まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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まちカドまぞく2期が終わってしまう…3期はまだかいな??←


今回のあらすじ

メタぞうのゆうきが 5あがった!

マンドラが あらわれた!
トマトマーレが あらわれた!
アラウネが あらわれた!
黄泉の花が あらわれた!



勇気をふりしぼれ! メタぞうの新しい挑戦!……付け合わせは混乱みかんとお野菜スライムの盛り合わせ!

 俺の家には、スライムが3匹暮らしている。リコのところで魔力料理を教わるきっかけになった際に、俺ん家の敷地に現れ、魔力料理を与えてからはあと2匹が1匹目に呼ばれた形で住み着いている。

 

 1匹目は、スラリン。

 青いスライムで、最初に俺の家に出てきたのも彼だ。ミカンのウガルル騒動の際にはあんな形で役に立つとは思っていなかった。スライムは聖にも魔にも属さないとゴミ先祖が言っていたが、彼のポテンシャルはどこまであるのだろうか。

 

 2匹目は、ナツミ。

 スラリンが連れてきたスライムベスという、オレンジ色のスライムで、なかなかに人懐っこい。遊びに来たミカンやウガルルやシャミ子にも近づいて行って、すぐに仲良くなるのだ。

 

 で、3匹目だが……

 

 

「おはよークロ……あっ」

 

「メタぞう! …あぁ、またクローゼットの中に行っちゃった」

 

「ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったのだけど…」

 

「元々、あいつは人見知りするヤツなんだけどな…」

 

 

 ミカンがいつものように朝、顔を出した瞬間に、俺の膝から飛び出すように逃げ、クローゼットに隠れてしまうのだ。

 3匹目の名前は、メタぞう。

 この通り、ナツミとは正反対に超人見知りするタイプの、銀色のスライムなのだ。ちょっと前に俺には懐くようになったんだが、未だにそれ以外の人とは関わろうとせず、すぐに逃げ出してしまうのだ。逃げている最中のメタぞうのスピードは俺どころか千代田でも追いつけないらしい。

 

「どうにかして、人見知りをちょっとでも克服できないもんかな…」

 

「そうね……私、メタぞうとも仲良くなりたいわ」

 

 人見知りも度が過ぎるんじゃないかって思うんだ。外に出るのも、俺と一緒じゃなきゃ出ようとしないし、人混みの多い場所は苦手だ。このままじゃあ、自立できないんじゃないだろうか?

 そう考えるが、やはりこういうのは本人の意志が重要だと思うんだ。無理矢理連れ出しても逆効果になりそうなんだよなぁ……

 

 

「ところで、今日はどうしたんだ?」

 

「シャミ子がね、白澤さん達のことで話があるんですって」

 

「え?」

 

 

 メタぞうをナツミとスラリンに任せて、俺達はばんだ荘に向かう。すると、シャミ子の部屋の前でうなだれている白澤さんとなんだか嬉しそうなリコがいた。

 

 

「…どうしたんです、白澤さん」

 

「あぁ、クロウ君か。実は僕たちは―――」

 

 うなだれる訳を聞いたら、あっさり話してくれた。

 なになに……店をボロボロにしちゃったから追い出される事になった!? リコが何度も店を料理したことを合わせて今回で累積退場!? そんで、シャミ子に話したら格安で借りられるばんだ荘にやってきて、移住するって話になったのか………

 ちなみに、追い出されるきっかけになったボロボロの傷は、ウガルルがつけちゃったんだそう。シャミ子とお仕事探しをした過程で起こった必要経費と言っていた。俺の知らぬ間に何やってんだか……

 

「桃どのや優子君のご厚意に甘える形になってしまって申し訳がたたないが……せめて迷惑をかけないように善処していくつもりだ」

 

「桃は~ん、大きい家の風呂、たまに使(つこ)うてもエエ?」

 

「あ゛ぁん?」

 

「リコ君やめたまえッッ!!!」

 

「……大丈夫なんですか?」

 

 リコが千代田の機嫌を当たり前のように損ねている辺り、白澤さんの「迷惑をかけないようにする」という宣言がほんとに守られるのか不安になってきた。とは言っても、大体リコが迷惑かけて白澤さんがその謝罪に回るんだろうか? だとしたら、ちょっと……否、だいぶいたたまれないんですけど。

 

「契約をしてきたら後は荷物を運んでくることにするよ。」

 

