まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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あけましておめでとうございます。
他の連載を優先してしまい、こっちの更新が遅れる時もありましたが、こんな亀更新でも「まちカド暗黒神」をよろしくお願いいたします。



今回のあらすじ

サージタウスが あらわれた!



悪戯か超悪戯か!? 篇瀬吹雪の奇妙な超常依頼!……目覚めよ!新たなる仲間たちと少年の永遠のロマンたる、超巨大ロボ!!!

 前回までのあらすじ。

 俺は調査依頼された遺跡で、マントと剣しか持ってない亡霊に臣下の礼をされた。……………どう言うことだ!? まるで意味がわからないんですけど!!!?

 

「え、え〜と……どうして、俺なんぞに礼を尽くすの?」

 

「……………」

 

『…喋れないか。何か、意思疎通のできるモノが必要だな』

 

「え、そんなこと言われても…」

 

 礼をするマントの真意を探りたいんだけど、あいにく手ごろなやつがないんだよな。ペンも紙も、地図描く用のしか俺は持ってきていない。他の人が持ってる可能性はあるけど、千代田もシャミ子もここにいないし、ミカンと不二はそれどころじゃない。ウガルルは色んな意味で論外だ。

 しょうがないから、地図の裏に書くように指示する。すると、青マントがペンを持って、渡した地図の裏に文字を書き始めた。

 なになに……

 

「『おまちしておりました あんこくしん』……!?」

 

『やはり、思った通りか…!!』

 

「お待ちしておりましたって、歓迎ってことなのか?」

 

『そうだろう。恐らく、このマントは既に我と貴様の正体に感づいているに違いない』

 

 そんなことがありえるのだろうか。

 だがしかし、事実目の前の青マントからは一切の敵意を感じないし、周りにいるゾンビ達もそれに従ってか襲ってくる気配がもうなくなってきている。

 それに、俺とゴミ先祖のことをあんこくしん………つまり『暗黒神』と言ったのだ。

 

「『あとへついてきてください』……?」

 

『深部への案内だろうな。奴らに敵意はない。行くぞ』

 

「んがっ!」

 

「ひぃぃぃ…! 無理無理無理無理!無理ですぅ…」

 

「落ち着け。無害らしいぞ、こいつら。

 というかたった今無害になったから大丈夫だ」

 

 ビビり散らかしている不二の手を引き、気絶してるミカンを背負っているウガルルがついてきているのを確認しながら、ふよふよ浮かぶ青いマントの背中についていく。

 もちろん不安はある。だが、危機察知に定評のあるゴミ先祖が警戒アラートを出していないのと、先程までの魔法少女のビビりっぷりをさんざん見ている身からすれば、今更この程度怖くもなんともない。

 靴が石畳をテンポよく叩く音しか聞こえない。しばらく燭台の火だけが光源の、仄暗い石の回廊を歩いていくと、やがて大きな広間に出た。そこは、まるで予めついていたかのように、謎の明かりが灯っていた。

 そして、驚くことに、そこにはなんと先客がいた。

 

「千代田! シャミ子!」

 

「神原くん」

 

「え! クロウさんですか!!?」

 

 ミカンと不二がビビって逃げたその時にはぐれた筈の、シャミ子と千代田だった。青マントについていく時に二人の事も心配していたので、案内された先にいたのは安心だけど…

 

「二人とも、どうしてここに?」

 

「シャミ子を捕まえた後で囲んできたゾンビ達をボコってね。どうしてこんなことをしたのか聞いたら、ここに連れてくるのが目的だったんだって。今来たところだよ」

 

『流石は脳筋魔法少女だな……』

 

「待って、そもそもアイツら会話出来たの?」

 

