まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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作者「よーし、元ネタ探しのためにまちカドまぞく買うぞー!」

一週間後

作者「どこにも置いてねえ………桃シャミどこ…?」

そんな気持ちを込めて書きました。



今回のあらすじ

小倉しおんのわるだくみ!



※2020-4-13:あらすじを追記しました。


暗黒子孫学校にはばかる! 小倉しおんの恐るべき本性!……俺、ご先祖を生贄に帰ってもいいですか?

「神原クロウくーん」

「あーい」

 

 先生に呼ばれ、返ってきたテストを受け取る。

 言い忘れていたが俺は、ミカンと一緒に千代田の助っ人のために多魔市に移り住んだ時、同じタイミングで転校生として迎え入れられている。俺のクラスは1年D組。シャミ子と同じだ。今は、生物学の授業でテスト返しが行われている。

 

佐田(さた)杏里(あんり)さーん」

「はーい」

 

 朱色の丸とバツが彩られた答案を見ると、名前の隣には88点と書かれていた。うーん……ミスがちょっと気になるな、今回のテスト。帰ったら復習するか、と溶鉱炉のように変わり果てた色の右手で頭を抱える。

 気になると言えば、さっき先生が俺を呼んだ時も、なんかイントネーションがおかしかったような気がするが……気のせいか―――

 

 

「シャドウミストレス優子さーん」

「はい」

 

(ぶっ!!?)

 

 気のせいじゃねえ!!?

 なんでシャミ子のやつ、学校で、先生に、あたかもそれが本名であるかのように、「シャドウミストレス優子さん」って呼ばれてんの!!? そんでもって、何で普通に返事してんの!? 闇の一族っていう奴は、誰にも気づかれないように活動するのがセオリーなんじゃあないの!?

 

『それはとんだ偏見だぞ、クロウよ』

 

(偏見?)

 

 そんな混乱を察知したのか、傘のように机に立てかけてあったラプソーン(杖)からテレパシーが伝わってくる。

 

『魔族、魔神、魔王、あらゆる闇の一族は、知名度が高ければ高いほどおのれの実力や人望、支配領域が高い事を意味する。それは、被支配種族の筆頭である人間どもを支配しやすくなるという利点も持っておるのだ。』

 

 相変わらず尊大で恐れ知らずな口ぶりで、闇の一族の事情を説明する。つまり、有名であればあるほど闇の一族としては優秀なのか。はっきり言って勉強になった。

 

(そうなのか。ラプソーンにも信者とかはいたのか?)

 

『当然。我は暗黒神であるからして、人の負の感情や命の他に、我を奉ずる教徒の信仰心もエネルギーにしたものだ。もっとも、いまでは我を信ずるものは駆逐されてそうだがな』

 

(要するに……ここら辺はもうシャミ子の勢力下かも、と?)

 

『かもな。あの夢の中でしか威張れない阿呆の子孫と思って侮っていたが、案外やり手なのかもしれないぞ、しゃみ子は』

 

 うーん……シャミ子の実力は置いといて、闇の一族の意外とオープンな事情をまた一つ理解できたかもしれないな。

 

「クロウ君? 聞いてますか?」

 

「へ? あっ!? す。すいません!!」

 

「もー、もう一回説明するから聞いててくださいね?」

 

 やべっ、ラプソーン(杖)との念話に夢中で聞いてなかった。すぐさま念話を打ち切り、先生の解説を聞くために答案と向き合った。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 結果からいうと、俺とラプソーンの立てた推測は、お昼休みにシャミ子に会いに来たという千代田とミカンによって「それはない、よわよわまぞくだから」と完全に否定された。当のシャミ子はというと、千代田に対して「なにおー! いずれ魔法少女を倒せるまで強くなってやりますよ! ぽがー!」と全く威厳のない宣言をしていた。リリスさんにそれとなく尋ねると、「そ、そんな事情……あったな」と、目を泳がせながら言葉を濁らせた。あれ、絶対何も考えてなかったって顔だな。

 

「ところで、ゴミ先祖には配下がいたんだよな。なんて名前だっけ」

 

『ゲモンとジャハガロスのことか』

 

「そいつらについて教えてくんない?」

 

「「!!」」

『フハハ、良かろう』

 

