まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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お待たせしてしまいました。ほかの執筆に集中していたり、ただでさえいっぱい投稿しているのに二重人格になった花名ちゃんの話とか夢の内容を描くだけで人気漫画家になったこみっくがーるの話とかの妄想をしていたせいで、この『まちカド暗黒神』の執筆が遅れました。
いつの間にか『まちカドまぞく』第二期も放送決定がされるし、その記念に何もできないし……
再発防止のため、不要不急の妄想は自重します←





今回のあらすじ

闇に堕ちた桃が あらわれた!





再来! ダークネス千代田桃の魔力騒動!……ダイナミック危険人物・小倉とチート魔法少女の母を添えて

 

 

 

『…………………〜ん』

 

「…………ん?」

 

 

 どこからか音がする。真っ暗な闇の中、それが初めて聞いた音だった。

 

『………らく〜ん』

 

「………???」

 

 しばらくすると、それは誰かの『声』らしきものであると分かった。誰が、誰を呼んでいるんだ?

 

 

『か…ばらく〜ん』

 

「…………俺、か?」

 

 どうやら俺を呼んでいる……と思われる。もう少し声に集中して聞かなきゃ―――

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「おはよう、神原君」

 

 ベッドからむくりと起き上がると、そんな声がする。

 高めの女声だ。俺は、誰かと同居はしていないはずだ。チロルやスラリンではあり得ない。人語を話せないからな。

 

 眠い目をこすってピントを合わせるようにそっちを見れば、整った顔立ちに眼鏡のロングヘア女子………

 

「や〜っと起きたね。神原君のお寝坊さん♪」

 

「うるせーな。俺は朝強くねーんだよ……休日くらい勘弁してくれ小倉…………

 ……………………ん?小倉???」

 

 ん? んっ!!!?うん!?!?!?!?

 小倉!? 小倉しおん!!?

 なんっで、俺の家に―――!?

 

「ギャアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアア!?!?!? な、何で家に入ってんだ小倉ァァァァァ!!!?」

 

「合鍵を作って入ってきたの。

 それにしても、朝からドロボーにでも入られたみたいなリアクションだったね?」

 

「ドロボーの120倍はタチ悪いのに入られてんだよ! 今!」

 

 ドロボー程度ならばチロルやスラリンでどうにでもなりそうだし、ゴミ先祖装備の俺でも対処できるが、小倉となると話は別である。色んな意味で手に負えない。というか、不法侵入で捕まりたいのかこの子。

 

「……で、何の用だよ、こんな朝っぱらから?」

「千代田さんの魔力のコアが危なくてね。もう少しで闇墜ちしそうなの」

 

「―――は?」

 

 反射的にそう言ったのは、起きた瞬間から理解の範疇を軽く超えている出来事(小倉とか不法侵入とか小倉とか)が起こっていて、寝起きの頭じゃあ情報を収納し切れなかったからだと、思いたかった。

 

 

 

「……詳しく事情を話せ小倉」

「はーい♪」

 

 詳細を求められた小倉はそれはそれは意気揚々と、楽しそうに現状の説明を始めた。

 

 

 曰く―――千代田が闇堕ちしそうである事。

 闇墜ちというのは、光の一族と契約した魔法少女が、とある負の感情――例えば嫉妬・猜疑・強欲など――をきっかけに闇の一面に堕ちてしまうことを言うらしい。古来から、光の一族の関係者が負の感情に呑み込まれた時にひとりでに闇堕ちした伝承が山ほどあるのだとか。

 闇堕ちした魔法少女は、魔力の蛇口が常に全開になっているため、強力だがすぐに魔力が無くなってコアになってしまうのだという。

 ……『崖っぷちに立つ千代田』という、微妙に手の込んだ絵図を使って説明してくれました。さてはコイツこの事態を予期しながらスルーしやがったな…

 

 

『それで小倉しおんよ。なにゆえ我らの家にやってきたのだ?』

「これって理由があるわけじゃないけど〜、何か連れてった方が面白くなりそうだな〜って思って」

「おい千代田が一大事のはずだろ」

『ふむ…千代田桃が闇堕ちしたならば、クロウが手を下さずとも()が封印が解ける可能性があるということか。』

 

