まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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今回は時系列的に言うとごせんぞが秒単位で外を楽しんでるのとほぼ同時です。



今回のあらすじ

妖魔ゲモンがあらわれた!


闇からのいざない! 現れし智将・妖魔ゲモンのたのしい暗黒神講座!……って勘弁してくれ!俺は平穏に生きたいんDA!

 妖魔ゲモン。

 それは、俺のゴミ先祖こと暗黒神ラプソーンが腹心として信頼されたとされる、かつて闇の世界からこの世界に侵略に来た暗黒神軍の参謀的存在である。

 だが、光の一族と契約した魔法少女達と戦った時には、随分と卑怯な手を使っていたようだ。人質を取るのは当たり前、敵の隙を突いて倒すためなら使えるものは何でも使い、残忍な方法であろうと使う事を躊躇わなかったと聞く。

 その後は、ゴミ先祖によると、魔法少女の追撃を逃れ、闇の世界に潜伏しているとのことだったが………

 

 

「ゲモンが、なんでここにいるんだ!?」

 

『分からぬ。だが、声だけ聞こえた事を考えると、この世界―――光の世界で好きに動けるとは考えにくい』

 

「ゲモンって、確かラプソーンさんの配下なんだよね? しおんから聞いたよ」

 

「アイツに情報リテラシーとかねーのか…?」

 

 

 ゴミ先祖の配下の情報をいとも簡単にフブキに教えた小倉に愚痴を垂れながらさっきの出来事……ドラム缶風呂に入る前の出来事を思い出す。景色を明確に思い出して、会話を思いかえす。

 あの露天風呂には確か……大理石と自然の岩で囲まれた湯船と、ドラム缶風呂的なモノがあって、切り揃えられた木が2、3本生えていて………その根元に―――!!

 

 

「…あ! あの社!! アレじゃねーか?」

 

『む……あの手乗りサイズの家か。だが、あそこにあるのは建物だけだ。アレだけでは、声を届かせるにはまだ足りない』

 

「え…アレだけじゃダメなの?」

 

『せめて魔力が潤沢に籠った鏡か何かがあれば良いのだが……』

 

「鏡?」

 

「ほら、クロ君、鏡ってさ、昔は別世界との入り口って考えられていたんだよ。光の反射なんてまだ解明されてなかったんだから、昔の人は自分自身が映る鏡の内側が、誰も見てないときにどうなってたかって色々考えられていたわけだし。ちょっと手鏡を買って、それを元に儀式するのはどうだろう」

 

「お、おう……そうなんだ?」

 

 

 鏡の古代のトリビアを聞かされた俺は、フブキの提案する手鏡で何をするかは知らないものの、さっきの声の正体を探れる方法に納得していた。でも鏡なんて持ってないし、儀式なんてなにも分からんよ?

 

 

「大丈夫、こういう時、頼りになる人なら知ってるでしょ?」

 

「……小倉だけだと不安なのでミカンとか呼んでくんね?」

 

「分かってるよ。ベタ惚れだね?」

 

「違う」

 

 

 フブキと俺は、ゲモン(暫定)を見つけたので来て欲しいという呼び出しを知り合いにかけてみる。

 小倉は当然快諾。ミカンにもOKを貰えたが、シャミ子と千代田は返事が遅れた挙句に断られてしまい、いちおう電話した不二にも断られてしまった。何でも「用事がある」らしいけど詳しくは聞かなかった。

 結果やってきたのはミカンとウガルル、そして小倉だけであったが、ロビーが華やかになった気がする。

 

 

「ラプソーンさんの部下、見つかって良かったですねぇ」

 

『ご苦労であった、小倉しおんよ。先程話した通り、ゲモンとの連絡をここで取れる可能性が高いゆえ、連絡できるものの製作を頼みたいのだ』

 

「わかったぁ~、依頼料は……………ね!」

 

『うむ。クロウにつける故、心配は無用だ。足りぬというなら……………』

 

 

