無惨視点
私の躰は爆散した。
塵と化し、最早そこからの再生は敵わないだろう。
だが私の頭はまだある。残っている!
ふはは!たとえ何と言おうと、止めを刺せなかったようだな!
グルメ細胞を駆使すればこの程度の再生など…。
むっ?何故だ?再生が遅いな。
そう言えば奴は波紋疾走等という妙な術を使っていたな。
アレのせいかもしれん。
一先ず頭から腕だけでも生やしておくか。そうすれば不格好だが移動は出来る。
ぐっ!?
地面にぶつかったか…まぁいい。どれだけ遠くに離れたかは分からんが、奴らと距離を取れたのだ。良しとするか。
………屈辱だ。完璧な存在であるはずの私がこんな無様な姿になるなど。
躰が戻った時はあの男の目の前で女を食らってやろう。
絶望の底に叩き落としてその上で…
「何処へ行く…鬼舞辻無惨」
「!?」
この声は…!?
「何処へ行くと聞いてるんだ…答えろ。無惨」
「竈門…炭治郎…!」
馬鹿な…なぜここに…!
炭治郎視点
「何故…貴様がここに…!」
「俺がここにいるのはアイリスさんの命令だ」
アイリスさんは俺に話してくれた。
アイリスさんの最強の技が周りに及ぼす影響。
今無惨に起こっている事なんかを。
凄まじい音と衝撃で、辺りはしっちゃかめっちゃかになるから、俺達は他の隊士達を連れて安全な場所に移動した。
空から蛇の様に長い首の蜥蜴の顔が、威嚇してきた時は心底驚いた。
カナヲと玄弥が話しかけると怖い顔が途端に綻んで、首の所についている扉を開けて待っててくれた。
お館様がそこで出迎えてくれたから、皆をそこに預け、日輪刀も身体も無事な俺と善逸は戻ることにした。
善逸は持ち前の足を活かして先に行くよう促した。
一人でも多く加われば無惨を倒せると思ったからだ。
それから間もなくして……善逸が間近で聞いたら死んじゃうんじゃないかって位大きな音が聞こえて、その後に大木をしならせる程の衝撃が辺りを襲った。
何とか持ち堪えていると、無惨の匂いが紛れていることに気付いて、その後を追いそして…今に至る。
「鬼舞辻無惨。今日ここでお前を殺す」
「出来ると思っているのか?貴様に…日輪刀では私は殺せぬ!」
「そうかも知れない。ヒノカミ神楽でもダメかもしれない」
「そうだ!無駄な事だ!私も間もなく再生する!」
「それはない」
「なに!?」
「お前はグルメ細胞のことを知らな過ぎる」
前にアイリスさんが話してくれた。
自食作用。
恐らくはそれが無惨に起きている。
アイリスさんはそう言っていたし、今見て俺もそうだと確信してる。
自食作用は極端に腹が減った生き物の最後の一踏ん張りだ。
その間は良いけれど、早く食べないと悪くて身動きが取れなくなり、最悪死ぬ。
無惨はそれを知らずに戦った。そのせいで今身動き一つ取れなくなった。
最凶最悪の鬼は…惨めな姿になった。
「おのれ…!やはり劣化だった!変化など!するべきでは無かった!」
「いや、お前の敗因は一つだ」
そう…たった一つ…単純な話だ。
「なに!?」
「お前は人間<オレたち>を怒らせた」
「ヒッ!?」
「GOOOOOOOooooo!!!!」
ヒノカミ神楽!!
「円舞!!」
「ぎっ……ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!!」
朝日が昇る。
打ち上げられた無惨の頸が。
縦に裂かれた全ての元凶が。
陽光煌めくこの時間の中へと還っていく。
「ひか…り…朝…だ…太陽…太陽……」
変わらないな。
鬼舞辻無惨と言う人は、最後にそう言い残して消えた。