朱紅玉が あらわれた!
―――喫茶店あすら、再開。
その情報を受け、俺とミカンは早速ばんだ荘1階に開かれたというNEWあすらに行ってみた。
「白澤さん、やってるかい?」
「おぉ、クロウ君! これから開店準備ってところなんだ!」
「そうですか。何か手伝えることがあったら言ってくださいね!」
「私ウガルルの同居人だから……何か力になりたいわ」
「あ! ミカンママとクロウパパ」
「ママじゃない」
「パパじゃない」
シャミ子はなんで俺らをパパママって呼ぶの?
ウガルル関係ならミカンはともかく俺が巻き込まれる必要性ある?
まぁ、それは置いといて……白澤さんが店を再開できる場所を見つけて、早いところ引っ越さないといけないと知った時は不安だったけど、無事再開できたようで良かった。
「白澤さん、開店祝として受け取ってください」
「ありがとうクロウ君………これは…マヨネーズ??」
「はい。日本製だけでなく、ありとあらゆる国から輸入してきたマヨネーズです。隠し味に役立てればと」
「……全てマヨネーズだね」
「? 何か問題でしたか?」
なんか、マズいことしたかなと思っていると、お腹に衝撃が。
何かと思っていたら、ミカンが呆れた顔をしていた。
どうやら、軽く肘でつつかれたようだ。
「あのね、こんなにマヨネーズを使うワケないでしょ。大量に余らせたところで腐らせるだけだわ」
「知らないのか?マヨネーズは腐らない」
「だとしても、ここまで要らないわよ。飲食店でも何か月で使い切れるか分からないわよ」
「え、これくらい1、2週間で使い切るだろ普通」
「クロウ君、高血圧になりたくなければマヨネーズを控えてくれたまえ…」
「え?」
なんで急に高血圧の心配されたんだ?
訳が分からないまま、今度はミカンが白澤さんに実家の商品カタログを渡す。
ミカンはミカンで、柑橘類を営業したいだけじゃないかな?
「み、ミカンどのも…糖質の取り過ぎで将来困るから柑橘類の過剰摂取はやめたまえ…」
「え、これくらい大丈夫ですって!」
「イヤ大丈夫じゃないからね? 明らかに余らせる量じゃねーか」
「これくらい1、2週間で使い切るでしょ?」
「デジャブを感じます………」
明らかに1、2週間で使い切れる量じゃない柑橘系を手にそう言ったミカンにツッコむのをやめて、新しい「あすら」の内装を伺うことにした。
新しい「あすら」の内装…それは一言で言うなら、「隠れ家的古民家カフェ」だ。
前のお店と比べると狭くなったけど、どこかそこはかとなく秘密基地みたいな雰囲気が出ていて、俺は結構好みだ。前のレトロチックでノスタルジックな内装も好きだったけど、ここはレトロな雰囲気はそのままに、更に古民家っぽさと秘密基地感が出ていて良い。
ミカンと千代田は、そんな新生あすらのスタッフとして急遽働き始めたワケだが…
「じゃーん! どう?似合うかしら?」
「……………」
「ほら、クロ!どうなの?」
「えっ!? と、とても似合ってるよ!!!」
「本当かしら?」
…本当だよ。
ウェイトレスな姿のミカンが信じられないほど似合っていて、少し声を出すのも忘れてしまった程なんだから。
『陽夏木ミカンよ、安心するがいい。クロウは貴様にみドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?!?!?!?!?』
「本当に良く似合ってるよ。千代田もイイ感じじゃないか」
「…なんか私のことついでみたいに言ってない?」
「ついでじゃないよ」
「クロウさん貴様! 桃だって華があるんだぞ!ついでみたいに言うな!」
「分かった、分かったから、ついでじゃないってば」
千代田とシャミ子の追及をかわして宥めながらも、そういえばこのお店は客が来るんだろうかと考えていた。その際に、余計なことを言いかけたゴミ先祖の杖をへし折ったんだけど、ほぼ誰もツッコまなかった(佐田は急にどうしたって顔をしてたけど)あたり、もうゴミ先祖の杖の事が定番になりつつあるな。
だが、そんな不安とは裏腹に、リコが厨房でフライパンを振り始めると、良い匂いが漂い、わらわらと客が寄り始めて、あっという間にほぼ満席状態になった。
「千代田さん可愛いねぇ、いちごパフェひとつ~~あと鳥の餌」
「イイ格好してるじゃんか桃、私はサンドイッチセットをひとつ。あとスマイルもくれたまえ」
「……………鳥さんは外で」
小倉やフブキまでやってきて、千代田をからかいながら注文までする。小倉は頭に乗っけた鳥のごはんまで注文し、フブキに至ってはマッ○かよと言わんばかりの注文をする。千代田本人は凄く嫌そうな顔しながら承ってたけど。……アレは接客として大丈夫なんだろうか?