 闇の世界に潜んでいるというゲモンに会えるかもしれないとのことで、やる気満々の小倉にゴミ先祖の杖が勝手に何か耳打ちをしているが、俺はあの会話に参加した方が良いのだろうか? 怖すぎて参加する勇気も湧いてこないぞ。

 

 

「でも、どうするつもりなの? まさか、ゲモンをこっちの世界に呼び込むつもりじゃあないでしょうね?」

 

『そのような事は今の我には不可能だ、陽夏木ミカンよ。全盛期ならともかく、封印中の身にできることは非常に少ないし、クロウや小倉しおんを以てしても不可能だと断言する。ゲモンは貴様らの想像の30倍は遥かに超える高等な魔族なのだからな』

 

「…そもそも、マジでゲモンと話さないといけないのか?」

 

『今更怖気づくな、クロウよ。我の後継になった以上、必要なことだ。

 あやつなら、今の貴様に必要なものを与えてくれるやもしれぬ』

 

「不要な事だけを吹き込まれそうな気がする」

 

 

 不安のうちに漏らした一言に、ミカンが深く同意した。

 俺、ゲモンが魔法少女相手にゲスな手を使いまくったゲス野郎だってこと、忘れてないからね。というか、忘れられるワケないからね?

 

 

『直接召喚することは不可能であることは言ったはずだ。

 だから、アプローチを変えてあやつが操作できる“こちらでの身体”を用意する。

 いわば、先日貴様らが作ったリリスの依り代と似たようなものよ』

 

「成程……それなら、戦闘力の面は問題ないかもね。

 でも、ゲモンのホントの怖さはそこじゃないでしょ?」

 

 

 ミカンの言う通りだ。

 ゲモンの恐ろしさは多分、その類まれなる(悪い意味で)頭脳を用いた戦略・作戦を練ってくること。

 人質を取って同士討ちとか、基地爆破で生き埋めとか、普通の人生送ってたらまず思いつかないような手段を思いつくような相手に、ただの戦闘力を封じることにどれだけの意味があるだろうか?

 

 

『クロウ、そして陽夏木ミカンよ。確かにゲモンは数々の奇策で数多の魔法少女を葬ってきた実績がある。

 しかしだ。ゲモンの頭脳は、必ずしも戦闘にのみ発揮されるものではない』

 

「というと?」

 

『内政におけるあやつの功績も大きいということだ。税制、公共事業、福祉……その他、人心を掌握するような政策を生み出し、また輔弼してきたのがゲモンという魔族なのだ』

 

「俄かには信じがたいぜ………」

 

『事実だ。証明は難しいが、我もあやつも自覚しておる』

 

 

 敵に回したらえげつない手ばかり使ってきたゲモンが、内政で人気だったとか、それはいったいいつの時代の軍事国家だと思ってしまう。平和主義の日本における暗黒神後継(不本意)の身の振り方として大丈夫なんだろうか?

 

 

「呼んでみようよ」

 

「フブキ!!?」

 

「クロ君はラプソーンさんの子孫なんでしょ? 後継者でもあるんだから、ゲモンに何もされないと思うよ。後継者でもあるんなら、尚更でしょ」

 

「………」

 

 

 フブキが、ゲモン召喚を促してくる。確かに、俺の立場上ゲモンは俺に手出しはできないかもしれない。でも口出しされない保証もどこにもないんだぞ。しかし、そう反論しようとした瞬間―――

 

「フブキちゃーん!セッティング終わったよー!」

 

「お、流石しおん! 仕事が早いね」

 

「「は!?!?」」

 

 

 小倉の不穏な内容の会話に、俺と魔法少女は小倉の声をした方向を見る。

 すると、センターのロビーの片隅に、無駄にでっかい祭壇を作り上げた小倉がいた。

 ま、待て待て!仕事が早すぎる! こっちはゲモンを呼ぶかどうかすらまだ迷ってるってのに!!

