まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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今回のあらすじ

クロウはレベルがあがった!
かしこさが10あがった! ざいあくかんが1あがった!

ピエールはレベルがあがった!
ちからが1あがった! きようさが3あがった!
三枚おろしを覚えた!



一触即発! あすら再開と紅色騒動!……騒動の決着とはじめての冷酷な策略編

 一通り素数を数え終わった後、冷静になれた(気がする)俺は、早速この戦争の跡地みたいな悲惨な現場での状況の整理を始めた。

 

「ひとまず……封印されてる白澤さんをなんとかしないといけないな…」

 

「そうじゃないとリコさんが止まらないですもんね…」

 

 白澤さんが封印された後のリコさんなら、俺も店の窓越しに見た。その目も言葉に乗る感情も無。全てを無に帰してやろうと言う意志に満ちていた。それは、メルトアのような本物の悪意とは別ベクトルの、恐ろしいものだった。

 何より、それを知り合いがやってのけたって言うんだからより恐ろしい。叶うことなら、二度とああいう顔と魔力は見たくない。

 

「リコさんと紅色魔法少女が起きたらまた修羅場です」

 

「一番のカベはそこだよな…」

 

「桃とミカンは放っておけば目が覚めるから大丈夫だろうしね……」

 

「なぁ小倉、フブキ……何か、いい案はないか?」

 

「そうだねぇ~。

 まず寝てる魔法少女の頸動脈をスパッといってー、生き血ぶっかけて店長を生き返らせるー」

 

「オイ」

 

「それでコアになった魔法少女を多魔川に流せばハッピーエンド~」

 

「「それは何もハッピーじゃない!!!!」」

 

 小倉が提案した第一の策を、まぞくタッグで即否定した。

 ぶっ倒れてる紅色魔法少女の事はなんにも知らないけど、それは一番ダメだろ!?

 つまりこの魔法少女一人アレするってことだよね? 絶対だめだからな!!

 

「というかそもそも、封印って魔法少女の血でしか解けないんですか?」

 

 小倉の一番ハードルの低く、倫理観を明後日の方向に投げ捨てた提案を全力拒否した後でシャミ子が封印について聞いた。

 魔法少女の血以外で封印を解けるものがあれば、それを活用したいものだ。だが、小倉が桜さんのメモを使って言う事には……

 

「光のエネルギーは光のエネルギーの等価交換で溶かすのが効率がいいんだよぉ。

 油性ペンで書いた文字を、水と油のどっちで落とせばいいかなって話だよねぇ。

 闇と光って、水と油みたいな関係なんだよぉ!」

 

 …とのこと。

 その理論で行くと、油性ペンを落とす時にクレンジングオイルや除光液を使わなければなかなか落ちないように、光属性による封印を闇属性で破るには果てしなく時間がかかるということになる。皆が眠っている内に何とかしなければならない以上、この方法はナシだ。

 手がかりはないかと手荷物を失礼させてもらうと、免許証が出てきたので、そこで名前を確認する。

 

「じ、じゃあ!! 二つの間はできませんか!?」

 

「間?」

 

「この魔法少女……えと、朱紅玉(しゅこうぎょく)?」

 

「チャイニーズだ。読みは…朱紅玉(シュホンユー)さん、かな」

 

「そう! この(ホン)さんは…リコさん以外を巻き込むつもりはなかったそうです。

 だから私が紅さんの夢の中に入って、事情を聞いて来ます! それで、ギリギリまで血を分けて貰えるように頼みます!

 それで、残りの封印はまぞくの力でどうにかこうにかして店長救出!………みたいなプランはどうでしょう?」

 

 おお。それはまさしく、夢の中に入れるシャミ子らしい案だ。

 さっきの小倉の、刀傷沙汰&殺人&隠蔽の3アウトコンボの6000万倍はマシじゃあないか!

 

「それ、良いな。やってみる価値大アリだぞ」

 

「ホントですか!?」

 

「でも、見知らぬ魔法少女の夢の中だよ? ひとりで大丈夫?」

 

「それに、どうにかこうにかって、どうするつもりだ?」

 

「俺ん家にはスライム達がいる。スラリンにナツミにメタぞうにピエール……

 あと、外でスタンバってたウガルルもいたしな。最悪、ゲモンに知恵を借りるわ」

 

「…どうして最初からゲモンさんの力借りないのぉ?」

 

「ゲモンは真っ先にお前の最初の意見に賛成しそうだからだよ。

 しかもその案にえげつない補強とかやらかした上でな」

 

