まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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今の作者「まちカドまぞくの単行本はどこだアアアアアアアアアああああああああ!!?」

えー、未だに原作を手に入れることが出来てないマンが通ります。


暗黒子孫の友人たち! ラプソーンの謎を追え!……ってゴミ先祖はゴミ先祖だろ、それ以上でもそれ以下でもねぇよ

 私、吉田優子は家庭の事情で闇の一族・シャドウミストレス優子として魔法少女と戦う使命を受けました。

 最初はダメダメまぞくでしたが、月4万円生活の呪いを解くためです。めげてはいられません!

 杏里ちゃんや桃の助けもあり、少しずつ強くなっている……気がします………たぶん。

 

 でも、桃を手当てした時の血でごせんぞが喋れるようになり、桃が弱くなってからは、一緒に強くなってこの街を守り、桜さんを探すことになりました。

 

 その時期にやってきた桃の助っ人は、ミカンさんという魔法少女と―――クロウさんという暗黒神の末裔の男の人でした。

 

 クロウさんは、私と同じ闇の一族の末裔なんだそうです。

 ご先祖様の名前はラプソーン。

 暗黒神という、なんかすさまじい二つ名を持つ凶悪なまぞく(ごせんぞによると厳密には違うみたいですが)なんですって。部下もたくさんいるようで、この前二人の幹部の話を聞きました。

 ………どっちも怖いまぞくでしたけど。なんですか家族を人質に同士討ちって。なんですか魔法少女相手に一騎当千って。やばすぎます。鬼です。アクマです。おそろしまぞくです。

 

 そんなおそろしすぎる二人を従えたラプソーンさんを、クロウさんはあんまり尊敬してないみたいです。むしろ「ゴミ先祖」とか言って、しょっちゅう封印されてる杖をへし折ってます。

 どうして自分のご先祖を尊敬してないんですかと聞いたことがあります。

 

「息をするように殺人を唆してくるゴミ先祖なんぞ尊敬できるか」

 

 その一言で納得しました。

 ラプソーンさんを封印から解くにはラプソーンさんを倒した魔法少女の末裔を7人殺さなきゃならないそうです。うちのごせんぞよりも封印がガチガチだぁ。

 

「人を殺したら殺人罪。当たり前のことだ。あのゴミ先祖は俺が法律を破ることを期待してんだよ。まったく……世界の敵が祖先にいると苦労するぜ」

 

 クロウさんの苦労が少し分かった気がします……

 ……ダジャレじゃないですよ。私はさむまぞくではありませんからね。

 

 あと、クロウさんはミカンさんととても仲が良いです。クラスも一緒ですし、常に一緒に行動している気がします。たまにご飯にかける調味料でケンカしてますけど。杏里ちゃんやほかのクラスメイト(特に男子)から、「付き合ってるんじゃないのか」と言われるほどです。

 初めてそういう噂を聞いた時はビックリしましたけど、ミカンさんが必死に「違う」と言ってましたし、クロウさんも否定してましたのでそういう関係ではないようです。

 

 

 ただ……クロウさん自身、どんな力を持っているのか、よくわかりません。

 

 少し前、桃が怖い顔をして変身し、すっ飛んでいったことがありました。

 「ミカン以外の魔法少女が出た。シャミ子は帰ってて」とひとこと言って消えるように走っていったんです。

 魔法少女は、桃やミカンさんみたいに優しい人だけじゃないことは何度も桃から聞きました。点数稼ぎのためにまぞくを問答無用でぶち転がす魔法少女もいると。だからこそ、この街に「すぎこしの結界」があることも。

 でも私は―――嫌な予感がしたんです。

 

『おいシャミ子! お前は家に帰っていろ! 桃も言ってただろう!』

 

『嫌な予感がするんです! 桃が心配です!! 眷属を心配するのは当たり前でしょう!!?』

 

 

 帰るように促すごせんぞの声を振り切った私は、にぶい両足と運動神経を働かせてしらみつぶしに桃を探し回りました。

 やっとの思いで多魔川の河原に着いた時、目撃したのは……焼け焦げている河原にクロウさんを背負うミカンさん、ひとりでにぴょんぴょん跳び置いてかれまいとしているラプソーンさんの杖、そして―――青髪の見知らぬ魔法少女を背負う桃でした。

 

 ことのあらましを全部聞いて一瞬血の気が引きましたが、クロウさんも見知らぬ魔法少女も生きているとわかりほっとしました。もちろん、後から桃にめちゃくちゃ怒られましたが。

