ガラル地方の魔境、ワイルドエリアにて命がけで人とポケモンを守る者達がいる。

彼らは、ポケモンレスキュー。

そんな所に、長期休暇を終えて復帰した青年になりきれない少年がいた。

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盾のボックス埋まって、ポケモン逃さないといけなくなった事になんかもにょりつつ、剣盾の二次創作を書いた次第でした。

メインの小説進めろって?ポケモンから抜け出せぬのだ...


ワイルドエリアポケモンレスキュー

ワイルドエリア、それはガラル地方にあるポケモンが自然のままに暮らす楽園。

 

ポケモンは野生のままに争い、群れ、そして生きる。

 

だが、それは足を踏み入れたトレーナーに対して、ポケモンの野生が牙を剥くことを意味している。

 

そんな人々とポケモンの間を取り持ち、その両者の命を守る者達。

 

彼らを人々は、ポケモンレスキューと言った。

 


 

その日、少女カナエは意気揚々とワイルドエリアを歩いていた。

凶暴なポケモンが多いワイルドエリアではあるが、しっかりと逃走用のピッピ人形や草むらを飛び出して行動している強いポケモンの対処法などを理解している自分には大丈夫だと油断して。

 

そうしていると、ポケモンキャンプをしている一団を見つけた。道中の戦いで少し傷ついた相棒のニンフィアを休ませる為に休みを取ろうとしたその時に、カレー作りの準備をしていたであろう青年に声をかけられた。

気の良さそうで、しかしその目の奥の炎を隠さないポケモントレーナーに。

 

「お、嬢ちゃんトレーナーかい?」

「ハイ!シュートシティまで行く途中です!」

「そんなら、なんでワイルドエリアを通ってるんだい?」

「そんなの決まってるじゃないですか。ポケモンゲットの為ですよ!元チャンピオンの作ったバトルタワー、そこに参戦する為にはより多くのポケモンの力が必要ですから!」

「...ならちょうどいいかね。実はオジサン達ポケモンの巣に入って強いポケモンを捕まえようって話してたのさ。あんなバトルを魅せられたら、やる気が戻って来ちまってな!」

「わかりますわかります!チャンピオンの戦い、凄かったですもんね!」

「だけど、巣に潜るにゃあ数が足りねぇ。ポケモンの相性とかを考えると四人目が欲しいなって思った所に嬢ちゃんよ。どうだ?乗るか?」

「勿論!」

 

そうして、共にカレーを作り、一緒に食べてから近くのポケモンの巣へと入り込む事になった。

 

勿論、最大限の警戒はしている。全員が脱出用アイテムのあなぬけのひもを持っている事は確認したし、逃げる際の段取りもちゃんと整えた。

 

だが、待てど進めども脅威は訪れない。どうした事かと思ったが、その疑問を口に出す事は皆していなかった。

 

皆、嫌な予感がしているのだ。

だが、一人の知恵での限界を知る、最年少のカナエは意を決して声を出す。幸い自分は最後尾、背後からの奇襲にはニンフィアに指示をすれば対処してくれると信じてだ。

 

「...ここのポケモンの巣、ポケモンが居ませんね」

「...ああ、妙だ。アーマーガア、わかるか?」

「...ガァ」

「わかんないってさ。ジーク、あんたのアーマーガアの直感も落ちたんじゃない?」

「いや、いまの声は何かに警戒している声だ。皆、気をつけて進むぞ。もしかしたらダイマックスしたポケモンが一体だけじゃないかも知れない」

「それは僕としてはありがたいですね。終わった後にポケモンをゲットできる確率が2倍に増える。...ククク、虎穴に入らずんば虎子を得ず。頑張りましょうか、ゲンガー」

 

その言葉に任せろ!とばかりに胸を張るゲンガー。その行為は頼もしく、しかし微笑ましかった。

 

「頼りになりそうな人達でよかったね、ニンフィア!」

「フィア!」

 

そうして、その場へと辿り着いてしまった。

 

一太刀、たった一太刀で戦闘不能にされてしまったダイマックスしたヌメルゴンと

 

そんな異次元の強さを持った、小さな虫タイプポケモン、テッカニンだった。

 

「...逃げらんねぇなこれは!皆、バトルだ!アーマーガア、追い風!」

「ゲンガー!鬼火!」

「パルシェン、ロックブラスト!」

「ニンフィア、ダイマックス行くよ!ダイフェアリー!」

 

そうして放たれる4つの技。アーマーガアの追い風によりスピードを得たポケモン達が、ゲンガーの鬼火により体力を削りつつパルシェンとニンフィアという物理、特殊の二つの高火力ポケモンで押し切る。そんな決め事通りの戦いは。

 

鬼火を放ったゲンガーと、ロックブラストを放ったパルシェンが背後から斬りつけられて戦闘不能になった。

 

瞬く間の事だった。トレーナーどころかポケモンですら反応する事ができない神速の動き。

 

どんな技を繰り出されたのか、どうして目の前にいたテッカニンが背後から襲ってくるのか意味はわからない。

 

