まちカド暗黒神   作:伝説の超三毛猫

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明けましておめでとうございます。もう片方の連載を執筆していたら、こっちが遅くなりました。これも単行本が買えなかった作者が悪いんだよ。

―――でも、もう大丈夫! 買った!!!
が、早速いくつか矛盾を見つけてしまった……これ以上事故らないように書いてくしかない!


今回のあらすじ

青色魔法少女があらわれた!
しゃべるインコがあらわれた!


※2020-4-13:あらすじを追記しました。


青色再び!? クロウと不二のジャハガロス会談!……このインコ、殺害予告しかしねぇじゃねえか!

 ある日の朝の事。

 いつも通りの休み時間、スマホの電源を入れると、()()()()()()R()I()N()E()がそこにはあった。

 

『ラプソーンの配下について、聞きたい事があるんだ。うちのゴミ先祖に知られるのも厄介だから、直接会って話がしたい』

『お返事が遅くなってしまい申し訳ございません。

 話したい事について、理解致しました。ラプソーンの目に付くかもしれないRINEで話しづらいとのことでしたら、今週の土曜日我が家付近の喫茶店でお会いするのはいかがでしょうか? それなら、お母様や召使いたちに迷惑はかかりませんわ!』

 

 千代田やミカンが絶対に使わなそうな言葉遣いの返信に目を白黒させつつ、トーク相手の欄を見てみると、そこには『不二実里』と書かれていた。

 

 何度も何度も見返した。

 え、不二実里って、俺が暗黒神の子孫になって多魔市に来て間もない頃に、命を狙おうとしてきた魔法少女だよね? なんでこう、友達感覚で返信が来てんの!?

 あの襲撃以降、メアドの交換こそしたものの、メッセなど送ったことがない。

 

 

 確かに今日の朝、「うちのゴミ先祖の前じゃ話しづらいことだから直接聞きたい」という主旨の文をこのアプリで打って送ったのは、履歴から見れば明らかだ。

 ただ……

 

「千代田に送ったつもりだったんだけどなぁ……」

 

 俺は寝起きがよくない。ゴミ先祖に見つからないように朝早くに起きてメールをしたはいいものの、肝心の送る相手を間違えたに違いない。きっとそうだ。

 マズいな。不二の家ってどこだっけ? 俺の素性の都合上、せいいき桜ヶ丘から離れるのは良くないと思うんだけど……仕方ない。「RINEを送る相手を間違えた。申し訳ない」って断りのメールを入れて……

 

 と、思った時にスマホが新しい通知を受信した。開くとそこには……

 

『こちらのお店に貸し切りでご予約いたしましたわ。わたくしのお気に入りの喫茶店ですの。ホームページのURLとマップを添付しますのでご確認くださいね。』

 

 ……と追い打ちとURLが書かれていた。

 ―――ってアホか! ()()()()()()()()だと!? どんだけブルジョワなんだよ不二実里ッ!!

 非常にヤバい。これは超断りづらい。貸し切りのキャンセル料なんて、馴染みがなさすぎてまったく想像できないから怖い。

 

 誰に相談すればいいんだ、この状況!?

 シャミ子? 金銭的な意味でこんなモノ見せられない。

 ミカン? 超気まずい。不二に一回負けたし、俺も戦ったから相談できやしない。したら魔法少女の立場で反対されるに決まっている。同じ理由で千代田もナシ。

 ゴミ先祖? いや、これはもともとゴミ先祖には秘密での相談事だ。メールが見つかったらついていきたがるに決まってる。

 佐田や小倉は論外だ。佐田とはあんまり話せてないし、小倉は聞きもしないだろう。

 他の男子も望み薄だな。俺は学校ではミカンと付き合ってる上に何股もかけてるだの好き放題言われている。このメールが見つかろうものなら、他校にも女を作ったと騒ぐに違いない。

 

 最悪だ。誰に見せても地獄絵図じゃねえか。

 一体どうしたものか、と頭を悩ませていると。

 

