まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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今年最後の投稿に間に合いました。2020年、ご愛読ありがとうございました。2021年もよしなに。




今回のあらすじ

一般ピープルAがあらわれた!
一般ピープルBがあらわれた!
一般ピープルCがあらわれた!
一般ピープルDがあらわれた!
なんと一般ピープルたちはクロウの友人だった!


大騒ぎ!? 新たな行事に従事せよ!……委員会に体育祭、男友達にチェス!猫に群がられるのはダメですか?

 夏休みが終わり。新たな生活が始まる。

 制服に着替え、家を出てみれば……そこには、見知った仲間たちが。

 

「おはよう、クロ!」

「待っていたぞ、クロウさん!」

「行こうか、神原くん」

 

「おう、待たせたな三人とも。一緒に行こうぜ?」

 

 久しぶりに、この四人で登校できることに、嬉しく思う。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「よーぅ神原!久しぶり!」

 

「…ダイか。確かに、夏休み中は会ってなかったな。

 久しぶり」

 

 夏休み明け最初のホームルーム前、一人の男子生徒が気さくに話しかけてくる。

 こいつは、夏休み前、転校してきた時にできた俺の男友達のひとり。

 名前は――遊元(あすもと)泰庵(だいあん)

 どんなヤツかというと……

 

「なぁ〜神原よぉ〜

 お前また女の子を侍らせたんだって!?」

 

「お前な……なんて言い方してんだ」

 

「いいじゃあね~かよぉ~!!

 リアルでハーレムなんて羨ましいぜ、俺はよォ」

 

「ハーレムじゃないって何度言ったら分かるんだ」

 

「ただでさえお前には陽夏木ってカワイイ彼女がいるんだしさあ?

 頼むからそれで満足してくれよォ~~~~~~!それ以上を求めるなんて、欲張り過ぎるぜェ〜〜なぁ〜〜!?」

 

「ミカンは彼女じゃないっつーの。あと涙拭け」

 

 ……まぁ、こんなヤツである。

 おめでたい頭の中を表しているかのようなまっ金々な髪の毛と、軽すぎて風に飛ばされそうなキャラが特徴だ。常日頃から「カワイイ彼女が欲しい」と涙ながらに嘆いてる女好きで、同級生の中では有名だ。だが、彼の心情を理解できる男子が多いのと、ビックリするほどのお人よしさのおかげで、彼は友人の多い……いわゆるクラスの中心的な存在になっている。

 

「そんな事言ってよ、俺は分かってるんだぜ?

 お前ら二人が転校してきた日の自己紹介!アレで俺を含めた男子全員がどれだけ絶望したことか!!」

 

「………?? なんか言ったっけ?」

 

「自覚ナシかよ!!

 アレだよアレ! 初日に陽夏木と自己紹介した時の!!」

 

 あぁ、アレか。

 でも別に、これといって取り立てるほどのものじゃあないと思うけど。

 

◆  ◆  ◆

 

 あの時はまだ多魔市に慣れなくって、自己紹介すら不安だったからな。

 

『陽夏木ミカンです。魔法少女です! よろしくお願いします』

『神原黒男です。えーと、今年の4月から暗黒神の子孫になりました。よろしくお願いします』

 

 この自己紹介が通じるかどうかさえ分からなかったからなぁ。今思えば、この自己紹介を変にからかわれなかったのは幸いだったかもしれない。

 

『目玉焼きに何かける派ですか?』

『朝から揚げ物食べられる人ですか?』

『身体はどこから洗うんですか!』

『ハハハハ!遊元お前ストレートすぎだろ!』

『ちょっと男子~自重してよ!』

『サイテ~』

 

 むしろ、みんなのスルースキルが高すぎて俺もミカンも困惑するレベルだった。

 もっと魔法少女関係のことを聞いてもいいのよとミカンが言っても『頭のふしぎリボンの構造はどうなってるの~?』とかいう質問しかしてこないし、かつて世界征服を企んだ暗黒神関連の質問についても………

 

『魔法的なサムシングは使えますか~?』

 

『え゛……えーと、なりたてだからまだ使えません。経験値が足りない…のかな?多分』

 

『闇の世界に美女はいますか!!?』

 

『……今夜ゴミ先祖に聞いてくるから、答えは明日まで待ってくれると助かります』

 

