まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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 あけおめでーす。今年も『まちカド暗黒神』をよろしくお願いします!
 ……ってもう1月終わって2月になるじゃねーかアアアアア!!!
 はい、すみませんでした。他の作品と同時進行したせいです、確実に。
 今年もこの不定期更新になりそうな「まちカド暗黒神」をよろしくお願いします!!!!





今回のあらすじ

ウガルルがあらわれた!
ラプソーンはなにかをつぶやいた!
なんとスラリンは通信機に変身した!



蜜柑を救え! 暗黒神とまぞくと眷属の決意!!……ま、待つんだ佐田。救いたいのは俺の偽りのない本心だ。だから通報は勘弁してくれェェ!!

「ねークロ」

「ミカン、ハサミならプレートの下に隠れちゃってるぞ」

「わ、ホントだ。ありがとうクロ。 ……そうそう、スズランテープなら遊元くんがさっき持ってってたから」

「マジか。さっきから探してたんだよな……助かる、ミカン」

 

 俺達はいま、体育祭の大道具作りと小道具作りと競技のシミュレーションとその他諸々の準備を進めていた。

 俺と千代田が(ほぼ強制的に)体育委員会に参加させられてから、体育祭の準備が急ピッチで進められている。うちの学校は、夏休み終わってすぐに体育祭だから毎年の事ながらこの時期の体育委員会がクソ忙しくなるらしい。

 

「陽夏木さーん、シミュレーション手伝ってー」

 

「はーい、今行きまーす!」

「ミカン、行ってこい。こっちの装飾は任せろ。

 ……オレンジの絵でいいのか?」

「頼んで良いかしら?」

 

「……………あの、お二人さん?」

 

「? どうした佐田」

 

 ミカンがシミュレーションで駆り出されようとしている時に佐田が声をかけてきた。なんだろうか?

 

「二人って、ホントに付き合ってないの? 息ピッタリ過ぎるんだけど」

 

「またそれか。付き合ってないって言ってるだろ。幼馴染ならこれくらい当然だ」

 

「いや、だからって何も言ってない上にノールックなのにお互いの探し物が分かったり要件が分かるのは相当だよ。夫婦かな?って疑うくらいには」

 

「「夫婦じゃない!」」

 

「わー、息ピッタリー」

「あ、ごめんなさい陽夏木さん神原くん、私達お邪魔だったかしら?」

 

「お邪魔じゃない! ミカン、シミュレーション行きまくっててくれ! こっちはなんとかするから!!」

「ええ、わかったわ!!!」

 

「仲良すぎなんだよなー」

 

 ド(やかま)しいわ、佐田杏里。口じゃあなくて手を進めろや。

 千代田を見てみろ。アイツ、猛烈にミシンでタスキを縫ってるぞ? しかも相当凝っていると見た。

 

「千代田、タスキありがとな」

「桃、けっこう楽しんでますね?」

「そんなことないよ、早く切り上げたいだけだよ」

「あー、それはわかるマンだわ」

 

 早く切り上げて猫にただいまを言いたいんだろう、分かるぞ。俺も半分は早く切り上げたい気持ちでいっぱいだ。

 もう半分はというと……ミカンのこと。別に心配とかはしてないが、クラスに馴染めてるか分からなかったからな。前の学校の時、ミカンの呪いが降りかかってきたときの良い言い訳とか超苦労したもん。その時は呪いと知らなかったから尚更に。

 しかし……ミカンも、この学校では問題なく馴染めているようだ。

 

「ミカンさんってカッコいいよね~」

「スタイルいいよね~」

「走る姿も綺麗だし」

「ホントだよな~、俺らん学校の美女ランキングトップ狙えるんじゃね?」

「彼女にするならあぁいう人だよな~!」

「ミカンちゃんもアレで彼氏がいなければなァ~~!!!」

 

 男女問わず、ミカンは人気のようだ。前の学校でも思ってたことだけど、アイツ華があるし面倒見いいからな。女子にも好かれるタイプなんだろう。あとミカンに彼氏はいないぞ。

 そう思っていると、準備に参加してた男子たちの視線がいっせいにこっちを向いた。

 

「「「「「神原、死すべし!!」」」」」

 

「何でだよ!!?」

 

 誰がミカンの彼氏だ!!

