まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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お待たせしました。今更言いますが桃シャミ派の作者です。きららファンタジアの二次創作の方が良い感じにラストスパートなのでこっちが手薄になるんです……ユルシテ・・・ユルシテ…



今回のあらすじ

スライムナイトがなかまになりたそうにこちらをみている!




まぞくの誕生祭!! 最高のプレゼントを探せ!……愛の戦士の急襲!?というかお前は誰だ!!

 とある日。俺はグルチャに送られたミカンのメッセージに気づいた。

 

『きたる9月28日、シャミ子の生誕祭を開催します!

 皆でまぞくを愛でましょう

 

 日時:9月28日

 場所:A組教室

 持ち物

 ・お菓子飲み物好きなだけ

 ・プレゼント

 ・なんかボドゲとか遊べそうなもの』

 

 ……毎朝未読400件の中に紛れ込んだ大事な情報に俺が気づいたのは、生誕祭の4日前だ。正直、俺がこのメッセージに気づけたのは奇跡的とも言えるだろう。なにせミカンの痛い絵文字の乱舞に杏里のイミフな肉スタンプ、そして俺が招待した(ことにしないと誰が招待したか分からない)小倉とフブキの参戦………薄すぎてほぼ味のないトークの中に紛れた重要情報だ。それに気づけた俺自身を褒めたいぐらいだ。

 

 

 ミカンに電話で確認してみれば―――

 

「あら、既読ついてたからてっきりわかってるもんだと思ったわ」

 

 ――とのこと。「あんなどーでもいいトーク内に超重要な話を紛れ込ますな」とツッコんで電話を切った俺は、一日家でチロル達と遊ぶ予定だった今日という日を使ってショッピングに出かける事にした………シャミ子の誕生祝いの品を買うために。

 

 でも……女の子のプレゼントか。ミカンの誕生日の際はシャレオツで柑橘系の匂いのするヤツを送ればなんとかなったが、今回渡す相手はシャミ子だ。柑橘系がウケるとは限らない。とりあえず、何を用意するつもりなのか、他の皆にRINEの個チャで聞いてみるか。

 

 

 


 

『シャミ子の誕プレ何買う予定なん?』

 

おミカン

『バスソープとキャンドルとネックレスよ』

 

さたあんり

『私とお揃いのスポーツウェア!

 あと焼肉券!』

 

小倉しおん

『手作りのうごめく人形だよ』

 

フブキ

『カラフルかつレトロチックな

 ペンセットをあげるつもりだよ』

 

千代田桃

『え?

 なんのこと?』

 


 

 

「…………」

『…………』

 

 頼れる仲間たちの十人十色な答えに、俺も途中からスマホを覗いてたゴミ先祖も絶句する。

 なんだ蠢く人形って。それはプレゼントになっていいものなのか?

 あと千代田に至っては何のことと来たぞ。アイツ大丈夫か?……まぁ、あと3日は猶予あるみたいだし、今気づけば何かしら買いに行けるだろう。

 

「とはいえ、日用品・服・食事券・文房具が既に取られてるか……プレゼント選びは難航しそうだな」

 

『あぁ。さすがの我も、しゃみ子のような女子にあげるプレゼントに覚えはないからな……どうしたものか』

 

 この時点では結論は出ず、ショッピングモールを回りながらプレゼントを探すことにしよう、という話になった。ゴミ先祖もそれに異論はないらしく、シャミ子のプレゼントを出かけながら決めることにした。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 ショッピングセンターマルマ。

 ここには、かつて不二と会談したフードコートの他にも、シャレオツな店が数多く並んでいる。

 ここなら何かあるはずだ。シャミ子が気に入りそうで、なおかつ誰とも被らないプレゼントが…!