「カレー…カレー…あすらのかれー……かれぇ……うま……」
「パフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェ………」
「はんばーーーーーーーーーーーーーーーーぐ……!」
「マスター、なんかガスが火ィ噴いた~」
「ハァァンリコ君仕事が早いね!!!」
「…………イヤ、このお店自体が大丈夫か?」
小倉とフブキを見つけたから周りに目を向けてみたんだけど、明らかに様子がおかしいんだけど。
誰もかれもが、焦点の合ってない目でうわごとを呟きながら飯を食べてるんだけど?
ここの料理大丈夫か!? いや、前偵察に行った時はゴミ先祖から「魔力が練り込まれてる」って聞いたんだけど、明らかに魔力以外のヤベー薬でも盛られてるんじゃないか!?
おまけにリコがまた厨房を料理してしまったらしい。また潰れないといいんだけどな…
「パパ! オレになんか仕事くレ!!」
「ブファッ!!!!?」
耳を疑う言葉が出てきて、つい口にした水を吹いてしまった。
い……今、ウガルルは俺のことなんつった!!?
ミカンは……気づいてないか。大事になる前に、なんとかしないと…
「し……仕事なら、シャミ子に言った方が良いんじゃ…?」
「ボスなラさっき「あー!」って言っテどっか行っタ!」
どっか行った……? 確かに、そんな事になってたっけな。現に、今の店内のどこを探しても、シャミ子がいない。
「あと……なんで俺のこと『パパ』って呼んだの…?」
「あそコのメガネの女と白い頭の女が言ってたゾ! オレにはパパとママがいるっテ!」
「小倉ァァ!!!フブキィィィ!!!」
余計な事吹き込むんじゃねぇよあいつら!!
そんな、ドタバタなオープン初日から数日が経ち、『あすら』の客足も落ち着いてきた頃。
お店はどうなっているかというと………
「桃~極上スマイル3兆個ください~」
「千代田さん~スマイル800個~」
「私にもすてきスマイルちょうだいな」
「……ははっ」
「うわぁ………」
完全に千代田が遊ばれていた。シャミ子もミカンも小倉も、千代田にスマイルを注文しまくり、疲れたような半ば諦めたような顔の千代田がそれにイヤイヤ答えるという、一種のイジメみたいな光景が広がっていた。しかも壁紙にまで、「桃はんのスマイル 無料や」って書かれているし。多分リコの仕業だろこれ。
『千代田桃! 我もスマイルを所望する!
そうだな、手始めに…2500個ください!』
「…はっ」
ヤバい。ゴミ先祖が水を得た魚のように、勝手に注文を始めやがった。
コイツ、人の弱みを見つけるとすぐにこうなんだから……このままだと千代田が闇堕ちしそうだな………焼け石に水かもしれないが、俺がカバーするしかない。
「千代田。スマイルの代金(物理)だが……このゴミ先祖につけといてくれ」
『クロォォォウ!?!?!? 代金(物理)ってなに!!?』
「あと、俺にはいちごパフェをひとつ」
「…………なんか、気つかわせちゃって、ごめん」
「謝るなよ。後でゴミ先祖を好きなだけ粉砕していいから」
『良くない!!! 貴様、何勝手にトンデモない額をご先祖に奢らせようとしているのだ!!』
「神様なんだから、これくらい押し付けても罰は当たらないよ」
「そう、なのかな?」
『都合の良いときだけ暗黒神として祭り上げるな!!!』
喧しい。こういう時くらい住人の一人や二人救えないで暗黒神が務まるワケねーだろ。
「クロウは~ん、ちょっとよろし?」
「リコさん?」
そうやってゴミ先祖に負債を押し付けながら、千代田が持ってきたパフェを食べていると、リコが唐突に俺を呼んできた。
何か話があるのかと思って席を立ったが、「座ったままでええよ~」と声が聞こえ、席で待っていると、リコが何か紙を手渡してきた。
なんだなんだ、一体なんなんだ? 急に紙を手渡してきて、一体なんの―――
「ブッフォウ!?!?!?」
『ぎゃあああああああ!? クロウ何をする!!? 噴き出したパフェが全部我に!!!』
何だこのメニューは!? 聞いてないんですけど!!?
