まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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さて、いよいよオリジナルストーリーのガチバトル編………にしたかった。
救出までで時間がかかりすぎなんだよなぁ……



今回のあらすじ

リビングデッドが あらわれた!




奇々怪々!! 無断欠席の謎を解き明かせ!……お前は、それが芸術だって言うつもりか!?編

 ここ数日で行方不明になっていたダイの手がかりを探すべく、多魔せいいき記念館に足を運ぶ。そこで俺はメルと名乗る迷子の女の子と出会った。両親とはぐれたという彼女を安心させるため、ミカンや佐田、シャミ子や千代田の協力を取り付けることに成功したのであった。

 

 さて、そろそろミカンが迷子センターに着いた頃だ。俺達もそろそろ、この壁画のフロアにいるであろう、ダイやメルの両親を見つけないといけないな。

 

「さて、早速探すのを手伝って……?」

 

「どうしたんですか、クロウさん?」

 

「いやな…あれ」

 

 俺がふと目に入って気になったのは、壁画の一部分だ。

 真ん中には紫ドレスの女性が椅子に座っているのだが、その周りには彼女を讃えるよう人々の絵が描かれている。ところどころ傷が入ってるけど、思ったより保存状態は良さそうだ。

 そんな絵の中に―――なんだか、金髪の男性の絵が描かれていた。デフォルメされたその男の特徴が、なんかダイに似ていたんだ。

 

「? あの絵がどうかしたんですか?」

 

「…いや、何でもない。」

 

 流石に絵に描かれてる男ががダイに似てるとか言うわけにはいかないけど…今は現実の話だ。

 ミカンがメルちゃんを連れて迷子センターへ連れてってくれるから、そっちからの連絡を待ちつつもう一度この場所にダイやメルちゃんのご両親がいないか探して―――

 

「あの、クロウさん」

 

「なんだ?」

 

「あの…女の人の胸元、なにか光ってませんか?」

 

「え?」

 

 シャミ子が言った事を確かめるために、もう一度壁画を見る……

 

「あれは…鍵、か?」

 

「確かにちょっとキラッとしてるけど……壁画の装飾か何かじゃあないの?」

 

 まぁ、そんなのは後にするか…と思ったところで、なんとミカンが息を切らしながらここにやってきたのだ。

 どういうことだ? 確かミカンは、メルと一緒に記念館の迷子センターに連れてって貰っているはずじゃなかったのか?

 

「ミカン? メルはどうしたんだ?」

 

「それが…目を離した隙にいなくなっちゃったのよ!」

 

「「「「!!!!?」」」」

 

 な、なんだって!? このタイミングで…メルとはぐれただと!?

 

「何やってるんですかミカンさん!」

 

「目を離したって…どれくらい目離したんだ!」

 

「ほ、ほんのちょっとよ! 2、3秒くらいでしかないわ!」

 

 それでもダメなものはダメだろう!

 迷子センターに行くというのに、迷子を手放してどうするんだ。

 だが、ミカンのその様子は嘘をついてるでも誇張しているでもなく、ホントに一瞬でいなくなっちまったみたいじゃんか。

 これ以上ミカンをせっついても仕方ないので、俺達はミカンがメルを見失ったという場所まで移動した。

 

 

 

「ここで見失ったんですか?」

 

 やがて辿り着いた場所は、記念館の中でも記憶に新しく、印象に残る場所だった。なぜなら、そこは―――

 

「俺がメルとあった場所だ…!」

 

「ここで会ったの?」

 

「あぁ、人混みの中に泣いてるあの子を見つけてな…………!!! メルちゃん!」

 

 たまたま、見覚えのある髪色と身長が見えた。

 呼びかけた少女がこちらに振り返ったことで、人違いではないことが判明する。

 

「あれが、メルちゃん…!」

 

「メルちゃん! 私だよ、杏里だよ!」

 

「一体どうしてここに―――」

 

「………」

 

 あ、あれ? メルちゃんが、俺達を見つけるなり憂いを帯びた顔を背けて記念館の奥へ走って行っちゃったぞ!?