 

「まぁまぁ、もう白状した方が良いんじゃないかな? ミカンの彼氏だって」

「違うって言ってんだろ!! なんでそんなにくっつけたがるの君ら!?」

「少なくともミカン推しの最筆頭だよね、クロウ君は。ちよもも推しのシャミ子と同じ立ち位置だよ」

「こっちに飛び火させるな! あと私に推しとかありません!!」

 

 シャミ子まで巻き込んで雑談に花を咲かせながら、プレートや校庭の壁にかけるでっかい看板の仕上げに取り掛かっていく。

 すると、突然ドターン! と音がする。

 大きな音に振り向くと………

 

「ミカン!!!?」

 

 ミカンが倒れていた。

 なんでだ。何で倒れてる?

 不二の時のように、誰かにやられたのか?

 いや、そんな事より早く彼女に回復を―――

 

「待ってみんな!! ミカンは気絶した時が呪いが一番……」

 

 千代田が言い切るより先に黒く禍々しいエネルギーがミカンに集まる。

 嫌な予感がして、咄嗟に魔力を前面に展開した。

 

 瞬間、破裂したエネルギーが魔力のバリアを逸れるように通り抜けていき、暴風が巻き起こった。

 

「うおおおおっ!!? こ、これは一体………ミカンは!?」

「ミカンさん大丈夫ですか!!?」

 

 シャミ子と一緒にミカンに駆け寄って診てみたが、頭を打ったらしきところも特にぱっと見大怪我ではなさそうであり、冷やしておけば大事にはならなそうではある。

 

「あぁ、看板が壊れて……」

「ごめんなさい…」

「ミカンちゃん悪くないよ!後ろ見ずにペンキ持ったから…」

「というか騎馬から落ちたよね?大丈夫!?」

「そうだな……看板なんぞよりも、そっちが大切だ。佐田、なんか冷やせるモン持ってないか?」

「さらっと看板なんぞって言ったね……ま、凍ったペットボトルあるからこれ使いなよ!」

「ありがとな」

 

 その後、ミカンの頭を冷やしながら千代田から事情を聞いたのだが、ミカンの持つ呪いというのは、気絶した時に一番暴発しやすくなるとのこと。不二との戦いの時は今回の時ほど暴発しなかったから完全に油断してたわ……

 

 その後の作業は特に何事もなく終わることができたものの、ミカンの「影が差した」という表現がピッタリなくらいの様子は気にせずにはいられなかった。

 

「ミカン…あのよ……」

「今日は一旦距離を取りましょう。今はどんな呪いが出るか分からないし……誰かが怪我するなんて嫌だから……。クロやシャミ子や桃…それに他のみんなも、私大好きだから……先に、行くわね」

「………………」

 

 ―――こんな事を言われてしまったら、何とかしたくなって当たり前だ。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー……と。これは―――どういうこと?」

 

 

 時はやや流れて夜7時、ばんだ荘、ミカンの部屋にて。佐田が呆然として呟く。

 無理もないだろう。彼女が部屋に入った途端目に飛び込んできたのは………

 

 まず、シャミ子と千代田とミカンが三人で川の字で寝ていて。

 ミカンの頭を正座した膝に乗っけて――いわゆる、膝枕と言うヤツだ――いる俺。

 そして、横になったミカンに乗っかっているスラリン、リリスさん像、ゴミ先祖の杖。

 

 これだけ見ればどう取られてもおかしくはない。おかしくはないが………

 表情がするりと落ちた佐田が、スマホの画面を見せてくる。そして。

 

 

 

「とりあえず……こういう事で良いのかな?」

 

「待ってくれ佐田ァァァァァァァァァァァァァァ!!!! 弁明…じゃない、状況を説明したいからその110番通報1秒前のスマホから手を放してくれええええええええ!!!」

 

