今回のあらすじ
さまようたましいがあらわれた!
※2020-4-13:あらすじを追記しました。
花の形にえぐれた倉庫の壁を観察していたシャミ子が、えぐれた形が桜の花ではないかと言ったことで、桜さん捜査が一歩進展した。
ミカン曰く千代田桜さんの大技『サクラメントキャノン』という、火力高めな極太レーザーが放たれた跡ではないかという。ついでに「フレッシュピーチハートシャワー」についても話そうとしていたが、千代田に黙らせられた。……名前からして千代田の技か?
「つまり…これは桜さんの失踪直前の痕跡……」
「倉庫を調べよう。大したものが見つかるとは思わないけど………一番ベストなのはコアが見つかること」
シャミ子はまじまじと倉庫跡を見ており、千代田が調べる場所を決めた。なんか初めて聞くワードが出てきたな。
「コアってなんだ?」
「魔法少女にはコアがあって、魔力が散らされてもコアだけは残るのよ」
俺の質問にミカンが答える。
つまり、コアっていうのは魔法少女の心臓みたいなものだろうか。
「コアってどんな形なんですか?」
「わからない……その人の心の形による」
「形が分からないものを探すんですか…………道に転がる軍手やセミさんみたいな形だったらどうしよう」
「そういう脈絡のない形は取らない。魔法っぽい形になる……はずだから」
流石にセミや軍手はないと思うが、脈絡さえあればどんな形でもありうる、となるとコア探しは難航しそうだな。
ちなみに、この時に「セミや軍手に脈絡のある魔法少女って……」とセミデザインの魔法少女や軍手が似合う魔法少女をちょっと想像してしまったのは内緒だ。
俺たち四人は、倉庫跡でコアを探し始めた。
シャミ子やミカンは桜型に穴が空いた壁の周辺を、俺は倉庫の外壁があったであろう草むらを、千代田は埋まっていた大岩を掘ってそれぞれ探すが、魔法少女のコアと思わしきものはおろか、倉庫跡には不自然なものなどどこからも見つからず、思った通りに難航していた。
というか千代田は明らかに同年代の少女だと持てない岩を軽々と持ち上げてるけどそれは魔法少女として正しいのか?
「………? なぁゴミ先祖、あれ……」
『なんだクロウ。一体何を見つけ……!』
そう思いながらコアを探す作業に戻ろうとした時、何かが視界に入ったのだ。
背の高い草が生えっぱなしになっている―――その奥。チラッと、石製の何かが見えた。邪魔な草をかきわけると、その先にあったものは……
「………これは……祠、なのか?」
それは、いったい何を祀っているんだ、子供のお遊びで作ったものなんじゃあないかと思えるほどに、小さな祠だった。CDケースと同じくらいの大きさしかない、立方体の家っぽい何かに、小さな木枠の鏡と盃が入っているだけの、小さなものだ。それが、よく探さないと見落としそうな場所にぽつんと置いてあった。
『あぁ、そうだなクロウ。コレは祠だ』
「え、ただのオモチャじゃなくて?」
『信仰の証だ。神たる我なら分かる。何を祀っているかは知らんがな。』
うーん……コレに桜さんの手がかりがあるとは思えないけど……念のためだ。
祀られてる神様には悪いが、千代田やミカンに見せてみよう。もしかしたら何か分かるかもしれない。
「じゃ、コレを持ってって見せてみると―――」
『……ッ!! クロウ、ちょっと待て!!!』
「え?」
ゴミ先祖が鋭い声で警告を出したのと俺が祠(仮)に近づくために一歩踏み出したのはほぼ同時で。
踏みしめた瞬間―――まるで映像が切り替わったかのように、周囲の景色が一変した。
「なっ………!!? こ、これは……」
『クロウ、待てと言ったはずだぞ!!』
さっきまで工場の隅の草むらにいたはずなのに、草などひとつも生えていない紫色の空間に、俺はいた。
あまりに突然の出来事に、俺はただ、目の前で起こったことが把握しきれずに、ただきょろきょろするばかりだった。
「悪い、ご先祖………俺、もう既に何かかけられたか…!?」
『いや……今は閉じ込められただけだな。見ろ』
真剣な声色に切り替わったご先祖が杖で指した方向を見れば、そこにはさっき見つけた小さな祠だけが、変化する前の景色と同じようにポツンと置いてあった。
「……さっきのオモチャ……!」
『否、人ひとりと杖一振りを閉じ込める芸当が出来る玩具など存在しない。アレはれっきとした祠だったのだ。おそらく、アレに何か仕掛けられていたな……!