 とりあえず、使える助っ人は全員使う気概で、シャミ子が示してくれたこの策に乗らなければ、ばんだ荘どころかこの街まで崩壊しそうだしな。

 シャミ子はまず先に紅玉さんの夢に突入するべく、彼女の隣に横になって目を閉じた。

 さて、俺も俺で起きてるヤツが出来ることをやらないといけないな。

 

「小倉、フブキ……俺、仲間呼んでくる」

 

「さっきのスライム達か。頼んだよ。

 私としおんで、シャミ子見ていよう」

 

「あ、神原君~、ウガルルちゃんも呼んどいて」

 

「おう」

 

 シャミ子が夢の中で紅玉さんの事を探っている間に、店を出た俺は自宅に電話をかけた。

 

『もしもし』

 

「ピエールか? ちょっと厄介な事態が起こった、動けるヤツを全員連れて『あすら』……ばんだ荘まで来てくれ!」

 

『我が暗黒神!? 一体何が…』

 

「詳しい事は来てから話す!」

 

『…分かりました。ただ、留守番にナツミとメタぞうを置いていきます』

 

 良し、これでピエールとスラリン、チロルは来てくれるな。後は……

 

「ウガルル!」

 

「んがっ!」

 

 俺の呼び声ひとつで、ウガルルは隣の屋根からばんだ荘の庭までひとっ飛びでやってきた。

 ミカンの指示でずっと待っていたんだろう。

 

「ついて来てくれ。ウガルルの力が必要になるかもしれない」

 

「わかっタ!!」

 

 ウガルルを呼んだ後、程なくしてスラリンとピエール、そしてゲモンまでやってきた。約1名ほど予定外なのがいるが、準備はOKだ。

 後はシャミ子が目が覚めるのを待つ……というか連絡手段が欲しいな。ミカンの時はスラリンが通信機代わりになったから連絡が取れたが、今回はスラリンがスターティングメンバーにいないから、シャミ子の様子が分からん。スラリンを送る方法も詳しい調整が分からないし。シャミ子の隣で寝かせれば良いのか?

 そう思ってると、俺のスマホが震えた。なんだこんな時に。相手は……

 

「……シャミ子、だと?」

 

 シャミ子は現在夢の中に潜っているハズ。

 そう思いながらも、通話ボタンをタップして電話に出た。

 

「…もしもし」

 

【……小倉さん、吹雪さん、クロウさん聞こえてますか?】

 

「シャミ子? お前どうやって連絡してんだ!?」

 

「シャミ子ちゃん?」

 

「電話が来てるのか!!? 偽物ではなく!?」

 

【わ、わたし本物のシャドウミストレス優子です!

 そっちこそ私の幻聴とかじゃありませんよね…?】

 

「??? 何言ってるか分かんないけど、こちとらリアルガチでモノホンの神原クロウだが」

 

 だいぶ参っている様子のシャミ子の声が、電話越しに聞こえてくる。あとなんか、コツコツという、そこそこ硬いもの同士がぶつかってるような音が。

 夢の中で一体何が起きているのか? スラリンみたいな映像付きじゃないからさっぱり分からん。でも、通話できるならそれでいい!

 

「今、何が起きてる?」

 

【現在進行形で金魚の群れに襲われてます! ホタテが割れそうです! 助けて助けて励まして!!】

 

「「「!」」」

 

 どうやら、夢の中は俺が思っていたよりもだいぶピンチな状況になっているようだ。

 どうにかしてやらなければ、シャミ子がヤバい。金魚の群れに襲われてると言ってたから……

 ……!! そうだ! 魔法少女の中にいたヤツなら、ここにいる!!

 

「小倉! 電話代わってくれ!」

 

「…ウガルルちゃんを送り込むんだね?」

 

「話が早いな……そういうことだ!」

 

「では我が暗黒神。我々も同行しましょう」

 

「ピエール…できるのか?」

 

「おそらく。本来、スライム族は聖にも魔にも属さぬ者。ならば、まぞくを辿って魔法少女の夢の中へ行くこと自体は可能だと思います」

 

「頼むぜ…!」

 

 ウガルルとピエール、そしてスラリンをシャミ子の横に連れてきて、シャミ子の隣で横になるよう指示する。すると、俺のスマホから勇ましい声が聞こえてきた!

 

【んがッッ! 仕事ダ!!!】

【そこをどけいッ! 金魚の魔物どもッ!!】

 

【ウガルルさん!? ピエールさん!? どうして…】

 

「成功だよ~」

 

「良しッ! 聞こえるかシャミ子!

 今、助っ人を送り込んだ! これで大丈夫か!?」

 

 助っ人を送り込めたことを受け、すぐにスラリンのモニターを見る。するとそこには、金魚たちを次々と輪切りにするウガルルとピエール、そしてホタテ貝から出てきたシャミ子がいた。

 

【ピエール! オレの刺身を取るな!!】

 

【安心せよ、コレを食うのはウガルル殿だけである!