 

『…む、クロウよ。スマホが震えたぞ。』

 

「お? チャットか?」

 

 


 

おミカン

『クロ、わかってると思うけど

 マヨネーズだけはやめてよ?』

 

さたあんり

『誕プレにマヨネーズは無しだからな~』

 

小倉しおん

『マヨネーズは避けた方がいいよ~』

 

フブキ

『シャミ子のことだ、

 マヨネーズ以外なら

 何でも喜んでくれるよ』

 


 

 

「……………………………。」

 

『……っ、…!!』

 

 おい、いくらこの神原クロウといえども、誕生日プレゼントにマヨネーズは選ばねーわ。

 アイツらまったく俺の事を何だと思ってやがるんだ。今はプレゼント選びを優先させてもらうけど、いつか絶対マヨネーズのフルコースをお見舞いしてやろうか。

 

 腹を抱えて(?)いるゴミ先祖をスルーしながらも、最初に辿り着いたのは調理用品売り場だ。

 

「ここなら何か見つからないか?」

 

『な、なんなのだここは……魔道具売り場か?』

 

「いや魔道具ってなんだよ逆に」

 

 ゴミ先祖に料理するイメージなんてないからな。

 確かに、料理できない系の存在にとってはここは謎しかないエリアだろう。

 だが俺は何を隠そう自炊できるまぞくなので、ここらの道具が何に使われる物なのかがだいたいわかるのだ。

 シャミ子ん家は確か基本的な調理器具が1個ずつしかなかったはず。なにか買っていって誕プレにしてもいいだろう。

 

『おい、クロウよ……フライパンだけで結構数あるぞ…? こんなに必要なのか?』

 

「え? ……あぁ、鉄製だけじゃなくて、フッ素樹脂加工のフライパンがあるからな。火に強いのとIH対応のフライパンもそれぞれ違うし。シャミ子んトコのコンロはガスコンロだったから……買うならコレかな」

 

『こっちは包丁が並びまくっているぞ!?』

 

「包丁って一口で言っても色々あるんだ。牛刀出刃パン切ペティに菜切中華……切るものによって切りやすさとかも変わるからな……ほら、剣って言っても色んな形あるだろ?アレと一緒だ」

 

『そうか………!! おいクロウ!! この包丁カッコいいぞ!しゃみ子の誕プレにひとつどうだろうか?』

 

「…それウナギ切る用の包丁だよ?」

 

 ―――なんて会話をしながら買うものを決めていく。

 シャミ子の家にはコレはあったな、アレはなかったな……とすき焼きパーティ際にキッチンにお邪魔した記憶をたぐりながら、彼女の家にはなかっただろうものをいくつか見繕っていく。

 そして、レジに並んで会計をしよう……と思った時。

 

『……む、待て、クロウ』

 

「ん?」

 

『しゃみ子の誕プレだが……違うのにしよう』

 

「えっ!?」

 

 突然、ゴミ先祖が折角決まったプレゼントを選びなおそうと言ってきたのだ。

 どういうことだ…? ここに来てやっぱナシ、だと…?

 

「おい待てゴミ先祖、それは一体どういうことだ…?」

 

『思えば……しゃみ子はもう持っているではないか。完璧な中華鍋に変化できる「なんとかの杖」を』

 

「………あっ!!!」

 

 そ、そうだった!!

 シャミ子の『なんとかの杖』は、あらゆる棒状のものに変化できるんだった。

 スラリン達が俺の庭に迷い込んできた時期に『あすら』に寄ってリコから料理を教わった時に見たはずなのに、なんで今まで忘れていたんだ……

 ―――と、なると棒状のプレゼントは避けた方が良いか。あらゆる包丁は軒並み棒だし、中華鍋のような取っ手のついているものは全てボツということになる。

 そもそも、キッチン用品の中で棒状じゃないヤツなんてまな板しかない。流石にそれはあの家にあった。これでは、調理器具をプレゼントしてもあんまり意味がない。

 

「う~ん……なかなかいい案だと思ったんだけどなぁ…」

 

『仕方あるまい。会計する前に気づけただけ良しとしよう。

 別のジャンルからプレゼントを探すほかないようだな』

 

「別の………別の、かぁ」

 

 日用品・インテリア・アクセサリーはミカンと被る。

 食事券と服は佐田と被る。

 筆記用具はフブキと被る。

 ……困ったぞ。誰とも被らず、かつシャミ子が喜びそうなのがなかなか浮かばない。

 いっそ、なんとかの杖が一つしかない事を利用して併用できそうな調理器具をもっかい探し直すか?………そう思った時。

 

 

 

「いらっしゃい〜、そこのお兄さん!