―――気を引き締めろクロウ、
ご先祖にそう言われ、祠のほうをじっと見つめていると、青い霧のようなものが現れ、一か所に集まりだした。
一か所に集まったソレは、青い炎の……人魂、と呼ばれるものの形を成すと、不気味な目と口を作り、ノイズの混じった声でこう言ってきた。
『許サヌ……光ノ巫女……許サヌ………巫女ニ与スル者ドモ……!』
「……あいつは…? 『
『襲ってくるぞ! 変身して迎撃しろ!』
ご先祖がそう言うやいなや、人魂がこっちに向かって突進してきた。
「っ……! “トランスフォーム”……ぐあっ!?」
間一髪、変身が間に合ったものの、人魂の突撃から身を守ることができず、そのまま吹き飛ばされてしまった。
『クロウ!?』
「大丈夫……なぜか痛くない、から………」
『攻撃力については不二実里よりも低いからだな。変身が間にあったのもあるだろうが』
ダメージはなかったが、全くもって安心できない。
いきなり訳のわからない空間に閉じ込められた上に「光の巫女許さぬ」みたいな恨み言をつぶやく人魂が目の前にいるから。とっとと帰りたい。
『許サヌ……光ノ巫女……許サヌ………巫女ニ与スル者ドモ……!』
俺に体当たりのダメージがないと分かると、人魂は光の巫女への恨み言を呟きながら、今度はオレンジ色の炎を生成し、こちらへ放ってくる!
「一体何者なんだコイツ!? うぉあっちィ!?」
『炎の呪文だ! まともに喰らえば熱いぞ!』
「だろうな、掠っただけで焦げるかと思ったもん!!」
『落ち着くのだクロウ! 熱いが死にはしない! 冷静にかわすのだ!』
変身して上がったであろう身体能力で炎の群れをかわしていく。だが、俺だって黙って攻撃されっぱなしじゃあないんだよ!
魔法なら俺も使えるんだ。咄嗟の事だったが、不二と戦った時に、彼女を吹き飛ばした魔法。人魂の炎なんざとは比べ物にならない威力のアレならば、絶対に勝てる!
「くらえ人魂! “
『待て馬鹿者!!』
しかし、人魂に杖を向け、詠唱しようとしたところでご先祖がおでこに向かって飛んできた。
「痛い!!?」
あまりに突然の、しかも意識外からの衝撃で思わず詠唱がキャンセルされる。
「何すんだご先祖!?」
『クロウお前、あの人魂と共に自分まで吹き飛ばすつもりか!?』
「!!」
『
だが、そのぶん攻撃範囲も広い! こんな狭いところで使ったら、むしろ己の首を締めてしまう!』
「そ、それもそうか………っと!!」
人魂の炎を避けつつ、ご先祖の話を聞いて不二戦を思い出す。確かに、あの呪文を使った後、多魔川の河原一帯が焼け焦げていたな。
いきなり謎な空間に飛ばされたからか、冷静になれば分かることが思いつかなかった。
「じゃあ、不二と戦ったタイミングでいきなりあの呪文を俺に教えたのは……」
『後継者を守るための応急処置だ。クロウの潜在能力を利用した一種の裏技と言ってもいい。本来なら魔力を飛ばす訓練からすべきだったのだが………お前が頑なに我が後継になろうとしなかったからな。』