 ゴミ先祖の相変わらずなゴミ発言は兎も角、小倉も小倉で緊張感がないような。

 

「そもそも小倉よ、なんで千代田が危ないって分かるんだ?」

 

「シャミ子ちゃんの邪神像に仕込んだ小型マイクから聞いてたの。

 あとたまたまシャミ子ちゃんの近所を週5で巡回していて…そのルートに神原君の家もあったから―――」

 

「……よし、後で通報してやる」

 

『待てい!!! 小倉しおんを通報するなど許さん!!!!!』

 

「何でだよ!! 通報すべきだろコレは! ポリスメン案件だろーが確実に!!!」

 

『優秀な研究員を摘みとろうとするんじゃあない、早まるな!!』

 

 いや妥当な判断だろ。アレを優秀な研究員に留めるとか、ゴミ先祖は人を見る目がないのか?

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 小倉の情報をもとに、ばんだ荘へ急いで辿り着いた俺たち。シャミ子の部屋まで辿り着くと先頭を歩く小倉が躊躇なくドアを開ける。「欲されたみたいだから来ちゃったよ〜〜」とか言いながら。その後「神原君もいらっしゃい〜」と言いおったので、非常に気は進まないが小倉に続く羽目になった。

 部屋にはシャミ子とリリスさん、ミカン、そして…様子の変わった千代田がいた。

 

「神原くん……どうして、小倉さんと一緒にいるの?」

 

 

 そこで、まず目についたのが千代田の格好だ。俺の知っている千代田の変身姿とはまるで違う。

 全体的にピンクと白が基調だった姿の面影はどこにもない。黒いマントとミニスカート、ハイソックスと黒を中心に、アクセントに濃いピンクを混ぜたような姿になっている。おまけに、髪飾りから悪魔の羽が。

 

 

「朝起きたら小倉がそばにいた。俺は悪くない」

「うん、確実に通報モノだねそれ。あと、多分ラプさんが手引きしたんじゃないかな」

『ギクッ』

「……通報とか尋問はこのゴタゴタの後だ。それより小倉。千代田の闇堕ちについて教えてやってくれないか」

「はぁい」

 

 

 そして再び小倉がやけに手の込んだイラストパネルを使用して説明を始める。皆がみんな、ジト目で嬉々とした小倉の説明を聞いている。さてはみんな、だいぶ手の込んだ図から仕組んでいたことを察したな。俺と一緒だ。

 ひととおり説明が終わり、最初に沈黙を破ったのは千代田だった。

 

 

「……どうすれば戻れる?」

 

「千代田さんは今、コアが闇属性にすべり落ちて光の一族とのリンクが途切れた状態なんだ。

 だから…直近に感じた負の感情を清算してごきげんになれば、光の一族との繋がりが戻ってきてこの場を凌げる!!…かも

 

 

 小倉の説明は、思っていたよりまともだった。いつもの素行はかなり……いや、すごく問題があるのに、こういう事態で分かりやすく説明できているから、小倉はタチが悪いんだよな。

 

 

「つまり?」

 

「『千代田さんが最近スゲェ嫌だった事』をここで洗いざらい吐き出しちゃって!」

 

そういう感じなら戻んなくていいっす

 

「千代田ァ!?!?」

「きさま諦めるな!!」

 

 

 なんで解決策を提示したのに断っちゃってんですかねぇ!!?

 いや、気持ちはわからないでもないよ!? 恥をかくのは嫌だよね、俺もそうだよ? でも、流石に命には代えられないと思うんだ!

 

 

「さっき最善を尽くすと言っただろう!!?」

『大恥をかいてこその人生だ!』

『然り、然り!千代田桃よ、我は貴様の弱みが知りたいぞ!』

「私、貴方が消えたら泣くわよ!!」

 

 オイちょっと待て。リリスさんとゴミ先祖は千代田を助けたいのか貶めたいのか分からないんですけど。余計に拗れる未来しか見えなくなるから黙っててくれませんかね…!?