 誕生日プレゼントならこの雑貨屋で探すのはいかがだろうか?」

 

 

 ――と、声をかけられた。

 周囲を見回すが、誰もいない。

 

「下を見るのだ、下を!」

 

 視線を下に移すと、そこには中世にでも出てきそうなフルフェイスの兜を被り、鎧を着込んだ小さな騎士のような男?が、緑色のスライムと並び立っていた。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!? 誰だコイツは!!!」

 

『おお、スライムナイトではないか。珍しい』

 

「おぉ、杖のお方…私の種族を知っているとは、よほど光と闇の事情に詳しいとお見受けするが……」

 

『我は暗黒神ラプソーン。杖の持ち主で貴様にぶったまげている男が我が後継・神原クロウだ』

 

「いや待ってゴミ先祖!!! スライムナイトとはなんぞ!? スラリン達の仲間か!?」

 

『そうだ。スライム族と親交の深い騎士の一族。まさかこの市でお目にかかれるとはな』

 

 やや置いてけぼりな俺をよそに、ゴミ先祖は早速こちらの紹介を終えていた。

 スライムナイトなる魔族? の突然の登場に頭が追い付いてないのにもかかわらず、ゴミ先祖から自己紹介を受けたスライムナイトは、無駄にスタイリッシュに緑色のスライムにまたがると、腰に下げた小さな剣を抜いて堂々と名乗りを上げた。

 

「遠くのものは耳に聞け!近くのものは刮目せよ!

 我こそは! スライム族の誇り高き騎士!!

 “愛の戦士”!!! ピエールなりィィィ!!!」

 

「………………」

 

 滅茶苦茶うるせェ。

 

「おいバイト!客引きの声がうるさいぞ!」

 

「あっ、店長殿!申し訳ない!!」

 

「『………………………』」

 

 しかも、直後に店長に怒られるバイトのその姿は、到底まぞくには見えなかった。

 だが、店長の声がしてきた、ピエールと名乗ったスライムナイトが雇われているのであろうお店は、所謂ディスカウントショップのようなもので、誕生日プレゼントになり得るものもあるのかもしれない。

 

 取りあえず、誕プレになりそうなものを探すために、俺達はピエールについていく形でお店に入っていった。

 

 

 

 

「……して、我が暗黒神よ。此度はどういった経緯で私が働くこのディスカウントストアにお越しになったのでしょう?」

 

「いや、それよりなに敬ってるの。そんなに気を遣わなくていいよ」

 

「これが私の素ですので、お構いなく」

 

「………しょうがないな」

 

 お店の中は、あらゆる商品がところ狭しと並んでいる。天井に吊り下げてるものから、床に置いてあるものまで、相当な品数だ。

 そんな中、俺はシャミ子の誕生日パーティーのプレゼントについて考えている事を告げた。もちろん、ピエールは何も知らないだろうから、友人たちをかるーく紹介した上での事情を話している。

 

「―――と言う訳で、誕生日プレゼントが必要なんだ」

 

「成る程。我が暗黒神は配下を労う為に彼女達の誕生を祝う品を直々に贈っているのですか。そして、来たる9月28日……4日後には、色魔将軍シャドウミストレス誕生の祝宴が行われる故、その日に間に合わせたいと。この様な感じですかな?」

 

「5割近く違えよ」

 

 しかし ピエールにはうまく伝わらなかった!