「あの、良かったら引っ越し手伝わせてください!」

 

 俺は、ついそんなことを言っていた。ミカンもシャミ子も千代田も目を見開いていたが、あまりにも白澤さんが不憫だから、俺のせめてもの本心だ。

 その言葉にリコは笑顔を見せるが、白澤さんは困ったような表情を見せた。

 

「え~!ホンマに? 助かるわ~」

 

「駄目だリコ君。……クロウ君、流石にそこまで甘えるワケにはいかないよ。申し出は有難いが……」

 

「だって…白澤さんが店を追い出されたのって、ウガルルが店を切り刻んだからって聞いたし…」

 

 その先を言いかけて、手を引っ張られる感覚を覚えた。

 

「クロ、あんまり白澤さんを困らせちゃダメよ」

 

「ミカン」

 

「ここで『あすら』が開店したら、そのお祝いで何かあげましょ。そっちの方が白澤さんも楽だと思うわ」

 

「そ、そうかな……」

 

「ミカンママとクロウパパ…」

 

「ママじゃない!」

「パパじゃない!」

 

 シャミ子に茶々を入れられたところで、白澤さんは「それじゃ、今日はこの辺で」と言って、リコを連れて去っていった。

 そのバクの背中が、いつもよりも小さく、寂しそうに見えた。

 

 

 

 それからというもの、喫茶店あすら付近は騒がしくなったという噂を聞いた。白澤さん達の引っ越しが始まったのだ。

 引っ越しの手伝いは出来なくなったが、顔を出す程度のことはしても大丈夫だろう。

 

「メタぞう、一緒に行くか?」

 

「ピ!!!?」

 

 急に声をかけられたメタぞうは「僕が行くの!?!?」みたいな声を出した。まぁ、スラリンみたいにすんなり行くとは思ってないのでこっちも手は考えた。

 

「人目が気になるならさ……ほら、バッグの中に入って出かければいいじゃないか。

 いくらこの街の人でも、スライムをバッグに入れてるなんて思わないだろうから」

 

「ピィー……」

 

 財布やらクッション代わりのタオルやら水筒やらを入れた、肩掛けのトートバッグを見せれば、メタぞうから「それならまぁ…いっか」みたいな肯定を貰った。

 トートバッグを下げた俺は、傍から見たら買い物に出かける男子高校生だ。この姿でメタルスライムを隠し連れているなど、誰も思うまい。

 ゴミ先祖? あいつは例のごとく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まぁ、今夜あたりには復活してるだろ。

 とは言っても、買い物に行く予定はない。俺が行く先は…ボロボロになってしまった、喫茶店あすらだ。

 

「白澤さ~ん、大丈夫ですか?」

 

「く、クロウ君!?」

 

 扉を開けると、荷造り中の白澤さんが驚いた様子でこちらを見た。メタぞうに気付いた様子はない。あと、リコはいないみたいだ。どこかに出かけてるのかな?

 

「引っ越しの手伝いはしなくていいと言ったはずだぞ!?」

 

「分かっています。俺がここに来たのは白澤さんに用があるからです」

 

「僕に?」

 

「ええ。お忙しいのは承知の上なんですけど、相談に乗って欲しくってですね………女子に話しづらい話題なものですから、同じ男である白澤さんにと」

 

「そうか…わかった。でも僕も荷造りを1秒でも早く済ませないといけないからね。

 作業しながらでも良いなら、聞くよ」

 

「ありがとうございます」

 

 ……とは言ったものの、実は何も考えていない。

 相談がある云々は、白澤さん達のもとに顔を出す為の建前にすぎないからだ。とはいえ、早めに何か話さないと、白澤さんに申し訳がない。

 

「えーと………」

 

「急ぐ必要はない。誰かに相談するって、すごく勇気がいるからね……話せるようになったらで良いよ」

 

 焦っている俺のことを、「相談すると決めたものの、あと一歩勇気が足らず躊躇っている」ように見えたのか、そんなことを言ってくれる白澤さんは、この街の良心のように心が広い。

 そんな白澤さんを建前でとはいえダマしているように錯覚する自分に罪悪感が湧くが………イヤ、待て。話す事ならあったぞ。

 

「記念館の、壁画のことは聞いていますか?」

 

「…あぁ。優子君から聞いたよ。

 メルトアという悪霊を、魔法少女どのや君と協力して倒したと」

 