「いや、だって……どう見ても、寝込みを襲ってるようにしか……」

 

「襲ってないから!! 頼むからスマホを置いてくれェェェ!!!」

 

 ここで無理矢理にでも事情を教えなければ、俺はポリスメンのお世話になっちまう。そんなの絶対にお断りなのですぐさま説明を始めた。

 

 

 

◆  ◆  ◆

 

 

 

 こうなったきっかけは、俺が帰宅後に起こった出来事をゴミ先祖に話したことにある。ひとしきり話を聞いたゴミ先祖は、一言こう尋ねた。

 

『……それで、お前はどうしたい?』

 

 意外だ、と思った。

 こういう時、普段のゴミ先祖なら『陽夏木ミカンが弱ってる今がチャ〜ンス! 口説いて闇堕ちさせるのだ!!』とか言いそうなものだが。そんな心情を読み取ったのか、こう続けた。

 

『暗黒神の後継者たるもの、時には重要な判断を己の意志で決める経験も積むべきだ。我はその気になれば傀儡などいくらでも用意できるゆえ、そこら辺はしっかりするぞ』

 

 何だか裏がありそうだが、ミカンをどうしたいか……など、迷う訳がなかった。

 今の彼女は、一人で背負おうとしている。自分の呪いなのだから不自然ではないが、それ故に俺達を離れさせようとしている。

 でも……俺は誓った。呪いなんぞ気にならなくなるほど強くなると。ここで何もしないのは、その約束を破ることを意味する。

 

「俺は…ミカンを助けたい。約束を守る。暗黒神の後継たるもの―――あの呪い程度でミカンを諦めてたまるか!!」

『その意気だ、我が子孫!!!』

 

 そこからの行動は早かった。ゴミ先祖の杖を掴み、すぐに家を飛び出す。後ろからスラリンがついてくる気配を察しながらもミカンの部屋の前まで行けば、そこでシャミ子と千代田と合流した。そして、その勢いでミカンの部屋へ突入。

 

「暗黒神(後継)だ!手を上げろ!」

「えっ!?急に何!?」

 

 俺は諦めたくない一心でミカンの元に行ったのに対し、シャミ子には考えがあるようで、夢の中に行きミカンの呪いの元を何とかする気だったようだ。ミカンに取り憑いているものは「ウガルル」と言うらしく、メソポタの怪物から取った使い魔らしい。ミカンのおやっさんは似たような依り代に簡単なルーチンをつけてミカンを守ろうとしたそうだ。

 だがミカンの実家跡地の探索の時に聞いたように雑な儀式のせいで事故ってミカンの中で制御不能になり、そこに千代田と桜さんが駆け付けて、今に至るのだという。

 シャミ子がおふとんタイムに突入する為に布団を敷く……のだが、ここで問題が発生。

 

「ねぇ、シャミ子や桃はともかく…クロはどうやって夢の中に突入するつもりなの?」

「あっ……!」

「確かに…!」

「まぁ………そこだよな」

 

 夢魔と関係を持ってない俺に、ミカンの夢の中に行く方法がないこと。

 俺としては、一時的にシャミ子の眷属になって同行するプランを考えていた。魔法少女の千代田と違い、同じ闇の者同士なため抵抗はなくシャミ子とリリスさんが許可を出せば問題ないと思った。のだが。

 

『そんなのヤ〜ダ〜!! 我の子孫は誰の眷属にもさせんぞ!!しゃみ子達が許してもこの我が許さん!!!』

 

 ……うちの燃えるゴミが駄々をこねだしたのだ。

 ミカンの危機だっつってるのに、手段を選んでる余裕がある訳ねーだろ。

 

「…そういうなら、代わりにどうするかとかは考えてあるんでしょうね?」

『当然。反対するなら代案を用意するのは社会人―――否、暗黒神として常識だ』

「嫌な常識だなオイ」

『そう言うな。その為のスラリンなのだから』

「え?」

 

 ゴミ先祖が考えてる代案とやらとなんかついてきたスラリンに何の関係があるんだ?