『ひ、陽夏木さんとは……どういった間柄なのですか!? キャー!』

 

『…たんなる幼馴染です』

 

 こんなレベルの質問に戸惑いながら答えた記憶がある。

 そんな感じでクラスに来た二人への質問タイムが終わって、担任が「最後になにかひとことありますか?」って聞いた時だ。俺が代表でみんなにこう言ったんだ。

 

 

『分からないこともいっぱいあると思いますので、色々教えてください。

 ……あと、さっきミカンにセクハラ質問した人はちょっと話があるから来て欲しい』

 

『クロ!!?』

 

『大丈夫、話だけだ。俺が喧嘩とか嫌いなのは知ってるだろう』

 

『…穏便にね?』

 

『当たり前だろ』

 

 ミカンとのいつもの距離感のまま、俺達の自己紹介は、こうして終わった。

 なお、ダイとはこの直後に出会って仲良くなったのだ。

 

◆  ◆  ◆

 

 

「……なんもおかしなことは言ってなかったと思うが」

 

「おかしいのはお前の女との距離感だ!!

 大体、陽夏木とお前、話すとき若干近いんだよ!!

 何なのお前! モテない俺や男子たちへの当てつけなの!?

 俺なんて女子と話すのにだいぶ勇気いる上にさ!長続きしねーんだぜ!?」

 

 ダイにブチ切れられる。

 でも知らねーよ、話が長続きするしないなんて。ミカンとは長い付き合いだし、シャミ子や千代田と話す時も別に特段意識してることなんてないぞ?

 だがしかし、こんな事を言っても女に飢えまくっているダイには火に灯油を注ぐようなものなので、言わないでおく。

 まったく、コイツも言動がまともになれば彼女の一人や二人簡単にできそうなもんだけどな。地味に俺なんかよりイケメンだし。

 

 

「夏休み中だってシャミ子と佐田と学校で会ったらしいじゃねーかよ! 彼女持ちが浮気しやがってよォ!? 陽夏木に謝りやがれ、このタコ!!」

 

「なんてこと言うんだこの馬鹿野郎!アレはまぞくを探してたんだって言っただろ!

 あとミカンはまだ彼女じゃない!」

 

「じゃあなんで俺には何も言わねぇんだよ〜!」

 

「おまえその日は部活の合宿だっただろ!!」

 

「うるせ〜うるせ〜!!!

 お前みたいな奴は一旦もげれば痛ェ!!!?」

 

 面倒くさくなってきたダイの頭を、健康観察板が直撃した。うんざりしたような顔つきの先生が、ダイを睨んでいる。

 

「遊元くん、神原くんにつっかかる前に引っかかりまくったテストの直しを出しなさい」

 

 あーあ、かわいそうに。これからお前は、休み時間という休み時間をすべて奪われ、放課後まで補習地獄に振り回されるんだな……

 そんな気分になりながら、引っ張られていくダイを優しく見送ってやった。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 ダイがしめやかに先生に連行されるさまを見届けた俺は、シャミ子とミカンが集まってるトコに行ってみた。そこには、千代田と佐田もいる。

 

「魔法少女は運動においてはバランスブレイカーだから人に混じってスポーツとかできないのよ」

 

 ミカンのそんな声が聞こえる。

 思えば、小学校・中学校の頃はミカンはあんまスポーツに参加しないタイプだったな。運動神経いいのにもったいない、と光と闇の事情を知る前の当時の俺は考えてたっけ。

 

「でもでも、魔法少女同士のテニス勝負とか見てみたくない!?」

 

「佐田、ちょっとその話詳しく」

「見てみたいです!!」

 

 佐田のロマンあふれる話に色めき立つまぞく二人。

 千代田もミカンも一般ピープルに比べて力が半端ないから、ボールが心配だがそこは俺が魔力コーティングすれば何とかなるのでは……!?

 

「桃、今から外に―――」

「ミカン、ボールは魔力でコーティングするから―――」 

 

「サーブでボールが爆散して終わりだよ」

「私と桃のパワーに耐えられるコーティングしたら試合で死人が出るわよ?」

 

「「キサマ等それでも夢と希望の魔法少女か!!!」」

 

 本当に、この魔法少女どもは……契約した時に夢とロマンをどこに置いてきたんだ……!