 ……おかしいなぁ。俺、説明下手とか言葉足らずとか今まで一度も言われた事がない筈だし、ミカンやダイにも自分の説明で文句言われた事がないぞ。

 つまり、普通に説明したはずなのに、ピエールにああ受け取られた。まるで意味が分からん。

 

「というか何だよ『色魔将軍シャドウミストレス』って」

 

「私の趣味だ。良いでしょう?」

 

「良いワケねーだろ馬鹿か」

 

 シャミ子本人に聞かれたらぽがーと怒りそうなあだ名を当たり前のようにつけるピエールは、しかし大元の説明の『友達のシャミ子の誕生日が近いから、その為のプレゼントが欲しい』というニュアンスは理解してくれた………と思いたい。

 説明が終わるとピエールは、積まれていた品々の中から、一つのタンバリンを取り出した。星とハートが組み合わさったような形をしており、鈴がついている。

 

「これなど如何でしょう?

 振り鳴らすと聞いた者の闘争心を奮い立たせるタンバリン。名付けて『ふしぎなタンバリン』! お聞きした限りでは色魔将軍シャドウミストレスは変幻自在な家伝の杖をお持ちとの事でしたので、棒状のプレゼントを避けたチョイスとなりました」

 

 おお。意外とマトモ? なプレゼント紹介をしてきた。てっきりまたふざけた武器やら物騒なアイテムやらを押し売りしてくるかとばかり思っていたので、良い意味で拍子抜けだ。

 

「でも闘争心を奮い立たせるって何?」

 

「テンションが上がります」

 

「パリピ装備かよ」

 

「いえ、確かにそういう使い道もございますが…」

 

 シャミ子がパリピかといえば……なんか違う気がする。佐田は間違いなくパリピかそれに近い部類の人間(陽キャ)だけど。

 棒状のプレゼントを避けたという点ではイイ感じだが、コレと決めるにはまだ早そうだ。もうちょっと他の品も見ておきたい。

 

「他には何かないか?」

 

「ふむ……でしたら、こういったものは如何でしょう? 『まほうのせいすい』なのですが…」

 

「魔法の聖水?」

 

「はい。魔力に富んだふしぎなきのみを、悪意を持つものを退ける聖水で煎じたものにございます。主に魔力回復に使われまして、最近では様々な味がついております」

 

 そんなのあるんだ。こっちはなかなか、イイ感じだ。

 丸いフラスコのような瓶に入った、透き通るような青い液体を見た感想は、そんな感情だ。

 魔力回復薬という、ゲームとかで案外重宝するアイテムがなぜこの街のディスカウントストアにあるのかは定かではないが、シャミ子もなんとかの杖の変化に魔力を使う以上、貰っても無用の長物になることはまずないだろうな。

 用途や価値によっては、誕プレに選んでもいいかもしれないな。消耗品なのがちょっと気になるが、箱買い……少なくとも複数個買えば少しはマシになりそうだ。

 

「いくつか買いたい」

 

「ありがとうございます、我が暗黒神」

 

 瓶のデザインも波や水を思い立たせるシャレオツなものだから、シャミ子も好むだろうか。

 とりあえず、プレゼントをひとつ買う事には成功だ。だが、これで買い物を終わりにするのも……なんか、違う気がする。もう一つ、メインになるものを買っておきたいところだ。

 

「他にも何かお求めになりますか?」

 

「そうだね………あ」

 

『クロウ、どうした?』

 

 空きスペースがほぼない商品ディスプレイの中にあった、とある物がたまたま目に入った俺は、ミカンにちょこっと個チャで質問。そして―――そこにあった品をメインのバースデープレゼントとして購入したのであった。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

「へぇ~、プレゼント、日曜に買ったんだ」

 

「あん時気付けたから良かったよ。ミカンも小倉もお前もさ…あんな重要情報、400件未読の真夜中トークに紛れ込ますのやめてくれないかな?」

 

「そんな事言われてもー」

 

 

 そして、とうとう9月28日―――シャミ子の誕生日が来た。プレゼントも忘れず持ってきたし、段取りも佐田やミカンから聞き出せているので、放課後の教室でパーティーを行うこともきちんと分かっている。

 だから、問題はない……はずなんだけど。

 