マジで何がしたいんですかあのキツネさんは!! み、ミカンで……こ、こんな商売をやる気だと!!?
これ…喫茶店どころか、別のなんかちょっといかがわしいお店になっちゃってんじゃねーか!!
『うぅぅ……急になんだと……………ほぅ…? あ~~~~~~~~~~!』
「…なんだその顔は? 珍しくウザいくらいに機嫌治った意図を聞かせてもらおうかゴミ先祖」
『下手に紳士ぶるなよクロウ。注文すればいいではないか。好きなもの、な~んでも』
「くっ………!!」
イヤ、考えなかったと言えばウソになる。
ウソになる……けど、これは流石にダメな気がする。
確かに、ずーっと学校では恋人扱いされてたし、ウガルルを召喚してからはパパママといじられたこともあったし、最近だと(マンデリーヌの花粉で混乱してたとはいえ)ミカンに告白されたさ。でも、だからってそういうのがOKかと言われれば違うだろう!
特に告白なんて、精神がマトモじゃなかった時のことだからノーカンだ! 変なコトをして、「うわ、勘違いしてるのかしら?」とか思われたら、千代田より先に闇堕ちするかもしれない。
どうにかして、何も注文せずにこの場を乗り切れないか―――
「リコさん! 『桃が闇堕ちコスプレでシンプルにデレデレ』を追加していただけませんか!」
「ん~~、1200円や~」
「くっ…バイト代から落としてください」
「シャミ子????」
「吉田さんンンンンンンンンンン!?!?!?!?」
俺の混乱中になに注文してんだあの人!?
というか、千代田が闇堕ちコスでデレデレってなんだ!?
まさか、リコはシャミ子にも似たようなの渡してて、なんか注文促したってのか!!?
目の前で経験値モンスターがさそうおどりをしてるのを見たかのような、あっけにとられた様子であり得ないものを注文したシャミ子の方を振り向くと、リコと目が合った。そして、いたずらっぽい笑みでこっちに近づき……
「―――クロウはんも、なんか注文決まった~?」
…と、言ってきた!
ど、どどどどどどどうすればいいんだコレ。
絶対なんか言わないといけない流れだ。でも、この紙に書いてあるのなんて頼めるか!
「こんなの頼めないよ、ミカンの前で…」
『イヤ、そもそも陽夏木ミカンが関わっているのだから、陽夏木ミカンがいる前でしか頼めんだろ』
「ぐ……!」
せ、正論ばっか言ってきやがってこのゴミ先祖!
マジでどうすれば…………あ、そうだ。
「り、リコさん! ミカンの変身バンクの、闇堕ちバージョンを……
『え!?』
「あら、ラプソーンはん、そうなん?」
『え、え、別に、我はそんなの頼んギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?!?』
「頼みます」
「クロ!? 何を言っちゃってるのかしら!!?」
「ゴミ先祖のワガママだ」
ゴミ先祖に全部なすりつける! そして、注文内容でミカンに無茶ブリをさせて、当のミカン本人に拒否させてノーカンにする!