 弁当をあらかた食べ終えた俺の質問に千代田、ミカン、リリスさんの三人(二人と一個?)が神妙な雰囲気になり、ラプソーン(杖)は良機嫌に笑う。なお、シャミ子はいつも通り何も分かっていなさそうな顔でしっぽを揺らしている。

 俺は、この前の魔法少女・不二(ふじ)実里(みのり)との戦い以降、暗黒神ラプソーンについて知り、力をどう扱うかを知ろうと思ったのだ。封印を解くつもりは相変わらずないが、知っておいて損のない家庭の事情だと思ったからだ。

 

『まずゲモンからだが……あやつは我がラプソーン軍の優秀な参謀であった。』

 

「参謀……?」

 

 なるほど、つまり……そのゲモンって奴は、軍を率いるうえで重要なポジションにいたってことか。

 今まで学んできた歴史においても、諸葛亮然り、竹中半兵衛然り、山本勘助然り、名軍師というものは戦いや政治運営などにおいても国家の未来を決める重要な官位だった。それがラプソーンにとってはゲモンだったわけか。

 

『あやつは人間の心を熟知していた。光の一族と戦った時も、作戦立案は主にゲモンだった。

 魔法少女の一部の家族を人質に取って同士討ちさせる作戦も、

 魔法少女をおびき寄せるため一般の人間を殺戮する作戦も、

 戦略的撤退時に敵を拠点に閉じ込めて爆破させる作戦も、すべてゲモンが立案したものだ。

 光の世界陣営との最終決戦時の作戦もなかなかのものだった。なにせ――』

 

「おい待てゴミ先祖」

 

 そいつただのゲス野郎じゃねえか。話を聞いてた皆も眉をひそめてドン引きしてるし。シャミ子に至ってはゲモンの作戦とは名ばかりの残忍かつ卑怯な手段のエグさに涙目で震え上がってしまっている。シャミ子の腕に抱かれているリリスさんまで一緒に震えてるのは何故か知らんけど。

 

「ううぅ……なんて恐ろしい事考えるんですか……良はここまで怖くなりませんよね、ごせんぞ…?」

 

『あああああ当たり前であろう。げ、ゲモンがおかしいだけ、だ』

 

「神原くん。ラプさんへし折っていい?」

 

「まあ待て千代田。9割9分有罪だが話はまだ終わってない。へし折るならその後だ」

 

『折られる事前提!!?』

 

 シャミ子を怯えさせた事でブチ切れ寸前の千代田を抑えるが、話が終わった頃にはまたゴミ先祖は木屑と化すだろう。でもそれは、話が終わってからだ。

 

「さ、今すぐ千代田にへし折られたくなければ、とっとともう一人の配下について話せ。」

 

『この子孫、ご先祖を脅迫してきよった!!?

 貴様、そんなことが許されると―――』

 

「千代田ー、折っていいぞー」

 

『なああああああああああちょっと待ってエエエエエエ!!!?

 話す! 話すからそれだけはァァァァァアアアアア!!!

 あー、オホン。た、確かジャハガロスのことだったな。』

 

 千代田に折られたくない一心でラプソーン(杖)は、もう一人の腹心について話し出した。

 

『ジャハガロスは、我がラプソーン軍いちの猛将だった。

 体力と力に自信を持っていたあやつは、戦場の前線の切り込み隊長や撤退時の殿を進んで申し出て、一騎当千の活躍をした。』

 

 ふむ、つまりさっきのゲモンが知略に長けているとするならば、ジャハガロスという奴は力自慢の腹心だったという訳か。

 本来は魔法少女の敵であり、彼女達にとっては間違いなく数々の仲間を散らされた強敵だった筈なのに、ラプソーン(杖)の語りようはまるで歴史上の武将を語っているようだ。

 

『ジャハガロスは我への忠誠も高かった。

 我の招集にいち早く参上し、我の頼みは何でも聞いてくれた。我の後押しをしてくれたことも数え切れぬほどある。己のすべてよりも、我の作戦や任務、身辺警護を優先してくれる、頼もしい者であった。』

 

 過去を懐かしむようにそう話すラプソーンに目を輝かせるのは、シャミ子といつの間に話を聞いていたクラスでは見かけない女子……確かシャミ子に興味を持っていた奴だったか? ……その二人だ。残りのメンバーはというと、千代田もミカンも佐田も、「アレ? なんかおかしいぞ?」って顔をしている。おおかた、ジャハガロスの性格的な違和感を感じ取ったんだろうが………俺にはなんとなく、その違和感の正体がわかってしまった。

 

 そのジャハガロスってやつ、忠誠心高いどころかぶっちぎってるタイプのヤツじゃないの?