「クロウ君はなにをプレゼントにしたの〜?」

 

「パーティーまでのお楽しみ。ミカンにはちょっと相談したけどね」

 

「なに〜〜!また夫婦の内輪でイチャイチャしやがってーー!!」

 

「「夫婦じゃない!」」

 

「リアクションがお揃なのになに言ってんだか。

 ……ところで―――」

 

 

「ふむ…ここが我が暗黒神が通う高校か。なかなかどうして、小綺麗で小洒落た、イケてるスクールではありませんか」

 

「―――今日ずっと気になってたんだけど、コイツ誰?」

 

 なぜか、高校にピエールが来ていた。

 あのお店の一件以降、ピエールはスラリン達と一緒に俺の家に来るようになった。ここまではいい。だが今日に限ってなぜこの学校に来たし。

 しかも、俺の知らないうちに突然やってきたようで、1時限目が終わる頃には後ろのロッカーに腰かけて、先生の授業に「最近の人間は奇妙な事を学ぶのですね、記号と数字が入り混じった数式を解くことが、どのように役に立つのですか?」などとのたまっていた。しかもご丁寧に、首に『来校者』って名札をぶら下げながら、だ。

 それ以降の授業時も、先生方はピエールの存在に目を見開いたり、「貴方はどちら様で?」と訊いたりと不思議そうにしていたが、誰も彼もピエールが「ご心配なく。私はクロウ様の関係者にございます」と言っただけで納得して授業に戻っていってしまった。先生もっと頑張れや。

 

「私は“愛の戦士”ピエール。スライムナイトという種族ではあるが、名前で呼んでいただけると有難い」

 

「ピエールね。私は佐田杏里。よろしくー」

 

「サタン…? 男だと思っていたが………まぁ良い。仲良くしようではないか、レディサタン殿」

 

「杏里な! ねぇクロウ君!早速この人に変なあだ名つけられたんだけど!?」

 

「気持ちはすんごい分かるけど直してくれないから諦めた」

 

「諦めんなよお前!!!」

 

 ピエールの俺以外へあだ名をつける行為だが、「私の趣味だ」の一点張りでやめる気が毛頭ないらしく、あまりの頑固さに俺が折れた。「恥ずかしいから自重して」と言っても「何故、どのように恥ずかしいのですか」と言語化を求められたら答えに詰まるに決まっている。結局、ピエールのあだ名呼びが変わることはなかった。ただ、ミカンのことを「妃殿」と呼ぼうとした時は全力で止めたが。

 それ以降、ピエールの中二的なあだ名はできるだけスルーすることにした。下手にツッコんで巻き込まれたくないし、やめるよう説得するにも割に合わない。そんな結論を出した俺の首根っこを、佐田はどこかのテニス選手みたいなことを言いながらガクガク揺する。

 

「ほわぁ~~……!ピエールさんも私を祝いに来てくれたんですか!」

 

「そうだ。本日、我が暗黒神が貴殿に誕生日プレゼントを渡すと知り、私も些細ながら品を用意してある」

 

「ほんとですか!! 楽しみです!ありがとうございます!ピエールさん!!!」

 

 尚、当のシャミ子は突然のスライムナイトの参戦に目を輝かせて、貰える誕生日プレゼントが増えることの嬉しさで尻尾が暴れている。まぁ、本人が良ければそれでいっか。

 

 

「今日シャミ子の誕生日会なの!?」

 

 

 ―――おや?