 

 

「千代田、頼むよ。シャミ子とミカンを助けると思ってさ。………ゴミ先祖は、俺が責任を持って焼却するから」

『焼却!!!!?』

 

「……………っ、

 ………昨日は―――」

 

 

 だが、何とか3人の説得の甲斐あって千代田は話してくれた。

 

 なになに、昨日動物園に行ったときに……シャミ子のお弁当を味わって食べられなかったと。まぁ………あの時はリコさんと白澤さんが急遽参加してきたからね。しかもリコさんは散々千代田をイジり倒してきただろ? まぁ、アレははたから見ても流石にどうかと思ったさ。

 …で、他には? …………え、無い…? それだけ? むしろ、心当たりがソレだって?

 

 

『……そんな事で闇堕ちしたのか? かわいいな、おぬし』

『あー……我、聞かなかったコトにしても良いだろうか? …駄目、だろうか?』

 

「私は器の小さいつまんない人間です………」

 

 ……何というか、意外と拍子抜けた理由だった。リリスさんの言う通り「かわいい」って表現が一番似合うのだけど、ソレを口にするのは少々酷だろう。あとゴミ先祖は地味に傷つける言い回しをすんな。次余計な事を言ったら今ここで燃やすぞ。

 

 

「可及的速やかにこの世から消えたい…」

 

「ち、千代田、気をしっかり持て! なんか透け始めてるぞ! 千代田の向こう側の背景が見えちゃってるから!!」

 

「なんか色々な意味で桃が消えそうだからお弁当を与えましょう」

 

「は、はい分かりました!!」

 

 

 シャミ子がたたたたーっとキッチンの方へ走っていった。

 な、何とかなる…よな。千代田の闇堕ちの件は完全にシャミ子に任せるしかないから、不安なところがある。

 

 

「―――神原くん」

「え、なに?―――おわっ!!?」

 

 千代田に呼ばれたかと思えば、イキナリ首根っこを掴まれて壁に叩きつけられたんですけど!?

 

「ぐっ……ちょ、ち、千代田さん…………?」

「この前の動物園さ、神原くんはなに一人で触れ合いコーナーを楽しんできてるのかな! ずるくない? ずるまぞくだよね!?」

「うっ……!」

 

 反論できない。あの件は、完全に俺が悪い。あのコーナー内でラプソーンの部下に出会ったというイレギュラーな事態こそ起きていたものの、そもそもの責任の比重は変わらない。

 

「た、確かに何も言わなかった俺が悪かったよ。でも、あのコーナーの中でゴミ先祖の部下に出会ったから、それで出てくるのが遅れたんだよ」

「…………ラプソーンの部下…?」

『我の部下だと!? クロウ貴様、何故あの時の動物園に連れて行ってくれなかったのだ!!!』

 

 

 ゴミ先祖の前で話すと面倒くささが倍増するのは目に見えていたから話したくはなかったが仕方ない。

 

「…動物園にしれっと混ざっていた。彼は命令一つでたま動物公園の人達を血祭りにあげてたかもしれない」

「……それ、詳しく」

 

 俺は、千代田に触れ合いコーナーで出会った黒い豹の赤ちゃんについて語り始めた。

 暗黒神ラプソーンに相当心酔していること。初見で俺を暗黒神の子孫と見抜いていたこと。その時に彼に話していた事―――シャミ子に託された願いに協力を惜しまない事や、ロビンのように人を守れる人になること―――そのすべてを。そして、肝心の黒豹ちゃんは俺の意思を尊重してくれたこと。俺の首根っこを抑えていた手は、いつの間にか離れていた。

 

 

「………だから、今のところあの黒豹の赤ちゃんについて危険性はない。

 まぁ……こんなのはただの言い訳だ。お詫びといっちゃあなんだけど、良かったらまた皆で動物園に行こうよ」

 

「…………約束だよ?」

 

「ああ」

 

 

 そうこうしているうちにシャミ子がお弁当を持ってきて、あーんして食べさせると、あっという間に千代田が一瞬でもとのカラーリングに戻っていったのである。

 

 