これでお互いにダメージのない注文ができるってワケだ! ……さっき、千代田に闇堕ち注文していたシャミ子を見ていなければ、「ミカンが闇堕ち」という無茶ぶりも思いつかなかったことを考えると、シャミ子には感謝しかない。
千代田には申し訳ないが、勝手にメニューに追加されてるだろうミカンを守る為だ。え、ゴミ先祖?黙ってスケープゴートにされてろ。
「はい、かしこまり~。ミカンはん、闇堕ち変身バンク一丁~」
「そんなもんありませんけど!!?」
「クロウさんもミカンさんの闇堕ちに興味アリですか!!?」
「シャミ子!? 違う、俺じゃなくって、ゴミ先祖がどうしてもって言ってだな…!」
シャミ子が闇堕ちって単語で食いついて来て、誤解が生まれかけたが想定内だ。本人が杖を折られて黙っている内に「ゴミ先祖のリクエスト」を強調して、誤解を解けば大丈夫……
「ふふ、したたかだね、クロ君。
でも―――聞いた通りだ。委員会の時といい、詰めが甘い」
「…フブキ?」
「リコさん!
「フブキさん!!!!?」
「篇瀬さん!?!?!?!?」
「はいよ~」
ここで突然、理解不能な注文をフブキがしだしたぞ!?
なんで、フブキが「俺とミカンのデュエット」を注文してるんだよ!!?
しかも、何故リコは「承りました」って顔をしている!?
「ラプソーンさんの注文をクロ君が出来ると言うのなら……クロ君の注文を他の誰かがやってもいい……って事にならないかい?」
「ならないだろ!? てゆーか、いつの間に俺の隣に来たんだ!?」
「そのリストと睨めっこしているときにね。気になったからちょっと覗かせて貰った」
「こ、この卑怯者!!」
そう言っても、フブキは得意そうな笑みをするだけ。
フブキを卑怯とは言ったが、確かに先にゴミ先祖を身代わりにしたのは俺だ。やはり、勝手に人の注文を頼むこと自体良くない事だったのか…!?
「そんで、曲目は何にするん?」
「DA○○Y DA○○Y D○はあるかい?」
「あるで~」
「チョイスまで最悪だァァァ!!!?」
このタイミングでデュエットの選曲にラブソングを選ぶあたりタチが悪いぞコイツら!?
くそ、俺の言い出しっぺのルールを逆手にとって好き勝手頼みやがって、フブキ……!
もう一回あの湯気のおしおきをやるしかない……
「クロ、歌いましょ!」
「え!!? い、良いのか?」
「こうなったらヤケよ!それとも…嫌、かしら?」
「!! い、イヤなものか!むしろ、ミカンはイヤじゃないのか?」
「大丈夫。カラオケはそれなりにやってるからね」
『ふ、フフ、夫婦のデュエットか、楽しみだな!!』
「「ゴミ先祖(ラプソーン)は黙ってろ(て)!!!!」」
『ホギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?』
この後某恋愛頭脳戦のラブソングの、カラオケデュエットが始まった。
なお、歌い終わった後に白澤さんがやってきて、リコに「従業員に特殊な接待をさせるのはやめたまえ」と注意して、シャミ子と俺から、特殊なメニュー表を回収していった。
………儚い夢にしては、実感のあるものだったな。
カラオケの後、白澤さんに連れられて、お店で出すドリンクの仕入れに来ていた。人手が必要だということで、シャミ子も来ている。その際に、シャミ子が気になる事を言ったのだ。
「そういえば、引っ越しの時に結界を持って来るのを忘れてしまって……2日くらいあっちに置きっぱだったんですよね」
「…! そうなのか?」
「まぁ、2、3日結界の保護から外れたくらいで、魔法少女のカチコミが来るわけないけどね!」
この街に住んでいるまぞくの家にある結界……「すぎこしの結界」は、まぞくと魔法少女が運命レベルで会えないようにするという効果があるという。
いつだったか、シャミ子が「あー!!!」と大声を出しながらどっかへ行ったのは、旧店舗に結界を置き忘れているのに気が付いて、新店舗に結界を持ってきたためだったらしいのだ。成程、それは確かに大声を上げたくなるほどのウッカリだな。俺も気づかなかった…。
このウッカリについて千代田は、「特定の魔法少女にめっちゃストーキングでもされてない限り基本的には問題ないはず」と言っていたっけか。
「…桃どのは心配性だな!そうは思わないかい、優子君、クロウ君!