 

「ちょっ!?」

 

「待って!」

 

 皆して追いかける。

 両親に合わせようとした迷子がまたいなくなり、ようやっと見つけたと思ったらまた何処かへ行こうとする。流石に何度も迷子になられては困る。

 追っても追っても逃げていくメル。来た道を戻るように記念館の奥へ行き、最終的には壁画のあったところに逃げ込んでいった。

 

「あれ……メルちゃんは?」

 

 そこは、俺が千代田とシャミ子と合流した壁画のフロアだった。

 出入り口は一つしか無いはずなのに、そこに入ったハズのメルは影も形もなく、さっき多くの人で混んでいたのが嘘みたいにがらんとしていた。

 

「なんで…今、ここに入ってったハズなのに!?」

 

「姿の見えない魔法でも使われたのかな?」

 

「いや、そんな形跡がない。でも、なんかイヤな予感がする…」

 

「あの、桃……変なコト聞いてもいいですか?」

 

 そんな中、シャミ子が壁画を指差して、こう言ったのだ。

 

「あの壁画…あんなに人いましたっけ?」

 

「「「え?」」」

 

 一度壁画を見た俺はそう言われて初めて気が付いた。

 ……あの壁画、さっき見た時よりも、真ん中の女性を讃える人々が()()()()()()()()()

 シャミ子と一緒に壁画を見ていたのであろう千代田も、異変に気が付いたようだ。

 

「!! ナイスシャミ子、さっさとここから逃げ出そう」

 

 振り返って出口に走り出した千代田だが、それに続こうとした時点で、俺達は信じられないものを目の当たりにした。なんと、出口のドアが急にひとりでに動き、千代田が出る直前にバタァンと音を立てて閉まってしまったのだ。千代田が思いきりドアにぶつかったが、動く様子はない。

 ……つまり、俺達はもう閉じ込められてしまったのだ。この、壁画の間に。振り返った千代田の顔が、今まで見たことないくらいに、焦っていた。

 

「…やられた。まさか、もう術中だったとはね」

 

「桃?」

 

「みんな、周りに注意して。どこから仕掛けてくるかわからないから」

 

「仕掛ける!? だだだだ誰が仕掛けてくるんですか!?!?」

 

「み、みんなアレ見てよ! めっちゃ光ってる!!?」

 

 佐田の声が聞こえた瞬間、鍵が光り輝いた。

 それも、眩しいなんてレベルではなく、周囲一帯が真っ白に染まったのかと錯覚するレベルでだ。

 視界が全部潰された俺は、ただ皆が動揺して悲鳴をあげるのを聞きながら、その場にとどまることしかできなかった。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 ―――目が覚めた時、俺は倒れていた。そして、周りにシャミ子とミカンが倒れてるのも見えた。

 最初に意識が戻ったらしい俺は、立ち上がってみんなの無事を確認した。千代田に、佐田。あとさっき再生したばっかのゴミ先祖…………うん、全員いるな。そこは大丈夫そうだ。問題は……

 

「……どこだここ」

 

 さっきまで記念館の壁画の間にいた筈なのに、全く見覚えのない謎の空間にいることだ。

 六角形の石畳とそれらを繋ぐ廊下のような道。ところどころにある石柱や燭台から火が出ている。恐らく明かりだろう。そして……最も奇妙な点は、その床や廊下や、石柱や燭台が()()()()()ことだ。上を見てみればあるのは天井ではなく濁った空だ。まるで、黒と青の絵の具をありったけ水に溶かしたようだ。

 

「変な空間ね……まるで絵の中に入ってしまったよう…」

 

「『まるで』じゃなくって、本当に絵の中に連れてこられたんじゃないですか!?」

 

「なんでちょっと興奮してんだシャミ子ー?」

 

「だって、絵の中ですよ! ゲームに出てきそうなダンジョンですよ!?」

 

 他の皆も、意識を取り戻してこの光景の不思議さに各々思った事を口にする。

 シャミ子の興奮ぶりは分からなくもない。絵の中に入るなんて、ゲームでもなかなかない展開だよな。けど、今はちょっとそれどころじゃなくなりそうだ。それに……もしかしたらって考えが浮かぶ。

 

「なあ…メルちゃんがここに来てるかもしれないぞ?」

 

「!」

 

「ちょっと何があるか分からないから怖いけど……探してみないか?」

 

「そうね。さっきのメルちゃんの様子のちょっとおかしかったし、気になるわ」

 

『………』

 

 ゴミ先祖以外はメルちゃんを探すのに賛成のようだ。ゴミ先祖が何も言わないのが気になるが、足を進めよう。

 廊下はまっすぐ進んでおり、分かれ道とかも一切ない。一歩踏み外したら黒と青の絵の具の空へ真っ逆さまに落ちそうなものだが、踏み外せないように、何か謎の力にブロックされている。メルちゃんがいるなら、見落とすわけがないし、誤ってどこかに落ちてしまったようにも考えられない。