「……なぁ千代田。いまのあーんのことについてちょっと聞きたいんだけど…」

「それ以上追及したらまた闇堕ちするよ?」

「変なことは聞かねぇよ!? ゴミ先祖と一緒にすんな!! パワーについてだパワーについて!」

 

 千代田の闇堕ちが一時的に収まった後、小倉がサラッと「とうぶん闇堕ちしやすい体質になるだろうからまたデータ取らせてねー」って言いながら去っていったけど、アイツに人の心はねーのか。

 

 ちなみにこの後小倉の件は通報したしゴミ先祖は焼却処分した。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 それから数日後。

 シャミ子と千代田が我が家を訪ねてきた。

 

「……桜さんの隠し泉?」

「はい。それで桃の魔力が回復するかもしれないんです!」

「そんなRPGの回復スポットみたいなのあんの?」

 

 シャミ子が言うには、傷ついた魔法少女が浸かることでエーテル体が回復する泉が多魔の山奥にあるらしいのだ。一体どこ情報なんだと聞けば、千代田桜さんのメモ帳を小倉に解読させたところ判明したと言う。小倉の人間性に問題があるから疑ってしまいそうだが、アイツの知識は確かなんだよなぁ。

 

「ミカンさんには断られてしまいましたが、クロウさんは今日は大丈夫でしょうか?」

 

「…あぁ、ミカンは今日面接だからな。俺は昨日終わったから大丈夫だけども」

 

 俺達転校生組は、昨日今日で学校生活についての面接があった。「転入してから困っていることはないか」「何か気になっていることはないか」「学校生活は楽しいか」など色々なことを聞かれたのだ。俺自身は特に困ったことはなかったので変わったことは言わなかった。

 

 さて、そんなことはさておいて、だ。

 

 

『話は聞かせて貰った! 千代田桜の秘泉はこの暗黒神が戴くぞ!!』

「お前だけ置いてくぞ?」

『酷い!!?』

 

 問題はこのゴミ先祖だ。ご存じの通り野望たっぷりの暗黒神入りの杖を連れてっても良いものか?

 最悪チロルやスラリンは連れてってコイツだけ置いていくことも視野に入れていかないと……

 

「良いよ。ラプさん連れてっても」

「え、ほんとか? でも…」

「それがなかったら神原くん戦えないでしょ?」

「むむむ……」

 

 確かにそうなのだ。俺はゴミ先祖が封印されてる杖がないと戦闘フォルムに変身できない。普通の姿で戦うこともできなくはないが、やっぱり戦闘力が心もとない。でもな…桜さんの場所に悪意の塊みたいなゴミ先祖を連れてっても良いものか?

 

『フハハハハハ!!我、許された! やったぁやったぁ!!』

「ふん」

『やギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?』

 

 悩んでいると、なんと千代田がゴミ先祖をあっという間に5等分にして、どこからか取り出した風呂敷に包んでそれを俺に渡したではないか。

 

「はい、神原くん。これで安心」

「お、おう……」

 

 あっという間に5等分とか風呂敷とかどうやったんだ……?

 それは置いといて、これなら魔法少女的にも安心なのだろう。ゴミ先祖の残骸が入っている風呂敷を受け取り、「付いていくー!」とねだるチロルとスラリンに苦笑いして……二匹とも連れていくことにした。シャミ子が大賛成してくれたのは嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そんなわけでやってきたのは奥々多魔。

 

 とある電車の終点の同名の駅で降りた山奥にある、大きな山。そのうちの一つが、なんと千代田桜さんの私有地だというのだ。恐るべし桜さん。

 山道から道なりに行くことができるものだが、それなりに距離があるらしいから、チロルとスラリンがはぐれたり疲れたりしないようにしないとな。基本的に自分の足で冒険したいだろうが、疲れたら背負ってきたリュックに入るよう言っておく。そして、山の入り口にあった看板だが………

 


 

警告

 

ここから先は私有地です。

貴重な資源が眠っているため

盗難防止や単なる趣味で

大量の罠を仕掛けています。

 

…ですがどうしても進みたいなら

進んで宝を掴み取るがいい!

どうせここに来る奴なんて

身内しかいないしね!