「お、おう……」
なんか、「暗黒神の後継として修行をしなかったお前のせいだ」と暗に言われてしまった。でもそれは、世界の宿敵の道を進むことにもなりそうだからやらなかった訳であってだな……
『まぁよい。魔力であの人魂を退治するのだ!』
「ま、魔力で退治!? ……えーと、普通に杖で殴っちゃ駄目?」
『それは我が痛いから却下!』
「私情かよ!」
魔力を出して攻撃、か。確かに杖で殴るのは違う気がするし、基本的っぽいから早く知りたい、が。
『許サヌ……光ノ巫女……! 許サヌ………巫女ニ与スル者ドモォ……!!』
「おいご先祖! アイツの様子がおかしいぞ!?」
『マズいな……あの人魂、暴走寸前だったのやもしれん……!!』
「暴走寸前!!?」
『我らが見つけなければ無差別に人を襲う怨霊になっていただろうな……! 地味に弱かったしおそらく死者の魂だったから今まで魔法少女に見つからなかったのだ!』
思った以上に目の前の人魂が深刻な事になっていた。無差別に人を襲う怨霊に進化する直前の人魂だって? 勘弁してほしい。
「……で、魔力で攻撃ってどうやるの!?」
『己の魔力解放のキーワードがある! それを叫ぶのだ! 「イオナズン」とか「フレッシュピーチハートシャワー」とか「サクラメントキャノン」とか!!』
「それなんて厨ニ発表会!!?」
い、イヤすぎる。だが、目の前で荒ぶっている人魂が、何かをため続けているのが気になる。早く成功させなければ、ヤバい事になるかもしれない。
魔力解放のキーワード……魔法少女達の必殺技の名前からして、暗黒神らしき技名をこの場で考えろってことか……? なんて無茶振りだ! だが、やってやる!!
「え、え〜と…
だ、ダークネス・バレット!!!」
杖を人魂に向けて、即興で思いついた技名を叫ぶ。
…………
…………
…………
………しかしなにもおこらなかった。
―――って!!
「何も出ねーじゃねーか殴るぞゴミ先祖ぉぉぉおおおお!!」
『ま、待て待て待て待て!!? 今我を折るのはダメだと思うぞ!!』
「誰のせいだと思ってんだぁぁぁぁ!!!」
暗黒神なら、それっぽい事を言って、厨ニのセンスを見ようとか考えてそうだ。後継者の危機だってのに、それはないと思うんですけど。
『クロウ! 我はさっき「魔力解放のキーワード」と言ったのだ、技名とは言ってない!!』
「はぁ?」
『思いついた文言なら何でもいい! 一番重要なのは心の資質とそれを本心から思っているかという事だ!!』
「心の資質と本心………」
『時間がない! 早く何か言え!』
ご先祖の言葉を反芻する。
人魂の方を見ると、複数の紅い炎が、今にも襲いかからんとしているかのように人魂の周囲を浮遊していた。
焦りはある。でも、嫌な気持ちはなくなっていた。
心の資質と本心、か。
「マヨネーズうまい!
両親の日本にいる期間が短い!
右手が地味に目立つ!
ゴミ先祖が日常的にウザい!
暗黒神の座なんて継ぎたくない!!