 ゾンビ達が話せたのが意外過ぎたが、千代田はここで暴れる気満々みたいだったから、それを止めて説明から始めることにした。

 もともとここが暗黒神の信者の拠点だった可能性が高い事。

 宙に浮く青いマントが、俺に敬礼をしてきた事。

 それに案内されるがままここに来た事。

 それを説明していくと、千代田も文明的な解決が可能だと分かったのか、ひとまず臨戦態勢だけは解いてくれた。

 

「暗黒神はアレだけど…神原くんの味方っぽいなら大丈夫かな。多分」

 

「いやぁ……わたくしはまだ怖いですわ…」

 

「ほ、ホントですよねクロウさん…? ここのオバケは襲ってこない…?」

 

 俺達全員が戦闘態勢を解いた事を理解したのか、青いマントは大きな広間の奥へ奥へと進もうとする。時折、こちらを振り向いて(マントの向きでかろうじて分かる)付いてくるよう促している。

 そうして付いていくと、やがて、下へと続く階段が見えてきた。青いマントは何のためらいもなく階段と降りていく。俺と千代田とシャミ子は顔を見合わせて、それに続いていく。ウガルルもそれに従う。不二だけは「いやぁぁ無理無理」と言って動こうとしなかったが、千代田の「じゃあ置いてくよ」の一言で黙ってついていくだけの機械と化した。鬼か。

 

「…不二さん? なんで俺にしがみついてくるんですか?」

 

「…………」

 

 あ、駄目だ。怖すぎて口がきけなくなっている。

 俺にしがみついているだけで精一杯そうだ。振りほどこうとしたら発狂するかもしれないから、そのままにしておこうか。

 そうして階段を下りていった先にあった広間。

 そこに広がっていたのは………

 

「こ…これはッ!!」

 

「っ…!?」

 

「な…な……」

 

 ブルーメタルなボディ。

 見上げる程の胴体の上に付いたモノアイの上からは、立派な黄金のモヒカンのようなヘルム。

 4本の巨大な腕。うち2本には立派なクロスボウとなっている。

 機械の馬のような下半身は、白銀の輝きが謎の明かりに反射されていた。

 それは、紛れもなく―――

 

「「ロボットだーーーーーー!!!!!!!」」

 

 ―――巨大ロボットだった。

 俺とシャミ子の声が重なる。

 

「すごい!すごいです!

 見てください桃! ロボット! ロボットですよ!!」

 

「千代田!不二!見ろ!!

 デカいロボットだぞ!! 乗れるかな!!?」

 

「うんそうだねロボットだね。分かったから落ち着いてね」

 

「の、乗れるんですかね!?」

 

「乗れると良いよな!!?」

 

「なんかちょっと二人ともウザキャラになってない!!?」

 

 何を言うんだ千代田。

 巨大ロボットはロマンの塊みたいなモンだろ。搭乗することができれば完璧だろ。

 シャミ子は分かっている。やっぱり、分かるやつには分かるのだ。千代田にはそこら辺分かってほしいし、不二に至ってはロボットアニメを紹介して見るよう促したのに、子鹿のように震えるだけだ。情けない魔法少女め。

 

 混乱している千代田と不二をどうしたものかと考えていると、青マントが筆談で話しかけてきた(?)。

 

「ん?なになに……『こちらはけっせんへいき、さーじたうす』……

 さーじたうす……サージタウスね。サジタリウスのもじりかな」

 

「いや、それより…決戦兵器!?」

 

 明らかに動揺して変身し、サージタウスに近づく千代田。

 それを引きずってでも止めようとする俺とシャミ子と青マント。

 俺に引きずられる不二。

 それを見ているだけのウガルルと背負われたまんまのミカン。

 

「神原くん!?シャミ子!? 何をするのかな!?」

 

「そりゃこっちの台詞だ千代田! アレをどうするつもりだったんだ!?」

 

「危ないから破壊する」

 

「「あれをぶっこわすなんてとんでもない!!!」」

 

「えぇ…」

 

 何てことをしようとすんだこの桃色魔法少女。

 こんな、洗練されたロマンの塊を目にできるチャンスなんて人生1回あるかないかだぞ。それを破壊するとは、どこまでも感性が終わっているようだ。

 確かに俺達はここにこんなロボットに会いに来たワケじゃなかったけれど、壊す必要などどこにもないだろうが。兵器としての使い道はなくとも、存在するだけで価値がある。

 巨大ロボットって、そういうモンだろうが……!