「…クロ、そのメールなに?」

 

 呆気なく、一番相談しづらい人にメールが見つかってしまった。

 

 

 

 ミカンに不二からのメールが見つかった俺は、話さなければちぎなげするというミカンの脅しに負け、観念して話すことになった。気分は取り調べを受ける犯罪者のそれであった。

 何故か同じクラスの佐田やシャミ子だけでなく、千代田や小倉も同伴で、俺の取り調べに参加している。その結果、俺の悩み事が見事全員にバレた。

 

「つまり……間違ってメールを送っちゃった上に引くに引けない状況になったと言いたいワケ?」

 

「あ、あぁ……千代田にジャハガロスの事を尋ねるつもりだったのに……」

 

「まぁ、確かにその、不二さん?に悪いもんね、断るの。それにしても喫茶店を貸し切りなんてね……」

 

「はわわわ………金持ちです、かねもち魔法少女です……」

 

 佐田は思ったよりも親身に聞いてくれ、シャミ子は案の定不二のブルジョワ具合に震え上がっている。貧乏まぞくでゆきだるまぞくらしいからそこら辺の価値観がまるまる違うのだろう。とりあえずシャミ子、震えるのをやめてくれ。俺は千代田に裁かれたくない……〆鯖(シメサバ)のように。

 

 で、肝心のミカンはというと……

 

「………ふーーん……」

 

 完全に拗ねていた。

 

「ご、ごめんって。だってよ、俺だって不二に送ったとは思ってなかったんだ。てっきり千代田に送ったとばっかし……」

 

「すぐに確認すれば良かったじゃない」

 

「うっ!」

 

 全くもってその通りな反論に二の句がつげられず、黙ってしまう。

 

「……でも、逆に都合良くない?」

 

「千代田?」

 

「私、あんまりラプソーンには詳しくないし、神原くんが私に尋ねようとしたってことは、ミカンに聞いた後だからでしょ? ジャハガロスのこと」

 

「桃……それは、そうだけど……」

 

「…ってことは、残る魔法少女でジャハガロスのことを知ってる可能性があり、連絡取れるのは実里さんだけって事にならない?」

 

 ラプソーンの幹部には二人のまぞくがいた。それぞれ、ゲモンとジャハガロスという。ゲモンの方は闇の世界にて顕在であるとラプソーン本人から聞いた。ジャハガロスの所在は上司(ラプソーン)すらも分からない状態だ。

 

 だから俺は、千代田の言うとおりまずミカンにその事について訊いてみたのだ。結果は空振り。だから次は、千代田にメッセを送ろうとした。それが、今回の件の発端である。

 

「でも、危険よ! 一度はクロの命を狙った魔法少女じゃない!」

 

「分かってる。でも、あの一件で二人で説得したでしょ? あの人も、一応は分かってくれた。」

 

 ミカンの言うことはもっともだ。俺も、未だに不二が苦手である。俺は知らないけど、千代田とミカンが説得したとはいえ、かなり不安だ。

 

「だから―――喫茶店の件は、悪いけどキャンセルしてもらって、こっちに来てもらおう」

「そうね。そうしましょう。」

 

「「!?!?!?」」

 

 千代田が言い出し、ミカンが賛同した割とトンデモな提案に、俺とシャミ子があまりの驚愕に席を立った。

 

「もっ、も、桃っ、い、いくらかねもち魔法少女でもそれはとんでもなく勿体ない気がします……!!」

 

「そっ、そ、そうだぜ、千代田……大体、その手の店って…キャンセル料、ウン千万はするんじゃあねーのか………!!?」

 

「二人してそこに引っかからなくても良くない……?」

 

 

 そう言いながら千代田は俺のスマホを奪い取り、メッセージを打っていく。そして、待つこと数分。千代田が見せてきた画面には……

 

『申し訳ございません、気が回らなくて。そういう事でしたら、わたくしがそちらに向かいますわね。』

 

 ―――と、書かれていた。

 