平穏に暮らしたい!!!」
『クロウ!?!?』
ご先祖の言うとおり、思いついた文言を片っ端から言っていく。断っておくが、決してふざけている訳ではない。
だが、ここまでしても杖から何かが出てくる気配はない。
このままじゃマズい、と思った時。
『み、かん………?』
脳裏をよぎったのは、ミカンが不二に吹き飛ばされ、気絶した時の姿。俺が無力だったばかりに、彼女を傷つけてしまったあの戦い。魔法少女の圧倒的な強さを前に、俺が―――何を考えたか。
「――――――俺は、」
杖に紫色の光が集う。
そして、思ったことをそのまま―――
「ミカンを…友達を守れるくらい強くなるんだーーーッ!!!」
口にした。
紫色の光は、バチバチっと紫電のように迸り、まっすぐ人魂へ飛んでいき、炎の数々を飲み込んで。
『グワアアアアアアアアアアアアアッ!!?』
―――人魂に炸裂した。
「で……出た……!」
『……やればできるではないか…!』
暴走する人魂をこれで止められればいいんだけど……
「だ、大丈夫、かな…? いま、結構デカいのが飛んでったよね? ……殺しちゃってない?」
『落ち着けクロウ。人魂というのは死んでいるものだ』
煙が晴れると、青い炎の人魂は手のひらサイズともいうべきレベルに小さくなっていた。
近づいてみても、害意は感じ取れない。むしろ、風前の灯火という言葉そのものとでもいうかのように、それは弱々しく揺らめいていた。
『コンナ、トコロデ、私ハ…………』
「こいつ……なんで『光の巫女』とやらを……魔法少女を憎んでいたんだ……?」
『魔法少女というものは闇の一族や闇の世界の者から恨まれて当然の存在だぞ』
ラプソーンが人魂が怨霊になりつつあった人魂にそう言うが、俺が聞きたかったのはそういう問題じゃあない。もっとこう、内面的というか、具体的というか…そういう所を知りたいんだけどなぁ。
『モウシワケ、ゴザイマセ……ラ…ソーン……様……………』
「はああっ!!!?」
コイツ、今なんつった!!?
俺の耳がおかしくなってなきゃ、今………!!
「ラプソーンだと!!?」
『何!? 我ぇ!!? ま、まさか……!!』
『…………? ラプソーン、様ガドウカ…シタノカ…………?』
消えかかっている人魂がラプソーンに様付けをした。
それが意味するところは、もうひとつしかない。
「コイツ、ご先祖の信徒だったのか………!」
ぶっちゃけ、半信半疑だった。暗黒神の後継に目覚めてからというもの、ゴミ先祖と一緒に生活してきたが、蔑んだりウザがったりする人はいても、信じたり崇めたりする人がいるとは到底思えなかったのだ。
『なんという偶然……我の信徒がここにいたとは……!』
「……………」
『……クロウ、何だその目は?』
「…………………………いや、別に?」
もっとも、こんなの崇める奴の気が知れないけど。
『ラプソーン様………!? ソコニ…イラッシャルノ、デスカ…………!?』
『如何にも。死してなお、我を崇めるその信仰心、実に大義であった』
『アリガタキオ言葉……………!』
「オイコラゴミ先祖、会話すんな」
ソイツはゴミ先祖を崇めるがあまり暴走しかかって無差別傷害を起こしかねない怨霊だぞ? 自分の信徒だと分かった瞬間手のひらを返すのはやめてほしい。
『その大義に答えるべく、来世の土産に良い事を教えてやろう。
現在、我を封印してある杖を持つこの男。彼は、我の後継者だ。名をクロウという』
『後継者、様………!』
「え、ちょっと待って!?」
『我が後継者からそなたへと慰安の言葉を送りたい』
『アリガタキ幸セ……!』
「ええええええええええええええっ!!!?」
おいィィィィ!! 何言ってんのこのゴミ先祖!?
俺は早くこの空間から帰りたいんですけど! こんな得体の知れない人魂、消えかかっている上にラプソーンの信者なんだろ? 絶対に言葉を交わしたくない!