 

 

「…千代田?ミカンも。 何があったんだ?」

 

 声の主は千代田で、ミカンが困ったような顔をしている。

 俺は佐田と一緒に何が起こったのかと二人の会話に混ざった。

 すると、衝撃的な事が判明したのだ。

 

 …ミカン曰く。千代田はシャミ子の誕生日会が今日あることを今の今まで知らなかったのだという。当然、プレゼントも用意していない。そもそも、400件未読グルチャのメッセに気づかなかったようだ。ミカンと佐田が「ありえなくなーい?」って感じでヒソヒソしているが、俺は千代田の気持ちがよく分かる。

 

 

「…千代田。気持ちは分かるぞ。流石に数百件未読とかやってらんないよな」

 

「か、神原くん!分かってくれるの……?」

 

「ミカンはメッセに絵文字が多すぎて痛い。佐田は肉のスタンプを連打しすぎだ」

 

「そうだよね……! あと、小倉と篇瀬は……?」

 

「俺が誘った」

 

「えっ」

 

「―――ってことにしておいてくれないか……? そうじゃないとホラーすぎて敵わない」

 

「ええぇ………」

 

「見てくださいラプソーン様! ご子孫様が汚名を自ら被りましたぞ!?」

『気の知れた仲間の安寧の為、自らを犠牲にするか………素晴らしい心がけだが、程々にしておけよ、クロウ。

 トップたる暗黒神はまず己が倒れぬ事が絶対条件。配下を庇いすぎて己が倒れるなど本末転倒だ』

 

 ピエールもゴミ先祖も余計な事を言うんじゃあないよ黙ってろ。

 ちなみに千代田だが、俺がメッセに気づけたのは奇跡と言ってもいいと断言した上で「とはいえ何の準備もないのは流石に良くないよ」と諭した事によって、昼休み中に腹痛(精神的な意味で)で早退する事と相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ちなみに、その日の誕生日会にて。

 

「わぁあ!お財布!」

「シャミ子いつも透明の袋みたいなのにお金入れてたでしょ? だから…これを使ってくれると嬉しい」

「本当に嬉しいです!! 大事にします! ずっとずっと大事にします!!!」

 

 千代田は無事、シャミ子の誕生日プレゼントを用意することに成功した。ほんっとにギリギリのギリだったけど、畳まないタイプのオットナ~な財布を選んだ千代田はとてつもなく頑張った事だろう。

 …え? 俺の誕生日プレゼントは何かって? それはだな………

 

「ほわああ!! こ…これ、『ダークエ』のフィギュア……!! クロウさん、これをどこで…!?」

 

「マルマのディスカウントストアで売ってたよ」

 

「あ…ありがとうございます、クロウさん!!!」

 

「あとコレ、まほうのせいすい。なんとかの杖使って魔力消耗した時に飲んでね」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 シャミ子の好きな昔のゲーム…『ダーククエストアドベンチャー』の主人公(勇者)とラスボス(キングドラゴン)のフィギュアである。俺がディスカウントストアでコレを見つけた時、ミカンに確認したのだ。「これって、シャミ子の好きなゲームキャラじゃないか?」…と。案の定予想は当たり、見事誕生日プレゼントに選ばれたのだ。

 

「良かったですね、我が暗黒神。シャドウミストレス殿もご満悦ですね!!」

 

「あぁ。悩みまくって選んだかいがあったよ。」

 

「あ、ピエールさんの中の人も、このつめたい〝すらいむぜりー〟をありがとうございます!!」

 

「中の人などいないッッ!!!」

 

 ちなみにだが、ピエールがシャミ子に渡したものは『スライムゼリー』という、スライムの形をした、青いプルプルのゼリーだった。シャミ子が両手でぷにぷにしており、癒されている。シャミ子にそういう表情って、なんか和むな。写真撮っとこ。

 

「ほげえええええええええええ!!? ぷ、ぷぷぷぷぷプレイキャスト2!!? いっいいいいいいいいいいいいいんですか!!?」

 

「ゆーてもマスターのおさがりやからね~。3買うたしホコリ被ったままなんもアレやから使ったげて~」

 

「ほがぁ!?」

 

「あとこれ遊び終わったソフトな」

 

「ほげぇ!ほげぇ!!」

 

 ちなみにだが、一番シャミ子の心を掴んだのは、シャミ子にプレイキャスト2をプレゼントしたリコだった。千代田にも、俺にも見たことのないテンションで、しっぽが暴走するくらいに喜んでいた。

 ま、いずれにせよ、シャミ子にとって一番イイ思い出の誕生日会になったのだとしたら、それに勝る喜びはないさ。

 

 

「これで勝ったと思うなよ……」

 

「………………………」

 

 …こらそこ、千代田さん。嫉妬しないの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれ桃さん!追加で百輪の薔薇の花をお見舞いするんだ!