 

 

『今日はこれから委員会会議があります。各委員会は集合場所に集まってください』

「あ、時間だ。じゃあ私はこれで」

 

 委員会とやらの放送と共に千代田がどっかへ行ってしまった。というか……

 

「「委員会?」」

 

 こっちに転校してきて日の浅い俺とミカンには何のことやら、って感じだ。前の学校にもあったから単語自体は知ってるんだが……

 

「うちの学校はどこかの委員会に所属する決まりなんだ。

 でも、クロウ君もミカンちゃんもどこに行くか決まってないよね?」

「ああ、まぁな」

「待ってて、せんせー呼んでくる。せんせ~~っ」

 

「あら、陽夏木さんと神原くんがまだ委員会に入ってなかったのね。どこか希望はあるかしら?」

 

 先生の一言で、わらわらと生徒が集まってきた。クラスメイトから他クラスの人までいる……まさか、委員会関連のお誘いか!?

 

「ぜひとも人体標本磨き委員会に―――!」

 

 眼鏡の女子が必死に迫る。

 いやなんだその委員会。誰がどう喜ぶねん。

 

「つるむらさき栽培委員会が人手不足だよ!」

 

 薄紫色の髪の体育会系女子がハキハキと言う。

 そのマニアックな植物?はなんだよ。つるむらさきってなんぞ…?

 

「ゾンビ対策マニュアル作成委員会はどう……?」

 

 小倉とは別路線の長い黒髪の女子が物欲しそうに見つめてくる。

 ゾンビ対策ってなんだ!? 出るの?まさか出るの!?

 勘弁してくれ。俺は暗黒神と魔物で満腹寸前なんだ!追加でゾンビ系はいりません!かえれ! ……まぁ、委員会の業務と称して「バイオハ○ード」やってんなら話は別だけどさ?

 

「君たちには是非、委員会研究委員会に入って頂きたく!」

 

 髪を整え、四角い眼鏡をかけた生真面目そうな男子が声高々に言う。

 お前に至っては「委員会」って単語がゲシュタルト崩壊してるだろーが!意味不明過ぎて論外だよこのおバカ!!

 

 

 なお、先生が笑って言う事には、生徒が見つけた仕事に対して、委員会を作っていい事になっているらしい。その敷居がけっこう低く、誰でも作れるそうだ。だから少々変わった委員会もあるのだそうだ。

 俺達を誘ってきたヘンテコ委員会たちは「少々変わった」レベルじゃあないけどな、明らかに。

 

「つまり、ミカン栽培委員会も作っていいってこと…!?」

「いやでもさ、あれって実がなるまで4、5年かかるんじゃなかったっけ?」

「陽夏木さん、卒業までに収穫間に合わないと受理できないわよ」

「ままならないわ…」

 

 つまり、俺はそんなスーパーヤベイ委員会も混じった中からひとつを選んで入らなくてはならないのだ。いくら新たな委員会が作りやすいからって流石に新しく作る気はない。いまミカンがミカン栽培委員会を作ろうとしたら収穫時期が卒業に間に合わなくて却下されたみたいに上手くいくとは限らないし、俺のマヨネーズ関係は委員会の業務というより人生の一部だ。委員会にするにはなんか違う。

 

「先生、俺……ちょっと色んな委員会を見て回っても良いですか? 決めるのはそれからってことにして……」

 

「良いわよ。いっぱいあるから、しっかり考えてくださいね」

 

 

 俺は、ひとまずカオスな――もとい、バリエーション豊かな委員会を知るため、最初の集まりは様々な委員会のもとへ顔を出すことにした。

 ……もちろん、先ほどアピールしてきたヤバい委員会は絶対スルーすると心に決めて。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 体育、保険、会計、安全………色々な委員会の会議を見て回った俺だったが、いまひとつピンとくるものはなかった。最悪、無難なトコならどこでも良いが、これといった決め手に欠ける状況だ。

 

「……やっぱり、ここは適当に決めるべきかな」

 

 そう思った矢先、教室のひとつに、妙な貼り紙をされているのを見つけた。

 近づいて見てみれば、貼り紙にはこう書かれていた。

 

 

『超常対策委員会』

 

 

 …………あー……、コレはあれか。

 さっき俺とミカンがフリーだって知った途端に絡んできた、ヤベー委員会の仲間か。

 見なかったことにして、適当に委員会を決めちゃうか。

 踵を返して……「にげる」を選択!!