 

「ピキッ?」

 

 スラリンの方を向くと「どうかしたの?」と言わんばかりに鳴くばかり。「可愛い…!」と呟いたミカンと目が離せていない千代田、しっぽが暴れているシャミ子を理性を振り絞って見なかったことにし、ゴミ先祖に尋ねる。

 

「……スラリンで何するつもりなんだ?」

『まぁ待て。取り敢えずしゃみ子に千代田桃、貴様らは陽夏木ミカンの夢に先行しててくれまいか?

 クロウは…そうだな、スラリンのチューニングが終わり次第向かうことになる』

 

 不思議な顔をした女性陣を横にさせたゴミ先祖は、スラリンに近づくと何やらボソボソ呟いて何かを始める。そして、その何かが終わると同時にスラリンがシャットダウンしたかのように動かなくなる。

 

「お、おい、ゴミ先祖!一体何を……」

『スラリンを覗いてみよ。すぐに分かる。』

 

 言われるがままにスラリンを覗いてみれば、何かが映し出されていた。

 薄暗い空間。そこに起き上がったらしい私服のシャミ子と闇堕ちフォームの千代田。

 

「こ……これは一体…!?」

【えっ!! す、スラリンからクロウさんの声が!?】

【ほんとだ……神原くん、聞こえる?】

 

 どうなっているんだ?? なんで、スラリン越しにシャミ子と千代田が見える……? それに、スラリンから俺の声がするって……??

 

『これぞスラリン通信機! クロウを眷属化させぬまましゃみ子への夢へと突入する方法よ!

 今回はコレで二人を補助する形になる!』

 

【す…すごいですラプソーンさん!】

【で、でも…スラリンがなんでミカンの夢の中に……?】

『スライム族は本来聖にも魔にも属さぬ。それはつまり、あらゆる状況に適応できることを意味しておるのだ。

 それにスラリンはクロウの魔力料理を日頃から食べていたからな。あと、先日千代田桜の泉に浸かっただろう? スラリンを送り込んで、現実の我らと中継を繋げて操作することなど出来て当然といったところか』

 

 それは、俺の本来のプランとは別の方向ですさまじいものだった。

 まさか、スラリン達にご飯をあげ続けていたことがこんな形になって返ってくるとは。かつて世界の宿敵だった暗黒神ラプソーンは、存外器用でかつ頭が良いようだ。

 

『…余の一族の力に干渉するなんて、他のまぞくでも出来んぞ? ラプソーン、貴様は自分のやったことを理解しておるのか?』

 

『リリスよ。我は暗黒神であるからして、夢魔程度とは格が段違いなのだ。本来の力を発揮できれば、世の理など思いのままよ』

 

「……とりあえず、今回はこんな形でシャミ子をサポートして、ミカンを助けたいと思います。いいですか、リリスさん?」

 

『…勝手にしろ。足だけは引っ張るんじゃないぞ』

 

 リリスさんのお許しも出たところで、ミカンの夢の世界の探索を始めるとしよう。

 

『あぁ、そうだクロウ。お前には、スラリンの操作方法も教えておかないとな。

 基本的にAボタンが通常攻撃でBボタンが必殺技。スマッシュはABの同時押しだ。空前と横スマは威力もふっとばし力も高いし時にはメテオにもなるから覚えておけ』

「スマッシュって何?空前とかメテオとかなんの話だ!?」

 

 シャミ子と千代田の移動中、後ろをついていきながら操作方法を教わるとは思っていなかった。専門用語もあって半分近く意味わからんかったし。

 

【あれは…ミカンさん!?】

「何っ!!」

 

 わかった情報だけでスラリンを操作してシャミ子の頭に乗っかってシャミ子の視線の先を見てみれば、そこにはミカンがいた。目を閉じていて動く様子はなく、しかも周りの黒いモヤのせいでよく見えない。

 

【よく見てシャミ子、神原くん。あれを見てどう思う?】

【ミカンさんがかわいい】

「いや、まぁ…間違ってないけど、その前にミカンの周りの黒いのはなんだ」

【うん、神原くんと私がいなかったらシャミ子即死だったね】

【即死!!?】

 