「こ……コイツ、貸し切った店を簡単にキャンセルしやがった………」

 

 どこまでブルジョワなんだよ、この人……

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 待ち合わせた場所は、ショッピングセンターマルマにある、フードコート前だ。せいいき桜ヶ丘駅から歩いて1、2分程の所にあるこのショッピングセンターは、今日もまた、多くの人で賑わっている。

 

 今日はあの不二に間違い連絡を行った日から数日後の、約束の日である。俺は、フードコート前で不二を待っている。

 

 ゴミ先祖は、千代田の家のミカンに預けた。本人は文句を言っていたが、ミカンがナビゲーターであるカエルのミカエルを呼び出し、杖とじゃれさせると数分で簡単に意志を曲げた。なんでも、ミカエルは触ると死ぬ毒を皮膚に持っているという。それが杖を通してゴミ先祖の魂に染み込んだらしく、死ぬ程の痛みをじゃれてる間味わい続けたのだそうだ。

 ミカンのナビゲーターはこの時初めて見たが、千代田のメタ子みたいなのを想像していただけあり、かなり衝撃的だった。

 

 千代田やミカンが、俺と不二が二人きりで会うことについて心配してくれたが、大丈夫だ。あの時の俺の言葉がちゃんと届いていると思うし、千代田やミカンも話しているらしい。

 

 

「何より、あいつは千代田やミカン達ともう一度事を構えようとする程バカには見えないんだよな。」

 

 そう。

 この街の人達は、ひと癖もふた癖もある連中ばかりだ。

 魔法少女の千代田やミカンみたいな強い人達がいる。

 佐田やシャミ子みたいな優しい人達がいる。

 ……まぁ、稀に小倉みたいなヤベー……じゃない、おかしな人もいるけど。

 とにかく、みんな穏やかでスルー力のある人ばかりだ。

 そんな街中で、どうしてピリピリできようか。

 

 ここ、多魔市せいいき桜ヶ丘は、まぞくと魔法少女の戦いから外れた中立地帯だと、千代田から少し聞いた。それが、ここの人達だけでなく、引っ越してきた俺やミカンにも影響を与えているのだとしたら。

 

「ここに一度来た不二はこの街がどういう場所かを知ったとは思うんだけど―――」

 

「わるまぞく……貴様を殺す…!」

 

「――っ!!!?」

 

 いきなり、右後ろから恐ろしい声が聞こえた。

 声から推測するに、30代半ばくらいの男。

 突然の殺害予告に、背筋が凍り、息を呑む。

 

 振り向いて声の正体を確かめてみても、そこには()()()()()

 

「貴様を殺す……! 貴様を殺す……!!」

 

「なっ! 誰もいない所から声だと…!?」

 

 ま、まさか、姿を消す力を持った誰かが、俺の命を狙っているというのか!?

 俺自身が命を狙われる心当たりが一応あるから、余計疑心暗鬼を生む。それとも、実は精神的に疲れていて、さっきの殺害予告もその疲労が生んだ幻聴とか……

 

 

「わるまぞく……貴様を殺すッ……!!」

 

「わああああーーーーーーーーッ!!? やっぱり幻聴じゃあないィィーーーーッ!!!」

 

「こら! ラファエル! また人様を怖がらせて!!」

 

 テキトーな現実逃避が無駄だと気づき、謎の声に恐怖に慄いた時、凛とし透き通る声が誰かを諌める。

 声の主は、整った顔つきに白を基調とし、水色と紫を上品にコーディネートされたワンピースを着た少女だった。彼女の特徴的な青いロングヘアに見覚えがあった。

 

「ふ、不二……なのか…?」

 

「申し訳ございません。わたくしのナビゲーターがまたご迷惑をおかけしましたようで………」

 

「な、ナビゲーター…?」

 

「セキセイインコなのですが………わたくしの荷物に紛れ込んでしまったみたいなんです……」

 

「ど、どゆこと?」

 

 状況が理解できずにいると、不二の肩に飛んでいた一羽のインコが止まった。青と白のセキセイインコで、そいつは俺と目が会うと……

 