 

 

「あ、待ってくれ神原。君にちょっと話がある」

 

 

 ……しかしまわりこまれてしまった……ッ!!

 逃げるのに失敗した俺は、その声に振り向く。

 雪のように真っ白なセミロングの髪と紫色の瞳に見覚えがあった。確か、クラスが一緒だった気が…

 

「君は、同じクラスの……」

 

篇瀬(へんぜ)吹雪(ふぶき)。同じクラスだってことは覚えていてくれたんだね」

 

 そうだった。転校したての頃、苗字が読めなくって「うぅん???」ってなった記憶がある。

 だが、俺自身彼女とはあんまり付き合いがなかったからな。ちょっと忘れかけてたわ。

 

「…それで、篇瀬はどうしてこんなところに?」

「フブキで構わない。なんなら、『ふーちゃん』と呼んでくれても良いぞ?」

「いや、それはちょっと」

 

 なんでそんなにグイグイ行けるのか。ミカンももうちょい遠慮すると思うんだけど?

 

「それで、篇瀬は―――」

「フブキ」

「え? ……いや、あの…へん」

「フブキ」

「………フブキは、なんでこんなトコにいるんだ?」

 

「なんでもなにも、この委員会に所属してるからさ」

 

 チクショウ、やっぱりか。

 クラスで見かけた時は、目立つ髪と目をしてるなー、とは思ったけれど、所詮はさっきの「人体模型磨き」とか「ナントカ栽培委員会」とかと同じってわけか!?

 ……どうする? 早いとこ逃げなければ、この意味の分からん委員会に引き込まれてしまうぞ……?

 

「あ、あの、俺はそういう事は……」

 

「いや、確かに我が委員会もメンバーを募集してるが、君に声をかけたのはそういう目的じゃあないんだ」

 

「? それは、どういう……?」

 

「神原……いや、私だけ名前呼びされるのも不公平か………クロ君にはちょっと、やってほしいことがあるんだ」

 

 やってほしいこと?

 それは一体、という前にフブキは教室に入っていった。

 そして……

 

「私と一局チェスに付き合ってくれないか?」

 

 チェスボードを持ってきて、いい笑顔でそう言った。

 

 

 

 結局、言われるがまま、チェスボードにコマを並べて一局勝負する事になった。

 俺はチェスは…テレビかなんかで見たことしかないし、戦略どころかコマの名前や動かし方が分かるか怪しい始末だ。そんなんでいいのかとフブキに言ったら、彼女は「コマの動かし方くらい教えるさ」とのことで。

 

 少しの間、コトンコトンと木製の駒が盤場を歩く音が教室に響く。

 フブキは、やっぱり強い。……まぁ、俺がチェスをやりたてのド素人だから話にならなくて当然だけど。

 

 

「ねぇ………クロ君。君は優しい人だね」

「はい?」

 

 

 突然、フブキがそんなことを言い出す。

 いきなり何言ってんだこの人。ヤベェ、考えてることがさっぱり分からん。

 

 

「なぁ……フブキ。急にそんなこと言った意図を教えてくんないか?」

 

「チェスの盤面を見てたら次第に分かるものなのさ。どの駒をどう動かすかで人柄が見えてくる。

 君はとても優しい―――お人好しなヒトさ。どうして暗黒神の後継なんかやってるか分からないくらいにはね」

 

「……後継者の件は半ばゴミ先祖から押し付けられたようなモンだしな。暗黒神を知りたいのも、力の使い方を知りたいからだ」

 

「大切な人を守るためか。例えば………陽夏木さんとか」

 

「!!?」

 

 力を知る目的を言い当てられ、ミカンを守りたいことも言い当てられ、俺は驚きのあまりフブキを見る。フブキは、意味深に笑いながら続ける。

 

「ふふ、当たりかい?」

 

「なんで―――」

 

「ダイアンが君が羨ましいって言っててね。陽夏木さんと付き合ってるとも聞いたかな。それで」

 

「ダイ情報かよ!!!」

 

 あの野郎、いくらカワイイ彼女が欲しいからって俺の情報で好き勝手しやがって。ミカンとはそういう関係じゃあないって耳にタコができるほど言ったってのに、全く信じてないな。アイツにはあとで、グリグリを食らわせてやる必要があるな、これは。