 来い、金魚ども! シャドウミストレスの邪魔をしようものなら……全員、三枚おろしにして舟盛りにしてくれる!!!】

 

【ふ、舟盛り…ゴクリ】

 

【二人とも、ありがとうございます!!】

 

 ウガルルは金魚も食べるのかとか、ピエールは何を目指してるんだとか、舟盛りの舟はどこから調達する気だとか、細かいツッコミどころが一瞬で山ほど生まれたが、それらを全て彼方へうっちゃりつつ、シャミ子が記憶の奥へと向かっているのを確認する。

 ここから先は、シャミ子にしか出来ないことだ。俺ら暗黒神後継+一般ピーポー二人は、シャミ子の説得の成功を祈りつつ、スラリンモニターに映るウガルルとピエールの殺陣を眺めて……

 

『ピエールに誘われるままここに来たが……クロウよ。この状況をひとまず説明しろ』

 

「!! ゲモン…」

 

『お前がオレの力を借りるのを躊躇う理由は察しが付く。

 だが、流石のオレもノーヒントのノー情報では、立てられる作戦も立てられん。

 お互い、言うだけならタダだ。話してみろ』

 

「………分かった」

 

 小倉とフブキがスラリンモニターにくっついている傍らで、俺はゲモンにこれまでのいきさつを分かる範囲で説明した。

 紅色魔法少女・朱紅玉が来店したこと、千代田とミカンにしばかれたらしい事、紅玉さんがリコを封印しようとして誤って白澤さんを封じてしまった事、それにリコがガチギレした事………ゲモンに話すことで嫌な予感がしたが、この際形振り構ってられないのも事実だった。

 

『…オレからしてみたら、小倉しおんの案も次善策としては良いと思ったんだがな。コアを4分割してからまぞくの儀式で封印。しかるのちに川へ流せばもう二度と復活できまい』

 

「………言っとくケド、それは真っ先に俺とシャミ子で拒否ったからな」

 

『贅沢言ってられる状況か阿呆め。リコが目覚めたら即・ゲームオーバーなこの盤面で、白澤の封印解除が最優先事項だってことを分かってるのか?』

 

「当然だろ。だから今、シャミ子が紅玉さんの説得をしているんじゃないか」

 

『そう上手くいけばいいがな。小倉しおん、篇瀬吹雪。状況はどうだ?』

 

「今ね、クロ君の携帯越しに話を聞いてたんだけど…」

 

「待って、小倉のヤツ俺の携帯に変なの仕込んでないよな???」

 

 一瞬で生まれた俺の一沫の不安をスルーしてフブキが話したのは、シャミ子が見た紅玉さんの過去と、その交渉の様子だった。

 なんでも、リコに大事なものを奪われた上に、祖父まで洗脳されたと思い込んでいたらしい。後者の洗脳の件はシャミ子が誤解を解いたみたいだが。紅玉さんも白澤さんを巻き込んだのは不本意らしく、白澤さんの封印解除に協力してくれるらしい。

 ただ、その条件としてリコに大事な鍋――リコが奪ってったものだという――を返してもらい、一言謝ることを要求してきたそうだ。

 まぁ、それくらいなら……とシャミ子も引き受けたそうだが。

 

「ひ…ひとこと謝って鍋を返却?()()()()()?」

 

 ―――無理じゃね?

 

『フッフッフ……丁度いい。さぁ、面倒な難題のお出ましだ。

 クロウ。オレの授業を受けてる身としてちょうど良い中間課題じゃあないか。

 リコを説得してみせろ。出来なかったら、問答無用で小倉しおんとオレの次善策の実行だ』

 

「………リアルマジで言ってる?」

 

 唐突に振られたゲモンからの難題に、俺は顔色が青ざめていくのを感じた。

 ……この腹心、楽しんでやってやがる…! しかも、退くに退けなくなった。

 どうしてこうなった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 シャミ子とピエール、ウガルルが戻ってきた時に、俺は俺でヤバい状況になったことをシャミ子に話す。

 俺のことを心配してくれたが、すぐにリコの夢の中へ行くように促した。

 

「だ、だだだ大丈夫なんですか、クロウさん!?」

 

「俺も一緒に説得の方法考えるから、先にリコの夢の中に行っててくれ。

 ……プレッシャーをかけたいわけじゃないけど、ミスったらゲモンが紅玉さんを(アレ)しちゃうのは考えなくていいからな」

 

「ウルトラプレッシャーじゃないですかー!!