 千代田によると、ミカンを守るように蠢いている特濃の霧は、ミカンを守る力場の本丸なんだそう。

 不用意に足を勧めていれば霧が襲い掛かり、シャミ子や俺をまぞくの開きにしていただろうとのこと。怖すぎる。

 

【まずは遠くからコミュニケーションを試してみて】

【エクスキューズミー、あいわんびーゆあふれんど!あいはばかしおーり!】

「シャミ子、菓子折りは英語だとcase of cakesだろ」

【いやまず何で英語にした】

【外国出身と聞きまして】

 

 ここで話が通じてくれれば良かったのだが、黒い霧は俺達を敵と認識し、攻撃しだした。

 

【やっぱり襲ってくるか!二人とも、時間稼ぐから説得して!】

【ウガルルさん!ミカンさんが困ってるんです!】

『駄目だ、こやつは存在が溶けてしまっておる!視覚も聴覚もない!おそらくよその魔力に反応して攻撃してるだけだ!』

「なんだって……!? じゃあ、説得の意味がねーってことかよ!なんとかならないのか、リリスさん、ゴミ先祖!」

『ミカンの魔力と混ざっちゃってる以上、下手に削るとミカン自身にまで悪影響だ!』

 

 リリスさんによって状況が悪いことがどんどん判明していく。

 俺もスラリンを操作して霧を散らさない程度に防御して、千代田を手助けしているが時間の問題でしかない。

 くそ、どうにもならないのか?

 リリスさんが撤退を呼び掛けたその時、黙っていたままのゴミ先祖がスラリン越しに言った。

 

『聞こえるか、シャドウミストレス優子よ!貴様の『ずるい武器』で、如来の棍を作り出せ!!』

「は!? お前、何を言って―――」

 

『あの棍なら実体のないウガルルだけを祓える!! 陽夏木ミカンを救いたいのなら早くしろ!!』

 

【ラプソーンさん…? 何を言ってるんですか!?】

 

『大義を見誤るな。我は現段階で最も効率的な手を案じただけだ。手をこまねいていても状況が悪化するだけ………さっさとやれ!それとも…()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

「!!?」

 

 あまりにもな提案に一瞬、俺もシャミ子も言葉に窮してしまう。

 如来の棍―――それは、シャミ子の杖の能力が明らかになった時にゴミ先祖が挙げていた武器のひとつ。その効果は……『実体のない敵すらもうちのめす』こと。

 いま、この武器を「ずるい武器」で作り出すことは……ミカンの中に溶けてしまっている()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 今はこんなでもかつてはミカンを守るためにおやっさんが呼び出したものだぞ? それを……儀式の不手際で制御不能になったからって、そんな……壊れた機械を廃品回収に出すのとはワケが違うんだぞ? もっとマシな手があってもいいじゃあないか!!

 

「…もうそれしかないのか? 溶けたモンをもっかい固めるとか、もっとなんかないのか?」

『くどいぞ我が子孫。我が提示したのは最適解―――』

【溶けた……固める?………! 桃、クロウさん、もう少し時間を稼いでもらえますか? 溶けた混沌を固める――武器をつくります】

「―――マジか!!」

 

 スラリンのコントローラー(というと違和感があるけど)を握る手が熱くなる。

 千代田とやる気が復活した俺がシャミ子を守りつつ、時間を稼ぎ。確保した時間でシャミ子が作り出したその武器は。

 

【いきます……!