 

「えーとそうだ、そこの青マントの………名前訊くの忘れてた…えーっと…」

 

くらーく

 

「くらーく……クラークか。じゃあクラーク、これ乗れるのか!?」

 

「聞くところそこ!!?」

 

はい

 

「やったぁぁぁーーーーーーーーー! 乗れるんだ!!!!!」

 

「しかも乗れるんかいっ!!!」

 

 流石すぎる。

 サージタウス、俺お前の事好きだよ。まだ起動すらしてないけどさ。

 あと、ここまで案内してくれた青マント……改めクラークにも感謝したい。

 

「え、ええええええええええええっっ!!?

 く、クロウさん……乗るんですか?

 まさかアレに、乗るんですかッ!!?」

 

「乗っていいの? クラーク」

 

はい

 

「よっしゃぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!」

 

「えーーーーーーーっ!? いいなぁーーーー!!

 ずるい!ずるいですクロウさん! 私も乗りたい!

 クラークさん! あのサージタウスってやつ、私も乗れる系ですか!?」

 

はい

 

「やったあああああああああああああああああ!!!!」

 

「シャミ子も乗ろうとしない! 小学10年生か!!」

 

「「痛い!」」

 

 鋭いツッコミと共に、俺とシャミ子の後頭部が衝撃に襲われた。

 見る者を惹きつけてやまない巨大ロボとそれに乗れると保証したクラークから振り返って見てみる。

 そこには、手を振り下ろした姿勢で、息を切らした千代田がいた。

 

「二人とも、ここに何しに来たのか分かってるの!?」

 

「え〜と……なんでしたっけ?」

 

 シャミ子は元々の目的が何なのか忘れているようだが、俺は違うぞ。

 ミカンと不二の暴走とか色々あったが、ちゃんとここに何しに来たかくらい覚えているとも。

 

「この巨大ロボの復活と現代の活用法を探りに来たんだろ」

 

「違う! この遺跡の供養に来たんでしょ!!

 というか発起人の神原くんが忘れてどうすんの! おばか!!」

 

 おっと、そうだった。

 もうちょっとで忘れるところでした。というか一瞬忘れてた。

 ロボットに乗りたい気持ちは100億%あるけど、ソッチは本来の目的を果たしてからにするか。

 

「なぁ、クラーク。

 俺達この遺跡の供養に来たんだ。

 遺跡の祭壇的な場所はどっかにないかな?」

 

 そう尋ねると、クラークはマントだけの身体で少し考える素振り(?)をし、ペンを取って何かを書き込んでいく。

 しばらくして俺達に見せた紙の、ペン先が示した場所には、こう書かれていた。

 

さいだんのま なら、このさきです

 ただし、さーじたうすをうごかして

 とおりみちをかくほするひつようがありますが

 

 祭壇の間なら、この先。

 ただし、そこへ行くためには、この巨大ロボット―――サージタウスを動かして道を確保する必要があるのだそうだ。

 それは…つまり。

 

「「ロボットに乗れるぞぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!」」

 

「……はいはい、良かったね」

 

『アホだこいつら』

 

 まぞく二人の歓声が、どうにでもなーれと言わんばかりの魔法少女と暗黒神の呆れ声をかき消した。

 ちなみにウガルルは置いてけぼりだった。

 でもまぁ、そうと決まれば乗らないワケにはいかないよなぁ!!?