 なんでそんな事を言うんですかクロウさんのおばかー!!」

 

 文句を言いつつも、シャミ子はリコの隣に横になって眠り始めた……小倉がバットを取り出した理由は何だかよく分からなかったが……。

 だが、ここで問題が発生する。

 

「ほげぇ!!」

 

「シャミ子!?」

 

「何があったんだい?」

 

「強制的に追い出されました……こんなの初めてです…」

 

 潰れたカエルみたいな悲鳴をあげてシャミ子が飛び起きたのだ。何があったのかと問えば、リコの心の中が超大型台風みたいで、ドロの掃除(?)や説得どころではなかったという。しかも夢の中でスマホが浸水して連絡が取れなくなる始末だ。

 参ったな………一筋縄ではいかないことは何となく分かっていたが、まさかの対話拒否とは。

 だが、ここで諦めたらゲモンが紅玉さんをアレしてしまう。「中間課題」とか言ってたし、あとあとより面倒になるのは確定だ。

 

「ていうかゲモンさん、貴方暗黒神の参謀ではないのか?だったら、この場をなんとかできる手を…」

 

『リコの超大型台風のような心中を治める方法ならある。だが、すぐに言ってはクロウの為にならん』

 

「そ、そこをなんとか……」

 

『ほう。クロウがそう言うということは、中間課題は0点ってことで良いんだな? 次善策(紅玉のアレ)と補修地獄をどうしてもお望みと言うのなら……』

 

「あ、やっぱもうちょっと粘ります!!!」

 

「クロ君!!?」

 

「オレ思いついタ! 店長ならリコを説得できるんじゃないカ? ボスのボスだしナ!」

 

「ウガルルちゃん健気かわいいねぇ~

 店長さんは今封印されてるんだよぉ~」

 

 ゲモンのやつ、俺に課題を課す先生のつもりなのか、策を考えてるには考えてそうなくせに、力を貸してくれる気配がない。

 ウガルルも頑張って提案してくれるが、白澤さんは絶賛封印中なのでこのままじゃあ説得に加われないんだよなぁ。

 でも、今のブチギレたリコを説得できそうなのって、白澤さんくらいしかいないような気がする。

 

「デモ山のヘビ封印されててモ話せたゾ!」

 

「それは昔の人かなんかが、祠作って鏡を置いて窓にしたからであってだな……」

 

 

 ………

 ……

 …

 

 

「「あーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」

 

 

 そうじゃないか!

 封印に穴は作れる!

 奥々多魔の蛇みたいに、神社建てて信仰を作れば、白澤さんとコンタクトが取れる!!

 

「吹雪ちゃん! 儀式セットとよりしろ!!」

 

「任せてくれ。なる早で神社を立てる!」

 

 小倉とフブキもそれに気付いたようで、即座に祠?儀式台?の設営に取り掛かった。俺も設営作業に加わりつつ、次の行動を小倉に尋ねた。

 封印に穴を作る為には、鏡とか社・祠的なサムシングの他に、信仰を作れば良いらしい。

 

「信仰ってどうやって作るの?」

 

「バク神さまぁぁー」

「バク神さまー」

 

「…え、それで良いの?」

 

「神様への奉納舞や、お供えもあればグッド!!」

 

「お、おう。じゃあ、えっと……バク神さまァァァァァァーーーーーッ」

 

 バクのオブジェに鏡やらバクのよりしろやらを祀った即席の祠に向かってバク神さまぁーと祈祷を始めたシャミ子と小倉。そしてこれでもかとお供えを並べまくるフブキを見ながら、俺も即席の踊りを踊りつつ、祈りを始めた。

 その祈り通じてか、バクのよりしろが動き出し、ダンディな声を出した…………つまり、成功だ。

 

「ぼ…僕は一体……って怖ッ!!」

 

「バク神さまぁぁぁぁ」

 

「怖いよ優子君!!」

 

「バク神さまアァァァァーーーッ」

 

「怖いってクロウ君!!」

 

「あ、白澤さん気づきましたか。

 ちょっと力を貸してください」

 

「うわぁぁ! 急に素に戻るのはやめたまえ!!?」

 

 よりしろに白澤さんの意識が戻ると、すぐに状況の説明を始めた。紅玉さんとリコの和解のために説得に協力して欲しいと言ったら快諾してくれたのはさすが白澤さんって感じだ。

 その後ウガルルが勝手にシャミ子の携帯を2回線持ちにしたりと、後でクーリングオフしないといけない事態が発生したりしたが、とりあえずリコの説得の糸口を掴めた俺達は、再びシャミ子と、追加で白澤さんとスラリンを夢の中に送り込んだ。

 リコの夢の中は、一言で言えば、台風で荒れ狂う濁流の河。再びシャミ子を追い出そうとする激流は、白澤さんの声でどんどん収まっていく。そして、白澤さんの声に反応するようにリコの本体も現れた。

 良し………白澤さんがいることで、話が出来る状況に持って行けている!