 実はあの時、俺には気になる事があったのだ。

 それは、五指爆裂弾(フィンガーフレアボムズ)のことだ。大火炎呪文(メラゾーマ)を覚えた直後であんなの使えるのか―――まぁ使えたんだけど、そんな都合の良いことが起こるのか?と、メルトア討伐後からやけに機嫌の良いゴミ先祖に聞いてみた。すると、驚くべき事実が明らかになったのだ。

 

 

 

◆  ◆  ◆

 

『実はだな。クロウがメルトアに心の鍵を開けられた直後―――我の、()()()()()()()()()()()()()()のだよ』

『―――は?』

『最初は気のせいかとも思ったが……メルトアを撃破した直後に本格的に解放されたからな。我は嬉しくてたまらんのだ!

 封印の一部が解除されたので……クロウの扱う魔法力も格段に強くなったという寸法だ』

『ハァァァァァァ!?!? じゃあ何か?あのメルトアが、ゴミ先祖を封印した七賢者の末裔だったってのか!!?』

 

 最初それを聞いた時、メルトアみたいな極悪な悪霊(?)がかつてはゴミ先祖を封じたとか何の冗談だとも思った。

 だが、俺の推測にゴミ先祖が首を振る。

 

『イヤ違う。多分「メルトアが七賢者の末裔の魂をひとつ()()()()()」のだろう』

『どういうことだ?』

『おそらく……かつて、メルトアを討伐しようとした者は過去にもいたのだろう。そして、その結果返り討ちに遭い吸収されてしまった者も。

 その“返り討ちに遭ってしまった魔法少女”の中に………()()()()()()()()()のではないだろうか?』

『つまり……あの時までずっとメルトアの一部として飾られ続けていた“七賢者の魂”が、倒したことで解放されてゴミ先祖の封印も解いたってことか?』

『然り』

 

 こ、こいつ…! なんで己の身に起こった事を、そこまで推測出来るのにも関わらず黙っていたんだ!

 そう尋ねた結果、返ってきたのがこの答えだ。

 

『だって訊かれてないんだもん』

『「だもん」じゃねぇーよ!! 焼き尽くしてやるこのゴミ先祖!!!』

『ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?』

 

 子孫にまで重要情報を黙っていたゴミ先祖を覚えたてのメラゾーマで成敗して、この場はスッキリしたのだった。

 

◆  ◆  ◆

 

 

 

「成る程……メルトアの被害者に、七賢者の末裔もいたというのか……」

 

 メルトアを倒した時の状況から、ゴミ先祖が意図的に黙っていた衝撃の事実を伝えて、俺は白澤さんを見やる。彼はいつの間にか荷造りを終えたらしく、真摯に真っ直ぐこっちを見て話を聞いてくれていた。

 

「俺は…この事を、千代田やミカンに話しづらくなってしまったんです」

 

「優子君や君のご両親にはこの事は話したのかい?」

 

「両親には話しました。でも、『その力の付き合い方も引っくるめて自分で考えろ』と言われてですね……」

 

 厳密には母さんに、だけど。父さんは何か言いたげだったけど、母さんになにやら説得されて押し負けてしまったようなのだ。

 シャミ子もシャミ子で、「封印解除!? 凄いです!見せて見せて!見せてみて!」と話を盛大に逸らされそうだったから話せていない。

 

「この手の話は、リコ君の方が有用なアドバイスをあげられそうなのだがね……」

 

「リコさんは今、どちらに?」

 

「買い出しに行っている。買い物メモと携帯を渡しておいたから大丈夫なはずだ。

 …知ってるかと思うが、僕は弱い。チカラとの付き合い方については、力になれそうにない。

 だから…『その件を話すか否か』について、僕の意見を言わせてもらうよ」

 

 白澤さんは、大人っぽい声を更に真面目にして、言葉を続ける。

 

「僕に占いを教えてくれた師匠はね、『人生は問題集みたいなものだ』って言っていたんだ」

 

「問題集?」

 

「あぁ。問題は酷いし、選択肢も酷いし、おまけに制限時間もある。夢みたいな答えを探して占っても、ただの無駄骨でしたなんてザラだとね。

 僕もそれなりに長く生きている。なのでそういった『酷い問題』にぶち当たった事は、両手で数えられないほどあってね。

 その経験から言わせてもらうと……イチバン酷い結果を招くのは、『時間切れ』だと思っている」

 

「……時間切れ…………」

 