ただ一つ言えるのは。

 

この()()()()()怪物(モンスター)は、私たちを逃すつもりはないという事だけだった。

 

「ネミッサ!ルーグ!次のポケモンは出せるか!」

「ダメ!この場のダイマックスエネルギーが大きすぎてモンスターボールが開けない!」

「そんな、主のヌメルゴンは倒されているのにどうして⁉︎」

「そりゃ、あのテッカニンも主だからだろうよ!全員、ポケモン戻せ!何やってもあのスピードには意味がねぇ!作戦通り俺が殿で撤退だ!あなぬけのひもを使え!」

「でも、そしたらジークさんは!」

「舐めんなよ嬢ちゃん、トレーナー歴は長ぇんだ!どうにかする策ならあるさ!」

「...わかりました、信じますからね!」

「おう、信じてくれ。んで、できるなら早めに助けを呼んでくれるとありがたいぜ!」

 

そうして、あなぬけのひもを発動しようとする。しかし、その紐はいつのまにか切り裂かれていた。

 

速すぎる、テッカニンの手によって。

 

「だと思ったよ!アーマーガア、ダイマックス!ダイウォール!」

 

だが、それを想定して動いていたのはカナエ以外の全員。

 

ダイウォールの障壁に守られた内側で、ネミッサが守ったあなぬけのひもを投げ渡してくる。

 

「行って!あなた以外助けを呼べる人は居ないの!」

「...というわけで、僕らの命を託します。けど、無理のない範囲でで構いませんよ。巣穴潜りは命懸け、そんな事は当たり前ですから」

 

「ジークさん、ネミッサさん、ルーグさん!...必ず、助けを呼んできます!」

 

そう声に出すことで決意を固める。

そんな健気な声に、ふっと笑う3人。

 

アーマーガアのダイウォールが三度目の太刀で切り裂かれて次の太刀で戦闘不能になる寸前に、あなぬけのひもの機能によりポケモンの巣から抜け出す。

 

そして、通報しようとしたその時に自分のスマホロトムをあの巣の中に落としてしまったのだと気付いた。

 

だから、叫ぶしかない。それがどんなに危険な行為かは分かっている。野生のポケモン達に囲まれる未来しか見えないかもしれない。

 

それでも、少女は叫び

 

 

 

その声に、青年になりきれてない少年は応えた。

 

「デンチュラ、ねばねばネット!」

 

電動トライクの音と、その少年の背中から周囲に粘着性のネットを張るデンチュラ。

 

その迎撃に、ここで攻め込む事に待ったをかける野生のポケモン達。

それは、デンチュラの流している微弱な電磁波が影響しているのか、それともトライクの音に含まれるポケモン避けの音が原因なのかはカナエにはわからない。

 

けれど、一つだけわかるのは。

 

「声に呼ばれて助けに来た。要救助者の情報を頼む」

 

この少年が纏っているその制服はこのワイルドエリアに入る者達なら誰もが知る姿、ポケモンレスキューのものであるということだった。

 

 


 

「11/25日、ナックルシティのハルト!原隊復帰しました!」

「ご苦労、見てたぜセミファイナル。お前は弱くなかったが、相手が悪かった...とか言って欲しいか?」

「いいえ、ホップ選手に負けたのは完全に自分の戦略が劣っていたからです。もっとポケモン達の力を活かしてやれればあんな無様な負け方はしませんでした。悔しい限りです」

「よし、わかってるならそれでいい。じゃあ、本題だ。今回お前に当たって欲しい案件は、ワイルドエリアのポケモン達の異常な強化についてだ」

「強化?」

「この辺りに来るまでにわからなかったか?ワイルドエリアのポケモン達の中に尋常じゃなく強くなった奴らがいることに」

 

確かに強いポケモンが多いとは思ったが、それはいつものワイルドエリアなのだなーと流していたが。

 

「それが、何か問題を起こしたんですか?」

「ああ、最近のパトロール結果だ。アルス、ソロ、ジャッキー、エミリアが回っている巣なんだが、どのトレーナーの痕跡もないのに主のポケモンが倒されている事があったんだ」

「...一筆書きですか?」

「良いとこ気付くな。その通り、どうにもこの主狩りはここから3日間戦い続けているようなんだ。ここから、ここまでな」

「そして、次の目的地はここの巣穴だと」

「ああ、だが、ポケモンのタイプが想像できない。だから、お前の原隊復帰を待ってたのさ」

「...何がコイツをそこまで駆り立てるのかはわかりませんけど、ここで止めなきゃ無駄にポケモン達が傷つく。もしかしたら人にまで危害が加わってしまうかもしれない」

「行ってくれるな?ウチのエースさん」

「とりあえず、セミファイナル惨敗の雑魚だとは言わせないくらいにはしっかりやらせて貰いますよ!」

 

投げ渡されたキーを受け取り、外に停めてあるトライクに乗って走り出す。

 

そして、その叫びを耳にして、即座にトライクで崖を飛ぶ。相変わらず無茶な使い方をしてしまうが、まぁレスキュー装備なので仕方がない。命が優先だ。

 