 

紅玉(ホンユー)どのは血を譲ってくれるそうだ! その為には君の謝罪と鍋の返却が必要だ!!】

 

【あぁ、あの子(ホン)ちゃんだったの。人間の子は成長早いわ~】

 

 でもな、とリコの声のトーンが下がったのを感じる。

 それと共に、交渉がこのまますんなりいかない予感も、感じてしまった。

 

【ウチの方が強いんやから、鍋返す必要も謝る必要もあらへんやん。なんでそうせんの?】

 

「え………」

 

 そのリコの言葉に、声が詰まった。

 紅玉さんより強い自分が、謝る必要なんてないし、なんなら好き放題ぶんどっても良い。

 その言い方に疑問の余地すら抱いていないような………そんな言い方の、あまりにリコ的な主張に。

 この時…俺は思い出していた。

 

『リコという魔族の本質的な話だ。

 争いを好まないスライム系が寄り付かない事、白澤への行為、シャミ子の杖を遠慮なく欲しがった事……奴はこれ以上なく利己的だ』

『好きになったものは、どんな手を使ってでも手に入れたいと願う。』

『利己的に生きるとはそういうことだ』

 

 ゴミ先祖による、リコへの人物評を。

 俺には理解しがたい、利己的な人のサガっていうのを、たった今まざまざと見せつけられていた。

 白澤さんが「それじゃあダメなんだよ!」と言っても、リコは「絶対謝らん」と言っている。

 くそ、これをどう説得しろってんだ。ゲモンのヤツ、えげつない説得を俺に丸投げしやがって―――

 

()()()()()()()()()()()()! それを封印されて、怒らんワケないやろ!?】

 

【え!? 彼氏じゃないよ!!!?】

 

「―――ん?」

 

 待って。今ちょっと、信じがたいワードが出てきたぞ!?

 リコ、白澤さんの事彼氏だと思ってたの!?

 こ、れ、は………解決しづらい新たな問題の発生か?

 オーイ勘弁してくれ。ただのリコの説得から、こんな厄ネタが出ると誰が予測できるんだ!!?

 

リコ君に愛はあるし一生養うつもりだったが……店に住み着いた野良フェネックという認識だったよ!

 

【??? だ、だって、さっきもウチをかばって…】

 

アレは紅玉どのを庇ったんだよ!? リコ君あのまま紅玉どのを(アレ)しそうな勢いだったからね!!

 背中で牛刀構えてる子は流石に恋愛対象外だ!

 

 や、ヤバい。白澤さんが無意識にリコに追い打ちをかけている。

 ゴミ先祖から聞いていて、なんとなーくリコって白澤さんの事好きなのかなって思ってたけど、白澤さんからすればペット的な認識だったんだな。

 ……っと、そうじゃない。いくらリコでも、コレはあまりにもあんまりだ。流石に泣いちゃうんじゃないか?

 そうなったら、もはや正攻法の説得など無理になってしまう。なんでもいい、考えろ、考え―――

 

 

『ウチはどこへ行ってもスライムちゃんが寄り付かん訳や』

『リコ君……君、ここに来る前何をしていたのだね!?』

 あすらに来る前のリコ………争いを好まないスライムが寄り付かない……

 

『ウチ、マスターのこと大好きやから奇麗なものを見せてあげたかっただけなの』

()()()()()()()()()()()()!』

 白澤さんの事が好きなリコ………

 

『背中で牛刀構えてる子は流石に恋愛対象外だ!』

 白澤さんの恋愛対象…………

 

『白澤をリコの虜にすれば、リコを駒にすることも……』

 虜とまではいかなくとも、仲を取り持てば……

 

 

 ―――思いついた。

 いい案が、浮かんだ。でも。

 …………これは、良いのか? 実行しても良いものなのか?