「ざけんな!! 何で俺がこいつに言葉かけねーといけないの!? というか慰安の言葉って……」
『それらしければ何でも良い。さ、我が信者に言葉をかけてやれ』
「丸投げのアドリブかよ!!? ったく………」
信者の人魂は、俺の言葉を聞く前に消えてたまるかと言わんばかりに必死に形を保とうとしている。諦めた俺は、その人(?)に話しはじめた。
「えーと……後継者のクロウです。あなたがどうしてそんな姿になったのか……その姿になってから何年目になるのか……光の巫女を、魔法少女を恨む理由を……教えてくれませんか?」
『奪ワレタノダ……25年前、全テヲ奪ワレタノダ!!』
25年前、全てを奪われた、か。この人はこの人なりに、必死に生きようとしていたのだろう。そして、魔族を狙う魔法少女に殺されたんだと思う。俺にはそう想像するしかできないんだけど……
「俺は………その嘆きに共感することは出来ません。ほんの少し前まで、ただの人間だった俺には……。」
『クロウ………』
昔の魔族と魔法少女の戦いなどわかるはずもない。ただ、分かることといえば………
この人もこの人を滅した魔法少女も、同じ人間だったということくらいだろう。
「でも、せめてもの慰みとして、祈らせてください。暗黒神の後継者と信者としてではなく、同じ人として。」
『同ジ、人……』
杖を手放し、小さな人魂を祠に置いて、軽く掃除する。そして、手を合わせた。
「名も無き魂よ、どうか安らかに。
そして………次の生では、平穏無事な人生を過ごせることを。」
静かにそれだけ言う。
すると―――
『ナント…、ナンと、慈悲深いコトカ……!
暗黒神様ノ後継者様が、私ノ為ニ祈ッテクダさるとは…………!!』
小さかった人魂の青い炎が、一旦大きく燃え上がったかと思うと……
『ありがとうございます………若き、後継者、様………………』
燃料が切れたかのように、燃え尽きてしまった。
感謝を告げた最後の言葉は、ノイズが奇麗になくなっていた。
「…………これでいいのか? ゴミ先祖」
『ゴミ先祖ではない、偉大なる御先祖様だ。
………まあ、今回のアレはまぁまぁといったところか。
暗黒神の後継たるもの、自信なさげな慰め方はやめろ』
「純然たる事実を言っただけなんだけどなぁ」
気がつけば、紫色の空間はなくなり、周りの景色はさっきまでの出来事が夢か幻かのように、元通り草ボーボーな廃工場のそれになっていた。ただ、ほんの少し整理された小さな祠が、さっきの出来事を事実だというように奇麗にされたままそこにあった。
倉庫跡に戻ると、ミカンだけがそこにおり、俺を見つけるなり駆け寄ってきて「どこに行ってたの!?」と詰め寄ってきた。
何でも、途中で俺が行方不明になり、シャミ子が倉庫跡でフォークを見つけ、千代田と共に家に帰っても見つからなかったのだという。そろそろ1時間が経過しようとしていたそうだ。それを証明するかのように、日は殆ど沈んでしまっていた。あの空間内の体感時間やばいな。
俺はゴミ先祖と話した結果、ミカンに俺の身に起こったことを説明することにした。
祠に近づいたら、変な空間に閉じ込められたこと。
人魂に襲われたこと。
何とかして倒したが、その人魂がラプソーンの信者だったこと。
かつて人魂は、魔法少女に殺されたと思われること。
その全てを話した。
「……じゃあつまり、ずっとその……人魂と戦ってたってこと!?」
「体感時間的に15分かそこらのつもりだったけどな。それが1時間の失踪か……」
「無事だったから良かったけどさ……あんまり一人で無茶しようとしないでよ?」
「俺だってあの祠は千代田やミカンと調べるつもりだったさ。今回は巻き込まれたんだよ」
『よく言う。我の忠告を無視して窮地に陥ったクセに』
「それはゴミ先祖の忠告が―――」
「クロ?」
「違うんだミカン! 忠告が遅すぎたんだよ!」
「もう! みんな心配したんだからね!! 桃とシャミ子に連絡入れといてよ?」
「…それは……悪い……」
当然のことながら、ミカンに怒られた。俺はそれを受け入れた。巻き込まれ事故だったとはいえ、ミカンや千代田に黙っていなくなったのは事実だから。
ミカンに言われた通りに千代田とシャミ子に電話をしたら、案の定二人にも怒られた。千代田には「神原くんはおばかなのかな」と言われつつも、ミカンやシャミ子がどれくらい心配してたかを教えてくれた。シャミ子には泣きそうな声で色々言われたが、人魂を撃退したと知るや、「さすがエリートまぞく……」と呟かれた。俺はエリートじゃあないと思うよ。