「貴様を殺す……! 貴様を殺す……!!」

 

 丸いクチバシから、さっきの殺害宣言を言い放った。メタ子とは別ベクトルのイケボだった。

 

「ナビゲーターのラファエルです。…普段は『貴様を殺す』しか言いませんが、根は良い子なんですよ」

 

 いや不二さんよ。そのどストレートに物騒な口癖の鳥をなんでナビゲーターにしたんや。マジで。

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

 フードコートに不二のナビゲーター(インコ)を連れ込んでも大丈夫かと少し心配になりながら入るが、案外誰も指摘しない。まるで誰もラファエルに気づいていないかのようにいつも通りに振る舞っている。まぁ、まぞくや魔法少女に対してもスルーすることの多いここの住人なら、インコ一羽くらい今更なのかもしれないけど。

 ラファエルもラファエルで、さっきから不二の肩に止まったままだ。

 

「飛び回ったりしないんだな」

 

「ラファエルは賢い子です。時と場合を(わきま)えて飛ばなければ、迷惑にもなるし自分の体力を浪費するだけと学習していますの」

 

「ふーん……学習するんだな、インコって」

 

「…貴様を殺す」

 

「ごめんなさいラファエル」

 

「ちょっ!? あ、謝らないで下さいまし! 土下座はおやめになって!?」

 

「……怒ってないのか?」

 

「ラファエルは好奇心は旺盛ですが分別のつく穏やかな子ですわ! 今だって、久しぶりに外に出れて喜んでますのよ!」

 

「貴様を殺す……! 貴様を殺す……!!」

 

「……………………………ほんとか?」

 

 俺には、どうも不倶戴天の敵に地雷を踏まれて静かに、しかしマリアナ海溝よりも深く怒っているようにしか見えない。「貴様を殺す」しか言わないからだろうか?

 

 そんなラファエルを肩に止めた不二は、天ぷらうどんを注文し、カツ丼を頼んだ俺の向かいの席に座って、麺をすすり始める。ブルジョワではこういう所には行かないだろうから、口に合うかどうか心配だったが、目を見開いて彼女は唸った。

 

「美味しい……!」

 

「マジか。不二はこういうとこ行かないだろうから口に合うか分からなかったんだ」

 

「行きつけのお店やウチの料理人の料理も大好きですが、こういったリーズナブルな食堂も料理のクオリティが上がっていて美味しいのですわ。

 ……ところで神原さん、その手に持っているのは?」

 

「マイマヨネーズだよ。いつもコレをかけて食べるんだ」

 

「………………変わった食べ方をなさいますのね」

 

「………ラファエルには負けるよ」

 

 生まれてこの方、あらゆる食べ物にマヨネーズをかけて食べてきた。なぜかそのせいで両親や親族、ミカンやミカンの両親、千代田やシャミ子、最近では佐田にまで味覚を酷評されてきたが、流石にラファエルのリンゴの食べ方には敵わない自覚はある。

 カットされたリンゴを、「紅玉リンゴ、貴様を殺す……!」と言いながらスタイリッシュにしゃくしゃく食べるインコなんて絶対面白いに決まってるだろうが。この絵面より面白い食事シーンなど、世界中どこを探しても見つからないだろう。

 

 

「……それで、本日はわたくしにどういったお話なのでしょうか? ラプソーンの配下のお話と聞きましたが……?」

 

 うどんを大方食べ終わった不二が、ラファエルがリンゴを食べ終わった頃を見計らって本題の話を振ってきた。

 切っ掛けは送信相手間違いだったとはいえ、呼び寄せたのは俺だ。相応の礼儀として真面目に話を始めよう。

 

「その通りだ。今日、不二を呼んだのは、その件について聞きたい事があったからだ。」

 

 箸を置き、マイマヨネーズをしまい、両手をテーブルの上で組んで真っすぐ不二を見据える。湧き上がる緊張を深呼吸で紛らわせたあと、言葉を続けた。

 

