ワニバーンが あらわれた!
※2020-7-25:ミカンの呪いが地味に発動している描写を追記しました。
――前回までのあらすじ!
今日は楽しい動物園になるはずだった。
……そう、
「…………。」
まず、千代田の雰囲気が重い。目が死んでるし、なにかブツブツ言ってる。このままじゃ闇堕ちしそう。
「今日は楽しんでいきましょう!」
しかも、シャミ子がそれをあまり問題視してなさげである。気にしてやれや。
「楽しみやわ〜動物園!」
そして、待ってましたと言わんばかりにはんなりとそう表明するリコ―――おいコラ元凶。千代田の不機嫌の原因になってる自覚あります?
「ウチらが来たんは桃はんへの純粋な親切心からなの。それなんにえらいヒリついてて悲しいわ〜」
「手短に」
「桃はん動物が好きなんやろ? ウチらもかあいい動物や! せやからウチらが来れば桃はんが喜ぶ!」
「なるほど」
そして件のリコは、千代田にこれでもかと追い打ちをかける。千代田は千代田でただでさえ光を失った目を更に昏くして流している。
というか、自分で「かあいい動物」とかいうリコが何言ってるか分からないんだけど。千代田も同じ気持ちだろう。なんなら千代田はリコが何言ってるか分からな過ぎてナニイッテルカワカリマセン共和国の人になってそう。
「違うだろうリコ君! もっと大事な目的があるだろう!! 僕たちは魔法少女くんのハァン!!?」
「白澤さん!!?」
「す……済まない……腰が…腰がっ……!!」
「大丈夫ですか白澤さん!」
ぎっくり腰になってしまった白澤さんを介護しつつ、動物園に入る。白澤さんの顔色から察するに相当強く痛めてしまったようだ。
「ぼ、僕の事は放っておいていいから…君たちだけでも楽しんできてくれたまえ………」
どうやら白澤さんはどこまでも紳士のようだ。
こんな素敵な人を置いていくなんてできない。
「大丈夫だ白澤さん。俺が肩を貸すよ」
「いいのかね……クロウくん…?」
「私、荷物持つわ」
「私も何か手伝う事があれば!!」
「優子くんもミカンどのもすまない……すまない……」
ところで、さっきから千代田が「え、このまま続行するの?」って目をしてるけど……さては白澤さんの介護にかこつけてリコを追い払うつもりだったな。それだと白澤さんが可哀相だろうが、もっとこう……上手くリコだけを帰せるような口実を作らないとダメだろうに。
「クロウはん、ウチどこも痛くあらへんよ?」
「……!? お、おう、そうか……」
……口に出してないからどんな地獄耳でも聞かれないはずなんだが!? そんないかにも意味深な発言はやめてくれませんかねぇリコさん!!?
なんだか、俺の周りの女性陣はこんなんばっかな気がする。なんなの、読心能力はデフォルトなの?
その後しばらくは、白澤さんの腰痛トラブルがあったものの、おおむね動物園を楽しむことが出来たのではないかと思う。
「あれ、白澤さんバク見てるんですか?」
「あぁ。やはり落ち着くのでね」
「……端から見たらすごい光景ですが」
「僕達の種族は元々4足歩行でね。そこを無理やり2足歩行にしているからよくコシを言わすのだ」
「無理しないでくださいね。ただでさえ、さっき痛めてシップ貼ったばっかなんですから」
「人間界で二度見されない為には、これくらいの無理をする必要があるのだよ。とても辛いことだがね」
「………………………大変ですね」
白澤さんと園内のバクを眺めながら、「ほぼバクが2足歩行してたら誰もが二、三度見しそうだな」と思わなくもない会話を交わしたり。
「マレーバクの赤ちゃんの柄はとんでもなくトリッキーなんだよ!」
「ほんとだ、大人と全然違うわ!」
「これはすごいな」
「桃はんちっこい生き物好きなん?」
「えぇ、まぁ…」
「うちも好き〜〜
…火が通りやすいから煮てよし焼いてよし揚げてよしや」
「!?」
「分かり合えませんね」
白澤さんのマレーバク談義の隣でヒメネズミを見ていたリコと千代田から聞いたことを後悔するレベルの会話を耳にしてしまったり。
「す、すげえ! 見てくれミカン、あれ!」
「あれは…ワニバーン?」
「たてがみ生やして空飛んでんだぜ!? 翼が生えてりゃドラゴンだろ!! とゆーかほぼドラゴンだろ!?」
「それよりも、白澤さんがどこかに行っちゃって…」
「それよりってミカンお前……
あ、千代田! あのワニ見てあのワニ!」
「え? ………あぁ、ワニバーンか。珍しいね、あんなのが動物園にいるなんて。
そんな事より、シャミ子はどこ?」
「………お前らさぁ、ロマンって知ってる?」
「ほわぁーーー!!!凄いです桃、クロウさん! 飛んでます!空を自由に飛んでます!!」
「男のロマンがあるならば、
「「私は女よ!!(だよ…?)」」
空を飛ぶ
「ああっ!? 白澤さんが囲まれてるー!!?」
「バクだー」
「バクー」
「僕はふれあいコーナーの動物じゃないよ……ふれあってもいいけど………」
「写真は一枚1800円やー
…あ!クロウはんも手伝ってくれん? コレが1800円、こっちが900円、オプション付きで2700円やでー」
「いや、これ……どう見てもぼったくりじゃねえか? とゆーかこんな事して良いモンなのか…?」
「駄目に決まっているだろうクロウ君!リコ君を止めておいてほしい!!