 

 

『依り代はあるのだろうな、小倉しおん?』

 

「ゲモンさんって、どんな姿してるのー?」

 

『大鷲の頭に獅子の胴体。そして、ユニコーンの如き角を三本、頭から生やしている。色はモノクロだ』

 

「…めんどくさそうだからこのグリフォンのぬいぐるみで良くない?」

 

『えっ』

 

「う~ん……できると思うけど、結構雑な術式になるよ?寿命も伸び悩みそう」

 

 

 さっそく依り代づくりの話題に入るな!!

 ゲモンの特徴を丁寧に教えたのに部下の依り代を雑~にされてるゴミ先祖はおいといても、俺はまだ「ゲモンを呼ぶ」って決めてないよ!?

 

 

「クロ、どうするの?」

 

「どうって……どうすりゃあいいんだろ…?」

 

「神原君、ちょっといいかな?」

 

「なんにも良くねーよ小倉」

 

 

 勝手に召喚儀式のセッティングをして、ここの職員さんや他のお客さんに盛大に迷惑をかけている小倉は、俺の言葉などお構いなしと言わんばかりに俺に近づいて耳打ちをした。

 

 

「ゲモンを監視するって考えればいいんだよぉ」

 

 

 ―――それが、一種の悪魔のささやきに聞こえたのは、気のせいだからか、それとも相手が小倉だからなのか。

 小倉の言う事は……間違っていない。むしろ正しいまである。ゲモンはもともとゴミ先祖ことラプソーンの配下だ。ゲモンって奴が何をどれだけ知っているかは分からないが、後継者である俺を邪険にすることはないだろうし、ここで放っておいて、後で俺らの知らぬところで何らかの悪だくみをされても面倒だ。そういう意味では、ゲモンを召喚するのも悪手とは限らないのかもしれない。

 俺は久々に、小倉のどこまでも自分本位な生き方に、ちょっとだけ戦慄というものを思い出すことになった。

 

 

「……何が目的だ、小倉?」

 

「闇の世界の住人を見てみたい~♪」

 

「ですよね~」

 

「でも、本当にクロはそれでいいの?」

 

「…確かに、小倉の口車に乗せられてるみたいでアレだけどさ。

 ゲモンを手元に置いておいて、俺の事も話しておけば、少なくとも敵にはならないと思うんだ」

 

「……そう?……………さっき小倉さんめっちゃ近かったわね…

 

「? なんか言ったか?」

 

「い、いいえ! なにも?」

 

 

 かくして、俺達は職員さんと他に来ていたお客さんに奇異の目で見られ&謝り倒しながら、ラプソーンの腹心・妖魔ゲモンを召喚する事となった。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 儀式を始めると、すぐにグリフォン人形に変化が現れた。

 人形の色がくすんだかと思えば、そのまま色がなくなって、白黒のモノトーンカラーになってしまった。まるで……その人形だけが、白黒写真からでてきたかのように。

 更に、人形の額に三本の短い角が生えたかと思えば―――ついに、動き出した。

 

 

『……もしもし』

 

「「「来た!!!?」」」

「何故電話とったみたいなことを!!?」

『………ゲモンか!?』

 

 

 多種多様なリアクションを相手にモノクロぬいぐるみ―――ゲモンが最初にとった行動は………ゴミ先祖の方を向いて膝をつき、頭を垂れる……まさに臣下の礼そのものであった。

 

 

『……お久しぶりにございます。ラプソーン様』

 

『うむ。大義であった。面を上げよ、ゲモン』

 

『はっ。………ところで、現在のこの状況は一体…?』

 

『順を追って話すぞ。心して聞くが良い』

 

 そこから、ゴミ先祖がゲモンに今の状況を詳しく話していく。

 戦いから何年たっているか、ここはどこか、周りにいる人間たちは何者か……を、かる~く。

 あらかた現状を話し終えると、ゲモンがひとつ頷いた。

 

『なるほど……封印されてしまった時はどうしたものかと思いましたが、再起の目途を既に立ててらっしゃったのですね。』

 