ちなみに、シャミ子が見つけたフォークは、どうやらシャミ子の家に伝わる伝説の武器だという。名前は誰も思い出せないそう。リリスさん頑張れや。
「今日はいろんな人に迷惑かけちゃったな……」
『そんな事を気にしているのかクロウよ?』
「人はそういう生き物だからね」
『不便な生物だな』
迷惑をかけちゃった分、強くならないといけないかな。あの人魂が経験したであろう記憶のような悲劇を減らせるならば尚更だ。ミカンとばんだ荘で別れた後、そんな事を思いながら自宅への帰路につく。
この日はトラブルこそあったものの、いつものように家に帰れる事に感謝しよう。明日からどうしようかと考えながら、歩みを進めた。
「そういやゴミ先祖」
『ゴミ先祖じゃない、御先祖様だ。して、どうした?』
「3人に人魂の正体話した時さ―――」
『暗黒神ラプソーンの信徒!? …………………………………………………………まさか本当にいたとはね……!』
『神原くん……それは…ジョークとか、聞き間違いとかじゃなくて?』
『え、ラプソーンさんに、信者がいたんですか!!?』
「―――誰も信じてくれなかったね」
『やかましい!! どいつもこいつも…我を何だと思っておるのだ!!?』
「………喋る面白マスコット?」
『誰が面白マスコットだ!! おのれアイツら、我が復活した暁には真っ先に我の信徒にしてくれる!!
これで勝ったと思うなよ〜〜〜〜〜ッ!!!』
「それをお前が言うのかよ……」
余談になるが、帰った後に母さんに千代田桜さんの行方について聞いてみた。もしかしたら、何か知っていると思ったからだ。
『……ごめんね黒男、母さんも流石にそこまでは分からないの。10年前のクリスマス・イブに桜ちゃんから電話貰って以降、連絡つかないし………』
「…流石に簡単には手がかりは掴めないか………」
紅茶を飲みつつため息をつく。10年も行方不明となると、すぐには見つからない。基本的に行方不明者というのは、7年見つからなきゃ戸籍上は死人になっちゃうしな。
『黒男、お土産はどうだったかしら?』
「届いたよ。少しずつ消費してる。でも、紅茶が多いよ。ミカンと吉田家に分けたけど、まだあるもん」
『……じゃあ、不二さん
「不二さん………不二実里んトコか?」
『そう。住所と電話番号分かる?』
「番号は交換した。住所は知らない」
『じゃあ、住所教えるわね。○○県七王子市の―――』
桜さんの謎は結局分からないまま、母さんから不二の家の住所をメモることにした。………あとで不二に送っていいか確認取ろう……。
しかし、俺はこの時、既に桜さんの行方について重大なヒントを母さんから受け取っていたのだ。
―――それに気付くのは、もうちょい先の話。
がんばれクロウ! 紅茶は、缶に蓋をしてしまっておくと味や香りが変化しにくいぞ!!
オリジナル&ゲストキャラクター紹介
神原クロウ
千代田桜の手がかりを探すつもりが、人魂と戦っていた暗黒神後継者。密室に近い状況でイオナズンが使えず、防戦一方だったが、魔力を放つ基本的な攻撃で勝利を収める。この攻撃のモデルはドラクエⅧの第一形態ラプソーンの通常攻撃。
さまようたましい
死した人の魂が、成仏せずに彷徨っている魔物。ドラクエでは大体まごついていたり様子を見たりで何もしてこないが、時折自爆する。ドラクエⅧでは、闇の遺跡に暗黒神の信者の魂といてこいつがいるので、拙作でも『暗黒神の信者の魂』という設定を採用。
拙作では
拙作で一番好きなオリジナルorゲストキャラは?
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神原クロウ
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ラプソーン
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不二実里
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ラファエル
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神原玲奈