 

 千代田とウガルルを待機させ、俺とシャミ子と、あと何故か離れてくれない不二さんも、クラークに案内されながら、なんとかコックピットに辿り着くことに成功した。

 入っただけで電気のような何かで明かりがついた、メカメカしい内部のそれは、サージタウスの胸部………頭部よりもやや下にあたる。

 

「うおおおおおおおおっ!! 俺は今…ロボットのコックピットにいる!」

 

「すごいすごい! あとで代わってください!」

 

「………はっ!? ここは誰!?わたくしは何処!?」

 

 あ、なんか不二がようやく口を開いた。

 けどこれ重症だな。サージタウスから外に出た時が心配だ。

 お前は不二実里、ここはサージタウスのコックピットだと答えたが、場所を微塵も理解してくれなかったらしい。要するにガン○ムの中だと言ったら理解した。それは分かるのね。

 

「ど、どうしてこんな場所に……」

 

「遺跡の奥のさいだんに行くためにこのロボットを動かす必要があるからです」

 

「成程……」

 

「それで、クラーク。

 これどうやって起動すれば良いんだ?」

 

てがた、かお、なまえをとうろくしてください

 

「!!?…………きゅう」

 

「実里さん!!!?」

 

『馬鹿め、耐性もないのにぼうれい剣士など見るからだ』

 

 ……気絶魔法少女が一人から二人に増えた。

 俺に起動方法を教えようとしたクラークを近くで直接、ハッキリと見たせいだな。シャミ子が即座に支えに入ったお陰でコックピットにそのまま体を叩きつけることはなかったものの、これでは何もできないだろ。

 不二のことはシャミ子に任せてしまう形になってしまったが、後で席を代わることを約束して、何気に不二をディスるゴミ先祖と共に、初期設定を進めていく。

 

「しかし、手形・顔・名前か………高度だな」

 

『遺跡もかなり年季が入っていた。おそらく、闇の世界からやってきたヤツが、技術を持ってきたのだろう』

 

 このサージタウスってのが何年前に造り出されたのかは知らんけど、名前だけじゃなくて手形や顔まで認証に組み込まれてるってスゲーな。

 とりあえず、手形を認証する台っぽいところに置いて、反応を待つ。ピコンといい感じの電子音が鳴り、次は顔を認証してくださいと出てくる。

 

「よし、次は顔認証を……ぎゃっ!!?」

 

 顔を近づけようとしたところで、操縦席から弾き飛ばされた。

 何事かと思って、操縦席を見てみると……そこにはなんと、気絶している筈のミカンが座って、クラークを無視して顔認証を行っていた。いつの間に気絶から復活してたのか。

 

「おいおいおいおい!」

 

 すぐに顔認証をやめさせようとするも、ピコンという小気味のよい電子音が鳴り……名前の入力欄が出てきてしまった。

 

「ミカンさん何やってるの!!?」

 

「話は桃から聞かせて貰ったわ。

 クロに全部任せたら、勝手に起動されちゃいそうですもの。悪いけど、顔認証はさせてもらったわ」

 

「な、なんて事を!!」

 

「あと名前なんだけど、桃の名前を入れておくわね」

 

 そ、そんなことさせるか!

 ミカンの凶行をやめさせようとするも、気が付いたら千代田に押さえつけられていた。腕一本で。

 

「ち、千代田さんンンン!!?

 は、話してください!お願いします!!」

 

「駄目だよ。こんなオーバーテクノロジーロボット、簡単に起動させて良いワケないでしょ」

 

「シャミ子、助けて!」

 

「無理です! 停止ヒモを掴まれて、ミカンさんの元まで行けません!!」

 

 なんてこった。

 まぞく二人が、千代田に取り押さえられるだと!?