 

「ずーーっと続いてるな。この先には何があるんだ?」

 

「…! 見えてきた。女の壁画と………人?」

 

 このままずっと続くんじゃないかという錯覚を佐田が口にした時、千代田の指差した方向に違う光景が見えた。

 俺らの背よりも遥かに大きい壁画に跪いて崇めている人々。老若男女問わず崇めていて、なんかみんながみんなマトモな様子じゃない。そして……あの女の絵を崇めてる連中の中に、俺達の目的の人物がいた。

 

「ダイ!」

 

「えっ、遊元さん!?」

 

「おい、ダイ! こんなところで何やってんだ!」

 

「…………」

 

「おい聞いてんのか? おい!」

 

 そう。ダイがいたのだ。アイツも他の連中に混ざって絵の女を崇めている。声をかけても肩を揺すってもまったくこちらに気にかけない。いくらなんでもこれは異常だ。本来のダイは友達付き合いは大事にするヤツだ。まぁ…たまに女子関係でめんどくさくなるが、それでも俺を無視なんておかしすぎる。

 

「…ダメね、まるでこっちの存在そのものに気付いていないみたいだわ」

 

「おいおい…お前らしくねぇぞ!あんな絵に夢中になっちまって……絵なんかよりも、女の学芸員さんに興味ありそうなお前が……」

 

「神原くん、それはそれでどうなの―――」

 

『―――カカカ。この美しさがわからぬとは、おろかよのぅ…

 

「「「「「!!!!?」」」」」

 

 突然、声が響いた。低めの声と高めの声が混じった不気味な…だが、女の声だ。

 いきなり聞こえた声の主を探す……が、周りにそれらしき人影はない。

 

カカカ、どこを見ておる? こっちじゃ、戯けめ

 

「ねぇ……あれ!!」

 

「絵が…」

 

「動いてるわ………!!」

 

 最初に気付いた千代田が見上げた方向にあったもの……それは、さっきまでダイを含めた人々が崇めていた絵が、瞳を動かしてこちらを見下ろしている様子だった。

 本当に絵が動いている……全く動かないはずの、絵の中の女性の…目が妖しく光り、こっちを見るように動いている…!!

 

ひい…ふう…みい………ふむ、5色か。

 カカカ、汚い色ばかりで飽いていたところだ。歓迎するぞ。ようこそ我が世界へ

 

「しゃ、喋った………」

 

どの者も素晴らしい…美しい色になりそうだ。

 先だってわらわに魅了された者ども同様、残らず吸収しわらわの美を支える一部としてくれよう…!

 

「きゅ、吸収、ですって…!?

 おいきさま! それはどういうことだ!」

 

どのような色になるのか…楽しみにしておるぞ。カカカ……カッカッカ…!

 

「そうはさせない!」

 

 ミカンが矢を放つ。しかし、それが壁画に命中するよりも先に壁画がフッと消えて、矢はそのままどこかへ飛んでいった。そして、絵が消えたことで、奥へと続く道が見えた。

 それと同時に、絵を崇めていた人がその道……つまり奥へ向かってふらふらと歩いていくではないか。しかも、その中には、しっかりダイもいやがる!!

 

「待て、ダイ! そっちに行くな!!」

 

 しがみついて行かせまいとしても、無理矢理俺ごと引きずってでも進もうとしている!

 な、なんだ、こいつ……普段からこんな力あったのか!? だがここでダイを離したら、なんだかとてつもなく嫌な予感が―――

 

「ぎゃーーーーーーーー!!クロウさん!前!前!」

 

「え……うおあああああ!!?」

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……

 

 急に視界に現れた手がひっかいてくるのを避ける。その拍子にダイを手放してしまい、あいつが奥へと歩いていく。だがそれよりも俺は、目の前のショッキングなヤツに言葉を失った。なぜならそいつは、人としての肌のツヤと色をしておらず、目は虚ろで、明らかに命のないものであるにも関わらず、動いて襲ってきているからだ。

 

「「ヒィィィィィーーーーーーー!! ゾンビィィィィィ!!!!!?」」

 

「な、なんだこいつは!!?」

 

「多分……あの壁画に吸収された人のなれの果て……かも」

 