 分かってる。迷ってる暇はない。リコの説得が不可能になったら、紅玉さんをアレするしかなくなる。そんなのは御免だ。だから……

 

「………クロ君?」

 

「……………シャミ子、メール送ったから見てくれ」

 

【え、あ、クロウさん…分かりました】

 

 出来るだけ素早く打ち込んだメールを、シャミ子のメアドに送った。メールタイトルに………『この方法でリコを説得してくれ』と添えて。

 そして数秒後、予想通り、ケータイの通話越しにシャミ子の息を呑む声が聞こえた。

 

【く、クロウ、さん………これ】

 

「……頼む。今この方法が出来るのはシャミ子だけだ」

 

 この方法は、タイトルでは無難な表現をしたとはいえ、ほぼ操ってるのと同義だ。だから、シャミ子が狼狽えた理由も解る。『これ…良いのかな?』………俺もおんなじ思いだ。

 だが、こうでもしないとリコを説得できる気がしなかった。現に白澤さんにフラれたリコはシャミ子に『マスターを操ってウチの夫にして』とまで頼んでいる。だからか……

 

【リコさん。もっと良い方法がありますよ】

 

【?】

 

【…リコさんがおリコうさんになれば良いんです

 

 シャミ子は、俺の案をしっかり呑んでくれた。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 夢から帰ってきたシャミ子は、何だか不安そうな顔をしていた。

 その口では、リコも紅玉さんも納得して、和解するだろう事を言っていた。街の平和はなんとか守られた事を意味する結果を持ってきたシャミ子を、俺はこれでもかと労った。

 

「お疲れ、シャミ子。

 ……俺の、あの策を実行してくれてありがとう」

 

 俺が土壇場で思いついた作戦。

 それは…「おリコうさんになって白澤さんのタイプになろう作戦」。

 この場で鍋を返す利口な道を選ぶことで、白澤さんの恋愛対象(性格的な意味で)になるし、客とのトラブルが減りお店が長続きして、ピカピカの鍋も手に入る…とメリットを提示して、リコにリコうな解決策を選ばせる………

 俺は、この作戦をシャミ子に指示し、シャミ子はそれを実行して、結果リコに条件を飲ませる事に成功したのだ。

 

「そ、そんな……私だけじゃなんにも浮かびませんでした! クロウさんの策がなかったら、今頃うちは更地になってたかもしれないのに……」

 

「今度、ちょっと高めのアイスか何か奢らせてくれよ」

 

「………ありがとうございます」

 

「…責任を感じてるのか?」

 

「………」

 

「クロ君、その辺に」

 

「でも…」

 

「彼女の責任を背負おうとか考えないでくれたまえよ。はっきり言って逆効果だ」

 

 言葉が少なくなったシャミ子をなんとかしたかったが、やけに察しの良いフブキに止められそれも叶わなかった。

 不完全燃焼のような会話を気にしている間にも、リコと紅玉さんの仲直りの儀式は進んでいく。リコが鍋を返し(あと利子とか言ってまな板も渡してた)、後は目覚めた紅玉さんに封印を血でギリギリまで解除させ、最後の一押しをまぞくが破る……!

 

「神原君、ウガルルちゃん達を『お供え』するよー」

 

「! 今行く、小倉」

 

 その一押しをするのは―――ウガルルだ。

 ウガルルには魂がなく、厳密には無生物らしい。だから、白澤さんに「お供え」をすることで、封印空間に入れると推測していたという。

 

「クロウ! 言ってくるゾ!」

 

「あぁ、行ってらっしゃい。…必ず、白澤さんを助け出すんだぞ」

 

「んがっ!」

 

 こうして、白澤さんを助け出すためにウガルルを送ったこの瞬間も、なんか、色んなことがぐるぐるしている。

 ウガルルが白澤さんを連れて、封印を破った時でさえも、なんだか気持ちは晴れなかった。

 

「ジキエル…アタシ、魔法少女引退するわ」

 

「残念やけど…しゃーなしや。

 契約切ったら数日で元の身体にもどるんで、ケガ治りにくくなるから。

 ほな、さいなら」

 

 紅玉さんが魔法少女を引退している最中でも、俺は俺で、あの決断が正しかったのか測りかねていた。

 

 

『クロウよ。我の意識がトンでた時の事はゲモンから聞いた』

 

「……今その話は聞きたくない」

 

『ゲモンのやつ、絶賛していたぞ?貴様の策を。

 我も聞いた限りになるが、素晴らしいと思っている』

 

「聞きたくないっつってんだろ」

 

『あ、おい、クロウ!』

 

 もはやゴミ先祖をへし折る気力も湧かず、ちょっと一人で静かな……それも、高い所に行きたい気分だ。

 だからこっそりと、誰にも気づかれないように、ゴミ先祖も置き去りにして…『あすら』から外に出た。

 

 

 

 小学校高学年くらいからだったかな……嫌な事があったら、どこか高い所に行く習慣みたいなのがあった。

 例えば、母さんにガチで怒られた時とか、ミカンと初めて大喧嘩した時とか、帰ってくる予定だった父さんが急に帰ってこれなくなって、電話越しに謝られた日とか。

 多魔市(こっち)に来てからはこういうの初めてだったな………まぁ、色々あっても、不二に襲われた時でさえ、後に尾を引かなかったからな。ここが住みやすい証…なんだろう。