 

 

 

◆  ◇  ◆

 

 

 

 ……携帯が震える。

 スワイプして開くと、そこには満面の笑みを浮かべた巻き角の女の子と、そのお友達と思われる方々。そして、千代田さんと陽夏木さんも写っています。

 

 そして、追加できたメッセには……

 


 

クロウ

『友達の誕生会なう!!

 ってね』

 


 

 ……と、書いてありました。

 わたくし、神原さんには先日機嫌を損ねてしまったこともあり、なんと声をかければいいかわかりませんでしたが……そうですね…

 


 

『とても、楽しそうですわね』

『わたくしの知るまぞくとは思えません…』

 

クロウ

『そりゃそうでしょ。

 俺の母さんだって、憎しみ

 100%で契約したらしいし』

『いろいろ事情があんのは、

 魔族も魔法少女も一緒じゃないかな?』

 

『そうですね。』

『先日はすみませんでした』

 

クロウ

『え、なにが?急にどったの?』

 

『職業見学の帰り際に、』

『特大の地雷を踏んでしまった事です』

 

クロウ

『あーアレな』

『とりあえず』

『・コー○○アス

 ・○動○士○ン○ム

 ・天○○破グ○ン○ガン

 この辺りのアニメ見てこい』

 


 

 

「……???」

 

 機嫌を損ねたことを謝ったはずですのに、どういうわけかアニメを勧められました。

 しかし、わたくしはドラマは良く見ますが、アニメは詳しくはありませんから……

 

「きど○、せ○し、が○だむ、と」

 

 まずは会員登録している○マゾン○○イムで検索してみることにしました。

 数多く出てきましたが、神原さん曰く初代と逆襲の○ャアのみで良いとのことです。

 これで、神原さんがキラーマシン関連であれほど怒った理由が明らかになるのでしょうか?

 そう思いながら、最初のお話の再生を始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頑張れ不二さん!今夜は徹夜だぞ!!

 




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
 シャミ子の誕生日プレゼントに悩んだ暗黒神後継者。ミカン達のうすっぺらぺらトークの中の重要事項に奇跡的に気づいたお陰で、プレゼント選びは余裕を持って行えた。なお、スライム系の配下が一人増えた事に関しては全力でスルーすることにしている。

暗黒神ラプソーン
 料理しない系暗黒神。第1形態も第2形態も明らかに料理に適する体型ではないため、現代日本のフライパンと包丁のレパートリーに舌を巻く。

不二実里
 隣町に住むちょっとお硬めの青色魔法少女。クロウからシャミ子の誕生日パーティーの写真が送られてきた事をきっかけに先日の件も含めてトークをしたが、何故かロボットアニメを勧められた。素直に見る事にしたが、あのストーリーの数々が彼女にウケたかどうかはご想像にお任せします。

ピエール
 “愛の戦士”を自称するスライムナイト。当たり前のようにクロウを次期暗黒神として敬う一方で、クロウの周りの人々を勝手なあだ名で呼んだり堂々と学校に侵入したりと騎士らしい(らしからぬ?)強ハートを持って好き放題しているが、相棒のスライムを気遣ったり、人の全力の懇願をしっかり守る等最低限の騎士道精神は持ち合わせている。ちなみに、ピエールの呼び方は

シャミ子→色魔将軍シャドウミストレス
桃   →堕天剣士ダークネスピーチ
ミカン →妃殿(と呼ぼうとしたけどクロウに全力で止めろと懇願されたからやめた)
    →ミカン殿
佐田  →熱鬼将軍レディサタン
小倉  →魔軍司令オグシオン
ラプソーン→ラプソーン様(基本様付け)