「あの…ゲモンさん? 今のこっちの事情は分かったでしょう?」

 

『ほう…確かお前はラプソーン様の後継者か』

 

「神原クロウといいます」

 

『オレの自己紹介はいらないな。ここにいる連中は知っているようだし』

 

「銭湯の時はありがとうございました」

 

『礼はいらん。たまたま目に入った闇の者に声をかけただけの気まぐれよ。こうして呼ばれるまでの不安定な電波の中、光の世界を探っていた最中に偶然目にしただけのな』

 

 

 銭湯で声をかけてもらって、意識を持ってかれそうになったのを助けてもらった礼を言った後、本題に移る。

 だが、ゴミ先祖の説明に任せてコイツに色々師事したらヤバい事態になるのは目に見えている。平和的に、かつゲモンが何らかの悪事を企てることが出来ぬように味方に引き込めないものか。具体的には小倉っぽいポジションで。

 

 

「俺達が貴方を呼び出したのは他でもない。貴方の力を借りたいんだ」

 

『ほう?』

「クロ!!?」

 

 俺の頼みにミカンが声をあげた。

 一瞬だけミカンを見て、「大丈夫」と視線で合図する。彼女の確認をする前にゲモンに向き直って続けた。

 

「今のこの世界は、光と闇の闘争はとうに終わり、互いに不干渉で暮らしている。でも…確執はまだある。そんな世の中なんだ。

 貴方の活躍はゴ…ご先祖から聞いた。戦いだけじゃなく、闇の世界の内政にも素晴らしい功績を収めている、と。俺達の目的は、光も闇も受け入れる、良い街を作ること……でも俺は、できれば戦わない道を選んでいきたい。」

 

「クロ……」

 

「甘いと思うかもしれない。でも、戦わずに済むならそれが良いし、その為にはゲモン…貴方の知恵が要る! どうか…力を貸してくれないか!!?」

 

 

 対象を「俺達」にすることで、変な入れ知恵を未然に防ぎ……教えてくれ、ではなく力を貸してくれと頼む。気休め程度ではあるが、コレなら小倉ポジに収めることが出来るかもしれない。

 さて………ゲモンの反応はどうだ!?

 

 

『……………45点』

 

「「「「…は?」」」」

 

 

 ゲモンの返事は、YESでもNOでもなく、点数であった。

 いや、いったいどういうことだ? てか45点って、なにが45点?

 

 

『お前の説得だよ。こういうのは、説得するヤツの前情報を集めてからやるのが鉄板なんだが……ここは、まぁ及第点だな。「戦わずして勝つ」のがこのゲモンのやり方ではあるしな。

 ―――だが、建前が本音を隠しきれていないんだよ。顔に書いてあったぜ?「オレを目に見える場所に置いといて監視しときたい」ってな?』

 

「「「「!!!!?」」」」

 

 

 み、見抜かれた!!?

 

 

『提案したのは……そこのメガネの娘か? フフ、随分といい仲間に恵まれたな、後継者さん?』

 

「………」

 

 当たり前だが、小倉が俺にささやいたことも、それを最終的に俺が賛成したことも、ゲモンは知らない筈だ。だというのに、なぜこんな簡単に当てられるんだ……!?

 

 

『何を驚いている? こんなもの、オレの実績とこの状況を照らし合わせれば余裕で推測できるだろーが』

 

「なん…だって…!?」

 

『ラプソーン様。今、このゲモンの力を欲した理由が分かりました。

 この説得において不甲斐ない後継者の“教育”……それを求めたのでしょう?』

 

『その通りだゲモンよ。そういう意味では、クロウの言い方も間違ってはおらぬ。

 クロウ、ゲモンには………貴様の家庭教師になって貰う。幸い、こやつは魔法力の才能はダントツだ。逃さぬ手はないぞ、ゲモンよ』

 

『かしこまりました』

 

 

 ヤベェ。一番最悪な展開になりつつある。

 目で助けを求めたところ、小倉とフブキは困った顔をされたが、ミカンは頷く。しかし。

 