「ラプソーンの幹部のひとり、ジャハガロスの所在を知っていたら教えてほしい」

 

 単刀直入の頼み。この謎を解く鍵を持っているのは、現段階でおそらく不二だけだ。

 不二は祖先にラプソーンを封印した魔法少女がいて、強く、家のこともよく知っている。ミカンも千代田も知らなかった以上、ジャハガロスについて訊くことができるのは、もう不二しかいないのだ。

 

「……どうして、その質問を今ここで? あなたのご友人に魔法少女が二人もいらっしゃるではありませんか。それに、ラプソーンはどうなさったのですか?」

 

「二人はこの件については何も知らなかった。あと、ゴミ先祖は置いてきた。情報を悪用されると思ったからだ」

 

「……本当にそれだけですの?」

 

 その言葉に少し、間が空いてしまう。が、(やま)しい事ではない。理由はラプソーンが悪用する危険性を防ぐことだけではない。ただ、ちょっと不二には言いづらい事なのだ。

 でも―――言わなければならない。

 

「信じてもらう、ためだ。」

 

「信じてもらう……?」

 

「今の俺は、変身ができない。戦うことも、河原で不二を吹き飛ばしたあの魔法を使うこともできない。その気になれば、お前がいつでも殺せる状態だ」

 

「!!」

 

「俺は、俺の祖先の事情を全く知らない。なにせ数ヶ月前に魔族になったばかりのひよっこだ。だから、色々知るべきだと思ったんだ。そうすれば、何が危険か、どうすれば安全かが分かるから。

 ゴミ先祖本人から聞くにも限界があるし、情報が偏る。それで、不二に尋ねた時に、本人がいると信じてもらえねぇかもしれないだろ?

 これは礼儀だ、不二。相手に信じて貰うために先にこちらから誠意を見せる……そういう当たり前のことだ。

 

 ―――もし、これでも信用できないんなら、俺を暗殺するなりすればいい」

 

 そこで俺の意志を締めくくると、不二は真剣な表情で黙ったまま、時が流れていく。ラファエルもまた、ときおり頭をかくだけで、何も言おうとしない。空気を読んだのだろうか?

 そうして、永遠にも感じる沈黙の時間が流れ続け、重い雰囲気になりつつあった時、不二が沈黙を破った。

 

 

「―――神原さん。あなたの覚悟と誠意は十分伝わりましたわ。

 ただ、わたくし達魔法少女は、魔族を狩るべき存在。本来ならば、ここで丸腰の魔族を斬るべきなのですが……

 

 ―――しかし、あなたには借りがございます。魔族に借りを持ったままでは、魔法少女の名が廃りますわ。」

 

「!!」

 

 

「わたくしは、あなたを黙認し、知恵をお貸しすることに致します。これで、貸し借りナシですわ」

 

「ありがとう」

 

 頭を下げる。

 不二は少し厳しめな言葉とは裏腹に、穏やかな表情を保ったまま、俺の行動を止めるでもなく、ただ見届けていた。感謝を受け取った、ということだろうな。

 

「ですが! もしあなたが悪の道に進もうとするならば、わたくしは全力をもってあなたをシバき倒しますわよ!!」

 

「貴様を殺す……!」

「ですわ!」

 

「息ピッタリだな」

 

 結構厳格なことを言われたはずなのに、ナビゲーターとの完璧なコンビネーションを見せつけられて、思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「とにかく、不二に信じてもらえるように頑張るよ、俺」

 

「え、ええ………でも……信頼を得ようとしているのはお互い様です。わたくしも、千代田さんや陽夏木さんからあまり信用されていないようですから。

 ……話が逸れましたわね。ジャハガロスのことでしたか」

 

 そうだった。不二に信じてもらうことに精一杯で、言われなければ忘れるところだった。

 

「ジャハガロスは、わたくしの祖先を含めた賢者達が最後に封印したとされております」

 

「ほんとか!?」

 