リコ君も阿漕な商売はやめたまえっっっ!!!」
「バクが逃げたって聞きました!」
「あっ、僕は園外のバクです!」
「園外のバク…?」
白澤さんが動物園のバクと勘違いされて子どもたちに囲まれていたり、飼育員さんに捕獲されかけたりした。
そんなこんなで楽しんでいた折、ふと赤ちゃんトラの触れ合いコーナーについて思い出したのでミカンにひとこと「ちょっとこの辺をぶらついてくる」と言ってから離れる事にした。
赤ちゃんトラの触れ合いコーナー。シャミ子が白澤さんから譲ってもらったというチケットには、それに参加できるというVIP待遇があったのだ。俺達は全員チケットで入園しているので、行く事ができる。チロルを飼っているとはいえ、触れ合わないなどあり得ない。
触れ合いコーナーへ行く途中にあるワニコーナーにいた、浮遊するワニバーンに一礼してから(そうしたらなんと礼を返してきたのだ。さすがロマンの塊)、VIPの証たるゴムの腕輪を見せて触れ合いコーナーの中に入る。
「こ……これはっ!!」
中に入ると、そこは天国だった。
わらわらと群れるトラの赤ちゃん達。親と同じような縞模様の他に、白や黒のトラの赤ちゃんもいる。
短い手足に猫のような顔立ち、それがよちよちと歩くさまは見る人を癒やすこと間違いなしだ。
これを抱っこ出来るというのだから、VIP待遇の凄まじさは語りきれないものだろう。
「最高かよ」
早速、近くにいた黒い一匹を抱き上げる。確か…名前はブラッキーだったか。簡単に壊れていまいそうな赤ちゃんを、まるで割れ物を扱うように丁寧に懐へ抱く。喉を優しく撫でてやると、嬉しそうに目を細めるのだ。
なんて可愛さだ。ウチのチロルもなかなかだが、ここにはそのハイレベル可愛いが群れをなしている。まさに天国だ。
寝っ転がってみれば、黒いのを中心にわらわらと子トラが集まってくる。
「はあぁぁぁあ〜〜〜、カワイイ……」
キャラをかなぐり捨てて愛でる。もう触れ合いコーナーの時間が終わるまでここを出たくないわ。
『すみやかに起き上がるのだ、
「ふぁっ!!!!?」
すみやかに起き上がる。そして、声の主を探す。だが、どこにもそれらしい姿がない。比較的低めな女声だったんだが、一体どこの誰の―――
『ここだ、我が君』
声が下の方から聞こえた。視線を下げて、再び探す。
…が、やはりそこにいるのは可愛すぎる子トラ達だけだ。トラ柄、白柄、黒柄………嗚呼、目が奪われる。声のことなんて忘れそうだ。というか忘れよう。
1つだけ、寝っ転がらないように留意しながら、妙に懐いている感じの黒い子トラをもう一度抱き上げた。
「……まぁ、さっきの声は気のせいか。ね?ブラッキー」
『気のせいではない。私が呼んだのだ、我が君』
「」
声がした。目の前から。
正確には―――俺が
『どうした? 信じられないようなモノを見たような顔をしているぞ』
「フォォォォォォ!!!?」
……今日一ビックリした。
アイエエエエエ!? 喋る赤ちゃんトラ!? 喋る赤ちゃんトラナンデ!?!?!?