 ずるい武器―――天沼矛(あめのぬぼこ)〜〜!!!】

 

 スラリンの空前と横スマ動作を覚えた労力に見合いすぎて、大量にお釣りが来ることを、俺はまだ知らない。

 ……ただ、シャミ子は泡だて器を武器だと思っているのか? もしそうなら、後でしっかりと教えておかないといけないのかもだけど。

 

 

 

◆  ◆  ◆

 

 

 

「……なるほどねぇ。そんな事があったのか」

 

「それで、裁判長……判決は?」

 

「判決前にひとつ訊くけど、シャミ子とちよももとミカン、誰の寝顔に惹かれた?」

 

「ね、寝顔に惹かれたってお前な……」

 

「はい有罪。執行猶予はつけるけど」

 

「そんな馬鹿な!!?」

 

 ―――で、今に至る。

 あの後、シャミ子がミカンの混沌を固めることには成功したものの、その直後に扉が開く音がしたから振り向いて見てみれば、そこには俺を通報する2秒前の佐田がいた。だから事情を話して無実を立証したはずなのに有罪をかっ食らったのはなんでだ。

 

「寝顔を意識した時点で執行猶予付きの有罪に決まってるでしょ。

 ミカンの返信がないから様子見に来たと思ったら、死屍累々だわクロウ君は寝込みを襲う体勢だわシャミ先は止めないわ、ラプソーンがいるわスラリンがいるわ………思わず通報しちゃうかと思ったよ」

 

「それはマジで勘弁してくれ………あと俺は襲ってない」

 

『クロウが襲うか否かは置いといて、状況としてはクロウの説明で大体あっておるぞ。同じ女性である余が保証する』

 

『然り。クロウはそう簡単に女性に手を出せる肉食系ではない。寝込みを襲うなど論外。遊元泰庵とかいう輩とは違うのだ。そこも我が保証しよう』

 

「え~~。ラプソーンが保証してもな~」

 

『佐田杏里貴様、我をなんだと思っているのだ!』

 

「喋る杖」

 

 漫才はおいといて、現在の状況も良くなったが油断はできない。

 佐田が来る直前に使い魔ウガルルの固まった姿を少し見たのだが、獣成分の混じった少女の姿をしていた。

 シャミ子のずるい武器・天沼矛(あめのぬぼこ)は成功し、なんとか話をできそうな状況に持って行けたが円満に出ていってもらうにはここからが本番だ。

 正直あの二人では不安が残る。シャミ子は天沼矛(あめのぬぼこ)を使った反動が来てるかもしれない&腹の探り合いが絶対に出来なさそうだし、千代田は話し合いよりも話し合い(物理)が得意そうなイメージだ。俺が目を離してる間に交渉決裂とか笑えない。

 

「―――というわけだから佐田、見逃してくれないかな……?」

 

「良いよ。さっきのことも黙っとく。…でも執行猶予として、三人が起きるまでスラリンサポートは私に交代ね。近づくのも禁止」

 

「泣きそう」

 

「起きたら(ミカン)に慰めて貰え」

 

「誰が夫婦だ」

 

 この宣言の通り、ここから先は佐田にスラリンのコントローラーを奪われた。

 ゴミ先祖とリリスさんが生き生きと佐田に指示を出しているのを部屋の隅でただ眺める。そして、窓から満月が見えて、ほろりと涙が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「杏里ちゃん、来てくれたんですね!

 あの、今から新たなる命の召喚を手伝ってください!!」

 

「よっしゃー任せろ……じゃねーだろ!!

 なにそれ!? 完全にやべー事じゃん!説明してくれ!!」

 

「あっ、ごめんなさい!」

 

 起き抜けにスーパーイカれたお手伝いをお願いしてきたシャミ子が言うには、スラリンサポートを俺から佐田に交代して手持ち無沙汰になり、月を眺めて黄昏れてる間にシャミ子と千代田と半覚醒のミカンがウガルルを説得し、現実世界で今夜中に召喚し直して新たな仕事を与える「ウガルル再雇用プロジェクト」を行うことになったんだという。

 かつてミカンの家でウガルルを召喚した時は魔法陣が小さく、依り代も脆かった上にお供えのから揚げも魔力スカスカ&レモン臭かったということで事故ったらしい。故に正しい召喚が必要になるのだという。

 だが俺はその「正しい召喚儀式のやり方」なんて知らないし、他の四人も知ってる様子はない。

 

「ゴミ先祖、なんか知らないか? 暗黒神なんだろ?」

 

『我の場合、おそなえは死にたてホヤホヤの生贄で―――』

 