 ラプソーンから見たら忠実なしもべかもしれないけど、端から見たらただのやべー奴だよ。

 まさか現実にそんなヤツがマジで実在していたとは。現実は小説よりも奇なりとはよくいったもんだ。信じたくなかったけど。

 

『あやつは「ラプソーン様の為に命すら捧げる所存だ」とも言っていたな。比喩であろうとはいえ、あんなセリフを嘘偽りなく言えるのは大したものだと思うぞ』

 

「っ!!?」

 

 それ絶対比喩じゃねーよ、大マジだよ。

 ここでようやく、シャミ子がジャハガロスのヤバさに気づいたようだ。千代田達三人も、自分たちの感じていた違和感が間違ってなかったと確信する。

 ヤベェ。このゴミ先祖の腹心、まともなのがいねえ。ゴミ先祖自体がまともじゃあないからそんなの期待するだけ無駄なんだろうけどさ。

 

『クロウも我のように腹心を集めてみてはどうだ? ゲモンもジャハガロスも我はスカウトしたのだ、お前ならあやつら以上の実力者をスカウトできるだろう!

 まぁ友人から始めても良いのだがな!』

 

「嫌だよ! 何が悲しくてゲス野郎や忠誠心ぶっちぎったやべーやつとコネクション繋げなきゃいけねーの!?

 そいつら、ちゃんと封印されたか倒されたかしたんだろうな!!?」

 

『いや、ゲモンはまだ闇の世界で生き延びているだろうな。ジャハガロスの方は我が先に封印されたから知らぬが』

 

「はあああああーッ!?」

 

 最悪だ。両方とも健在の可能性アリかよ。

 知らねばならないと意気込んだ情報だが、ぶっちゃけ知らなきゃ良かったと思わずにいられないくらいの情報しか得られていない。

 

「あわわわ………やばいです、ごせんぞ」

『あわわわ………シャミ子や、あやつの部下には絶対関わらないようにしよう、な?』

 

 シャミ子がリリスさんを抱きかかえて完全に怯えきってしまっている。もうラプソーン(杖)は有罪(ギルティ)だ。

 千代田がゆっくりと死刑執行人のような無表情で、こちらに近寄ってくる。要件は分かる。

 

「話は終わった。好きにしろ、千代田」

 

「言われなくとも」

 

『ま、待て、千代田桃! 話せば……話せば分かる!

 だから―――』

 

「問答無用」

 

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

 

 どこかの総理大臣みたいな言い訳をスルーされたゴミ先祖は、無事に千代田によって粉々の木屑になりましたとさ。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 千代田によって粉々になったゴミ先祖が復活したのは、二日後のことだった。

 いつも通り学校へ行こうと思ったら玄関前にいた。どうやら、多魔川の下流付近からようやく帰ってこれたらしい。一生帰ってこなくていいのに。

 

「珍しいな、ゴミ先祖。いつも俺がへし折った時には一時間足らずで復活するのに」

 

『千代田桃のやつ、我を木屑にするだけでは飽き足らず、多魔川に捨てていきおったのだぞ!! お陰で復活した後戻ってくるのが大変だったわ! というか、一切助けようとしなかった貴様も貴様だろうが!!!』

 

「千代田の前でシャミ子を怖がらせたのが悪い」

 

『あの程度の話で怯える善良さこそ、闇の一族たるしゃみ子には要らぬものだろう! あやつは精進が足りん! クソ、千代田桃め、楽には死なさんぞ………!』

 

 千代田の抹殺宣言だけじゃ飽き足らず、シャミ子への責任転嫁もすんのかよ。

 コイツはとことんゴミ先祖だなと思いながら学校への道をラプソーン(杖)と歩いていると、長い黒髪にリボンを巻いた眼鏡少女が俺に近づいてくる。もちろん俺は彼女を知らない。

 

「あの、あなたが神原君よね? ラプソーンさんの子孫の」

 

「ああ、そうだよ………残念なことにな。それで……あんたは確か………?」

 

小倉(おぐら)しおん。ほら、この前、あなたのご先祖様のお話を聞いたでしょ?」

 