「というか『我が君』って何ですか? 俺達初対面だよね、ブラッキーちゃん!?」
『暗黒神ラプソーン……その力を受け継ぐものに出会えたのだ。初対面だろうが主君と仰ぐのは当然だろう』
怖すぎる。
なにこの子。生まれて間もなくして忠誠心が極まりすぎだろ。
そもそも、俺はゴミ先祖の力を受け継いだつもりはない。仮に受け継いだのだとしても、その単語の後に(同意なしの無理やり)が付いてくる。
よって、この黒トラちゃんの要望には答えることは出来ない。
『我々は一家揃って暗黒神様のご生還をお待ちしておりました。
……さぁ、私にご命令を。父上と母上の元まで案内しましょうか? それとも、この動物園を血で染め上げましょうか?』
ど、ど、どうしよう。早く答えないと、大変なことになりそうだ。周りの人は、黒トラちゃんの物騒すぎる発言に動揺すらしていない。まるで、そんな発言が聞こえないかのように。むしろ、俺に向かって変な人を見るかのような目をして来ているぞ。
「……君は、今の生活に満足しているか?」
『?』
「今の動物園の人気者としての生活は好きかい、と聞いているんだ」
『え、ええっと……』
「正直に答えていいよ」
『満足です! カワイイフリをしていれば子供たちと遊べるし、美味しいご飯と綺麗な寝床をタダで貰えるのはボロい商売だと思っている!』
あ、意外と子供っぽくチョロい。
ボロい商売とかどこで覚えたって単語もあるけれど、これならなんとか説得出来そうだぞ。
「……なら、これまで通りの生活を送ってほしい」
『……本当に良いのですか?』
「ああ。
俺は今、とても大切な試みをしている」
そう前置きをして、話を始める。係員さんがなんか声をかけてきたが、「後にしてください!」と追い払っておいて、だ。
「俺の友達の中にね、シャミ子とロビンって人がいるんだ。
シャミ子は桜さん……とある魔法少女に『魔法少女とまぞくが共存する町を守ってほしい』と頼まれたんだ。既に協力者もいる。
ロビンは俺の一番の戦友だ。今は修理中らしいが、誰かの為に体を張れるアイツは並の人間よりも人間らしい奴だ。」
『……』
「俺は友達や大切な人たちが幸せに毎日を過ごすために頑張るつもりだよ。
ゴミ先…じゃなかった、暗黒神風に言ってみれば、『支配するのに表立って武力対立する必要はない』ってことだ」
桜さんから頼まれたシャミ子の願いを叶えるお手伝いなら喜んでしよう。
ここが聖魔中立じゃあなくなったら俺の身も危ういし……それに、平和ってなによりも素晴らしい。不二と戦って、和解した時から考えていたことだ。本当だぞ。
『……よく分かりませんが、そういう事ならお安いご用です。』
分かってくれたようで安心した。
さて、思わぬハプニングで驚かされたが、引き続きトラちゃん達を愛でるとしましょうかね―――
「クロ!!!!!!」
「ほわーーーーーーーーっっっっ!?!?!?」
突然の知り合いの大声に変な悲鳴をあげて振り返る。するとそこには、不機嫌そうな顔をした幼馴染がいた。
あっという間に手首を掴まれる。
「桃とリコさんがいなくなったというのにトラの赤ちゃんに夢中になって!
係員さんから長居されて迷惑してるって怒られたのよ!!」
「え、ウソ、そうなのミカン!?」
「まったく……早く二人を探すわよ!」
『おや、連れがいたのか我が君。恋人か?それとも奥方か? まぁ……大切になさってくださいませ』
「「………」」
最後の最後で盛大にませた台詞を言いやがった黒トラの赤ちゃんをまるっと無視して、ミカンに手を引かれる形で触れ合いコーナーを後にした。
……振り向かなかったミカンの耳が、さっきよりも赤くなっている気がした。
触れ合いコーナーから出ていった俺達。
ミカンのスマホにシャミ子から「桃とリコさんを見つけました!」という連絡が来たため、そのチャットで決めた集合場所まで歩いていっている。そのためか、ミカンは機嫌がちょっと良さげだ。
「なぁミカン」
そのタイミングで声をかけたら、あっという間に機嫌が悪くなってしまった。何故だ。
い、いや! こんな所でめげてたまるか!
「み、ミカンさんや……俺が悪かったから、機嫌を直してくんねーかな……?」
「いーわよ別に。桃を見てたりトラの赤ちゃんを見てたりしてたクロなんてもう気にしてませんよーだ」
うわぁ……絶対気にしてんじゃん。
トラの赤ちゃんの件は俺が悪かったとしか言えないしなぁ。しかし、なんて言えば―――ん?