「中に、まだ人がいるんです!3人!でも、二人はポケモンを倒されて、一人もほとんど死に体で!」

「主狩り...そいつの特徴は?」

「...速すぎるテッカニンです。私たちが技を一つ繰り出す間に、3つ4つの技を撃って来ます!けど、なんか辛そうなんです!」

「...なら、どうにでもなるな。安心してくれ」

 

「俺、これでも結構強いんだ。だから、人もポケモンも助けてみせるさ」

 

そうして、主狩りを倒すために連れて行くポケモンを決めた俺は、巣の中へとトライクで入って行くのだった。

 


 

「アーマーガア、良く、頑張ったな」

「まんたんの薬は切れたわ。ルーグは?」

「僕もです。潮時という奴でしょうかね」

 

そんな時に響くエンジン音。

ポケモンの巣の中に乗り物で突入してくる奴は、よっぽどの馬鹿か

 

ワイルドエリアの命綱、ポケモンレスキューくらいだろう。

 

「信じられません、やりましたねカナエさん」

「ああ、しかもこの音は3輪のトライク!それに乗ってるのは!」

 

「ミミッキュ、GO!」

 

「「「あの馬鹿だ!」」」

「誰が馬鹿だ命知らず共!けどコイツどうにかするから脇に避けててな!」

 

そうして、新しい獲物を見つけた喜びからさらに加速をしてミミッキュに斬りかかるテッカニン。

 

その剣撃は凄まじく、その速さは目にも止まらない。

 

けれど、その最強の武器はこの空間の中では最悪の重りに早変わりする。それが、ポケモンと人が紡いだ戦術というものだった。

 

化けの皮で剣撃を受け止め切ったミミッキュは、その空間を作り出す。

 

「ミミッキュ、トリックルーム!」

 

速い者ほど遅くなり、遅い者ほど速くなる超空間、トリックルームである。

 

そうして、速さという翼を奪われたテッカニンは、それでも有り余る力を振りかざそうとして剣を振るうが、その圧倒的な遅さにミミッキュはあっさりと回避をする。

 

そして、攻撃するたびに傷ついていたテッカニンのボロボロの姿がようやく見える。圧倒的な速さで戦い続けていた反動は、テッカニンの身体を痛めつけていたのだ。ポケモンが耐え切れる能力強化は六段階。しかし、それを超えてしまう障害を持ったポケモンは存在するのだ。その身体への甚大なダメージと引き換えにして。

 

それでまだ戦う事をやめられなかったのは、きっとダイマックスエネルギーが戦う事を、暴れる事を強いたから。

 

けれどコイツが主狩りだけで、人狩りをしていないのは。

コイツが、優しい奴だったからだろう。

 

「...お前、自分を倒してくれる奴を探してたんだな...だったら倒すついでにその障害、治療させて貰う!ミミッキュ、つるぎのまい、からの...ダイマックス、ダイホロウ!」

 

巨大化したミミッキュの繰り出すダイホロウ。周囲にポルターガイスト現象を引き起こし、それにより動かしたさまざまな物の幻影を叩き込む一撃。

 

それを受けたテッカニンは、どこか安らかな表情で倒れ伏した。

 

そして、そこに投げ込まれるモンスターボール。これで、テッカニンの捕獲は完了だ。

 

「...助かったぜ、ハルト」

「まぁ、仕事だからな」

 

そんなわけで、復帰から一本目の仕事は終了した。

とりあえず、ポケモンレスキューとしては及第点の仕事ができただろう。

 


 

それからの事。

 

テッカニンは無事ポケモンセンターで治療を受けて、強化限界突破障害から救われた。だが、ここまで暴れたポケモンを野に放つという訳にはいかないのがお役所仕事。

 

というわけで、現在テッカニンはポケモンレスキューの基地にて里親募集中である。

 

このまま居ついてしまわないかが少し心配だが、まぁそのうちどっかのトレーナーがやってくるだろう。SNSで拡散もした事だし。

 

そんな事を考えながら、今回の来客に対してどうするかなーと頭を悩ませる。

 

「あのテッカニンを引き取らせて下さい!」

「...規則ですんで、ジムバッジ7つ相当の実力のない方にはコイツは渡せません。今はジムチャレンジやってないんでバトルタワー行って下さいな...って事を昨日言いましたよね!」

「昨日でバトルタワーでスーパーボール級まで行きました!」

「マジですか!えっと、規則規則...すいません、ハイパーボール級からでした。すいません」

「うぅ...また来ますからね!」

 

なんか、この基地に入り浸るようになった少女カナエをどうしたものだろうか?

そんな事を考えている自分だった。




ムゲンダイナでダイマックス砲撃ったりウオノラゴンでエラガミしてるだけではなんか味気ないなーとか思ったので筆を取らせて貰いました。
たまに(主にソーナンスのせいで!)負けた時に無傷で生きて帰れるのはそれなりの人たちがいるんじゃないかなーとかいう妄想です。


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