「例えば、そうだね……自分が住んでいる街に、凶悪なまぞくや強盗がやってきたとする。そして、目の前でおじいさんと子供が、それぞれ別のワルモノに襲われる場面に出くわしたとしよう。

 ―――君なら、どうするかね?」

 

「そ、れは………」

 

 言われた通りのシチュエーションを想像してみる。

 でも、いきなりそんな事、想像しづらいし、ましてやおじいさんと子供が別々の悪者に襲われるって……

 

「はい時間切れ。君はどちらも助けられなかった」

 

「早!!? そんな事あります!?」

 

「少なくとも僕の時はそうだったよ」

 

「!!! まさか白澤さん、貴方そういう場面に出くわして………!」

 

「一歩踏み出せなくってね。まぁ非力なバクが助けられたかどうかは分からないし、今考えてもぶっちゃけ無理ゲーだと思うが。

 それでも、『戸惑っているうちに結果的に時間切れにな(二人を見殺しにしてしま)ったこと』は今でも後悔する日はある」

 

 答える前に白澤さんに時間切れと宣言され、彼らしくない突然の理不尽に驚いたが、それが白澤さん自身の経験から来るものだと知って、それ以上の反論が出来なくなった。

 なんというか、自分の体験談を引っ張り出してきてまで、ここまで真摯に答えてくれる紳士的な白澤さんに、何か文句を言う気も失せたのだ。

 

「クロウ君。今回だけとは言わず、もし何か迷ったとしても、君自身の意思で答えを出して欲しいんだ。

 君にとって、桃どのやミカンどのはどんな存在かね?」

 

「千代田は頼もしい魔法少女で、勉強を教えあえる友達だし、ミカンは幼い頃から世話になった幼馴染で、ラプソーンの事を教えてくれた恩人だよ」

 

「では、やるべき事は決まっているんじゃないかね。

 焦らなくて良いが、『時間切れ』だけは避けるようにしたまえ」

 

「……ありがとうございます」

 

 白澤さんのアドバイスは本当に考えさせられた。

 …「時間切れ」になる前に話せよ、か。ちょっと怖いけど、そうしないと駄目か。世話になった白澤さんにお礼を言ってから、『あすら』の扉を開いて出ていこうとした―――その時だ。

 

 ボロボロになった壁が、白澤さんに向かって倒れかかってきたのが目に入ってきたのは。

 

「白澤さんっ!!!」

 

「!!!!?」

 

 即座に白澤さんの前に立って、崩れて倒れてきた壁を両手で抑えた。

 お……重い! こんなのが倒れてきて…もし直撃でもしてたら、白澤さんもただじゃすまない!

 

「く、クロウ君!!?」

 

「だ…大丈夫ですか!! 今のうちに…逃げてください!」

 

「わ、わかっ―――アアアァァァン!!?

 

「えっ!!?」

 

「こ…こんな時に……コシがっ!」

 

「うそだろっ!?」

 

 なんて運のない! このタイミングで助けるべき白澤さんが腰をいわして動けなくなるなんてどうすればいいんだ!?

 このままじゃあ俺の体力が持たない。かといって魔法で壁をふっ飛ばすわけにはいかない。メラ系は火事の可能性があるし、イオ系は使ったら間違いなく俺も白澤さんも大怪我を追うから論外だ。それ以外の魔法はゴミ先祖の杖抜きでやったことがない。

 

「ぼ…僕のことはいいから、そこをどきたまえ!」

 

「バカ言うな! この状況で力を抜いたら、仲良く下敷きだ!

 それに……あの話の後で、白澤さんを見捨てられるワケねーだろ!!」

 

「クロウ君…!」

 

 とは言ったものの、マジでどうすればいいんだ?

 こんな時、近くにもう一人誰かいれば、助けを呼びに―――

 

 ……あ。待てよ。

 いる! この場に一人、()()()()()()()()()()()!!!

 

メタぞう!!!

 

「ピィッッ!?!?!?」

 

「なっ…クロウ君のバッグから、スライムが…!」

 

 そう。一緒に出掛けていた、メタぞうだ。外に慣れさせるためにバッグに入れていたが、こんな事が起こって彼に頼ることになるとは。

 だが、大丈夫だろうか? メタぞうは超の付く人見知りだ。白澤さんがメタぞうの存在に気付いただけで逃げ出しそうだ。

 ―――イヤ、この際彼に頼るしかない!! メタぞうを信じるしかない!!!