 

『陽夏木ミカンだったか。物騒なマネはやめた方が良いぞ。街と娘を人質にとられたくはないだろう?』

 

「娘って言い方やめなさいっての!!!」

 

 

 一瞬で無力化され、俺はゲモンに師事する事になった。

 また一歩、暗黒神街道を進んでいる気がして嫌だってのに………

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

「ゲモンに師事って……本当に大丈夫なの?」

 

『千代田桃、貴様我が腹心を危険人物みたいに言うんじゃあない!!』

 

「いやいやいや、ゲモンもお前も世界征服未遂の危険人物だからね?」

 

 

 翌日・学校にて、ゲモン召喚時に健康センターにはいなかったシャミ子と千代田に事のあらましを説明した。千代田が露骨に心配してくるが、気持ちは非常にわかる。俺も、昨日のあの授業がなければ、思いっきり警戒しただろう。

 

 そう。俺は昨日ゲモンを健康センターで召喚して帰宅した後、早速第一回の授業を受けたのだ。

 半ば無理矢理席に座らされたようなモンだったが、肝心の中身は、至って普通だったのだ。

 光の世界に実在した戦略家と、彼らが使用してきた戦法。その背景。それらを理路整然と、分かりやすくまとめたものだった。

 これには、俺も面食らった。てっきり、マトモじゃあない説法をSAN値を守りながら耐え抜く苦行を想像していたから、なんだか肩透かしを食らった気分だ。

 

 

「…気持ちは分かるよ。でも、本当にマトモな授業だったんだ。

 ゴミ先祖を持ち上げたり、アイツ自身の策略を自慢げに話したりしたわけじゃあない。

 気になるんなら、学校の後でウチに来るかい?」

 

「……分かったわ。そういう事なら、お邪魔しに行ってもいいかしら?」

 

「私も行くよ」

 

「私も行きます!なんか、クロウさんだけ色々教わるのはずるいです!」

 

「面白そうだから行きたい!」

 

 

 ミカン・千代田・シャミ子・佐田が放課後にウチに来ると言ってくれた。男子の嫉妬の視線がヤバいが、もっとヤバそうな俺の未来がかかっているんだから、大した事は無い。

 

 

「待て待て神原!! 彼女持ちがそんな、更に4人もの女子を家にお持ち帰りだと!!?

 そんなの羨ま……じゃなかった、許せる訳ないだろう!! 俺もついていくぞ!!」

 

「お、ダイお前も行くの? それならよろしく。あと俺は―――」

「私は彼女じゃない!!!」

 

 彼女持ちじゃない、と言う前にミカンが食って掛かり、教室内が沈黙する。

 え、ど、どういうことだ?

 

「…陽夏木、俺は『お前が神原の彼女だ』ってひとことも言ってないぞ?」

 

「…………!! ~~~~~~暴徒鎮圧用・サンライズアロー!!!」

 

「グッハァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」

 

「ダーーーーーーーーーイ!!!? ちょ、ミカンさーん!? 何してくれてんの!!!?」

 

 

 ミカンがいきなりダイを吹っ飛ばした!!?

 突然の魔法少女の暴走? に戸惑いながらも、介抱したダイがウチに来ることができなくなっちゃったと残念に思った。

 ちなみに、ベホイミを使おうとしたら千代田とミカンに止められた。ダイの人徳のなさが災いしてるな、オイ。

 

 

 

『―――成る程。それで今日はここまでゲストが多いのか』

 

 放課後。俺はミカン達を家に上げて、ゲモンに事情を話した。

 そんな真っ黒のグリフォン人形と化しているゲモンを見つめるのは、シャミ子・千代田・ミカン・佐田・フブキ………そして、良ちゃん。

 いやなんで良ちゃん来てるの。なぜに良ちゃん?