 高い所から街を見下ろすと、なんとなく心地よくて、まるで自分が途轍もなくデカい存在になったみたいで、悩みが小さく感じられたものだ。だから、高い場所は好きな方だ。現に今も、街々の奥の地平線に向かって、オレンジ色の太陽が沈んでいくさまを、たま市の桜ケ丘の高台公園から、じっと眺めている。あの太陽が沈み切ったら、今日は帰ろう。そんで、寝て起きたら、それからはまたいつも通りの俺になる筈だ。

 

「こんなところにいた! クロ!」

 

「ミカン」

 

 聞きなれた声に振り向いた。そこには、やや息を上げた様子の、10年来の幼馴染がいた。

 

「皆が心配していたわよ」

 

「…………もうちょっと、ここにいさせてくれ」

 

「…そうね。貴方、死にそうな顔色をしているもの」

 

 「ただちょっと、話しかけるタイミングをはかっているうちに、どこかへ行っちゃうのはやめてほしいわ」……と呟いた彼女に、そういえばその手の連絡を立ち去る前にしてなかったなと思って、今更ながらにちょっと悪い事したなと思ってしまう。

 

「今日のことは、篇瀬さんから聞いたわ。色々あったけど、頑張っていたそうじゃない」

 

「じゃあ、リコさんに何をしたのかも聞いたんだろう?」

 

「!!」

 

「俺さ、今日のこと褒められたんだ。ゴミ先祖に」

 

「ラプソーンに?」

 

「リコの恋心につけこんで、説得させたんだ。シャミ子にこう説得しろって指示して。

 あのままのリコが起きたらヤバいのは知ってたし、なかなかシャミ子や白澤さんの言う事を聞いてくれなかったから、他に良い手が思いつかなかったんだ。

 だからちょっと作戦を練った。その事を、ゴミ先祖に褒められたんだ。素晴らしいって。ゲモンも絶賛してたってさ。

 ……それがすごく嫌なんだ。ゴミ先祖とおんなじ暗黒神に近づいているようで。」

 

「………」

 

「メルトアの一件だってそうだ。

 あのゴミ先祖……メルトアが七賢者の魂持ってた事も黙ってたんだぜ?

 『訊かれてないから』なんて言いやがって……ホントに、ふざけてる」

 

 気が付けば、ミカンにそう切り出していた。

 そして、全てを話していた。

 今回のことも……そして、メルトアの件で七賢者の封印が一個解けていた事も。

 

「力で何とかできる案件じゃなかったし、結果的には皆、仲良く出来たけど。

 シャミ子を利用して、リコさんの恋心や白澤さんの優しさまで利用して………自分が嫌いになりそうだ」

 

 ゲモンの奴は、策を練るたびにこんな気分を味わっていたのか?

 それとも、別に操ったヤツなど知らんとばかりに気にしていないのか?

 こんな策を大手を振って歓迎するような暗黒神と同じになるなんて、絶対に…

 

 

 

 

 

「クロ、こっちむいて」

 

「え、どうし―――ぎゃッッ!!?

 

「思い上がるなまぞく!!」

 

 ミカンに呼ばれたと思ったら、デコピン0.2秒前の指に派手にデコピンを食らわされた。

 それと同時に、ミカンの聞いたこともない声が公園内に響く。

 

「良い、クロ? 暗黒神は、後にも先にもラプソーンだけよ!」

 

「ふぇ?」

 

「闇の世界から現れて、勝手に光の世界を侵略した……エラソーで、人の弱点が大好きで、空気の読めない暗黒神にクロがなれる訳ないって事よ!」

 

「め、めちゃくちゃ言うね……」

 

「でも当たってるでしょ?」

 

 確かに。ゴミ先祖は偉そうに振る舞うし、千代田やミカンの弱点を見つければ鬼の首を狙うようにそこをイジるし、空気を意図的に読んでないのかって位に自分本位だ。

 

「つまりね。例えラプソーンの力を取り戻したとしても……クロはクロ…貴方のままだって事よ!