 しかもクラークは、登録さえしてくれれば良いと思ってるのか、止めてくれる気配がない。

 やがて、ピーッ、という音と共に初期設定が完了したことが伝えられた。嗚呼、俺のロボット……

 

「そんな顔しないの。こんなの、使う機会が来ない方が平和ってことだわ」

 

「そうだけどさぁ……そうじゃないの!!」

 

「どういうこと?」

 

「ロボットにはロマンがあんだよぉ…」

 

 それなのに、ミカンの顔や千代田の名前が無いと起動できないとかないだろ。

 名前の方はどうにでもなるが、顔認証は俺の顔じゃ突破できない以上、どうしようもない。

 だが、初期設定が終わったお陰か、コックピット内が妙に明るくなってきた。

 

きどうできました

 

「そうみたいだな……じゃあ、操作方法を教えてくれ。

 あ、そうだ。武装!武装はどのボタンだ、クラーク!?」

 

「今使う必要ないでしょ!?」

 

「でもサージタウスの弓超気になりませんか!?」

 

「絶対使わないわよね!?」

 

 そりゃ使わないけどさ。

 でもそこにあるだけで価値があるだろうが。

 改めて、歩く方法を教わって、レバーを倒してサージタウスを動かすことに成功した俺達であった。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 サージタウスの間を抜けた先に見えたのは。

 何かの祭壇っぽい場所。その大部屋の空間を所せましと飛び回る、人魂的な何か。

 

「「ヒッ…!?」」

 

「落ち着いて。クラーク、あいつら誰か分かるか?」

 

ぜんいん なかま どうし

 

『全員、仲間、同志……つまりは我の信奉者か。

 後継のクロウがいるし、クラークも認めているから害はないだろう』

 

「……だとよ。害は無いから気をしっかり持て」

 

「うぅぅ………頑張るぅ…」

 

「ウガルル、不二を起こしてくれ」

 

「わかっタ」

 

 フブキの依頼の為に必要な場所まで来た俺達は、全員が気を持っていることを確認してから順番に入っていくことにした。

 まず先頭がクラーク。2番目に俺。その次にシャミ子。そして不二、千代田、ミカン、ウガルルと隊列を組んで、祭壇の間に足を進めていく。

 空飛ぶ人魂たちが、俺達を見て(?)せわしなくぐるぐる回っているのが見える。色めき立っているのか、それとも騒ぎ立てているのか……数が多いな。夜空の星並みに数があるぞ。………ごめん、今のなし。人魂を星に見立てるのはどうあがいても無理があった。でもそれくらい数いる。

 

 そんな数だけはいる人魂たちだが、あっちへビュンビュン、こっちへビュンビュン飛び回るだけで、こっちに対して何かしてくる気配が一切ない。ミカンと不二とシャミ子は怖いのかよく見ていないから分からないだろうが。

 とにかく、俺達が部屋に入ってから祭壇の目の前まで歩いていくのに、まったく妨害がなかったのだ。

 お陰で、すぐに祭壇の前まで行くことが出来た。

 

「…それで、これから私達は何をすれば良いの?」

 

「フブキから貰ったお供え物がある。

 それを置いたら、お賽銭入れて、普通に手を合わせるだけで良いんだと」

 

「ここでお参りやります普通!?」

 

「俺もそう思う」

 

 明らかに神社でお参りって雰囲気じゃないが、フブキが指定した方法なので、これで大丈夫だと思いたい。

 賽銭箱に向かって、小銭を放り込む。それと木がぶつかり合った、小さな音がやけにこの室内に響いた。

 フブキの指定した作法を終わらせても、何かが変わる気配がない。

 失敗したか……? そう思っていると。

 トンデモないことをぶっこむヤツが現れた。

 

「…いやに静かですわね…」

 

「……これでいいのかしら?」

 

「多分………」

 

『…つまらんな。誰でも良いから、なにか一発ギャグをせよ』

 

 そう。このゴミ先祖である。

 コイツ、こんな状態でボケられる状態だとでも本気で思っているのか?

 もうちょっと空気読む努力をしろよこの野郎。

 

『ここに集まってる我が教徒たちもそう思っているぞ。

 久しぶりに誰か来たかと思えば、お供えして祈って、え、もう帰るの?