 

 

「おかーさんや良に行き先を伝えたら良が付いていくと言い出しまして……ごめんなさい、迷惑をおかけして…」

 

「参謀になってお姉を支える人として、本物の軍師さんに教わる機会は絶対ものにしたい。今日は宜しくお願いします!」

 

『……良いだろう。魔族に味方する優秀な人間が増えるのは良いことだ』

 

「良いんだ……」

 

 

 ちなみにだが、ウガルルは上の階でスラリン達やチロルと遊んでいる。

 ダイが見たら血涙を流しながら羨みそうなメンツで、ゲモンの授業とその参観が始まった。

 

 

『では本日は、授業参観みたいなこの雰囲気を使って授業をしてみようか。

 貴様ら、教育を受けているのであれば、「織田信長」という名前くらいは知っておろう?』

 

「お? 私達をナメてらっしゃるゲモンさん? そんなの当然じゃないの!」

 

『ほう。貴様…佐田杏里だったか。では信長が天下布武を目指したきっかけとなった「桶狭間の戦い」で、信長が今川義元に勝利した理由を詳しく話してみろと言ったら、話せるか?』

 

「ん? それは…確か、奇襲とかじゃなかったっけ?」

 

『ンッン~、その程度では20点もあげられんな。

 このゲモンが戦術の授業を行う以上、そのようなフワッとした回答はノーカンだと思え』

 

「なんだそりゃ~~!!?」

 

『クロウ、回答の手本を……む? 分かると言うのか、良子、だったか』

 

「ひとつ、織田軍は戦う前に情報を集めた事。大軍の中の大将・今川義元がいる本陣を、嵐で休息中のタイミングで攻撃した事からそれがわかる。

 ふたつ、分散させた敵勢力の本陣を一点突破したこと。織田軍は今川軍よりも遥かに数が少なかったから、大将を討ち取ることに全力を賭した。

 こんな感じでいいですか?」

 

『ほぅ…………この中で最も幼いのによくやりおる。

 諸説あるが…基本は抑えられているし、的をしっかり射ている。90点だ』

 

「よしっ!」

 

 

 そう。この授業、なかなかに理不尽な採点基準だが、それさえクリアすれば好成績を出せるものなのだ。

 その基準とは、先ほど良ちゃんが良い評価貰ったように、筋道を立てて答えを論じていけばOKを貰えるタイプのそれである。その為、うろ覚えだったり、知ったかぶってフワッとした答えを出しても佐田のように一刀両断されるだけということだ。

 

 

『物事は偶然に見えても、それらは必然を積み重ねていった先にあるものだ。

 自軍の最低4倍以上の大軍相手に織田軍が勝利を掴めたのも、諦めずに積み重ねるべきを積み重ねたからだ。

 これからこのオレが行うのは、闘いを含めた全ての営みの中で人や我らが積み重ねてきたものの総復習だ。興味のない者は上でスライム達と戯れているがいい』

 

 

 ――堂々と告げるゲモンの言葉に、上への階段を上る者は、この場にいなかった。

 

 その後のゲモンの授業もまた、マトモであった。

 この日は織田信長の戦や政策が中心の話だったが、座学だけでなく、教訓になりそうな事を話し合ったり、たま市のマップを広げて活用出来そうなものはないか探るなど、お前教師になった方が良いんじゃないかってくらいにハイクオリティだった。

 これには魔法少女の千代田やミカンも舌を巻くしかなく、目を輝かせた良ちゃんに巻き込まれつつも話し合いに参加してくれていた。

 

 

『―――では、本日はこの辺にしておこう。

 次回は、人心掌握の基礎……主に、好かれるスピーチの仕方を浚っていくぞ。』

 

「ゲモンさん! 次の授業も受けたい!!」

 

『よし。日程は貴様の都合が合うよう調整しておこう』

 

「あの、ゲモンさん!! 良とクロウさんに悪影響をおよぼさない範囲でお願いします!!」

 

『当然だ。人心掌握術や戦術は、最終的に本人が使うものだからな』

 

 