「ウチらこうなっちゃうの!? 絶対イヤなんですけど!!!」

 

「ゴミ先祖!」

 

『ゴミではないご先祖だ!』

 

 同感だ、佐田。俺だって、こんなゾンビの仲間入りはゴメンだぜ。

 ゴミ先祖に合図を送って戦闘態勢をとり、戦闘服に変身する。そして、ゆっくりとこっちに近づくゾンビ達を前にして―――

 

大閃熱呪文(ベギラマ)!!」

 

 呪文を―――炎を放った。

 ベギラマのレーザーのような炎に焼かれたゾンビ達は、悲鳴代わりにうめき声をあげながら、その身を消滅させていった。

 

「く、クロウさん!! その人は…!」

 

『いや、これで良いのだしゃみ子よ。身体が腐敗しゾンビと成り果てた者はいかなる蘇生も受け付けん。それに、今はおのれの身を優先すべきだ!』

 

「ラプさんの言う通りだよ。ここは私達がやるから、他のみんなは下がってて!」

 

「気持ち悪いからとっととどきなさい、ゾンビ共!」

 

 俺の魔法に続くようにミカンと千代田が変身してゾンビを蹴散らしていく。俺とシャミ子と佐田はそれについていくように走り出した。時折千代田とミカンの攻撃をすり抜けてこっちに近づきそうなヤツをベギラマで燃やし尽くす。

 

「悪いな……こんな雑な火葬しかできなくてよ…!」

 

「このままじゃあ遊元までデロデロのゾンビにされちゃうかも…!?」

 

「想像させないでくれよ…!」

 

 ダイをこんなゾンビ達の仲間になどさせるものか。その意志を絶やさぬまま前に進む。

 その過程で現れるゾンビが絶え間なく現れる。それは殆ど千代田とミカンが倒してくれたけど、やっぱり人の姿をしているものを攻撃するのは……生きていた人を攻撃するのは…キツイな。シャミ子と佐田が心配だ。

 

「うわ、なんだこのマッチョ!?」

 

「ムキムキだ!」

 

「ムキムキです!!」

 

 ……幸い、2人の顔色は悪くなってはいたものの、時折現れる筋肉モリモリの四つ腕マッチョマンのお陰か最悪の事態は免れたようだ。千代田とミカンの無双な雰囲気のまま、この世界の深部へ足を進めることが出来た。

 

「ダイ!」

 

「なんでしょう……すごく嫌な予感がします…」

 

 人間ほどある太さのイバラに囲まれたその空間では、ダイを含めた壁画に魅了されたのだろう人々が心ここにあらずといった感じで突っ立って並んでいた。…まるで、何かの順番を待つかのように。そして、その行列を見て嫌な予感がしたのは、シャミ子だけじゃない。

 何かが起こる前に、ダイをここから引っ張り出してでも元の世界に連れて帰ろうとした………その時だ。

 

 ―――イバラの中から、花のつぼみのような触手が現れたのは。

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

 そいつは、つぼみの部分がかぱりと開いて、まるで竜のような口をあらわにした。

 そして、意思のない人々に向かって口を向けると、人々がUFOにでも攫われるかのように中に浮かんで、触手の口の中へ吸い込まれていく。やがて吸い込まれた人は、コーヒーでもかき混ぜるかのように溶けていった。

 ―――見ているだけでおぞましい画だ。血とかのグロ表現は一切ないが、下手なグロ表現よりもえげつない。

 壁画の女は……こんなのが芸術だというつもりなのか!!?

 

「させるかよ!」

 

 ダイに飛びつき、触手の口へと吸い込まれないようにしがみつく。

 でも……コイツ、俺ごと吸い込もうとしてきやがる!?

 

「神原くん!」

 

「クロウさん!!!」

 

「クロ!!?」

 

『ま、待て待て待てクロウ!! 早く遊元泰庵を離せ!!

 このままじゃあ、我が食われてしまうぞォォ!?!?』

 

 俺の足さえ床から離れて、みんなの悲鳴が聞こえてくる。このままじゃあ、俺もダイと一緒に水に浸かった絵の具みたいに溶かされてしまうだろう。

 ゴミ先祖も泣きながら俺の手の中で暴れているが……このまま俺が、UFOキャッチャーの景品みたいに大人しくしていると思っているのか?