 なんかしていってけよ、って思っている顔だぞ、アレ』

 

「そんな嘘に惑わされませんよ」

 

『嘘ではない。見て分からんのか、アイツらが退屈していたのを』

 

 いや分からんて。どう見ても人魂は意志なく飛び交っているようにしか見えないし、ゴミ先祖も俺らをダマして恥ずかしい事をさせようとしているようにしか見えない。いつも以上に真剣な口調をしている分ホントか嘘か見分けがつかねぇ。タチの悪い野郎だな。

 

「そ、そういうことなら…まぞく、一発ギャグ行きます!」

 

「シャミ子乗らなくていいからね」

 

「えー、まぞくの細かくて伝わらないあるあるシリーズ!」

 

「シャミ子?」

 

「『リラックス中に自分のしっぽをデカめの虫と勘違いしてびっくりダンシング』~」

 

「シャミ子!?」

 

 シャミ子は、ゴミ先祖の言葉を真に受けて、そのまま謎の一発ギャグを放っていった。

 それを見た人魂のリアクションは………………だめだ、表情どころか顔が存在してないからウケてるのかスベってるのかよく分からない。

 ただ、シャミ子の細かすぎて伝わらない一発ギャグをしたことで、雰囲気がなんとなく変わった事だけは読み取れた。

 

『……そこそこウケたな。大方、生前しっぽのあるまぞくだった魂でもいたのだろう』

 

「え、これウケてんの?」

 

『我の言う事が信用できんと言う気か?』

 

「うん。全く」

 

『コイツ…………分かっておるのか?

 しゃみ子のギャグが終わったら次は貴様だぞ』

 

「は?」

 

『なにを呆けておる。しゃみ子がそこそこいいギャグをしたことで、他の者の持ちネタも期待されてるぞ。クロウも何かやってやれ』

 

「いやいやいやいやいや……!?」

 

 な、なんて無茶ブリだ。

 この状況で、表情が一切分からないどころか人の形すら持っていない人魂相手に!?

 何かやれって、具体的に何を!?

 「何でも良い」が一番困るのは、当たり前の常識だろうが!

 

『早くしないか。この際、一発ギャグじゃなくても構わん、早くしろ!

 しゃみ子が身を削ってあっためた場が、冷えてしまうだろうが。

 この際マジックでも特技でもなんでも良いから!』

 

 そんなこと言われても…!

 ギャグじゃなくても良いから、なんて………あ。

 

「じゃあ…俺、花火打ち上げます!」

 

『出来るのか?』

 

「分からない。でも、出来なくはないと思う」

 

 アレだって火薬を使って打ち上げて、バーンってやる系だろう。

 だったら、爆発系の呪文を覚えてる俺なら、似たようなことが出来ても良いハズだ。

 

「いくぞ~………それッ!」

 

 真上に打ち上げた光が、やけに高い天井との間くらいにまで登り、そこで起爆させる。

 

 

 ―――ぱしゅ。

 

「あ……あれ…?」

 

 ……だが、それで起こったのは、綺麗な花火ではなく、地味で小さな火花だけだった。

 思っていたのと違う、地味すぎる花火に、全身の血の気が引いていく。

 ま、まさか…失敗した…のか!?

 

 気まずい。後ろを見れないし、人魂たちも見れない。

 ラプソーンの信徒だったとか言ってた以上、危害はないかもだけど、それでもこんなのって……

 

「ねぇ、クロがやりたかったのって、こんな感じ?」

 

「えっ」

 

 聞き慣れた声に隣を見ると、ミカンが指先からぽん、と光を放った。

 それは上へ上へと昇っていくと、パンと弾けて、綺麗な光の花を咲かせた。

 一瞬で消えたそれは、まさしく俺の記憶にある花火そのものだ。

 

「ミカンさんすごい!」

 

「す…すげぇ!!? どうやったの!?」

 

「ちょっとした攻撃魔法の応用よ。

 クロも良い線行ってたけど、爆発を意識しすぎたのかしらね」

 

 いつも通りに微笑むミカンを見ていたら、緊張感が吹っ飛んだ。

 もう一度、花火の魔法を撃ってみる。今度は、爆発を意識しすぎないように……!