 

地主 千代田

 


 

 ……ちょっと何言ってるか分からない。

 何言ってるか分からな過ぎてナニイッテルカワカリマセン共和国の人になりそう。

 

 

「…なぁ千代田。解読してくれないか? お前の姉ちゃんなんだろう?」

 

「ごめん神原くん。私もこれはちょっと分からない……でも盗難防止の罠ってあるから魔力トラップや使い魔が出てくるんじゃないかな」

 

「つ…使い魔!?」

 

「姉の性格上死なない程度に面白くボコられると思う。今の私弱ってて戦えないから何か出てきたらお願いね、二人とも」

 

「わ、私これから死なない程度に面白くボコられるんですか!!?」

「ああ、分かった」

「クロウさん!?」

 

 

 シャミ子はあまり乗り気じゃないが、千代田が大変な時なのだから、代わりに戦うくらいわけはない。俺自身の戦いの経験になると思えば儲けものだ。そんな状況なのに自ら先頭に立とうとする千代田は流石世界レベルの魔法少女なだけある―――

 

 

「さぁ行こう、二人とも゛ッ!!?

 

「ももぉーーーーーーーー!!?」

「千代田ァァーーーーーー!!?」

 

 

 …早速千代田が落とし穴に落ちていった。落ちた先には四角い発泡スチロールみたいなヤツが満ちており、千代田が踏み抜いた地面もまた発泡スチロールで偽装したヤツだったようだ。

 

 

「まんまバラエティのセットじゃねぇか……」

「魔力じゃないんかい……っ!」

 

 シャミ子とスラリンと共に千代田を救出する。これから先、こんなトラップがあるなら、俺が先頭に立つことも考えないといけないな。

 

「…これは姉からの挑戦状……わりと腹立つけどこの奥の秘宝を手に入れたい……!!」

 

「桃……変なスイッチ入ってませんか?」

 

「千代田。ここから先は俺が先頭に立つよ。だから後ろから案内してくれ」

 

「さすが神原くん。男前だね」

 

「桃…クロウさんをいけにえにする気ですか……?」

 

「そんなこと無いよ。落とし穴の機会均等だよ。ちなみに神原くんが罠にかかったら次はシャミ子が前ね」

 

「きさま卑怯だぞ!!」

 

 …なんか千代田が地味に姑息なことを言ったような気がするが、気にしたら負けだろうと思い先頭を進もうとする……が。

 

 

きゃぁあ!?

 

「もももぉーーーーーーーーー!!?」

「千代田さーーーーーーーんッ!!?」

 

 

 ……また千代田が罠にかかった。しかも今度は、ネットの中に後続の対象を捕まえて吊り上げるタイプの罠である。千代田はまんまとその中にかかって果物ネットに入ったリンゴか梨みたいになってしまった。桃だけど。

 

 

「もぉ帰ろっかな…………」

「諦めないで千代田さん!!?」

「そうだきさま、諦めるな魔法少女!!」

 

 スイッチが入って燃えてた魔法少女が早速鎮火しそうなのをまぞく二人で励ます。スラリンとチロルが軽々と木に登って果物ネットを破こうと試みる。

 と、その時。

 

 

侵入者…

 

「「…え?」」

 

 なんか出てきた。黒がかった紫色で、塗り壁みたいな体にのっぺりとした手足がついている。大きさはシャミ子の2倍くらいはある。首(?)には、勾玉の形の何かを下げていた。

 

シンニュ…シンニュ…シシシシ侵入……、オヒキトリ……オヒキトリ…オヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオヒオ

 

「「ぎゃあああっ!! 何か出たあぁぁぁぁ!!?」」

 

「あ、ちゃんとしたの出てきた」

 

 コレがちゃんとした奴!? まともに呂律が回ってないじゃねーか! しっかり喋れるやつを予想してたから、コレは完全に予想外だよ!!

 

 

曲者…くせもの……カエッテ…カエカエカエカエカエカエッテカエッカエッテカエッカエッ

 

「ぎゃあああああああああ!!!」

「今度は呂律がぶっ壊れたランタンが出たぁぁぁぁぁ!!?」

 

「あ、気を付けて。そのランタンたぶんさっき出た使い魔より強いよ」

 

「強さの順位付けおかしくない!!?」

 

 

 普通はサイズ的に考えてランタンが雑魚で塗り壁がそれなりに強いタイプが鉄板じゃないのか!?