 ひとりで怯えないで、私達と一緒にいる限りはね。今回のことだってそうよ。

 貴方のやったことは……きっと、皆を守るため、だったんでしょ?」

 

「ま、守るなんて……ただ、アレはちゃんと解決しないとリコさんも白澤さんも紅玉さんも救われないし、千代田もミカンも嫌だろうし、何より俺自身が嫌だったから…」

 

「それでも、『誰かのため』に動いたクロを…私は間違いだって思わないし………誰にも間違いだなんて言わせない!」

 

「!!!」

 

 間違いだって思わないし、間違いだなんて言わせない―――

 その言葉が、心にジーンと染み渡るのを感じる。ミカンの言葉が、正真正銘、本心から出たものなんだって、感じる。

 それは……初めて冷酷な策略を使った俺に対する、一種の赦しのように思えた。

 

「それに…もし、クロが道を間違えても、私達がいるわ。

 世界の宿敵になる前に、私達がぶっとばしちゃうんだから」

 

「それは、頼もしいな……」

 

 嬉しくて、言葉が出なくなりそうだから。

 というより、必要以上になにか言うと涙が出そうだ。

 流石に女の子の前でそれは恥ずかしいけど…せめて、この言葉だけは、伝える。

 

「――ありがと、ミカン」

 

「良いって事よ! 10年来の付き合いのミカンちゃんに感謝なさい!」

 

 ウインクするミカンに、何か良い返しをとも思ったが、これ以上は目汁がポロりそうだったから、軽く手を差し出す。

 

「…帰りましょ。もう暗くなっちゃうしね」

 

 なんの躊躇いもなく手を握り返してくれた柑橘系魔法少女が、いつの間にか公園の街灯に照らされていた事に気付いて、そろそろ帰ろうかという彼女に、俺は頷いて答えた。

 公園からの帰り道……涙が引っ込んだ後で見上げた夜空は、いつもより煌めいているような気がした。

 

「…良い星空だな。月も綺麗だ」

 

「!! ……そうね。綺麗な月だわ」

 

 ミカンの、俺の手を握る手に若干力がこもったのを感じて、俺はそれに答えるように手を握り返した。

 ばんだ荘に帰る俺達を、星々が見守ってくれている気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ! より良い道を歩みより良い街を作っていくんだ!




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
 初めて策略を練った暗黒神後継者。それの成功を受け、自分の中で罪悪感がむくむくと湧き出ていたが、ミカンママの励ましによってわだかまりを無くす。これによって、ただでさえカンストしていたミカンとの親愛度が更に上昇する。
 ちなみに、バク神さまへの奉納舞は炭坑節バンデルフォン音頭。

暗黒神ラプソーン
 ほぼ出番のなかった空気暗黒神。本人のあずかり知らぬところでミカンに散々な言われようをしているが、事実だから仕方がない。なお、この後メルトアの際の封印解除の事をミカンに脅されて白状し、しっかりぶち転がされた。

妖魔ゲモン
 クロウの成長を後ろから見守っていた暗黒神参謀。基本的に進んで案を出す事を敢えてしなかったが、どうしようもなくなった時は行動する気でいた。小倉の案をコアの封印という補強を施した上で。
 だが、クロウが土壇場での活躍を見せたためご満悦。その後の悩みについては「時に心と指を切り離せなければ意味がない」と敢えてスルーしていたご様子。ちなみにこの後、主人ともどもブチ転がされた。

篇瀬吹雪
 小倉と一緒に事に当たった(現段階では)一般人。やけに察しが良く、クロウがシャミ子に落ち着かないままアフターフォローをしようとしていたのを程々で止めた。もし彼女がいなかったら、「あれは策を立てた俺の責任だ!」「違います!その策を実行した私です!」とケンカしていただろう。





おまけのまぞく
もしも、まちカド暗黒神のみんなが『さそうおどり』を受けたら?

シャミ子
→2期OPで清子さんがやってた踊りをする。遺伝やで。


→経験はないけど、センスはありそう。キレッキレなさそうおどり。

ミカン
→昨今のアイドルがやりそうなパフォーマンス。Ni○iUとか。

リリス
→ベリーダンスを踊る。メソポタミア文明からあったらしい(ガチ)。

クロウ
→伝家の宝刀・炭坑節バンデルフォン音頭。

小倉さん
→ドラクエ主人公みたいな、絶妙にセンスのないダンス。

良ちゃん
→ベロニカダンスを踊って欲しくないかい???

リコ君
→セクシーな中国風の民族舞踊踊ってくれそう。

白澤さん
→ロウ爺さんの盆踊り。バクの体型がよく活きる。

不二実里
→良いトコのお嬢様がやるバレエを踊る。目が回りそう。

泰庵
→ロボットダンス。地味にクオリティが高い。

フブキ
→フラメンコ風な踊りを踊る。詳細はマルティナさんを参照。

ゴミ先祖
→踊る身体がない。

1番好きなオリジナルストーリーはどれでしたか?

  • ラプソーンと出会う話
  • 不二とジャハガロス会談する話
  • ベビーパンサーを召喚する話
  • キラーマシンとダチになる話
  • スライム達に餌付けする話
  • スライムナイトと出会う話
  • ゲモンに師事する話
  • メルトアとガチバトルする話
  • メタルスライムと仲良くなる話
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