 

 

 ―――パン!

 

「で…できた!!」

 

「ミカンのよりはちっちゃいけど、いい花火だね」

 

『流石だな、クロウ……人魂たちも応援しがいがあったと言っているぞ』

 

 良かった。

 この勢いに乗って、もう少し花火をあげてみよう。

 千代田の言う通り、ミカンのよりは小さかった花火だが、連射すれば………!

 

 

 ―――パン!パパパパパンッ!

 

「おぉぉぉぉぉ……! すごいすごい! クロウさんすごいです!

 いいなぁ…私も花火撃てるようになりたいです!!」

 

「帰ったら、うんと修行しないとね」

 

「綺麗……」

 

 花火大会とかでよく見る、連続して弾けるヤツの出来上がりだ。

 これには、人魂たちも激しく空中を泳ぐように飛び回っていた。

 それが、嬉しさからくるものであるものなんだということを、なんとなく感じた。

 観客は人間ですらなかった(というより、元、なのか?)けれど、喜んでもらえて。

 俺も、とても嬉しかった。

 

『さ、次は千代田桃と不二実里だな』

 

「え゛」

 

「わ、わたくしも!?」

 

『当たり前であろう。なに「自分は関係ないからいいや~」的な顔をしておるのだ。

 さっさと何かしないか』

 

「無茶ぶりすぎる!!」

 

『お~い、ラプソーン様の信徒たちよ!

 こっちの桃色と青色の魔法少女も何かしてくれるそうだぞ!』

 

「余計なことを言うなッ!」

 

「に、逃げ道が………」

 

 

 ゴミ先祖お前さぁ、良いトコロに水を差すなよ!!

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 全員分の宴会芸(?)が終わり、遺跡から脱出してフブキに詳細を報告。依頼は完了となった。

 ……え、千代田と不二の一発芸の結果? 言わないぞ俺は。

 そもそも、あの2人が日常生活において、何か面白い冗談を言ったり、エンターテインメント的な事をする魔法少女だっただろうか?………ってことだ。

 学校が違う不二は兎も角、千代田についてのその重大な事実に気付いたのは、全てが終わって、二人をけしかけた元凶たるゴミ先祖が、遺跡を出た直後に千代田と不二によって粉々にされた後だったのだ。

 正直、あの2人には申し訳ないことをしたというか何と言うか………後で何か個人的に埋め合わせがしたいと思える程にアレだった。

 

 フブキにサージタウスを報告した際には、目を輝かせて「是非詳しい話を聞きたいものだ」と迫られた。

 なんでも、サージタウスについては彼女も知らなかったらしく、今後はあの巨大ロボの研究対象に入れて、再活用できるかどうか検討していくという。武装や見た目などもかなりお気に召したようだ。

 

「エネルギーや武装関係も、調べておこう。

 復活できる日が、うんと近づいたといっても過言ではないよ」

 

「君は話が分かるなぁ………!!」

 

「クロ君…!」

 

「フブキ!」

 

 そんな勢いに任せた同盟も出来てたりする。

 

 

 …あと、この遺跡調査の後、大きな変化があった。

 

「マントがボロボロですね……これ、新しいマントに買い替えた方が良いでしょう」

 

そこを なんとか

 

「と、言われましてもですね、クラーク殿。生地もかなり年季が入って痛んでおりますし、無視できない傷もいくつかあります。無事な部分の方が少ない以上、致し方ないかと」

 