千代田を見てた? 俺が千代田を見てた事でミカンの機嫌を損なうこと? それって…………あ。
「あー、ミカン? 千代田の件だが、きっと誤解だぞ」
「何が?」
「そもそも千代田って、オシャレとかするタマなのか? 違うだろ?」
「………まぁ、そうだけど」
「そんなズボラ魔法少女が、人が変わったかのように身だしなみを変えてきたんだ。俺はそれが目に入って、驚いただけなんだよ」
「…そうね、桃はそういうところあるから」
誤解を解くために丁寧に説明すれば、ミカンの機嫌メーターがちょっと上がった気がした。よし、このままたたみかければ機嫌を回復させられるかも!
「例えるなら……そうだな。
優しさの欠片もない、喧嘩に明け暮れる札付きの不良が、雨の中捨て猫に傘を差してあげているのを見たかのような衝撃だ。」
「随分ベタね……」
「我ながらそう思った。でも、あの千代田がオシャレとか、何かの見間違いかと疑うレベルだ。」
「い、言いすぎじゃないかしら?」
「そうか? でも、ズボラなことはすぐに分かったのは事実だしなぁ。そんなズボラ魔法少女が、あんな―――」
「ズボラ魔法少女で悪かったね」
「そう思うんなら、日頃の行いをぬわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!?!?!?!?!?」
「ひゃっ!?」
気がついたら…う、後ろに、目の…目の昏い桃色魔法少女さんが!!
つい近くのものと抱き合いたくなるほどの恐怖に襲われ、いい年した男の断末魔のような悲鳴を再びあげた。
「ち、ちちちち千代田ァ!? 何故こんなとこに!!?」
「ここが約束の場所だよ。ミカンとおしゃべりしてたから気づかなかったかな?」
「え? ……あ、ほんとだ。
それにしても…千代田の体調不良が分かって良かったじゃあないか」
俺たちは、シャミ子とのRINEのやり取り(in ミカンのスマホ)で千代田とリコに何があったのかは既に把握していた。
千代田のコアの不調。
白澤さんとリコは、何度か会うことで動物系まぞく特有の器官でそれに気づいたらしいのだ。
そして、リコがシャミ子に化けて薬膳を食べさせようとしたのだという。白澤さん曰く、「リコ君は基本的に善意で動く子なのだ」とのこと。だったらもうちょいコントロールして欲しかったかな。
「まぁ、確かにそれは良かったんだけど……
神原くん、離してあげなよ」
「え?」
「ほわわわわー!? く、クロウさんとミカンさんが!? 大胆です!!」
「ひゅーひゅー、そのまま押し倒しぃやー」
「リコ君シャミ子君、出歯亀はやめたまえ! 見ないふりだ見ないふり!」
……い、嫌な予感がする。
千代田に言われて気がついたが、妙に胸の中が温かい。そして、柑橘系のいい匂いがさっきから鼻をくすぐるのだ。あとは……なんか、水?これは、雨か?なんかピンポイントで俺と千代田だけに降り注いでいるような―――
そう思いながらいい香りのする方を見てみれば……ミカンが近い。顔も真っ赤だし、こっちを見ようともしない。
自分の腕を確認すれば…………思いっきし、彼女の後ろに回してしまっていた。
―――つまり抱きしめていた。俺が、ミカンを。
「………………………………………………バカ」
「!!!!!!!!」
か細い声で正気に戻った俺は。
「うわあぁぁぁぁ!! ごめんなさいでしたァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!」
人生何度目かの土下座を敢行した。
なお、「わざとじゃないこと」を全面的に押して謝り倒したら許してくれた。
……取り敢えずご飯がまだだったので、リコと千代田の件とさっきの俺の不祥事を含めてお弁当を食べて仲直りすることにした。その最中でリコが千代田に薬膳を食べさせようとしたのだが……
「ちゃんと説明してくれれば薬くらい飲むのに」
「ほんまに〜? じゃあ食前に800枚な」
「やっぱり分かり合えないようですね」
「…リコさんよ、もうちょい効率的に行けないんですか? 葉っぱ800枚とかもう牛が食む量ですよ」
「堪忍なぁ〜、これがいっちゃん効率的なんよ」
「マジか…」
「リコ君が本当にすまない……………」
また俺が頭を痛め、白澤さんがヨガ土下座で謝る事態となった。
それと、千代田がここに来た目的のVIP限定トラの赤ちゃん抱っこin触れ合いコーナーだが……
「「「「………………」」」」
あえなく時間で終了となっており、ミカンから冷たい視線を向けられた。
ち、違うぞ、ミカン。これは結果的に抜け駆けって形になっちゃっただけで、元からそんなことするつもりはなかったんだ。すぐに出るつもりだったんだ。大体、トラの赤ちゃんの中に暗黒神ラプソーンの配下だった魔物の子がいて、その子と話し込んでしまうなんて誰も予測できねーだろ? 危うく黒トラの魔物達が俺への忠誠心のせいで脱走して大事件を起こす所だったんだぞ?