 

「…で、付き合ってるのかい? クロ君と陽夏木さん」

 

「ダイが勝手に言ってるだけだ。俺とミカンはそういう仲じゃない。ただの幼馴染ってだけだ」

 

「そっか。ならいいや」

 

 フブキはその話を切り上げると、再びチェス盤に視線を落とし、木製のビショップを動かした。

 俺の番が回ってきたことをうけ、クイーンで一気に攻めようと持ち上げる。

 

「クロ君、チェックだからね」

「うっ………!」

 

 ……そして、クイーンを元あった場所において、キングの逃げ道を探すべく王冠を被ったコマに手を触れた。

 その後のことだが、あっという間に詰まされたのは言うまでもない。チェス始めたての素人相手に本気を出さないでくれないだろうか………

 

「クロ君」

 

「ん?」

 

「もし…もしだよ?

 もし何らかの悩みがあるのであれば……相談することを勧めるよ。

 私じゃあなくっても、陽夏木さん……はダメか。シャミ子とか佐田さんとか小倉さんとかにね」

 

「ふ、フブキ? 一体なんのことを言って―――」

 

「陽夏木さんの呪い。なんとかしたいんでしょう?」

 

「―――っ!!? お、お前、どこまで知って…」

 

「あ。急用を思い出した。必ず戻ってくるからね!!」

 

「イヤそれ逃げるヤツーーーー!!!?」

 

 対局後、俺に質問する暇さえ与えずチェス盤を片付けて颯爽と走り去ってしまったフブキ。

 まったく、小倉とは違う意味で面倒なやつめ。お陰で、アイツの言いたかったことが半分も分かりやしないぜ。………でも。

 

「……………またチェスでもしに来ようかな」

 

 

 見透かされたことに、悪い気がしなかったのは何故だろうか。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 フブキとのチェスで時間を食ってしまったことに気づいた俺は、校舎の裏で猫達と戯れている千代田を発見した。

 

「………千代田? いったい、何してんだ?」

 

「委員会の業務中」

 

「どんな業務だ」

 

「ねこに群がられ委員会」

 

 うーん。イヤそれ、どっからどう見ても、ねこちゃん達に群がられて遊んでるようにしか見えない。

 

「学校に必要ないだろ」

 

「………そんなことないよ、すっごく必要だよ」

 

「こっちを見て理由を言え魔法少女」

 

「が、学校周辺に住む猫が……一匹一匹…元気なことを確認することで街の平和? が間接的に―――」

 

「はぁ…」

 

 もう少しマシな言い方と理由があるだろうが。

 こんなんじゃあ、騙されやすいシャミ子ですら騙せんぞ。

 だから―――

 

「なぁ、千代田」

「なに?」

「俺もその委員会、入っていいか」

「!!?」

 

 ―――俺もそれに助力しよう。

 そもそも、俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 むしろ、自分で雇用を創出したクリエイティブな発想を褒めたいくらいだ。だが、新しい発想は時に理解されないことの方が多い。だから、説得力のある説明は重要になるのだ。

 俺は口がうまいって自信を持つほどではないが、つっかえつっかえで自分に嘘をつきながらの千代田の説明よりもっとマシな説得が出来る自信がある。

 

「………人員は間に合っています」

 

 千代田があからさまに「一人分の取り分が減るからヤダ」って顔をしているが、こっちには取引の材料はいくらでもある。

 

 

「先生はどう誤魔化したんだ? それにシャミ子は兎も角、他のメンツにさっきの言い訳じゃあ苦しいぞ」

 

「……っ!」

 

 言葉に詰まる千代田に「これだ」と一枚の紙を見せつける。

 それは、委員会設立申請書だった。委員会の見学に行く際に、先生から「もし自分で委員会を作りたくなったらそれ使ってね~」と貰ったものだ。使う機会など来ないだろうと思ったが、まさかここで使うことになろうとは。

 この申請書の委員長欄に千代田の名を、副委員長欄に俺の名前を書く。活動目的には、「この学校周辺に住む猫の状態を確認することで、学校周辺の平和の状態や迫る危機を未然に察知する事」みたいなことを堅っ苦しい表現で書く。

 極めつけに、備考欄にはこう書いた。

 