 ―――そう。クラークがうちに住み着くようになったのだ。

 うちのゴミ先祖が勝手に面接を行い、「近衛騎士」のひとりとして雇い入れやがったからだ。

 まぁ本人に悪気はないみたいだし、俺に話がいったとしても、なんだかんだ迎え入れていた気がする。

 だから、遺跡であった頃から身に付けていたマントをどうするかという相談をピエールに持ちかけ、やけに家庭的なアドバイスを受けているクラークを見ても、特に不満はないのである。あるとしたら俺に黙ってことを進めたゴミ先祖だ。

 

 ちなみに、クラーク加入に伴って、話すことが出来ないから小さなホワイトボードとペンを買い与えた。お陰で他の仲間とのコミュニケーションも取れているようで何よりだ。

 

「クロ~、グレープフルーツとシークワーサーいる?」

 

「お、ミカン! おーい、誰かお茶持ってきてくれ!」

 

『む、おーい、手の空いている者はいないかー?』

 

 俺とゴミ先祖の声に誰か反応したのか、コップ二つ分と急須が乗ったプレートが……

 

「あ」

 

「~~~~~~!!!?」

 

「おいクラーク、ちょっと待っ……」

 

 持ってきてくれたのは、クラークだった。

 ただし、彼は今、()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 それはつまり……実体が見えないということで。

 はたから見れば、コップと急須が乗ったプレートがひとりでにやってきたようにしか見えないのだ。そのままお茶を淹れてしまえば、透明人間がお茶を淹れているかのような怪奇現象以外の何者でもない。

 

「――――――きゅ~」

 

ミカーーーーン!?!?!?!?

 

『耐性なさすぎだろコイツ』

 

 それを目の前で目撃したミカンは、しめやかに気を失い。

 俺は、大慌てでミカンの介護を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれミカンさん! ホラー耐性は、アウトプットをすることで慣れとして身に付いていくらしいぞ!

 

 




オリジナル&ゲストキャラクター紹介

神原クロウ
 遺跡にてラプソーンの信仰度と、ロマンの塊に会うことが出来た暗黒神後継。サージタウスに会うことが出来て光栄だと思っているし、いつの日か使う日を夢見ている。

暗黒神ラプソーン
 祭壇の間にて、人魂と化した信徒たちを楽しませるために、クロウ一行に無茶ブリをした暗黒神。それを乗り切った者もいたが、乗り切れなかった桃色&青色魔法少女によって粉☆砕された。でも、一向に懲りていない。

ぼうれい剣士/クラーク
 剣士の霊が、マントに取り付いた魔物。物理的な肉体が一切存在せず、見えない亡霊がマントを羽織っているかのように空中を浮遊している。剣技に精通しており、またいなずまを呼び出したり、それを剣に纏う事も出来る。拙作では、かつてラプソーンを信奉していた剣士の魂として登場。クロウ達を案内した後、そのままクロウの家に住み着いた。食事いらずのコスパ最強の身体(!?)をしている。「クラーク」という名前は、ドラクエ8のスカウトモンスターの名前から。

サージタウス
 キラーマシン系とよく似たブルーメタルボディとモノアイを持つ巨大な機械の人馬。胸元にいて座のマークがある。「ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2」に登場し、問答無用先手を取れる特性やマイナス補正のないスキル構成、そして何より秀逸なデザインから、登場時からトップクラスで有名モンスターになった。以降のモンスターズシリーズでも、ほぼ登場している。
 拙作では、暗黒神の信者の遺跡に眠っていた、決戦兵器として登場。平和の世であるたま市において、兵器としての出番は来ないか当分先。ちなみにだが、サージタウスは活動報告から来ていたリクエストを採用して登場した。

1番好きなオリジナルストーリーはどれでしたか?

  • ラプソーンと出会う話
  • 不二とジャハガロス会談する話
  • ベビーパンサーを召喚する話
  • キラーマシンとダチになる話
  • スライム達に餌付けする話
  • スライムナイトと出会う話
  • ゲモンに師事する話
  • メルトアとガチバトルする話
  • メタルスライムと仲良くなる話
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