 見た目もつぶらな一つ目と尖ってないデザインで弱そうとか思ってたのに!!

 

 

「戦え、シャドウミストレスさん、暗黒神さん!」

「ほげえええ! 急にゴリゴリのバトル展開!?」

「俺は暗黒神じゃなーーい!!」

 

 塗り壁がシャミ子に、ランタンが俺に襲い掛かってくる。嫌な展開だが、千代田の情報が正しければ、塗り壁よりもランタンの方が強いのだという。ソイツがシャミ子の方に向かうよりはマシかもしれない。

 ちなみに千代田は、スラリンやチロルと一緒に木の枝の上に避難していて、シャミ子に指示を出している。俺は俺で、一人で戦うしかないようだ。

 

 

「こ、こっちだランタン小僧! 炎なんて捨ててかかってこい!」

 

くせもの…くせもカエッテ…カエカエカエカエカ

 

 すると―――ランタンは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を吐き出し―――

 

 ………

 ……

 …

 

 ………回避ィィィ!!!!

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!? そこまで本気でかかってこいとは言ってないイイイイイイイイイイイイィィィィィィ!!!」

「神原くん、挑発しないの!おばか!」

 

 なんとかかわせたけど、このまま奴に攻撃をさせ続けたんじゃあ、山が全焼しちまうぞ!? 早いところケリをつけたいところだ……!

 

『クロウ!我を使え!』

 

 ……ゴミ先祖…! 再生したのか!だがナイスタイミングだ!!

 

「トランスフォーム、氷結呪文(ヒャダルコ)!」

 

 

 杖を風呂敷から取り出して変身。そして、目の前のランタンに向かって即座に氷呪文を放った。

 地面から次々と生えるように現れる氷塊にランタンが閉じ込められていく。

 

く…せ…もの…カエッ…テ…カ…エ―――

 

 

 ランタンは氷に抗うようにしばらくもぞもぞ動いていたが、ランタンの炎が消えると同時に動かなくなり、氷の中で光の粒子となって消えた。あとに残ったのは、火のないカクカクとした調度品のようなランタンのみ。

 

「か……勝った…のか?」

 

 氷を溶かしても、ランタンは重力に従って落ちるのみ。つまり……

 

「勝ったーーーッ!!」

『油断大敵だ、クロウ。念のためランタンは破壊しよう』

「それを壊すなんてとんでもない! コイツは俺の勝利記念だぜ!持って帰るに決まってんだろ?」

『…後で後悔しても知らんぞ?』

 

 うるせいやい。とりあえずシャミ子の安否確認だ。

 

 塗り壁とシャミ子の方へ目を向けると、ちょうどシャミ子が弓らしきものから放つ光の矢で塗り壁を倒しているところだった。なかなかイケてる攻撃じゃないか。

 

 

「すげぇ! シャミ子、それなんだ??」

「なんとかの杖、ミカンさんの武器コピーモードです!」

「え、コレがなんとかの杖? た、確かにミカンの武器っぽいぞ……」

 

 あくまでそれっぽいだけだ。実際のものと比べると細部がだいぶ違うだろう。それでもあの塗り壁は倒せるくらいは攻撃力あるみたいだな。

 

「神原くん。いくら弱いからって、煽っちゃダメだよ」

「う、すまん……って、弱い? あの壁とランタンが?」

「シャミ子と戦った方はかなり弱く設定されてた。ランタンの方も魔法がちょっと強いけど死なない程度だし、行動ルーチンも単純だったでしょ」

「え………」

 

 「そうなんだ」、と言えなかった。ランタンが放ったアレ、かなりデカかったんだけどなぁ……

 ま、このことは置いておこう。シャミ子自身は初勝利に超喜んでるし、それに水をさすこともないだろう。

 