 そこまで聞いて、思い出した。

 ラプソーンからゲモンとジャハガロスについて聞いた時、確かにこの人もいた。

 ゲモンのゲスさやジャハガロスのぶっちぎった忠誠心を聞いても尚、引かなかった人だ。それを見て、「意外と肝っ玉のデカい同級生だな」と思ったから覚えてる。

 でも、確か彼女はシャミ子の友達だったはずだ。

 

「あぁ……確かにいたな。それで……俺に何の用だ?」

 

「あなたの体とご先祖様を実験道具にして色々弄りたいんだけど、いいかな!?」

 

「『……………』」

 

 ……シャミ子よ。君は、彼女―――小倉しおんを本当に友達だと思っているのか??

 

 

 

 

 あの後、なぁなぁな態度でのらりくらりと躱していた俺だが、その日の放課後、ミカンと一緒に帰ろうとしていたところを遂に小倉に見つかり、ゴミ先祖の杖ともども誘拐された。その時にミカンに助けを呼んだからきっと彼女もくることだろう。

 

 連れてこられた場所は、一言で言えば「どこかの研究機関の実験室」といった感じで、俺は今から改造でもされるんじゃあないかという気持ちになっていた。なに、どうすればいいの? 改造されたあとに抜け出して仮面ライダーやればいいの?

 

「私、呪術とか悪魔とかの研究部を作っていて、ここで色々やってるんだー」

 

「小倉、ここは―――」

 

「私の部のラボだよー」

 

 俺の質問に重なるほどに、それでいておざなりに即答すると、そのまま続ける。

 

「もともとシャミ子ちゃんやそのご先祖様、あとは……まぁ色々調べてたんだけどね。そこに、すごいひとがやってきたの。」

 

「……それが俺達か」

 

「そう! だから、神原君の体のサンプルとか、実験データとかいろいろ取りたいの!!」

 

 まっすぐ、そういうことを俺に言い迫ってくる小倉の瞳に俺は戦慄を覚えた。

 それと同時に、小倉の誘いをテキトーにいなしていた過去の自分に後悔した。

 

 噂で聞いたことがある。

 この学校には、倫理学以外が優秀だがその価値観ゆえに世間から守る形で在学させている奴がいる、と。

 確かめるため、時間を稼ぐために口を回す。

 

「小倉……お前、自分のテストの成績とか、覚えてるか?」

「学年一位だよ。なぜか倫理だけ点取れないけど」

『クロウよ。おそらくこの女が、お前の考えているだろう噂の生徒だ』

 

 小倉の返事とラプソーンの言葉で確信する。

 コイツはヤバい。異常だ。

 肝っ玉がデカいとか間違いなくそんな可愛いレベルじゃあない。

 こいつぁマジで仮面ライダーにされかねない。

 逃げなければ。

 

『それで、小倉しおんよ。この我とクロウを調べ上げるつもりか』

 

「うん。そうだけど問題ある?」

 

 臆面もなく、ラプソーンは器用に杖状態で立ちふさがり小倉に問いているが今だけはやめてくれ。心臓がもたない。

 

『我らを何者と心得ての発言だ?』

 

「うーん……千代田さんの後を追ってあの戦場?を見て調べたんだけど……」

 

 最悪だ。不二と戦った時、小倉もあそこにいたのか!?

 まさか、小倉に俺の戦っている姿とかを見られたんじゃあ………

 

「……着いた時には全部終わってたし、分からないかな。神原くんとラプソーンさんって、()()()()()()()()()()()()()?」

 

「……!!」

 

 小倉の答えと同時に、俺の前に立っていたラプソーン(杖)の、赤い宝珠を加えた鳥をかたどった部分が一瞬だけこっちを向いた。

 ―――ご先祖、マジナイス。

 

「小倉、よく聞いてくれ」

 

「なに?」

 

「―――ラプソーンは()()()だ」

「!!!?」

 

 今回は、この話で小倉を乗り切る。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

「暗黒…神………?」

「そうだ。言っとくがマジだぞ。こんな事で嘘つく必要性ないからな」

『何なら我が暗黒神について、一から話してやろうか?』

 

 結果から言えば、俺の作戦―――名付けて、『ゴミ先祖の生い立ちと侵略の歴史を語って、本来の狙いをはぐらかしてしまおう大作戦』は目論見通り成功した。

 暗黒神というワードに反応した小倉は、面白いくらいにラプソーン(杖)の話に食いついた。

 