 落ち着いてくれゴミ先祖。あんまり暴れられると、折角の呪文が外れるだろ。

 

 

「食えるモンなら食ってみろ―――極大爆裂呪文(イオナズン)!!!

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?!?!?!?!?!?」

 

 

 触手の口に向かって放った大爆発呪文。

 それをマトモに受けて、口の内部から爆発したソイツは、怪獣みたいな悲鳴をあげながら崩れ落ちていく。

 ダイとしがみついていた俺も、重力を取り戻したように落下して、自由の身に戻っていた。

 

『クロウ貴様! そういう事やるならやると言え!!ちょーヒヤヒヤしたんだぞ!!!』

 

「ふぅ……上手くいって良かった。

 みんな! 早くこっから逃げよう!」

 

「意識のない人は私達で確保しておいたわ! さぁ早く!」

 

「ミカンさんの手際!!!」

 

 ミカンはどうやら触手に食われていない、他の人たちの救出を済ませていたようで、あとはその人達やダイを連れながらこの絵の世界?を抜け出すだけみたいだな。

 要救助者を引っぱりながら来た道……はイバラで塞がっていたため、千代田が力業で切り拓いた道を進んでいく。やがてその先で、澱んだ空に切れ目がある場所に通りかかる。その切れ目からは、眩しいほどの光が差していた。

 

「これは……?」

 

「もしかすると、元の世界への出口なのかもしれないわ…!」

 

「よ、よかった……これなら、ここから記念館へ戻れるかもしれませんね!」

 

「ん…、待って。ここにある石碑は…」

 

「佐田?」

 

 佐田の動きが止まったので、どういうことかと思ってみてみれば、視線の先にはところどころ崩れかかった石碑があった。

 みんなも気づいたようで、集まって石碑に目をやる。……どうやら、何か書いてあるようだ。

 

「それは?」

 

「日本語で書いてあるんだよ。えっと―――」

 

 


 

 

私が偶然にも郊外にて発見した

数千年前に滅亡した古代バビロニア王国の

不思議な壁画……これを使えば

都市に人が集まり栄えるはずだった。

―――だがそれは大きな過ちだった。

壁画は邪悪に呪われていたのだ。

壁画は人間の命を自らの糧とする為、

人々の欲望を不思議なチカラで叶え、惑わし、

その御利益にあやかろうとする者を吸収する。

また欲深くない者には少女の姿で現れ、

人の善意につけこみ欺き壁画の中へ引きずり込むのだ……

 

 


 

 

「『壁画は邪悪に呪われていた』か……」

 

 つまり、記念館に飾られていたあの壁画は、最初から悪いタイプのそれだったってことか。

 だいぶ前から人を糧にしている壁画とか、もはや呪いの類じゃないか。なんでそんなのが多魔市に流れ込んできたんだ?

 

「少女の姿で現れ、人の善意につけこみ………って、それってメルちゃんのこと!!?」

 

 一緒に石碑を読んでいたミカンが、信じられない事を言った。

 いま…何て言った? メルちゃんのことって、それじゃあまるで……

 

「お、オイ…何を言ってんだ?

 メルに限ってそんなこと、あるわけないだろ?」

 

 ―――まるで、メルちゃんが呪いの壁画の元凶みたいじゃないか。あの子は両親とはぐれただけの迷子じゃないのか!!?

 

「クロ………気持ちは分かるけどね。

 私や桃は、こういう人をダマすタイプのまぞくと何度もやりあってきたから、もしかしたらって思っちゃうのよ」

 

「そんなの…ミカンさんの考えすぎ、じゃないんですか……?」

 

「でも私達……この世界に来てから、一度もメルちゃんに会ってないよ。もしただの迷子なら……遊元くん達と同じ場所にいたはずだよ?」

 

 シャミ子の考えすぎって意見も、千代田の反論に速攻で両断される。

 千代田の言う通り、俺はこの世界に来てから一度もメルちゃんに会ってないのだ。

 ならば「もう吸収されちゃった後なのでは」という、割と考えたくない展開を思いついたが、それだとメルちゃんが行方不明になるだいぶ前から消息を絶っていたダイが今ここで無事にいる意味が分からない。

 ヤバい。どんどん、考えたくない可能性が近づいてきている!! まさか、本当にあの子が……

 

「―――シャミ子、神原くん。どうやら、あっちは考える時間をあんまりあげてくれないみたい」

 

「「ギャアアアアアアまた触手だァァァァァァァ!?!?!?」」

 

 そんな事を考えている内に、さっきブッ飛ばしたハズの触手と同じ形の触手が迫っているのが見えた。

 千代田の言う通り、急いでこっから脱出しないといけない!