「あ、もういいや。お前に訊いたのが間違いだった」

 

『何故だ!!!?』

 

「ラプソーンさん、命ロスト系のやばい儀式はちょっと」

 

 シャミ子の言う通りだ。新たなる命の為に人命ロストする類の儀式はお呼びではない。魔法少女も俺もシャミ子も許すわけなかろうが。

 通信機から元に戻ったスラリンは「ピキー!」と跳び回るばかり。仕方ない、アイツを呼ぶか。

 

「小倉!どうせ聞いてるんだろ、早く出てこい!」

「は~い! 儀式の材料だよね、ちょっと待ってて」

 

 う~ん、さすがというべきか、話を理解してまとめるのがすごいスピードで行われていく。リリスさんの像か俺のスマホで盗聴とかしてたんだろうけど。小倉が屋根裏から出てきたことに色々となんでだよって顔を佐田がしているが、気にしたら負けだ。俺の家の屋根裏にもアジトがあるかもとか考えたくないし。あと『やはり小倉しおんは我らの軍に入れるべきだ…!』と悪い顔でほざいているゴミ先祖は全力でスルーした。

 

 でも、小倉の尽力もあって儀式の準備は着々と進んだ。

 

 

「佐田、お前ん家精肉店だったよな?」

「そーだよー」

「『バードファイター』は取り扱ってるか?」

「えっ、あれ? うーん、少しはあったと思うけど」

「頼んでもいいか?俺が知ってる鶏肉であれ以上のものは知らない」

 

「あ、なら私がお肉持って『あすら』に行きます!事情を話してきます」

「お願いね、シャミ子」

 

 最高級鶏肉を使った魔力料理と動物系まぞくの毛をシャミ子に頼み。

 

「千代田さんペンキ仕上げおねがいしまーす」

「わかった」

「千代田よぉ……ちょっと俺にスパルタ過ぎやしねぇか…?」

「遊元くんさっさと手を動かして」

「ひぃぃぃぃぃ…」

 

 体育祭のメンバーを集結させて魔法陣を描き。(ダイも来てくれたが、ミカンとシャミ子にセクハラ紛いな言動をしたせいで千代田にスパルタされていた。ざまぁ)

 

「クロウさん…この人誰……?」

「ん~、天井裏のウィッチレディかな。かしこさだけはカンストしてるから頼りにはなるよ」

「神原君も言うよねぇ~」

「ストーキングされたり家に侵入されたりしたら誰だってこうなる」

「やっほ、クロ君。来ちゃった」

「フブキ!? お前、なんでここに……」

「勘、かな」

 

 良ちゃんやフブキまで手伝いに来てくれた。よりしろ粘土をこねこねしながら小倉と良ちゃんとフブキとの4人で人の姿を模していく。

 

 そうして、ウガルルの召喚には成功した。

 新しい体はすぐに崩壊することなく、本人曰くよく馴染むと。

 コレで、ミカンは呪いから解放されたんだな。

 

 

「神原!」

「…ダイか」

「さっさと陽夏木んところへ行ってこいよ!」

 

 舟を漕いでいた良ちゃんを吉田家に送り届け、ばんだ荘の壁に寄りかかったところでダイに声をかけられた。

 

「……でも、俺は」

「いーの!役に立とうが立つまいが、みんな仲良くが一番だろ!

 それに―――嬉しい事を一緒に喜んであげるのも、良い彼氏の秘訣だぜ!!」

 

 肩をバンバン叩いて笑うダイ。

 まだ何も言ってないだろとか、お前に彼女が出来たことないだろとか、色々言いたくなったが………そうだな。今は、一緒に喜んでもいいんだろうな。

 

「………誰がミカンの彼氏だ」

 

 ふ、と自然に出た笑みと一緒にひとこと、ダイに言って、今後の事を話しているミカンとウガルルの元へと歩いて行った。

 

 

「…初めまして、ウガルル」

「んガっ、ハジメマシテ…?」

「俺は神原クロウ。ミカンの……友達だ」

 

 おいそこ、彼氏じゃないんだとか言ってひそひそすんな。

 ダイと一緒にはっ倒すぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ!新たな街の仲間も優しく受け入れていくんだ!

