから人選が間違っているような気がしてならないが、シャミ子と千代田についていき、先に小倉のもとへ向かうことにした。

 のだが。

 

 

「必殺技…? 必ず殺すやつね。シャミ子ちゃん達がそんな事を私に聞きに来てくれるなんて嬉しいなぁ」

 

「よし帰ろう二人とも帰ろう」

 

「なんでよぉ」

 

 やはり小倉は狂気(小倉)だった。

 小倉さん、「なんでよぉ」じゃありません。必殺技に対する認識がほぼ暗黒神と同レベルってどういうことなの。

 

「必殺技への認識がゴミ先祖と一緒なのが問題なの。法律に引っかかるものは認められねーからな」

 

「そんなこと言わずに見てって欲しいな〜、私の『ゆうきごうせい』」

 

「ゆうきごうせい? なんだか必殺技っぽい名前!!!」

 

 シャミ子のそんなリアクションに意気揚々な小倉。本当に大丈夫なんだろうな。せめて法律は守って―――

 

 

「まず●●●(ピ―――――)から個人輸入した■■■(ピ―――――)と高純度の【コンプライアンス違反(ピ―――――――――――――――――――)】とゆ〜っくりと混ぜて……

 理科室から【自主規制(ピ―――――――)】と【規制(ピ―――)】を借りて蒸気を▲▲(ピ―――)

 この時【アウトに限りなく近いアウト】で脱水して。で、合法のひっさつパウダーを作って」

 

アウトォォォォーーーーー!!?

 

 

 もう色々とダメじゃねえか。法律を守れとは思ったけど、間違いなく「法整備がまだだから実質法は守ってるよぉ」精神だろうが! それは法律は守ってるかもしれないけど、それ以外の人間として超えちゃあいけない一線をぶっちぎってるじゃねーか!!

 

 

『小倉しおんよ。我が思うに、そのひっさつパウダーにばくだん岩のカケラとヘルホーネットのマヒ毒を合わせれば更に必殺性が増すのではないか?』

「あぁ、なるほど!!! 流石暗黒神さま、まものの知識がすごいですねぇ」

 

「やめろゴミ先祖は黙ってろ!!」

「やめてくださいラプさん!!」

 

 

 ほんとにこのゴミ先祖は、嫌な方面で小倉と気が合うんだから、勘弁して欲しい所である。俺の預かり知らぬ所で小倉と生物兵器でも作り上げちゃったら、どう責任取ればいいの?

 

 

 

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

「―――と言う事があってさぁ」

 

「あ、あははは……それは災難だったわね、クロ」

 

 後日。俺はミカンの部屋にチロルと共に失礼し、ミカンに必殺技を取材した日に起こったことを報告していた。

 

「それで、その鶏肉はどうしたの?」

「必要以上に買いすぎたから分けに来た。まさか、一般人のはずの佐田も必殺技を持っていたとは」

「はい?」

 

 小倉から逃げ帰った後、3人でマルマの精肉店に寄った時、店番をしていた佐田から鶏肉をお勧めされたのだ。

 クスリの取引をしてる時のような悪い顔で「ゴッドサイド養鶏場の良い鶏肉が入ってるよ〜」とか「力が欲しいか〜?欲しいならば〜?」とか「男の子なら〜〜?よんひゃく〜?ごひゃく〜?」とか語りかけてくる佐田からは何か交渉術で光るものを感じた。そして、気がついたら鶏肉を500グラムも買っていた。これが、佐田の必殺技「お肉マシマシスペシャル」だそうだ。げに恐ろしきは人間である。

 

 

「それにしても、ラプソーンの言っていた武器が気になるわね。私も聞いたことのない名前ばっかし」

 

「なんなら俺が描いたヤツ見る? ゴミ先祖からのヒアリングを元に再現した武器の絵」

 

「え、あるの? どれどれ………え!? クロ…絵上手くない!!?」

 

「それでもまだ再現度は高くないみたいだ」

 

 

 正直、まさか本当にやらされるとは思っていなかった。どんだけゴミ先祖はシャミ子のなんとかの杖が気に入ったんだよ。お陰でめちゃめちゃ描かされたわ。俺も心なしか絵のスキルが上がったような気がするけど。

 

 しかし、千代田にゴミ先祖、白澤さんにリコ、小倉、果ては佐田にまで必殺技を聞きに回っていたが、俺の新たな必殺技の明確なビジョンを完成させるには至らなかったなぁ。もう少し、研究と経験が必要かもしれない。

 

 ……あ、そうだ。

 

 

「ミカン、お前必殺技とか持ってたりしない?」

 

 一番身近な魔法少女に聞くのを忘れていた。ミカンにも、必殺技の一つや二つはあるだろう。

 

「え? あるわよ。サンライズアローとか」

 

「他には?」

 

「え、他? うーーんと……あんまり言いたくないんだけど…」

 

「どうしてだ?」

 

「ど、どうしてって……」

 

「こんな事もあろうかとゴミ先祖は俺ん家に置いてきた。暗黒神に手の内がバレなきゃ問題ない」

 

「で、でも……」

 

 ミカンが後退るのと同時に俺は少しずつ進んでいく。どうして足が後ろに下がっていっているのかが分からないが、ここは室内。いずれ限界が来る。

 ミカンが隅っこの壁際まで移動する。俺はすぐさま、ミカンに逃げられてはぐらかされないように、片手を壁について彼女を真っ直ぐ見る。

 

 

「く、クロ!!?」

 

「…頼む。教えてくれ。その代わりといっちゃあ何だが、俺が知ったこと、ぜんぶ教えるから」

 

「な、ななななな!!!?」

 

 

 ミカンの顔が赤い。熱だろうか?