「桃!クロウさん!見てください、まぞく初勝利の記念品です!」

「お、シャミ子もそんなの手に入れてたのか!どれどれ……これは?」

「あの使い魔が持ってました! こっちは勝った場所の土です!」

「そうか!良いモン手に入れたな! 俺もさっきランタンを倒したら古代のランタンをドロップしてな……」

「古代のランタン!!?ドロップ品なんですか!? 見せて見せて!ちょっと出して見せてみて!」

 

「……良いのかなコレ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、小倉情報に導かれるままゴール地点である桜さんの泉に辿り着いた訳だけども。

 

「思ったより滝ですね」

「うん、滝だね」

「滝だな」

 

 滝だった。なんなのコレ。魔法少女はココで滝行しろってか?桜さん面白すぎでしょ。

 

「脱ぐんですか?水着ですか? 白装束?それともふんどし一丁!?」

「あーーー……俺、後ろ向いとくわ」

 

「おばかなのかなシャミ子は!? そのままに決まってるでしょ! あと神原くんは気が利いてるね、良いって言うまでこっち見ないでね!!」

 

 俺は大人しく後ろを向くことになった……はずなのだが。

 

 

『フハハハハハ!! ぬかったな千代田桜!泉の中へ、さあ行くぞッ!!』

「ピキーーーーーーー!」

 

「あっ……し、しまった!! 千代田、いまそっちにゴミ先祖が―――」

 

 ゴミ先祖とスラリンが行ってしまったことに慌てて振り向いた。すると、その先にあった光景は―――

 

 

「……神原くん。ラプさんは破壊しといたから―――そっち向いてて良かったのに………」

『うぼぁ……』

「ピキー」

 

「…………」

 

 ラプソーンの杖を滝に打たれながら拳で破壊した千代田とぷかぷかと泉に浮いているスラリンだった。

 スラリンはゴミ先祖とは違い、千代田からのお咎め(物理)はなかったから良かったけど……

 

「……すまん」

 

 滝に濡れて服が透けて張り付いた千代田を見てしまった罪悪感を口にして、再び後ろを向くことにした。

 

 帰りの最中、シャミ子と千代田を見るのが物凄く怖かった。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 所かわって、ここは自宅。

 魔力を回復させ、霊水を汲んだシャミ子と千代田と別れて、戦利品を整理してる最中に、ふと桜さんの泉に行く原因を思い出して、母さんにスマホでリモート電話をかけたのだ。

 

 千代田が闇堕ちして、桜さんの秘泉に行ったことを話すと、興奮しながら聞いてくれた。お土産ある?とか水汲んできた?とか土持って帰ってきた?とか。水は汲んできたけど土は持って帰ってきてないぞ。シャミ子じゃあるまいし。

 

『ランタンこぞうを倒すなんてすごいのね、黒男!』

「ランタンこぞう?」

『黒男が持って帰ってきたランタンを触媒に私が作った使い魔。デフォルトで魔法が大きく見えるように設計したの。桜ちゃんに譲ったんだぁ』

「アレあんたが作ったのかよ!!」

 

 お陰でかなり心臓に悪い経験しちゃったわ!! いたずらが成功したみたいな笑みで「ごめんごめん」と画面越しに笑う母さん。

 

『しかし……桃ちゃんが闇堕ち、ねぇ』

「シャミ子の弁当を食えなかったからなったんだと。そんなんあるの?」

『今までの正義感が変わるほどその人を大好きになれば普通になるわよ』

「……母さんは、闇堕ちしたことあんのか?『まぞくスレイヤー』だった頃」

 

 

 魔法少女は、負の感情によって闇堕ちする。小倉が言っていたことだ。

 千代田は、シャミ子のお弁当が満足に食べられなかった…不満?で闇堕ちした。ぶっちゃけ、そんな事で闇堕ちすんの?ってレベルで。

 

 なら、母さんは?

 まぞくをバーサーカーのように狩りまくり、『まぞくスレイヤー』とまで呼ばれて、チキーラとエッグラさんをして「まぞくを憎んでいた」とまで言わしめた母さんは?