『特別委員:メタ子、チロル

 彼らは猫でありながら知能を持ち、日本語を用いたテレパシー及び発声を行うことが可能であるので、猫と人間の言語の壁を越えることが容易になる。よって彼らは本委員会の業務に必要不可欠なメンバーである』

 

「!? か、神原くん……まさか!?」

「チロルとメタ子の存在……コレが切り札だ。こう書けば『人間と猫の意思疎通ができる』と思わせることができる。嘘は1ナノも書いてないから自信を持って堂々とできるしな」

 

 そう。ここのミソは『嘘を一切書いていないこと』にある。

 チロルと俺が意思疎通できるのは紛れもない事実だし、メタ子に至っては千代田のナビゲーターだからか日本語を喋ることが可能だ。「時は来た」としか言えないだけで。

 だが嘘は書かない。『日本語で会話ができる』とは書かず、『日本語を喋ることが出来る』と書く。こうすることで「言葉で意思疎通ができる猫ちゃんがいるなら業務が成り立つな!」と思わせることが出来るのだ!!

 

 あとはコレを出すだけ。先生を味方につければこっちのもんよ!

 

 

「ふふふ……神原くん、いつからそんな悪知恵が回るわるまぞくになったのかな?」

「なんのことだ? 俺は事実を書いただけ。新たな雇用を生み出したわる魔法少女ほどではないさ」

 

 俺も千代田も、猫に埋もれながらの笑いが止まらない。そのさまは「越後屋、お主もワルよのう」「いえいえ、お代官様ほどでは」とアヤしい取引をする商人とお代官を彷彿とさせる。

 

 

 だがしかし。そこに邪魔者が現れた。

 

 

「あ、桃、クロウさん……何してるの!?」

 

 シャミ子だ。ミカンと佐田もついてきている。しかし、俺達の野望……もとい、委員会は誰にも止められない!

 

「わー、クロウ君もちよもももすっごい悪い顔ー」

 

「失礼な。俺たちは今、新たに生まれる委員会の業務中だぞ」

 

「何の!?」

 

「ねこに群がられ委員会」

 

「どういう仕事!? 学校に必要ないですよね!?」

 

 予想通りの反応をする三人に、こちらに目配せをしてくる千代田。

 期待されたからには、仕事はしなくっちゃあな。

 

「必要ない? そんなことはない。

 猫には予知能力があるとされている。それを利用し、猫の様子を観察することでこの街の平和を確認し、未然の危機を察知するのが俺らの委員会だ!」

 

「デタラメ言っても騙されませんよ、クロウさん!」

「そうよクロ! おサボりは駄目よ!!」

「だいたいさー、猫と意思疎通が出来ないと意味ないよねー」

 

 

 簡単には納得してはくれないか。だが佐田よ。お前はいま良い事言ってくれたな。

 

 

「……忘れたのか? 俺には意思疎通ができる猫がいることを……!」

 

「え?………あ! まさかチロル…!!」

 

「そうだ。人間と猫で会話ができなくとも、チロルが俺とテレパシーで会話できる限り、猫が何を見てきたのか、危機が迫っているか否か、知ることができるのだッ!!!」

 

「なんですとーーー!!?」

 

 よし、シャミ子をまるめこみまぞくにすることには成功だな。チョロいなワハハ。

 あとは佐田とミカンを説得するのみ!

 

「ど、どうしましょうミカンさん杏里ちゃん!? クロウさんと桃はサボってませんでした!」

 

「そうだ二人とも。現に俺は今からこの申請書を先生に出しに行くところだったんだぞ」

 

「先生がどうかしましたか、神原くん?」

 

 なんということ。天はどこまでも俺と千代田に味方してくれてるみたいだな。このまま申請書を出して、俺らの委員会を認めてもらうとしよう。そうすれば、ミカンも佐田も口出しできない!!

 

「新たな委員会の申請をしたくてですね……」

「あら、そうなの?意外ね。わかったわ―――」

 

 申請書を先生の手に渡す。勝ったッ!!

 

 

「―――待ってください先生!!!」

 

 

 ―――渡ったと思われた申請書が、なぜかミカンの手に!? しかもミカンが、いつの間にか制服から魔法少女のコスチュームになっている!?

 ま、まさか…今のやりとりで変身して、目には見えない身体能力で俺と先生の間に割って入ったと言うのか!?