 良かった。配下の一人であるゲス野郎・ゲモンは健在と聞いて、もう片方の配下にして忠誠心やべーやつたるジャハガロスも健在だったらどうしようと思ってたところだ。封印されててよかった。

 

「ええ。ラプソーンを封印したのち、ジャハガロスの捨て身の侵攻に対して最後の力を振り絞り、封印したとわたくしの家には伝わっておりますわ。正確な場所や封印方法までは伝わっておりませんが……」

 

「きっと、封印を解かせないように当代だけの秘密にしたんじゃないか?」

 

「おそらくそうだと思います」

 

 不二は、さっき言ってた『借り』を返すかのように快く答えてくれる。というか、『借り』に心当たりがないんだけど。初めて会って戦った時くらいにしか……

 まぁいい。それは後で聞こう。

 

「そうだったのか。俺の家にはラプソーン関連の言い伝えなんて皆無だったから、助かったよ。」

 

「神原さんはご両親からなにも聞いておりませんの?」

 

「何にも聞いてないんだよ。ウチの両親は年末年始以外は外国にいるし、オカルトなんて信じない人達だからな。特に母親が」

 

「どちらの国にお勤めか尋ねても?」

 

「……わからねーんだよ。この前『今ブラジルにいる』って手紙がカナダから届いてな。同封されてた荷物にはタイムズスクエアをバックに撮った夫婦写真と大量のチョリソーとマトリョーシカ、あと四川(しせん)の唐辛子の数々が入ってたんだぜ?」

 

「えぇ………」

 

「それでキレそうになって『今どこにいんだ』ってRINEで訊いたら『マドリードにいる』って写真付きで返信されてさ。国際電話で訊いたら『トルコでドンドゥルマ*1を食ってた』ときたもんだ。」

 

「それはそれは………」

 

「もう諦めたね、どこにいるか聞くのは。……年末帰ってきたら絶対説教してやる…」

 

 ぶっちゃけ、息子が引っ越し、先祖返りした上に命を狙われたというのに、心配こそすれ戻って来ない両親も両親だと思う。

 帰ってきたら地味にキツい呪文でもかけてやろうかな。何かこう、嫌がらせ程度の呪文みたいなの、ないのかな。ちょっとした冷風の呪文とか、オナラを出させる呪文とか、顎がしゃくれる呪文とか。

 

「………あの、ご両親にはほどほどにしておいてくださいまし?」

 

「……ん、そんな顔してたか?」

 

「ええ。わる魔族の悪巧みする顔そのものでした」

 

「………こ、殺される……コロッケのように……」

 

「そんな事しませんわよ!?」

 

 この後、食べ終わった食器を返して、つつがなく会談は終わった。取り敢えず、生還する事ができて、すごくホッとした。

 

「今日はありがとうな、不二」

 

「こちらこそ、誘ってくださりありがとうございました。あ、あと、最後になるのですが――――――」

 

「???」

 

 

 

◇  ◆  ◇

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりー」

「おかえり、クロ」

『ようやく帰ってきたか、クロウ!! 我、もう死ぬかと思ったぞ!!』

 

 ゴミ先祖の回収に千代田の家に顔を出せば、相変わらず杖が泣きそうな声をあげながらミカエルに弄ばれていた。もう大丈夫だとミカエルにひとこと言うと、ミカエルは「あばよー」と姿を消した。触ると死ぬから、ミカンも大変なナビゲーターを持ったなぁと思ったが、姿のオンオフが自在ならそんなに不便じゃないのかもとも思う。

 

 それよりも。俺は、不二と最後に交わした会話が気になっていた。

 

 

 

 

 

 

『神原さん、身内に魔法少女がいらっしゃったりしますか?』

『は? ……おいおい不二、俺は暗黒神の後継だぜ? 闇の一族に近しいものは感じても、光の魔法少女の力なんて感じやしないだろ』

『わたくしもそう思うのですが……爆発を受けたあの時、なにか強大な力を感じたのです。なんというか……魂に魔法少女の力の名残がある、というか。そんな感覚を覚えたのです』