 暗黒神とは何なのか。

 どのような身体構成をしていたのか。

 どのように子孫を残したのか。

 

 ラプソーン(杖)が提供した話は、小倉だけでなく、俺自身にとっても初耳な情報がいくつかあった。

 

 例えば、光と闇の世界のこと。

 

「こことは別に、他の世界があるってこと?」

『そうだ。ここと瓜二つの世界だが、全てが闇に包まれており、真なる闇の一族のこれ以上ない住処となっている。我らは便宜上「闇の世界」と呼んでいる』

「他に『闇の世界』とここの違いは? そこへの行き方は!?」

『落ち着け。どちらも不明だ。研究者がいなかったからな。ただ、全盛期の我は反復横飛びをするようにここと「闇の世界」を行き来できたし、他の者がここと「闇の世界」を行き来するには神の如き存在に縋る必要があると判明している』

「なるほど……」

「まるでゲームの話だな……」

 

 封印のこと。

 

「血の封印……確かにそんな封印方法はあるし、シャミ子ちゃんもハンカチで拭き取った千代田さんの血でリリスさんをちょっと復活させたらしいし」

『我の場合はただ血を吸わせればよいものではない』

「後継者を絶やすんだよね。しかも七人か……一人なら兎も角、七人は多すぎるね……」

「おいコイツ一人なら兎も角っつったぞ。というか、他に方法とか抜け道はないのか? 殺人は犯罪だぞ」

『クロウよ、バレなきゃ』

「犯罪に決まってんだろゴミ先祖。ルールは守らなきゃ意味ねーんだよ」

「封印の抜け道、か………古いものなら、ガタがきて抜け道ができる場合はあるかも。この話題持ち帰っていい?」

『好きにしろ』

 

 光と闇の世界の融合―――かつてラプソーンが企んだ、世界征服のこと。

 

「どうして二つの世界を融合させたいと思ったの?」

『趣味だ』

「はぁぁぁ!? 趣味!?」

『暗黒神を冠する我としては、闇の世界だけでなく、光の世界も統べるべきと考えた。(みな)、我の下に平等であるべき。それを実現せんとした』

「ふーん」

『……軽いな。』

「興味ないんだよ、小倉にとっては。……俺にとっては、初耳だったけど」

『そうか! なら、この後じっくり』

「黙って小倉のインタビューを受けろ」

 

 そして、全盛期のラプソーンの実力のことや、呪文のこと。

 

『小倉しおん、貴様もあの焦げた河原を見たのであろう? 全盛期の我なら爆裂呪文(イオ)くらいでああなる』

「いお?」

『簡単に言えば爆発呪文だ。』

「呪文!? ラプソーンさんって、呪文使えるの!!?」

『然り。魔法は爆裂呪文(イオ)系ひとつとっても奥深い。』

「今の人間には信じられてない代物が奥深い、ねえ。」

『人間で軽々しく呪文を使える者はおらぬからな。小倉しおんよ、貴様は呪文について何から聞きたい?』

「じゃあ、人間が呪文を使えない理由について、からで」

『良かろう。これは元々、光の一族と闇の一族…そして、闇の世界の住人が大きく関係している。この三種類は呪文・魔法に対する適性があってだな―――』

 

 ぶっちゃけ、得られたものは大きかった。

 もし―――ひとつだけ、誤算があったとするならば………

 

 この議論に夢中になった結果、小倉が元々どんな奴だったかを忘れかけてしまった、ってことだろう。

 

「今日はありがとう、ラプソーンさん! また神原君と来てね!」

 

『良かろう。次回はクロウをモルモットに』

 

「何言いかけてんのゴミ先祖!? ふざけてるとマジでぶっ飛ばすよ!!?」

 

「あ、そうだ神原君。これ食べて? 魔力がゴリッゴリ上がりそうなお団子」

 

「え? いや、いらな―――」

 

 いらないと言おうとした口に、小倉は黒くて丸い何かをねじ込んできやがった。

 それはあまりに不意を突かれたため、吐き出すことも噛まずに飲み込む事もできず―――

 

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

『く、クロウ!?』

 

 ―――結果、俺は宇宙の捲れた部分を見ながら意識を手放した。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 目を覚ました時には、俺はミカンに背負われながら、夕陽のオレンジに染まった通学路の多魔川沿いを歩いていた。ラプソーン(杖)がその隣をピョンピョン歩いている。