 いくら体が丈夫な魔法少女もいえども、風邪はひく。シャミ子が千代田が体調を崩した時、看病をしていた事を話してくれたのだ。ミカンもそうなる可能性はある。後で熱を測らなきゃな。

 

 

「せ……」

 

「せ?」

 

 

セクシャルハラスメント!!!

ごぶぁっ!!!?

 

 突如、金ダライが俺の頭を直撃する。大蛇が押しかけるように入ってきて俺の体を締め付け、スコールのような大雨が全身に吹き付けた……

 体制を崩され、右手以外を大蛇に締め付けられて足がもつれて部屋に倒れ込む。

 

「なに考えてるのクロはっ!このいやらしまぞく!!」

「ご……ごめんなさい…でした……ぐふっ」

 

 ……別に俺はいやらしまぞくではないのだが、女性の機嫌を損ねた場合、男が謝るべきなのだ。母さんが口を酸っぱくして言っていた。

 大蛇に締め付けられている肺の中の空気を絞り出すように、そう言って俺は力尽きたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ! 積極的かつ気遣いのできる男前な暗黒神になるんだ!




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
 みんなの必殺技を見て色々学んだ暗黒神後継者。生き生きして大暴れするご先祖様に振り回される。ミカンに対しては天然ジゴロな一面も。

暗黒神ラプソーン
 シャミ子の杖の力を言葉巧みに聞き出したり、好きあらばヤベーイ呪文を教えようとした暗黒神。自分の知識を生かせる場面がやってきてテンションが上がっている。

あんこくちょう
 闇の世界を飛び回る、漆黒の魔鳥。ベホマラーやスクルト、バシルーラなどの多彩な呪文を使いこなす。拙作では、暗黒神侵攻時の尖兵として光の世界にやってきていた。

まかいじゅ
 闇の世界にて死を司る、真っ黒な大樹。頭に茂るまかいじゅの葉で倒れた仲間を生き返らせる。拙作では、暗黒神侵攻時の尖兵として光の世界にやってきていた。

シャドー
 闇から生まれた、影の魔物。つめたい息や凍りつく息を吐く。拙作では、暗黒神侵攻時の尖兵として光の世界にやってきていた。

ばくだん岩
 いかつい顔に笑みを浮かべる、丸い岩石のような魔物。ご存知、脅威の自爆呪文・メガンテの使い手。戦車や海賊船の弾になったり、破片が爆薬代わりになったりと、活躍の幅が意外と広い。

ヘルホーネット
 赤と黄色の縞模様をした、巨大なハチのモンスター。腹部の針を突き刺して、マヒさせようとしてくる。



今回の呪文辞典

・ザラキ
 敵1グループの息の根を止める。

・ザラキーマ
 敵全体の息の根を止める。


アイテム大図鑑

はぐれメタルの剣   種別:武器・剣
恐るべき硬さと鋭さを兼ね備える剣。人間界最強の剣と噂されており、一説にははぐれメタルを材料にしたんじゃないかとされるほど。

銀河の剣   種別:武器・剣
銀河の如き煌めきと無限の可能性を秘めた剣。この剣で斬られるとあまりの美しさに防御を緩めると言われている。

砂塵の槍   種別:武器・槍
砂の渦のような模様が描かれたヤリ。砂煙を巻き上げて敵の目をくらませるという、不思議な力を持つ。

えんまのまそう   種別:武器・槍
槍頭が大きく金色に輝いており、さらに刃の外側に棘がついた、非常に派手派手しいデザインの槍。死者の審判を下す閻魔大王の武器だとも噂される。

にょらいのこん   種別:武器・棍
眩いばかりの金色をした、幻の棍。如来が説法をして回った際に持っていたものとされ、実態のない敵すら打ちのめす。

キラーピアス   種別:武器・短剣
イヤリングのようにも見える、きらびやかな短剣。手にした者の動きを早める魔力が込められている。

いかずちの杖   種別:武器・杖
雷の力が込められた魔法の杖。天に向かってかざすと、激しい稲妻が降り注ぐ。

海鳴りの杖   種別:武器・杖
波がデザインされた魔法の杖。振りかざした敵に津波やコーラルレインが襲いかかるとされている。

復活の杖   種別:武器・杖
高位の天使から授かった伝説がある、聖なる杖。倒れた仲間を復活させるほどの偉大な力を持つ。

グリンガムのムチ   種別:武器・鞭
3本の鞭を一つに束ねた伝説のムチ。意思を持つかのような動きで、あたりの敵全てを薙ぎ払う。

クロウとこの娘との絡みが見たい!

  • まぞくのよしみシャミ子
  • 正統派魔法少女ヒロイン陽夏木ミカン
  • 闇深い系魔法少女千代田桃
  • ブルジョワ魔法少女不二実里
  • お兄と呼ばれたい幼き軍師良ちゃん
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