 

 不二の言うことに違和感を覚えた俺は、一応両親の名前を教えておいたのだ。すると―――

 

『念の為、ご両親のお名前を伺っても?』

『あ、あぁ。父は神原騎一(かんばらきいち)。母は玲奈(れいな)という』

『神原、玲奈………!? 失礼ですが、お母上の旧姓は!!?』

『ウチは父さんが改姓した珍しい家庭なんだよ。旧姓は……「入魔(いるま)」だったかな…』

『………!!!』

『……? 不二、どうした?』

『実は―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

「千代田、ミカン、あと………ご先祖。ちょっといいか?」

 

「なに?」

「どうしたの?」

『なんだクロウよ。改まった態度をして』

 

 不二は、間違いなくこう言ったのだ。

 

神原(かんばら)玲奈(れいな)は、わたくしの知る中で最強の()()()()ですわ。神鳥レティスに功績を認められるほどの……。』

 

 

 俺は、もしかしたら。

 

 

「今から母さんに電話をかける。それに立ち会ってくれないか?」

 

 

「? いいけど……」

「え? なに、どういうこと?」

『もう少し伝わるように説明しろ』

 

「すぐに分かる」

 

プルルルル……

 

『あら、黒男? どうかしたのかしら。お母さんが恋しくなった?』

 

「母さん。………今からする質問に正直に答えてくれ。

 

 ―――神鳥レティスに認められた魔法少女・神原玲奈は、母さんで間違いないか?」

 

「「『!!!!!!?』」」

 

 

 

 

 自分の両親が何者かすらも、知らないまま生きてきたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がんばれクロウ! 灯台下暗しとは、よく言ったものだ! 注意深く観察し、真実を暴くんだ!

*1
トルコで作られるアイスクリーム。砂糖、羊乳、サーレップ(トルコに自生する塊根を乾燥させて砕いた粉)で作るため、他のアイスよりよく伸び、溶けにくい




オリジナル&ゲストキャラ紹介

神原クロウ
マヨラー設定とビビリ設定を強くしたオリ主。ジャハガロスだけでなく、母親についての情報も得てしまい、ちょっとした混乱状態。

不二実里
クロウと会った魔法少女。クロウの誠意と覚悟を受け、借りを返す形でクロウに協力する事に。魔法少女・神原玲奈と神鳥レティスを知っている様だが……? イメージCVは井○麻里○さん。

ラファエル
不二実里の魔法少女ナビゲーター。青と白のセキセイインコで、『貴様を殺す』しか言わない。リンゴ(特に紅玉)が好物。しかし『貴様を殺す』しか言わない。不二本人以上にキャラを濃くしてしまった感はある。イメージCVは梶○貴さん。

神原玲奈(れいな)
ついに名前が明らかになったクロウの母親。不二との会談の結果、魔法少女疑惑が浮かび上がる。それも超弩級の。一話から、クロウ曰く『オカルトは信じない』人だというが……?

神鳥レティス
ドラゴンクエストⅧに登場する、伝説の大陸【レティシア】に住まう神鳥。藤色の大鷲の姿をした巨大な鳥で、性別はメス。「神鳥」は人々がつけたあだ名。厳密には神ではないが、暗黒神ラプソーンを七賢者と共に封印する程強い。が、ラプソーン封印で力を使い果たした結果闇の世界に取り残され、ゲモンに卵を人質に取られてやむなく街を襲っていた。
その実結構な腕白さんで、「主人公たちの力を試す」と言いながらかなり本気で殺しに来たり、神鳥の巣へ主人公たちを移動させる際は馬車を鷲掴みにしたりする。
かつては、別の名前で呼ばれていたらしいが……?
拙作では、どこまでまちカドにトレース出来るかは検討中。

拙作で一番好きなオリジナルorゲストキャラは?

  • 神原クロウ
  • ラプソーン
  • 不二実里
  • ラファエル
  • 神原玲奈
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