 

「……んん…?」

 

「あ、起きた! クロ、大丈夫?」

 

「あ、ああ……帰り際に小倉に変なモン食わされたくらいだ。」

 

 下手すりゃ改造されかねなかったから、まだマシかもしれないな。

 そう言うとミカンは呪いが発動しないように、「そういうものなの?」と苦笑いを浮かべていた。

 俺は、ミカンの背中から降りた後、ラプソーン(杖)に気になることをきいてみた。

 

「そういえば、なんでゴミ先祖は小倉とあそこまで積極的に話せたんだ。」

 

『……フフフ。クロウよ、まだ気づかないのか?』

 

「気づかないって何が?」

 

『あそこまで()()()()()、どこにもいないぞ』

 

「やっぱりそれか!!」

 

 そんなこったろーと思ったよ!! このゴミ先祖はどこまでも自分にとって都合のいい動きしかしないからな!

 

『頭脳明晰にして呪文や暗黒神、闇の世界に対する理解も深い。一番いいのは、あやつに倫理観が存在しないことだ。倫理という邪魔な足枷に引っ張られることなく、合理的な作戦も立てられる。』

 

「倫理観を『邪魔な足枷』って言った……」

 

『クロウ、小倉しおんを早めに我らが陣営に取り込むことを勧める。早くしないとしゃみ子に取られてしまうぞ』

 

「シャミ子だってあいつはいらねーだろ………」

 

 というか誰が好き好んであんなマッドサイエンティストを仲間にしたがるのか。とはいえ、敵に回したくないのも事実。俺としては、小倉とはつかず離れずの距離をとりつつ味方にしておいた方がいいと思うけどな。

 

『……クロウよ。そんなに我を復活させ、力を受け継ぐのが嫌か?』

「当たり前だ」

 

 俺の顔を覗き込んだ杖がそう尋ねてくる。答えは決まっている。

 

「ミカンとは戦いたくない」

 

「……!」

 

「ゴミ先祖の復活のためには賢者の子孫の命を奪わなくちゃいけないんだろ? まずそれが嫌なんだ。きっとミカンは、そんなの認めないだろうからな」

 

「……そうね。もしクロがそんなことをするなら…私は戦うわ。あなたを止めるために」

 

 俺の言葉に、ミカンが答える。

 そこには、確かに覚悟が宿っていた。

 

「安心しろ、ミカン。俺はこれからも―――」

 

『そうか! なら先に、陽夏木ミカンを懐柔すればいいのか! 我としたことが、見落としておったわ!!』

 

「「……………」」

 

 

 俺達二人は、この後空気の読めないゴミ先祖を四つ折りにし、多魔川へ流した。

 

 その翌日からしばらくの間、学校へ行くたびに小倉がまとわりついてきたことは、言わずともわかるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ!この出来事を糧に、懐の深い暗黒神になるのだ!




オリジナル&ゲストキャラ紹介

神原クロウ
 サラッと先生にコードネーム呼びされたオリ主。シャミ子もそうであったことから、きっとクロウにも同じ現象が起こることだろう。
 ちなみにキャラ毎に彼の呼び方を変えていたりする。小説では結構重要なこと。

シャミ子 → クロウさん
桃    → 神原くん
ミカン  → クロ
佐田   → クロウ君
小倉   → 神原君
ラプソーン、リリス→ クロウ


ゲモン
 ドラゴンクエストⅧに登場した、暗黒神の腹心。戦闘での名前は「妖魔ゲモン」。
 卑怯で邪悪な魔物とされている(公式の攻略本に記述)。原作ではラプソーン復活前から闇の世界で暗躍していたので、拙作でも封印や討伐から逃れている、という設定に。


ジャハガロス
 3DS版ドラクエⅧに登場する、ラプソーンのもうひとりの腹心。一人称は「我輩」。ストーリーの追加要素として、とある時期から戦えるようになる。その都合上、ゲモンよりも強いため、拙作では「力自慢の将軍」的なポジションにした。封印されていたが、ラプソーンよりも後だったため、ラプソーンは彼がどうなったかまでは知らない、という設定に。

拙作で一番好きなオリジナルorゲストキャラは?

  • 神原クロウ
  • ラプソーン
  • 不二実里
  • ラファエル
  • 神原玲奈
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