 

「メタぞう………俺のバッグから、スマホを出して、白澤さん……そのバクさんに渡してくれ。電話をかけるのはやってくれるから…」

 

「ピ……ピ…」

 

「頼む……いま、頼れるのはお前しかいないんだ…!

 君がやってくれないと、壁が………ッ!」

 

「クロウ君!!」

 

 もうメタぞうを見る余裕もない。

 「信じるぞ!」と振り絞るように言うと、魔力を使い切る勢いで、壁を抑えることに集中した。

 

 

 

◆  ◇  ◆

 

 

 

 メタぞうは、クロウに突然頼まれたことに戸惑っていた。

 スマホを渡すだけとはいえ、見知らぬ人に近づくなど、考えられない。

 だが―――メタぞうも、バッグの中で、白澤の「時間切れになる前に判断しろ」という話を聞いていた。

 

「ピ…ピィィ…」

 

 しかも、崩れかかった壁を支えるのは自分を大事にしてくれるクロウだ。

 メタルスライムという、臆病な種族に生まれた彼は、最悪の展開を想像していた。

 それは…即ちクロウが壁の崩壊に巻き込まれて大怪我をする未来。

 

「ピィ…」

 

 メタぞうはそれだけは絶対に避けないと、と思う。

 それと同時に……白澤がクロウに言っていた、「時間切れになる前に判断しろ」という話の意味を、なんとなく理解した。

 

「ピィッ!」

 

 恐怖を振り払い、勇気をふりしぼって、バッグの中のスマホを探り当てる。

 そして……おっかなびっくり、しかし確実に白澤に近づく。

 やがて、白澤の手が届く場所まで近づくと、そっと地面に置くように、白澤に電話を渡したのである。

 

「助かったよ、メタぞう君………電話をかけるのは、僕がやるからね」

 

 白澤がリコ君とやらに電話をかけたことで、2人は……クロウは助かると、メタぞうはこの時直感で確信したのであった。

 

 

 

◆  ◇  ◆

 

 

 

 白澤さんがリコに電話をかけてからは、あっという間だった。

 リコが血相を変えて飛び込むように店内に戻ってきたかと思えば、白澤さんだけを危険地帯から救出した。………欲を言えば壁を壊して欲しかったが、白澤さんを巻き込む危険がなくなったので、残った魔力で壁をぶっ壊した。

 

「クロウはんありがとな~、マスター守ってくれて」

 

「………白澤さんに怪我がなくて良かったよ」

 

 俺も助けて欲しかったけど、魔力をいつも以上に消費した以外にケガとかなかったから結果オーライかな。

 それもこれも、メタぞうのおかげだ。あいつが電話を持ってきてくれたおかげで、動けなかった白澤さんが助けを呼べた。

 バッグに戻ってしまったメタルスライムを見やれば、メタぞうは恥ずかしそうにこっちを見たのであった。

 

「クロウはん、その子貰ってもエエ?」

「リコさん!!?」

「ピィーーーーー!?!?!?!?」

「リコ君やめたまえっっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれメタぞう! 勇気の一歩を踏み出せた今日と言う日を、大事にするんだ!

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 メタぞうの勇気ある一歩を踏み出せた、その翌日。

 学校の委員会活動中に、仲間に呼ばれたのだ。

 

「神原くん助けてー!」

 

「神原くーん!」

 

「陽夏木さんの彼氏さーん!」

 

「南野に永山…落合も。

 あと俺はミカンの彼氏じゃないからね?」

 

「その陽夏木さんがおかしくなっちゃったのよ~」

 

「おかしくなった??」

 

 ミカンがおかしくなったという、おかしな話を耳にした俺は、3人から詳しい話を聞いてみることにする。

 

「園芸部が変な植物ができたって騒いでてー」

「近くにいた魔法少女の陽夏木さんに助けを求めたんだよー」

「それで調べてた陽夏木さんもおかしくなっちゃってー」

 

「成程。園芸部とミカンの他におかしくなっちゃった人はいないのか?」

 

「う、うん……」

 

「ちょっと調べてみるか…」

 

 百戦錬磨のはずのミカンがおかしくされちゃうなんて、学校の園芸部のトコに何ができたんだ。

 俺に頼まれたとはいえ、油断はしちゃいけない気がするぞ。

 

『ひとまず千代田桃としゃみ子にも声をかけておいた方が良いのではないか?』

 