―――そう弁明したものの、信じてくれたかどうかは怪しい。
仕方がないから、ワニバーンに一礼してから帰ることにした。シャミ子とリコ、白澤さんも一礼に付き合ってくれ、ワニバーンが礼を返してくれたことに驚きを隠せずにいた。
千代田のもふもふ不足は、リコが狐状態に変身することで補うことになったそうだ。俺も千代田とミカンの後に抱き上げたのだが、なるほどこれは癒される。あの胡散臭いキツネ少女と同一とは思えなかった。
「……ところでクロウはん」
「なんだ、リコさん?」
「ミカンはんのこと、好きなん?」
「ンンンンッ!!!!!!!!!」
「あぁん、痛い〜、狐状態の時は優しく抱いてほしいの」
「す、すまない……」
「で、どうなん?」
「……………黙秘する」
「え〜〜、教えてくれてもエエやん」
「100%面倒くさいことになるからヤダ。
ミカンとは幼馴染ってだけだ。」
「ほんまかいな〜?」
「ほんまやで!!」
………やっぱり胡散臭くて面倒くさい少女だこの子。
―――たった一日で色々あった動物園ツアー。
白澤さんが見つけたという桃の不調。歪みを放置していると必ず良くないことが起こる、という事。
それだけじゃない。今日はクロが勝手に動きすぎだと思う。勝手にトラの赤ちゃんの所へ行ってしまうし、そこからなかなか出てこないし。
戻ってこないから心配になるわ、係員に怒られるわ。おまけに―――
『おや、連れがいたのか我が君。恋人か?それとも奥方か? まぁ……大切になさってくださいませ』
―――変なからかいを受けた。
黒いトラの赤ちゃんが何故かクロのことを「我が君」と言い、私のことをそう……断じたこと。
こんなもの、気にするのがおかしい。だって、黒いトラの赤ちゃんなのよ? どうせ、お父さんかお母さんから聞いた事を使いたがるおませさんに決まっているのに。
忘れるのが自然なのに、どうして
それに……私がクロに抱きつかれた時。
まぁ、桃が突然現れて驚いた拍子にうっかり、っていうのは分かっているんだけど。
クロの腕に包まれた時、何故か嫌悪感や不快感が湧いてこなかった。なぜかは分からない。
振り払うことも魔法少女パワーでふっ飛ばすことも出来たはず。なのに、それをしなかった。
それは、まぁ、クロが怪我しないように考えれば当然なんでしょう。でも……
―――そう思ってしまうこの気持ちはなんだろう。
「このワニバーンな、一礼すると返してくれるんだ」
『……』ペコリ
「ほんとだ!! すごいですクロウさん! 私もやって良いですか?」
「ウチもやる〜」
「白澤さんも是非!」
「え、僕も? 別に構わないよ」
シャミ子やリコさん、白澤さんと一緒にワニバーンにお辞儀をするクロの後ろ姿を見ても、答えなど出るはずもない。
それもそのはず、答えが出るのはもう少し………かなり?先の話なのだから。
帰り際にワニバーンに軽くお辞儀をしたら、しっかり返してくれた。
がんばれミカンさん! 食卓を囲んで柑橘類でわだかまりをなくすんだ!
オリジナル&ゲストキャラクター紹介
神原クロウ
動物園にて、ワニバーンという空を飛ぶワニにロマンを感じたり、幼き配下に自分の夢を伝えたり、幼馴染に誤解を受けたりイチャイチャしたりした暗黒神後継者。
ワニバーン
空中を浮遊する、赤いたてがみの大きなワニの魔物。『ドラゴンクエストⅧ』の隔絶された大地に登場し、かみつきやボディプレスで攻撃してくる。一体しか出てこない代わりにステータスが馬鹿みたいに高い。拙作では、たま動物園の動物として、多魔市民の人気者の一人となっている。
シャドウパンサー
狙った獲物を必ず仕留めると言われている、闇の世界の漆黒の魔獣。キラーパンサーの色違いであり、高いすばやさと攻撃力でこちらを仕留めにかかる。拙作では、動物園の人気者の子供として、VIP限定の赤ちゃん抱っこのコーナーにシャドウパンサーの子供が登場。両親も動物園の看板として健在である。
クロウとこの娘との絡みが見たい!
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まぞくのよしみシャミ子
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正統派魔法少女ヒロイン陽夏木ミカン
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闇深い系魔法少女千代田桃
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ブルジョワ魔法少女不二実里
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お兄と呼ばれたい幼き軍師良ちゃん