魔法少女なんてきっと来ない…………………来ないよね? 来ないと言ってくれ二人とも!!」
「急に自信無くなるのやめません…?」
確かに千代田や白澤さんの言う通り、結界の加護から外れてたのはたったの2日だ。でも、2日も捕捉できる時間はあったと取る事もできそうなんだよな。魔法少女の情報リテラシーがどこまで進んでるか分からんけども、100%大丈夫はないんじゃないか?99%大丈夫ではありそうだけど。
話すうちにだんだん自信がなくなる白澤さんをシャミ子と眺め、顔を見合わせる。
「…どう思う、シャミ子?」
「あの言い方は映画だと来るやつです」
「優子くぅぅぅん!!?」
「あぁ、『すぐに結界を移し替えたんだ、いくらなんでも…』ってヤツか」
「はい」
「クロウくぅぅぅん!!?」
まぁそんなフラグ云々なんてものは創作の中での話なんだし、実際にそんな都合よく事件など起こるわけがない。
……と思っていたのだが。
「な、なんですかこの騒音は!」
「お店の方からだ!」
「おいおい…言ったそばからフラグ回収か!?」
「縁起でもないことを言わないでくれたまえ!! 僕もひょっとしたらって思っちゃうだろ!!?」
―――急に、ドドドドドドドドドという、何かが命中したような騒音が。
まさか……こんなタイミングでなんらかの敵襲なのか!?
戦いになっていないか、千代田やミカンは無事か、他に巻き込まれた人はいないか!?
もし仮に、良ちゃんでも巻き込まれてたりしたら、俺ですら冷静でいられるかわからない。千代田やミカンがやられるとは考えづらいが、絶対はない………
「シャミ子ちゃ~ん、神原君~」
「小倉!? フブキも!!」
「小倉さんどうしたんですかその顔色!?」
店の方から、小倉とフブキが走ってきた。
並々ならぬ様子だ。特に小倉は走り慣れてないのか、死にそうな顔色で息切れしながら寄ってくる。いったい、俺らが買い出しに行っている間に何が起こったというのか?
「……今ね、
「ええっ!?」
「何だと!?」
「いけないっ、リコ君が!!
リコくぅーーーーーーーーーーーーーーん!!!」
「白澤さん!!?」
よその魔法少女のカチコミだと!?
マジでフラグを回収してしまった事態に、白澤さんは買った物さえ放り投げ、お店の方に走っていった。
でも、白澤さんに戦う力なんてない。なのでと、メルトアと戦って生き残った俺らまぞく二人もそれに続こうとした、その時。
「シャミ子ちゃんストップ!!」
「ほげぇ!?」
「クロ君もストップだ」
「ぬわっち!?」
シャミ子は尻尾を小倉に引っ張られ、俺はフブキに右手を引っ張られる形で、進む足を止められた。
「一般の方のまぞく停止ヒモの使用はご遠慮ねがいたいっ!」
「ど、どうしたんだよ小倉。いつものお前らしくねぇ。もっとハチャメチャに実験するじゃねーか普段は。
フブキもフブキだ。どうして、俺達を止めるんだ!?」
「そ、そうですよ小倉さん! 私ピンクヒスイ事件忘れてませんからね!!」
「それは安全を十分に確保してるから……」
「それに、シャミ子。君の家には結界があったのを忘れたのかい?」
「「!!?」」
フブキの言葉に、まぞく二人は固まった。
「しおんに見せてもらったんだがね。あの結界…もう古くてボロボロだ。
シャミ子…君が望むなら、きっとその魔法少女には会えるだろう。でも、それを繰り返すと結界の意義がなくなって……最後には破けちゃうそうなんだ。
クロ君もクロ君だ。君は、結界に守られていない。にも関わらず魔法少女のカチコミを受けていない。それは恐らく、暗黒神ラプソーンの影響なんだろうが……それでも、周囲の人の結界は、一つでも無事な方が良い」
「お前……!?」
「フブキさん…どうして、結界のこと…」
「しおんから聞いたんだ。さっきのも、全部しおんの考察そのままさ」
「そういうこと…………だからさ、終わるまでここで待ってよ?」
「大丈夫だ、桃もミカンもリコさんも、あの魔法少女に遅れは取っていないし、他の一般人も巻き込まれていない……なんなら、ボコられてたのは知らない魔法少女の方だったからね」
小倉は心底嫌そうな顔をして、フブキは俺達に言い聞かせるように、店に行かないように促している。
だが…2人の言う事に、はいわかりましたというワケにはいかない。
「そうはいかない、フブキ。今向かった白澤さんが何かの拍子に