「あ、ゴミ先祖だー」

「神原くんのゴミ先祖だー」

「ゴミ先祖ー」

 

『貴様ら人間にその呼び名を許可した覚えはないぞ!!!』

 

「はいはい、とっとと調査しちゃおうぜ。落合、千代田にも事情を話しといてー」

 

「はーい」

 

『聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!』

 

 話に来てくれた子の一人に助っ人を頼みつつ、案内してもらってミカンがおかしくなった現場に向かう事にした。ゴミ先祖、うるさいから黙ってて。学校での呼び名に「ゴミ先祖」が定着したくらい何だってんだ。そんなことより、ミカンの安否の問題だろ。

 

 

「ここなんだけど…」

 

「こ、これは……!?」

 

 案内された場所に着いた俺は、言葉を失った。

 まず、花壇の上には顔のついた小さな球根みたいな植物たちがゆらゆらと踊るように浮遊していて。

 その周りには、園芸部であろう生徒たちがひとり残らず眠っていて。

 

あは♪ クロだぁ…♡

 

 唯一意識のあったミカンが、とろんとした目を向け、だいぶおかしな口調で怪しいことを口走っていたからだ。流石の俺も、あまりのカオスっぷりに何を言えばいいか分からん。

 

「み、ミカン…?」

 

えへへ……クロ♡

 

「……ミカンさん?」

 

つーかまーえたっ♪

 ふふふ、あったかいのね、クロは…

 

「ミカンさん!?!?!?」

 

 ど、どどどどど、どうなってるんだコレは。

 俺を見つけるなり、真っ先にこっちに近づいて抱きしめてきたぞ!? ま、まるで動物園の時とは真逆っ……!!

 

「ミカン! 落ち着けって! 何やってるんだよ!!?」

 

どうして?

 

「いや、どうしてって……」

 

あの時は……動物園の時はクロの方から抱きしめてくれたくせに…

 

「ちょ、違っ……アレは…!!」

 

 や、ヤバい。首から上が沸騰してるかのように熱いからか、まともに言葉が出てこない。

 南野!永山!「キャーー!!」じゃない! アレは桃色のおそろし魔法少女のせいだったからね!!「やっぱり付き合ってるんだ…!」じゃないんだよ!!

 佐田!ちょっと助け……写真を撮るなッ!! 今すぐその写真を消せッ!!!

 

「クロウさん!お待たせしまし……何やってるんですか??」

 

「……神原くん、余裕そうだね」

 

違うんだ二人とも……俺が来た時からミカンがこうだっただけなの……

 

シャミ子?桃?………クロならあげないわよ?

 

「取らないよ……」

「何故その話に!? 意味がわからない!!」

 

 心情はシャミ子の言葉のまんまだった。

 意味が分からないし離してほしいし見ないでほしい。

 恥ずかしすぎて消えてしまいたい……

 

ねぇ…好きよ、クロ

 

「……………」

 

 トドメとばかりにミカンに告白されちゃったけど、俺はミカンがおかしくなっちゃったから口が滑ってあることないこと喋っただけなんだと思い込むことにした。そうでもしないとやってられないから。

 

 

 

 

 

 で、肝心の浮遊する植物なんだけど、しばらくして満足したのか、あっさり千代田に捕獲されたそう。

 千代田とたまたま通りすがったというフブキによると、彼らが放つ花粉に、催眠や混乱、身体の麻痺を招く作用がある事が判明した。

 そんな花粉を放った犯人たちだが………

 

「かわいいです!! ね!桃!!」

「うん、そうだね。でも花粉がヤバいからね」

「かわいいねー」

「かわいー」

「こんな顔でヤバい花粉撒いてたとは思えねー…」

 

 …そのビジュアルから、女子どころか男子からも人気を得ていた。

 5匹いたのだが、その5匹ともがスラリン達みたいな顔と玉ねぎ型のシルエット、そして身体代わりの球根と両手代わりの葉っぱを持っていて、とてもミカンを混乱させたり園芸部を眠らせたり出来そうには見えなかった。

 

「おや、我らの同族ではありませんか!」

 

「ピエール、知ってるのか? こいつらのこと」

 

「球根植物タイプのスライムです。右からマンドラ、トマトマーレ、アラウネ、黄泉の花と言います」

 

「よ、黄泉の花?」

 

「黄泉の花です」

 

 ピエールによっても詳細が明らかになり、それによると「彼らは温厚だが気まぐれで花粉をまくため、今回の件でも悪意で花粉をまいたのではないだろう」とのこと。

 

「……ちなみに、こっちの蜜柑色の植物スライムは?」

 

「私は見たことがありません。おそらく新種かと」

 

「「「「「新種!?!?!?」」」」」

 

 そんな事ある!? 新種が見つかるの簡単すぎない!?