 

 そうして説教され、青色魔法少女が帰っていったあと、桃に聞いてみたんです。

 

『桃、あの河原の件なのですが…』

 

『ああ……私の言う事を無視しちゃったわるまぞくの』

 

『うっ…それは、ごめんなさい……でも、桃が無事で良かったです。もし桃にもしものことがあったら、私は……』

 

『………それで、要件は?』

 

『あの焼け野原、一体何が起こったんですか?』

 

 桃は、数拍の沈黙ののち、私の質問にこう答えたんです。

 

『……神原くんがやった。呪文を唱えた瞬間、あの河原一帯が爆発した』

 

『爆発!?!?』

 

 あの焼け焦げた跡、かなり広かったですよ!? それを、あのクロウさんが!?

 意外すぎます。てっきり、桃とミカンさんと青色魔法少女の三人の戦いの余波だと思っていたんですが。

 

『あと、ミカンに治癒魔法もかけたんだ、彼』

 

『クロウさんって何者なんですか……』

 

『暗黒神の末裔だよ』

 

 その暗黒神の末裔が何者なのかを知りたかったのですけれど、爆発に治癒とスケールが大きすぎて言葉を失った私に、それ以上聞くことは出来ませんでした。

 

 一日たってクロウさんが目覚めた後、桃とお見舞いに行った時、桃に「これからどうするの」と聞かれたのに対して彼はこう言ったんです。

 

『あんま変わらないよ。シャミ子や千代田、ミカンと一緒に色々楽しい事や馬鹿やったり。それだけさ。

 ただ……俺は、暗黒神ラプソーンについてもっと知るべきなのかな、とは思うよ』

『ほんの少し前まで、俺は光の一族も闇の一族も、自分のご先祖についても何も知らなかった。今でも、まだ知らないことの方が多い。

 だから、少しでも多くのことを知りたい。』

『何より俺自身の力に不明な点が多すぎる。それを知りたいかな。

 いざという時、大切なものを守りたいから』

 

 それで、何となく分かってしまったのです。

 クロウさんは、まだまぞくとしての生活に慣れてないんじゃないかと。

 私だって、初めてまぞくとして目覚めた時は、いきなり生えたしっぽや角で重心が変わったり魔法少女と戦う使命と聞いて分からないことがあったりしました。

 でもおかーさんや良子、杏里ちゃんや桃(あと小倉さんもいるけど、カウントしていいか怪しいです)に教えて貰ったからこそ、今の私があるんだと思います。

 

 聞けば、クロウさんは私よりも後にまぞくに目覚め、ミカンさんやラプソーンさん以外からはほとんど教えてもらってない状況(クロウさんのご両親は海外にいらっしゃるそうです)だったそうです。

 

 まぞくの先輩としてクロウさんに教えられるように、これまで以上に強く賢くならないと!

 ……後輩が爆発とか回復とかできる超エリートまぞくっぽいけど、がんばるぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれシャミ子!エリート(?)な後輩にも憧れられる強いまぞくになるのだ!

 

 

 

◆  ◇  ◆

 

 

 

 私、千代田桃にとって、神原クロウ君は……よく分からない存在だ。

 

 初めは、ミカンからの一本の電話だった。

 それは……私のお願いに対する返事だけじゃなくて、爆弾のような情報をもたらした。

 

『私の幼馴染が、暗黒神の子孫に目覚めちゃったのよ……!』

 

 電話越しから呪いが降りかかりそうな慌てようは、それが紛れもない真実であることを雄弁に語っていた。

 

 暗黒神ラプソーン。

 なんやかんやで世界を救った私でも、あんまり聞かなかった名だ。

 でも、ミカンから聞けば聞くほど、ソイツの力が強大であることがなんとなく分かった。だから私は、その暗黒神の子孫も監視のために桜ヶ丘(こっち)に来ることを提案した。

 

 彼―――神原黒男くんと会ったのは、ミカンが桜ヶ丘へやってきて、一緒にうちへ招いたその日だった。

 

 

『貴様、賢者の子孫だな?』

 

『………喋る、杖?』

 

 呼び鈴に反応してドアを開けた先にいたのは、ひとりでに立っている赤い玉をくわえた鳥をかたどった杖だった。

 

『我はラプソーン。貴様の名を聞こうか』

 

『………………千代田桃』

 

『そうか……………………賢者の子孫、覚悟おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!』

 

『えいっ』

 

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?』

 