 闇堕ちについて知っていない訳がない。魔力の放出がコントロールできない闇堕ち形態ならコアになるのも納得だ。母さんは、かつて言っていた…………「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()3()0()()()()()()()」……と。

 

 なぜそんな事が言えるのか? 答えは簡単だ。

 ()()()()()()()()に他ならない。

 

 

『…黒男』

 

 

 母さんが真面目なトーンになる。

 

 

『私はね…普通とは違う、かなり特殊な状況で魔法少女になったの』

「………それは、光の一族と契約以外で、ってことか?」

『あぁ、そうじゃないわ。私はちゃんと契約して魔法少女になったし、ナビゲーターもいるのよ。アフリカワシミミズクのカマエルっていうんだけどね』

 

 あ、母さんのナビゲーターってミミズクだったんだ。ちょっと見てみたいかも。

 まあ、それは置いといて。

 

「?? じゃあ、一体何が違うんだ?」

『普通、魔法少女は正の感情をもって光の一族とコアが繋がってるって話は知ってるわね?』

「あ、あぁ。それで、負の感情が振り切れると闇堕ちするとか………はっ」

 

 まさか。そんな事が、あるのか?

 最初が正の感情で契約したから感情が負に振り切った時に闇堕ちする。

 ならば……

 

『気づいたみたいね?

 ……私ね、最初「憎しみ」の感情をもってカマエルと契約したの』

 

 そんな、こと―――

 

「…ありえないだろ。光の一族が闇の感情どっぷりの人間を勧誘するワケがない」

『私もそう思ったんだけどね……まぁ、考えないことにしたわ。分からないし』

 

 ず、ずいぶんとサッパリしてるなぁ。サッパリしすぎてドロドロ具合がまったく感じないんだけど。

 しかし、となるとますます分からないな。カマエルとやらは何を考えてるんだ?

 ……ミミズクの外見に騙されないようにしよっと。

 

『愛に目覚めてから力が落ちたのはそういう事情があったからなのよ。

 ま、気にしないでね黒男。どうせもう過ぎたことだし……何より、私は今幸せだわ』

 

「……整理に時間がかかりそうな爆弾情報いくつも投げといてよく言うよ」

 

『…あ、じゃあ明るい話でもしましょ! そうね…去年、お父さんとミコノス島に行った時の話とか!』

 

「それいつもの惚気話でしょーが。巻いてくれ」

 

『ひ、ひどいわ!?』

 

 

 なお、その後は母さんに押し切られて結局父さんとの惚気話をたっぷり聞く羽目になった。

 ………ちょっと羨ましいと思ったのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ! 君も両想いの恋人が出来た日には、かなり惚気るタイプになるぞ!




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
 しおんに巻き込まれたり、桃の回復スポットに同行した暗黒神後継者。母親の魔法少女化の詳細にはかなり驚いているが、直後の惚気話にウザがった。しかし、いつか恋人が出来たらそんな事が出来るかもしれないし、高校生から見ても羨ましすぎるシチュエーションだとちょっぴり考えてしまう辺り、親子である。

暗黒神ラプソーン
 千代田桃の闇堕ちを積極的に歓迎したゴミ先祖。千代田桜の泉も戴きたかったが、桃に阻止された。なお、いつも通り望んだ成果は得られなかった。

ランタンこぞう
 打ち捨てられたランタンに怨念が宿った魔物。ドラゴンクエスト11に登場した新参者である。人をランタンのフリして騙すため、炎の熱さにも耐える案外ガッツのある魔物だ。
 拙作では、玲奈の使い魔として桜の使い魔と共に登場。

神原玲奈
 自分の魔法少女としてのルーツをちょっとだけ息子に話した子持ち魔法少女(3●)。相変わらず息子が引くレベルで旦那が大好き。もともと「憎しみ」100%で契約したため、闇堕ちがデフォルトだったため、桃のように短時間で消滅するとかはない。愛に目覚めて力が落ちたのもこのため。普通、光の一族はそんな人とは契約しなさそうだが………?

クロウとこの娘との絡みが見たい!

  • まぞくのよしみシャミ子
  • 正統派魔法少女ヒロイン陽夏木ミカン
  • 闇深い系魔法少女千代田桃
  • ブルジョワ魔法少女不二実里
  • お兄と呼ばれたい幼き軍師良ちゃん
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