 




オリジナル&ゲストキャラクター紹介


神原クロウ
 ミカンの危機に動き、ミカンの心の中をスラリンで駆け回った暗黒神後継者。ミカンの呪いを解くことができて満足しているからか、ミカンがミカンママになったことにまだ気づいていない。
 ちなみに後日、シャミ子に格ゲー対戦を挑むが、ボロ負けの憂き目に遭い、そこでコマンド技の存在を知る。

暗黒神ラプソーン
 クロウの意志を尊重し、ミカンの呪いを解く手助けをした暗黒神。だが、シャミ子にウガルルを祓うように命じるという目的のために容赦のない一面も。忘れてるかもしれないがコイツはかつて世界征服を企んだ邪神。優先順位をつけ、合理的な戦略をとることが出来なければ闇の世界を束ねる立場は務まらないのだ。

スラリン
 クロウのコントローラーになったりミカンの心の中に入ったりしたスライム。操作方法はもろスマブラで、カービィやプリンに近い軽量級タイプとなっている()。

遊元泰庵
 杏里やしおんと一緒にウガルル召喚を手伝った一般ピープル。シャミ子に余計な口説き文句を言ったせいで桃に酷使された。

篇瀬吹雪
 杏里やしおんと一緒にウガルル召喚を手伝った一般ピープル。勘でばんだ荘まで辿り着き、良子・クロウ・しおんと一緒に依り代を作った。

ウィッチレディ
 人間の女性の姿を模した、魔女の魔物。様々な攻撃呪文を使うほか、女の奥義「ぱふぱふ」を使う。極上のソレは身動きをたやすく奪うとされており、子供には刺激的なことで有名。
 拙作ではクロウが小倉をそう例えて呼んだ。魔術・儀式に精通し倫理観のなくなった魔女的な一面があるが、「ぱふぱふ」ができるのかとか考えてはいけない。



アイテム大辞典

にょらいのこん   種別:武器・棍
眩いばかりの金色をした、幻の棍。如来が説法をして回った際に持っていたものとされ、実態のない敵すら打ちのめす。ドラクエでは「実体のない敵」=エレメント系(さまようたましい、シャドー、ギズモ、ほのおの戦士など)とカウントされているが、エレメント系が「不定形な敵」なので、拙作では霧状態のウガルルもカウントされると判断する。





おまけのまぞく

くろ「シャミ子、ここ最近ずっと思ってた事だけど、千代田の事けっこう好きなのか?」
しゃみこ「へっっっ!?!? な、何を言ってるんですか!!桃は私の宿敵です! 確かに最近眷属になってくれたしカッコいいし私のご飯を美味しく食べてくれますし私的に華があるけど別にその、す、すすすすすっすきすきすきなんてことはありません!!!」
くろ「超大好きじゃん」
しゃみこ「なにおー!!そーいうクロウさんだってどうなんですか!ミカンさんのこと大好きでしょう!!?」
くろ「はああぁっ!!?べ、べべべべ別にそんなんじゃない!ただの幼馴染だっつってんだろ! ちょっと…気が合うし息も合うし一緒にいてて凄く楽しいしそばにいたいと思うくらいで他意はない!」
しゃみこ「とても大好きじゃないですかー!」

もんも「シャミ子と神原くん、何の話してるんだろう?」
みかん「ちょっとコッソリ近づいてみましょうか」

この後、惚気を振りまきながら大暴走する嫁/旦那を赤面しながら押さえる羽目になった魔法少女であった。

この人の事をもっと知りたい!(拙作オリキャラ限定)

  • クロウの母親魔法少女・神原玲奈
  • お嬢様系青色魔法少女・不二実里
  • ナンパ陽キャ一般人・遊元泰庵
  • 不思議チェスプレイヤー・篇瀬吹雪
  • 上の選択肢には乗ってない!(感想欄でさり気なくどうぞ)
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