知り合いがアレされるのも嫌だけど、知り合いが誰かをアレするのだって気分が良くないだろうがよ」
「私…桜さんからこの街を任されてるんです。だからそういうつまらないことは止めないと………というか、小倉さんも何かできそうなら手伝って!!!」
俺達にも俺達なりの理由がある。そう言うと、「考え直したまえ」と引き止めようとするフブキと「やだぁ…」と駄々を捏ねる小倉を引っ張りながら、あすらを目指していった。
シャミ子とクロウが小倉とフブキを引っ張っていた頃。
喫茶店『あすら』の店内は、なかなかの修羅場になっていた。
「うううぅぅ~………」
「さ、事情を説明していただけますか?」
店員服姿の千代田桃が、新たにやってきた紅い魔法少女―――
魔法少女姿で来店した紅玉は、料理を口にして店に「ヤツ」がいることを確信……しかし、桃は既に手を打っていた。
他の魔法少女……陽夏木ミカンを店からやや離れた場所でスタンバらせ、合図と共に狙撃するようにしていたのだ。
そのことを知るよしもない紅玉は、まんまと店に突入し……
『ここは先代魔法少女が築いた、聖魔共存の街……不要不急のカチコミは厳禁です。お引き取りを』
『暴徒鎮圧用・スプラッシュアロー!!』
『にょわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?』
…あっという間に鎮圧されたのであった。
後は事情を聞いてそれ相応の対応をするはずだった………だが、そこにリコが現れたことで状況は一変する。
「リコ!!」
「…リコさんの知り合い?」
「ん~どなたやろ?」
「…眼中にもないってことか……でも、それが命取りや…!」
紅玉がリコの名を叫ぶ。
当のリコ本人は覚えがないようだが、それが逆に、紅玉の逆鱗に触れた。
紅い魔法少女のチョーカーに飾られた宝石に触ると、眩い光が辺りに満ちる。
「アンタを封印して、じーちゃんの洗脳を解いたるわ!
覚悟せいっ、リコーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
「り、リコくぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!」
そして、その光がリコに向けられ。
光が更に強くなる……寸前に、一匹のバクがリコの前に躍り出たかと思ったら。
「皆さん!ケンカは止めてください!
………って…え、これ…………バクの、オブジェ?」
リコの前に飛び出た筈のバク……白澤の姿はなく。
その代わりに、掌大の小さなバクのオブジェが転がっていた。
「うそやろ……なんであの動物、割って入ってきたんや……こんな、こんな、つもりじゃ、」
「え、そんな、じゃあこれって、店長―――」
「―――アホちゃう? なんで?なんで店長、ウチを庇ったん? 避けれたのに…」
紅玉の言っていた「封印」という単語、消えた白澤、突然現れて転がっているバクの置物。
それで起こった事を理解したリコが、震える手でバクのオブジェを手に取り、抱きしめる。
「―――しょーもな。もうどーでもええわ」
リコの全身から、禍々しい魔力が溢れ出した。
どうでもいい―――リコが口にしたその言葉は、あらゆる感情が入り混じってドロドロになっているかのようで、心の底からどうでも良くなってしまったみたいだ。
そしてその魔力が、紅玉を、店を、この街を、破壊せんと襲い掛かろうとした瞬間。
「リコ君!! 止まりたまえーーーーっ!!」
「きゅっ」
「他の人もその場で一旦停止ーーーーー!!!」
シャミ子が、いつの間にか持っていた拡声器でその場に爆音のような音声を響かせた。
その直後、シャミ子は「失礼!」と言いつつシャミ子本人が隠れられるようなホタテ貝――心の壁フォーム――になって身を隠す。
突然のシャミ子の行動の意味が分からず停止したリコや魔法少女達に…………窓から投げ入れられたフラスコから飛び散った液体が降りかかる。
液体を食らった魔法少女たちやリコは……まるで電気のブレーカーが落ちたかのように、訳も分からぬまま、意識を失っていった。
その場にいた者たちが意識を手放して動かなくなり、ホタテ貝からシャミ子が出てくると、店の中に三人の人物が入ってきた。
「制圧できたねぇ」
「間一髪ってところか」