 なんてこった!! そんな真似が千代田以外にできたヤツがいたとは!!

 

「千代田! いますぐミカンから申請書を取り返して―――」

 

 急いで千代田のほうに振り替えれば、千代田は再び猫に埋もれていた。しかも、膝の上にネコちゃんがいるから、迂闊に動けないのか! ええい、タイミングの悪い!!

 

 

「……あ、先生!ここの記述、ウソが書いてあります!!」

「ウソ?」

 

「うわあああああああああミカン!!? それ以上は言うな! やめろオオオオォォォォ!!」

「正確にはウソじゃないけど、不都合な事だけが省かれているんです。メタ子は『時は来た』しか話せませんし、チロルはまだ生まれて間もない子猫です! これでは意思疎通はできません!!」

 

 

 お、終わった。これでもかというくらいにしっかりと終わった。

 まさか……まさかミカンが早業という千代田みたいな真似をしてくるなんて………ッ!!

 

 

「千代田さん、神原くん。意思疎通ができないなら、申請は却下ですね~

 書類にもどうやら、ちょーっと不備があったみたいだし」

「そ、そんな………!」

「せんせ~、ちよももとクロウ君を体育委員会に引き込んでもいいですか~?」

 

「や、ヤダ………………」

「これで勝ったと思うなよ……」

「クロも桃も異論ないみたいです」

「なら許可します~」

 

 

 こうして、俺の委員会選び……そして、猫に群がられ委員会という名の二人の野望は、あっけなく終わったのであった。

 

「あ、それと陽夏木さん。校内では変身禁止ね」

「あっ…ご、ごめんなさい……!」

「よーし、魔法少女と暗黒神後継ゲット~!君達にもガンガン手伝って頂こうか」

「ヤダ……」

「あぁ…理想郷が遠ざかる……」

「二人とも!サボっちゃだめですからね!!」

 

 

 ………泣けるぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ! 次は最後の最後の詰めまで甘くならないように注意するんだ!




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
 委員会に選んで入るにあたり、とっておきの作戦で桃と二人で欲望を満たそうとした暗黒神後継者。桃の委員会(笑)を知るまではどこでもいいと思っており、桃と比べると執着はなかったようだが、それでも「ねこに群がられ委員会」を作れなかったのは相当悔しく思っている。申請書を書く際に使った『ウソを使わずに人を騙す』作戦は、やっぱりゴミ先祖ことラプソーンに教えられたもの。
 また、今回はクロウ独自の交友関係を増やしてみた。シャミ子たちの学校を共学設定にした以上男友達が欲しいなと思い、泰庵を作り出すに至った。


遊元(あすもと)泰庵(だいあん)
 クロウが転校先で仲良くなった一般生徒。種族は杏里やしおんと同じ人間。
 とんでもない女好きで、四六時中「彼女が欲しい」と嘆いている非リアの代表のような男。だが、金髪にイケてるフェイスとルックスは決して悪くなく、むしろ残念な性格が災いして女子にお断りされている節がある。
 名前のモデルは色欲の悪魔・アスモデウス。杏里やしおんが悪魔の名前をモデルにしている説があった(佐田杏里→サタン、小倉しおん→グシオン)ので彼もその例(?)にならった。
誕生日/血液型:11月11日、AB型だ!
趣味:流行のファッションとモテテクを確認すること…でいいのか?今思いついたんだけど。
座右の銘:愛して失恋する方が、まったく愛さないよりも良い!


篇瀬(へんぜ)吹雪(ふぶき)
 クロウが転校先で知り合った一般生徒。種族はこれまた人間。
 雪のような白い髪と紫色の瞳、そして飄々とした話し方が特徴的な、一風変わった女子生徒。
 名前のモデルは暴食の悪魔・ベルゼブブ。
誕生日/血液型:2月9日、B型さ。
趣味:誰かとチェスをすること、かな。一局やれば人柄が見えてくる。
座右の銘:意志あるところに道は拓ける。


この人の事をもっと知りたい!(拙作オリキャラ限定)

  • クロウの母親魔法少女・神原玲奈
  • お嬢様系青色魔法少女・不二実里
  • ナンパ陽キャ一般人・遊元泰庵
  • 不思議チェスプレイヤー・篇瀬吹雪
  • 上の選択肢には乗ってない!(感想欄でさり気なくどうぞ)
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