『え、なにこれ?』

 

 いきなり襲い掛かってきたので変身して殴ったら粉々になった。

 わけがわからずに木屑を眺めていると、そこにやってきたのは………

 

『クロ! ラプソーンをしっかり押さえててって言ったでしょ!』

 

『ゴメンって! あいつめっちゃ抵抗するもんだから………あぁ、遅かったか………』

 

『えっと、ミカンと、あなたは……?』

 

『電話で話したじゃない。彼が「暗黒神の子孫」よ』

 

『えっと…うちのゴミ先祖が、スミマセン………』

 

 ミカンと、黒い髪の男の人だった。

 それが、神原くんとのファーストコンタクトだ。

 それからは、ミカンと一緒に同じ学校に転校してきた彼について、本当に様々なことを知った。

 

『お! 千代田お前、猫飼ってるの?』

 

『ナビゲーターのメタ子だよ。9割7分普通の猫だけど、たまに喋るの』

 

『喋る? なんだそりゃ、ネコちゃんが喋るのか? どんな風にしゃべるんだいメタ子? んん?』

 

『時は来た』

 

『どわーーーーーーーーーーー!!!? なに!? と、時は来たって、お、俺を裁く時が来たって、そういう…?』

 

『メタ子は「時は来た」しか喋らないよ』

 

『そ………そうなのか…?』

 

『…時は来た』

 

『ほんとだ…』

 

 動物……特に猫が大好きで、メタ子に一目惚れしたくせして、メタ子が喋っただけでシャミ子以上に驚くちょっとビビりなところ。

 

『シャミ子、千代田、お前らそれが今日の昼飯なのか?』

 

『……? そうだけど?』

 

『何か問題でも?』

 

『よくもまぁ二人揃ってそんな味気ない飯が食えるもんだ。これやるから飲んでおけ………………………マヨネーズ』

 

『飲まないよ…』

 

『なんでだ!? 人類史上最高の発明にして最強の調味料兼飲み物じゃないか! 飲むだろ普通!』

 

『『マヨネーズは飲み物じゃないよ(ありません)!!』』

 

 とんでもないマヨラーで、事あるごとにマヨネーズを飲むというどう見ても聞いても不健康そのもののような食習慣を勧めようとしてくること。(本人がやるのが当たり前みたいな言動しているところが逆に本当にやってそうで怖い…)

 

『クロウよ! 今日こそ賢者の血を絶やし、我の復活の足がかりにしようではないか!!』

 

『くどいわゴミ先祖』

 

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?』

 

『おはよう神原くん。またラプさん折ってるの?』

 

『いつもの事よ、桃』

 

『頼むからこのゴミ先祖なんとかしてくれよ、ミカン、千代田……』

 

『慣れるしかない』

 

 自分のご先祖様をこれでもかというほどにぞんざいに扱っていること。

 

 

極大爆裂呪文(イオナズン)―――ッ!!』

 

『『!!!?』』

 

 

 そして―――私も見たことのない、未知で強大な力を秘めていること。

 そう……世界を救った経験のある私が、見たことがないのだ。

 あの時、ミカンの応援のためにたどり着いた私は、別の街に住む魔法少女・不二実里と戦っている最中に神原くんが変身し、爆発を起こしたさまを見たのだ。

 

 とてつもない爆音のあと、目に入ったものは、至近距離で爆発を食らっていたために戦闘不能になった不二さんと、見るも無残に焼け焦げた河原一帯。

 

『流石、我が子孫。全盛期の我の爆裂呪文(イオ)くらい出たな。修練次第では地球を抉ることも可能になるだろう』

 

 感心するようにさらっと言うラプさんに、それはきっと神原くんやラプさんが本気になったらできるんだろうなとなんとなく確信するとともに、不二さんが必死になって彼の命を狙う理由が分かった気がした。

 

 イオやイオナズンについては、後でラプさんを揺さぶったところ、両方とも爆発を起こす呪文であることが判明した。イオは小爆発程度で、イオナズンの方が威力が圧倒的に上らしい。あの神原くんの呪文が、全盛期のラプさんの小爆発程度、と考えると。

 全盛期のラプさん……いや、ラプソーンは、一体どれくらいの強さなのだろう。きっとやる気をなくす前の私でも勝てないかもしれない。

 

 そんなものが今復活したら………きっと、世界は間違いなく滅ぶだろう。

 

 でも……神原くんは多分そんなことはしないと思う。

 だって―――

 

 