「というか小倉。あの薬はなんだったんだよ」
「別のモノ作るつもりだった失敗作に、マーレ*1ちゃんの花粉を混ぜたものなんだけど……上手く効果が出て良かったぁ~」
小倉しおん・篇瀬
実は先程のシャミ子の行動、小倉の作戦によるものだったのだ。全員の気を一瞬だけでも引いたシャミ子は、小倉がスマホをワン切りしたら、心の壁フォームで外気を遮断する手筈になっていた。その間に小倉が、魔力の流れを遮断する薬を流し込む。これによってシャミ子以外の店内の人物を全員一時的に昏倒させることに成功したのだ。
「こっここここ怖かったーーーーー! もう二度とやりたくない!!!」
「さて……これ、どうするんだい? 皆」
矢面に立ったシャミ子が本音を漏らす一方で、フブキは店内の状況を眺めた。それにつられてシャミ子・クロウ・小倉も倒れた人々を見回す。そこに目を移すと……
案件①:事情を抱えた
案件②:ブチ切れリコ君
案件③:封印されし
案件④:
―――と、目を覆いたくなるようというか、見なかった事にしたくなるような、死屍累々の有様であった。
「……リリスさんは寝かさない方が良かったねぇ」
「寝かす対象を選べませんでした……!」
「…ダメだ、ゴミ先祖も反応がない。こんな事なら買い出しの時持っていけばよかったな…」
「どうするんだい、シャミ子、クロ君?
コレ、私達では割と詰んでるように見えるが」
「だ、だだだ大丈夫です! まぞくは追い込まれた方が強い!!」
「お、落ち着いて考えれば活路は開ける。安心しろ二人とも、こういう時、落ち着く方法ならダイから習ってる。素数を数えればいいんだってな! 1、2、3、5、7、11…………」
「シャミ子ちゃん顔色わるいよぉ。
あと神原君、1は素数じゃないからね」
なお…ここで意識を保ってるまぞく達は、争いが起きそうなこの場を収める方法の実行に精一杯で、この後の展開を一切考えていなかったりする。
がんばれまぞくタッグ! 知恵を借り智慧を振り絞って、三方丸く収めるんだ!
オリジナル&ゲストキャラクター紹介
神原クロウ
白澤さんところの再開店祝にマヨネーズをしこたまプレゼントしたり、ミカン関係のメニューにドギマギした主人公。ミカンと自分の名誉を守る為、今回は特にラプソーンには厳しく当たっている。
暗黒神ラプソーン
クロウに散々な目に遭わされた暗黒神。クロウに注文されたことになってしまったが、クロウが思い付きで言った「陽夏木ミカン闇堕ち」という単語にちょっとだけ興味を持った。そう言えば魔法少女は闇堕ちするのであったな……
篇瀬吹雪
小倉しおんとタッグで行動した銀髪一般ピープル。何故か小倉の研究内容を知っており、シャミ子とクロウに結界の危惧を代わって伝えた。本来はウガルルに親という概念を教えたり、クロウの注文を捏造したりと、ちゃっかりしたお茶目な面を持つ。
1番好きなオリジナルストーリーはどれでしたか?
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ラプソーンと出会う話
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不二とジャハガロス会談する話
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ベビーパンサーを召喚する話
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キラーマシンとダチになる話
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スライム達に餌付けする話
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スライムナイトと出会う話
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ゲモンに師事する話
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メルトアとガチバトルする話
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メタルスライムと仲良くなる話