 ―――となっている。たまに略すこともあるが基本的な呼び名は変わらない。



アイテム大辞典

まほうのせいすい    種別:道具
使うと魔力を回復する、ボス戦等で僧侶や魔法使いに欠かせないマジックアイテム。ドラクエ8あたりでは、確か作るのに聖水とふしぎなきのみを錬金釜にブチ込む必要があったはず。

ふしぎなタンバリン   種別:道具
使うと全員のテンションが1段階上がる、陽キャ向けのマジックアイテム。全体効果があるため、普通にためるよりも重宝するが、手に入れるには太陽の冠を使うなどのレア装備を素材にして錬金で生み出す必要がある。

スライムゼリー     種別:素材
スライムのようにぷるぷるした涙型の青いゼリー。使用するとプニプニしだして独特のストレス解消になる(?)が、入手方法や具体的な正体は謎に包まれている。



おまけのまぞく
もしクロウたちに『恥ずかしい呪い』がかかったら?

クロウ
『クロウは うっかりミカンをママと呼びそうになったことを 思い出した。』
『クロウは なぜか急に両親が恋しくなってきた。』
『クロウは 急に自分がどうしようもないヤツに思えてきた。』
『クロウは うっかりだれにぱふぱふしてもらうか 考えてしまった!』

シャミ子
『シャミ子は 急に自分の格好が恥ずかしくなってきた!』
『シャミ子は 自身の魔力が筋肉注射のように痛かったことを 思い出した。』
『シャミ子は はじめて桃と戦った時の事を 思い出した。』
『シャミ子は 桃を眷属に誘った時の言葉を 思い出した! あ、あれはプロポーズじゃない~!』


『桃は 変身時の髪型をツインテールにしたことをいまさら後悔しはじめた。』
『桃は むかし変身ポーズを盛大に褒められたことを 思い出した。』
『桃は 闇堕ちした理由がしょうもなさすぎることを 思い出した。』
『桃は シャミ子が人気すぎる事に嫉妬している! あぁ、また闇堕ちしそう…』

ミカン
『ミカンは ノリノリのダンスをクロウに見られた時のことを 思い出した。』
『ミカンは 急に桃の光るおにぎりの味を 思い出した。』
『ミカンは 急に魔物に柑橘類を勧めたくなってしまった!』
『ミカンは 理想の結婚について考えてみた! なんと夫にクロウがよぎってしまった!』

ダイ
『ダイは 学校のマドンナをくどこうとして撃沈した時のことを 思い出した。』
『ダイは 食べ物の好き嫌いが同級生よりも多すぎる気がしてきた。』
『ダイは とっておきのひとりあそびを見られた時のことを 思い出した。』
『ダイは 自分の部屋のムフフ本が出しっぱなしだったことを 思い出した。』

フブキ
『フブキは 急にクロウのことが気になりだしてしまった!』
『フブキは 間違えてチェスのルールで将棋をやっていたことを 思い出した。』
『フブキは ノリノリで着た私服がダサいと言われた時のことを 思い出した。』
『フブキは 呪文をとなえようとした・・・が思いっきり噛んでしまった!』

不二実里
『実里は 急に自分の語尾が痛々しいような気がしてきた。』
『実里は こっそり書いたポエムが見つかった時のことを 思い出した。』
『実里は ラファエルの鳴き声に本気で身構えた時のことを 思い出した。』
『実里は 子供のころに考えた必殺技がとてつもなくダサかったことを 思い出した。』


 シャミ子・桃・ミカンあたりはまだまだ探せばありそうですね~。
 杏里ちゃんと小倉さんはまたの機会に考えてみよーっと。

この人の事をもっと知りたい!(拙作オリキャラ限定)

  • クロウの母親魔法少女・神原玲奈
  • お嬢様系青色魔法少女・不二実里
  • ナンパ陽キャ一般人・遊元泰庵
  • 不思議チェスプレイヤー・篇瀬吹雪
  • 上の選択肢には乗ってない!(感想欄でさり気なくどうぞ)

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