『俺は今の毎日で十分なんです。

 封印を解くつもりも、力を継ぐつもりもない。

 でも……ミカンを…俺の大切な人を傷つけるような奴が現れたとしたら……

 きっと俺は、その人を守るために戦います。』

 

 

 ―――彼は、大切な人と過ごす日常が大好きみたいだから。

 大切な人だってさ、ミカン。結婚式には呼んでね。

 

 

 

◆  ◇  ◆

 

 

 

 私の幼馴染が暗黒神の子孫として目覚めた。

 それが発覚した時、どうすればいいか分からなかった。

 魔法少女になった時、暗黒神については大体のことは知っていた。わずかながら、ラプソーンが復活する可能性についても。

 

 まさか、子孫に賢者の末裔を狙わせるという手を使ってくるとは思わなかった。

 しかも…よりによって、クロが、その子孫に選ばれるなんて。

 私の呪いは、発動しっぱなしだった。

 

 暗黒神の子孫が無力なまま現れた。しかも、本人はその事実をテレビでやる怪談を笑い飛ばすかのようにまったく信じていない。

 

 そんなコトが他の魔法少女―――特に賢者の末裔に知られでもしたら。

 きっと、全力をもって私の幼馴染の命を狙いに来るだろう。

 

 私は、彼を守るために手を打つことにした。

 光と闇の一族と暗黒神ラプソーンについて、知っていることの全てを教え、目の前で変身して信じてもらった。

 桃の助っ人を受けるついでに、彼と一緒に多魔市せいいき桜ヶ丘に引っ越しした。

 常に彼と一緒に行動して、いつでも彼を守れるように動いた。

 

 

 でも……甘かった。

 

 

 クロの命を狙いに来たという青い魔法少女(のちに不二実里さんという名を知った)に苦手な接近戦を押し付けられ、最終的に吹き飛ばされた時、意識を手放す前に思ったのは、クロのことだった。

 

 

 守ってあげられなくて、ごめんね…………と。

 

 次に目が覚めた時に彼が無事でいますようにと、蜘蛛の糸のような望みを思いながら意識の暗闇に沈んだあと、全身を包むあたたかな感覚とともに目が覚めた時に見えたのは、見覚えのない鳥のような兜ごしに安心したかのような顔をしたクロだった。

 包まれるかのような温かい感覚のおかげか思ったより体が痛くなかった。

 

 ひょっとして、私は夢を見ているのか、はたまた天国かなにかに来てしまったのだろうかという時に。

 

 

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! 何でェェェッ!!!?』

 

『『!?!?!?!?』』

 

 

 ラプソーンの悲鳴で完全に目が覚めた。

 目の前には、ジャージ姿で立っているクロと、焼け焦げた河原に力なく倒れている青い魔法少女・不二実里だった。

 わけが分からなかった。

 

『青髪の人。俺は………ぶっちゃけ、封印なんてどうでもいいんです。俺が欲しいのは、大切な人たちと過ごす穏やかな日々なんです』

 

 クロは、目覚めた私に気づいていないのか、でしゃばってきたラプソーンに気を取られながらも倒れている不二さんに話を続ける。

 

『俺は今の毎日で十分なんです。

 封印を解くつもりも、力を継ぐつもりもない。

 でも……ミカンを…俺の大切な人を傷つけるような奴が現れたとしたら……

 きっと俺は、その人を守るために戦います。』

 

『大切な人を、守る………』

 

『はい。俺にとっては、ミカンがそうなんです。』

 

 まさか、クロがそんな決意をしていたなんて。

 守るつもりが、守られていたなんて。

 そう考えていると、耳元から別の声が聞こえてきた。

 

『大切な人だって。ミカン?』

 

『ッ!!?』

 

 桃の意味深な言葉の意図がなんとなくわかり、反論したかったが病み上がりのためか声がでない。しかも、呪いがクロに思いっきり雨となって降りかかっているせいで桃に動揺してると悟られてしまう。

 

 大切な人……確かにクロはそう言った。

 でもそれってどういう意味?

 幼い頃から一緒に過ごしていたけど、どういうこと?

 幼馴染? そんなものは分かり切っている。

 恋人? いや、そんな仲じゃない。お互い泊まる頻度は多いけど、それだけでしょ?