 授業が終わり、他の皆が帰り始める頃。

 良ちゃんに尊敬され、シャミ子に心配されながらも、ゲモンは資料らしきものをまとめる作業に移っていく。

 

 

「ゲモンのやつ…意外とマトモに授業してったわね…」

 

『ゲモンは学者肌なのだ。ジャハガロスほど力に才のないぶん、知恵を磨きに磨いた結果であろう』

 

 ミカンとゴミ先祖の会話を聞きながら思った事がある。

 確かに、ゲモンは勝利の為に手段を選ばず、魔法少女や光の人間にとってえげつない手を打つ事もあるのかもしれない。

 でも、もしそれがこういう“積み重ね”の結果だったとしたら。その中から、効果的・効率的な手を選んでいるだけに過ぎないのだとしたら。

 ……ひとえに『ただのゲス野郎』と断ずる事ができるだろうか?

 

 

『………なぁ、クロウよ』

「ん?」

『ゲモンのやつ、我よりも歓迎されてないか?』

「あー……まぁ当然だろ。あんなマジ授業されちゃあ」

『当然って貴様ァ!! 我のことをなんだと思っているのだ!』

「燃えるゴミ」

『コノヤロウッ!!!!』

 

 

 ……まぁでも、この燃えるゴミ先祖の部下だしな。

 授業内容はともかく、性格まで信用するのはアレか。千代田もミカンもそんな雰囲気だったし。

 

 

『16歳二児のパパまぞくのくせして生意気なッ!!』

 

「誰が16歳二児のパパまぞくだこのゴミ先祖!!表に引っ張り出してメラミとベギラマのフルコースを―――」

 

『喧嘩は止めてください二人とも。』

 

「『ゲモン!?』」

 

『子孫にディスられた程度で大人げないですよラプソーン様。

 それでもってクロウは16歳で父親になった程度でなんだと言うのだ。闇の世界では14、5歳くらいから親になるのは当たり前の常識だぞ?』

 

「「「「「「「!?!?!?!?!?」」」」」」」

 

 

 喧嘩を仲裁しようとしたゲモンの聞き捨てならない言葉に、光の世界の人間達(含まぞく&魔法少女)が一斉に石化でもしたように固まって信じられないって顔をしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ! 先人たちから素晴らしい知恵を学んでいくんだ!




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
 なんだかんだでゲモンから戦術やら人心掌握やらを学ぶ羽目になった暗黒神後継者。しかし、その内容があまりにもマトモだった為に肩透かしを食らって驚き戸惑っている。

暗黒神ラプソーン
 部下を一人呼び出すことに成功してご満悦なラスボス。ただし、依り代の寿命が残りわずかであり、再び杖に戻される事をすっかり忘れている。

妖魔ゲモン
 暗黒神の腹心をつとめる、卑怯で邪悪な魔物。ドラクエ8に初登場し、レティスの卵を人質にレティスに人を襲わせた。DQMシリーズでは、チンピラのボスにまで格下げしたり地味な性能だったりと雑な扱いを受けている。
 拙作ではDQ8の通りラプソーンの幹部として登場。策略をもって魔法少女と戦ったまぞくとしてラプソーンの信頼を得ており、クロウの家庭教師としてマトモな戦術や人心掌握術の授業を展開して良子にも尊敬された。

篇瀬吹雪&遊元泰庵
 ゲモン召喚に立ち会った一般ピープルとクロウのハーレム状態に嫉妬して鎮圧された一般ピープル。泰庵はゲモンを見ることが叶わなかったが、フブキはこの時点でクロウが16歳パパまぞく疑惑を持っていることを知る。
 

この人の事をもっと知りたい!(拙作オリキャラ限定)

  • クロウの母親魔法少女・神原玲奈
  • お嬢様系青色魔法少女・不二実里
  • ナンパ陽キャ一般人・遊元泰庵
  • 不思議チェスプレイヤー・篇瀬吹雪
  • 上の選択肢には乗ってない!(感想欄でさり気なくどうぞ)
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