 そんなこちらの思惑など知らないように、蜜柑色の植物スライムはふわふわしながらこっちに近づき、つぶらな目でこちらを見つめてくる。

 

「かわいいな…」

 

 そう呟いて撫でると、蜜柑スライムは嬉しそうに笑顔を浮かべ―――

 

「痛い!!」

 

 こ、後頭部に衝撃!? 一体なにが……

 

「な、なななななにを言っちゃってるのかしら貴方!?

 クロの馬鹿! スケコマシまぞく!!」

 

「スケコマシまぞくって何!?!?」

 

 み、ミカンが理不尽すぎた……。

 ちなみにだけど、植物スライム達は、引き続き学校で育てることになった。新種ちゃん含めた全員に名前をつけた事で、クラス全員のアイドルみたいな存在になった。

 これをきっかけに、俺も園芸部に顔を出すようになったが、小倉から「たまに借りてもいい?」って聞かれた時は「命と尊厳の危険がありそうだから駄目だ」って拒否っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ! ガーデニングの趣味も生やして、豊かな暗黒神になるんだ!




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
 白澤さんを気にかけたり、メタぞうを気にかけたり、植物スライムを気にかけたりしている暗黒神後継者。特にメタぞうにはもっと色んな人と関わってほしいと思っている。みんな良い人なんだしさ。

暗黒神ラプソーン
 学校で『ゴミ先祖』のあだ名が定着しつつある暗黒神。我は許可していないぞ!あと、何気に賢者の封印が一つ解けたことを聞かれるまで黙っていた性根の腐った大戦犯をかましている。そういうとこだぞお前。

メタぞう/メタルスライム
 クロウの他に、白澤さんにも懐くようになった。といってもすぐに逃げないようになっただけ。ちなみに、リコ相手には更に逃げるようになった。

マンドラ
 ドラクエ11に新登場したスライム。球根型の植物の見た目をしており、スライムらしい玉ねぎ型のフォルムも残っている。おたけびでひるませる姿から、マンドレイクにちなんだ名前がつけられた。
 拙作では、「ドーラ」という名の学園花壇のアイドルとして育てられている。

トマトマーレ
 ドラクエ11に初登場したスライム。マンドラの色違い。名前の通りトマトのように赤く熟したボディをしており、美味しそうである。頭頂部の花からは、催眠作用のある花粉を撒き散らす。
 拙作では、「マーレ」という名の学園花壇のアイドルとして育てられている。

アラウネ
 ドラクエ11に初登場したスライム。青い顔に白いボディとなんとも涼し気な姿で、水のキレイな場所でしか育たないという。リリスのごみ拾いが功を奏したのだろうか。頭頂部の花からは、傷を癒やす効果の花粉を撒き散らす。
 拙作では、「ライネ」という名の学園花壇のアイドルとして育てられている。

黄泉の花
 ドラクエ11に初登場したスライム。アラウネの転生モンスターで、紫の葉に黄色のボディ、頭頂部の花も正体不明と可愛さの中に禍々しさもあるカラーリングとなっている。頭頂部の花からは、身体を痺れさせる麻痺毒のような花粉を撒き散らす。
 拙作では、「ヨミちゃん」という名の学園花壇のアイドルとして育てられている。

マンデリーヌ
 拙作オリジナルのスライム。アラウネ系のスライムの色違い(挿絵中央)。
 蜜柑のようなボディと蜜柑の葉のような深緑色の葉が特徴的。頭頂部の蜜柑の花からは、錯乱・混乱効果のある花粉を撒き散らす。
 名付け親はクロウとミカン。蜜柑の英語「mandarin」から取った。あだ名は「マンデリちゃん」。

【挿絵表示】

1番好きなオリジナルストーリーはどれでしたか?

  • ラプソーンと出会う話
  • 不二とジャハガロス会談する話
  • ベビーパンサーを召喚する話
  • キラーマシンとダチになる話
  • スライム達に餌付けする話
  • スライムナイトと出会う話
  • ゲモンに師事する話
  • メルトアとガチバトルする話
  • メタルスライムと仲良くなる話
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