 それなら―――

 

『あ、あの……ミカン、さん?』

 

『ひゃいいっ!!?』

 

 考えてる途中でクロに声をかけられ、変な声がでてしまった。彼を見ると、きょとんとしている。い、一体なにを言うつもりなの………

 

『…何か俺、変なこと言ったか?』

 

『~~~~~~~~~~ッ!!』

 

『黙ってたって分からないよミカン。はっきり言ってくれないとぶるあああああああああああっ!!!?』

 

『クロの馬鹿っ!!!』

 

 と、思ったところでクロがあまりに無神経なセリフをいったため、つい手が出てしまった。

 

 

 ―――でも、クロがこれから何をしたいか。どうしたいか。

 それは、この前の一件でよく分かった。

 暗黒神ラプソーンについて知りたい。私やシャミ子、桃や他のクラスメイトと普通に暮らしたい。そして―――いざという時は、大切なものを守りたい、かぁ。

 

 クロ、私も魔法少女として、その願いを叶える手助けをさせて。私にも助けさせてね。私も一緒に強くなるから。

 守られっぱなしじゃ、魔法少女の面目が立たないでしょ?

 

 あとマヨネーズは控えてね。いつか絶対体壊しちゃうから。レモンとかビタミンCをちゃんと取ってよ?

 

 

 

◆  ◇  ◆

 

 

 

 我の子孫は、ここのところ不良で、我の言う事を一向に聞いてくれなくて困る。

 

 神原(かんばら)騎一(きいち)は、我の呼びかけをことごとく無視し、結婚して子をなし、あらゆる国を転々するために我を実家の奥の奥に閉じ込めおった。

 その息子の神原(かんばら)黒男(くろお)は、父親以上の問題児だ。

 

 まず、我を一ミリたりとも敬ってはいない。『ゴミ先祖』などという不名誉かつ見下す気しかないあだ名をつけるわ、我の偉大なる啓示を一掃するわ、おまけに我の封印されている杖をよくへし折ってきおる。アレはどういうワケか折られた時の衝撃が我が魂に痛みとして反映されるからやめてくれと言っているのに、あやつは嬉々としてやりおる。

 

 次に、我を魔法少女に売ることだ。よく千代田桃に我の杖を貧弱魔族のシャドウミストレス優子……長いからしゃみ子でいいか……そのトレーニング道具に差し出すのだ! あれほど我の杖を折るなと口を酸っぱくして言った後でもだ! あやつには暗黒神としての心がないのか!?

 

 おまけに……我の力を継がせたのにも関わらず、我の封印を解く気も我が力を継ぐ気もないときた。あきれて物も言えぬ。

 不二実里に襲われた時、千代田桃の不利を利用して暗黒神としてのコードネームを決めさせ、正式な後継者『クロウ』にしたは良いものの、我の封印の解放に消極的なのは困るのだ。

 

 

 ―――む? なら何故、クロウを後継者にしたのか、だと?

 緊急事態だったからというのもあるが、れっきとした理由もあるのだ。

 

 一つ、奴は我の力を最初からある程度使いこなせていた。戦闘フォームを覚えてすぐに我が教えた「極大爆裂呪文(イオナズン)」と「大回復呪文(ベホイミ)」が使えればかなり上出来だ。歴代の子孫で一番優秀と言ってもいい。

 

 二つ、一瞬だが、我はクロウの心の底の―――闇の部分に触れた。

 大切な人を守るという意志の裏にあった、「大切」に手を出そうとする未来の敵に対する殺意と闘志………

 「死してなお消えぬ永遠の恐怖を魂に刻みつける」という言葉……

 実に良かった。暗黒神としての素質は最高だ。

 

 

 あやつは、陽夏木ミカンの事を好いている。一人の女として、と言っても過言ではないだろう。

 もし、彼女に何かあったとしたら……おそらく、クロウは簡単に我が力を継ぐだろう。暗黒神たるもの、()()()()()()()()()()()()()()()()()しな。ま、我からアクションは取れないし、我からは何も出来ないが。

 その日は、いずれやってくるであろうか?

 実に、楽しみだ。

 

 

「……………ハッ!!」

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!? クロウ貴様! なぜ今我を折った!?』

「いや……ゴミ先祖、なんか企んでそうだったから」

『仮にそうであっても杖の姿(この状態)の我は何も出来ぬであろう!?』

「それもそうか……よし、じゃもういっちょ」

『ま、待て! 四つ折りだけはやめ……』

「あらよっと」

『グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァッ!!!?』

 

 

拙作で一番好きなオリジナルorゲストキャラは?

  • 神原クロウ
  • ラプソーン
  • 不二実里
  • ラファエル
  • 神原玲奈

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