 

『ぬああああああああああああヤバいぞ! どうするのだッ!?』

 

「イチかバチかだけど、あの切れ目に飛び込むしかない」

 

『そう言いながら助けた人を切れ目にぽいぽい放り込むとは鬼畜魔法少女!』

 

「言ってる場合じゃないでしょ!」

 

 確かにこれは考えている時間はない。

 俺はいまだボーっとしているダイと戸惑っているシャミ子の手を掴み、切れ目に飛び込んだ。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 光に包まれた後、俺達は記念館の壁画の間に倒れていたが、すぐに意識を取り戻し、周囲を確認したところ……特に、誰かが欠けたわけでもなく、助けた人はみんな無事な用だ。強いて言えばゴミ先祖が千代田にひったくられてボキボキにされたことくらいか。鬼畜魔法少女とか言うから……

 

 

「いやー、ハラッハラだったわ、今日の体験」

「その一言で済ませられる佐田のメンタルよ」

「この壁画のおそろしい真相をみんなに伝えないといけないわね…」

「あんな恐ろしい事が起きているなんて…」

「……………あ、あれ!? 俺、いったい何を…??」

 

 やっと正気を取り戻したらしいダイに、これまでの事情を説明しようとしたところで―――学芸員さんに「もう閉館ですよ」と記念館を追い出されてしまった。陽はとっくのとうに沈んでおり、時計を見れば、7時をもう回っていた。

 

「今日はもう遅いから、一旦帰って体を休めよう。あの壁画をどうするかは…休日にでも考えようよ」

 

 千代田のその一言で解散する道すがら、俺は考えていた。

 メルちゃんが……人々を絵の中に取り込んで吸収しているかもしれないという、ミカンの推測。

 もしそれが当たっているというなら。俺達は、見事に一杯食わされたことになる。あの迷子の姿も、心細いと流した涙も、全部俺達を取り込むための演技だったという事になる。

 

『クロウよ、我は、千代田桃や陽夏木ミカンの言い分が正しいと思っているぞ』

 

「………そうだろうな」

 

 ゴミ先祖の意見を聞く気になれない俺は、これまでよりも……これまでよりも一番憂鬱な帰り道を歩いて行った。

 ただし、足取りは全く重くなく。むしろ、この一件を誰かに聞いてもらいたい気分だったから、それだけが救いだったのだと、思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ! 困ったときは、必ず誰かと相談をするんだ!




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
 壁画における衝撃的な疑惑が浮かび上がり、動揺が隠せない主人公。いちばんメルを気にかけていたので、裏切られていたのではとショックを受けた。いち早くこの事を誰かに相談したい。自分の騎士とか策士の師とか母親とか。

暗黒神ラプソーン
 若干ヘタレた暗黒神。ただし、メルが壁画の変身した姿で、クロウ達をダマしていたではないかというミカンや桃の予想は全面的に支持している。なんせ昔、自分も魔法少女同志を同士討ちさせてたし(ゲモンの作戦で)。

リビングデッド
 生ける屍となって魔物になり下がった、元人間の魔物。オリジナルカラーは髪が茶色、肌は肌色で緑服。「生ける」屍と言うだけあってか、色違いモンスターの「くさったしたい」や「どくどくゾンビ」、「グール」に比べて屍にしてはえらく肌の血色が良い。
 拙作では壁画の世界に登場する、『壁画に吸収された人間のなれの果て』として登場。ここまで腐敗すると手遅れ状態であり、作中でクロウがやったように火葬したりぶちのめすしかない。

マッスルガード
 ドラゴンクエスト11で登場した、四本腕に筋骨隆々の体躯を備えた一つ目の巨人で、魔物達のボディガードを務める。顔がギガンテスに似ているが口はなく、兜を被っている。
 拙作でもドラクエ11同様、壁画世界で出現する。

この人の事をもっと知りたい!(拙作オリキャラ限定)

  • クロウの母親魔法少女・神原玲奈
  • お嬢様系青色魔法少女・不二実里
  • ナンパ陽キャ一般人・遊元泰庵
  • 不思議チェスプレイヤー・篇瀬吹雪
  • 上の選択肢には乗ってない!(感想欄でさり気なくどうぞ)
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