†MULTIPLE AIGIS† True Eyed Knight 作:てゐと
痛い
???「ぎゃぁぁぁぁっっ!!!痛いっ!!痛い…!!」
忘れもしない。私が受けた屈辱を
???「返して!!私の右目!!あ゛っ!!」
???「どうして…。どうして私がこんな…」
???「我の名を契約の契りとしろ!対価は…。私の右目だっ!!」
???「ひひゃっ!!?」
目覚めた少女はベッドから飛び起きた。全身びっしょりと汗に濡れ、息も上がっているほどに魘されていた
???「夢…?だよね…、あはは…」
ボフッと柔らかい音で寝倒れる少女、しかしここがどこかわからないと思うと一気に安心感は不安へとまるでオセロはように切り替わる
???「ポケモンセンター…?だよね…?」
エアピンを手にドアから出ようと様子を伺う少女は外から話し声が向かってくるのを感じ、隠れた
まなこ「ありゃ…?どこか行っちゃったの?」
もみじ「ん?…。ねぇ、何で隠れてるの?(・_・?)」
匂いで隠れた場所を当てたもみじ、まなこはそこへ歩み寄る
まなこ「ねぇ、ケガはもう…」
???「死ねっ!」
まなこ「うあっ!」
ヒョィッ プスッ
ひぐらし「ぎぃいやああーっ!?」
間一髪身代わりにされたひぐらしの頭部へヘアピンが浅く刺さる。思わぬ一撃にひぐらしはのたうち回っている
???「近寄るな!同じ姿を晒すことになるぞ!」
しかしその威勢に反してその手は震えている。さらにはひぐらしの半ばギャグのようなリアクションにまなこたちは少々困惑気味だ
もみじ「…」
だが一人だけ反応が違った。もみじだ
もみじ「ねぇ…」
???「寄るな!人間のポケモン!!」
もみじ「やっぱり…。まなこ、ここは私に任せて」
まなこ「…。わかった」
その真剣な眼差しを見てまなこはみんなと共に部屋を出る。ひぐらしもずるずると引っ張られていった
もみじ「これでお話しできるかな?」
手を差し出すもみじ。少女は警戒こそしたがもみじの匂いからとあることを察した
???「あなたも…?」
もみじ「うん。私も同族だよ」
もみじ「私はもみじ、てゐ国歌劇団の毒組に所属してるの」
ノゾミ(ガラルポニータ♀️)「私はノゾミ、ノゾミ・スカイパステル。いまでこそこんな小さななりをしてるけれど元々はギャロップなの」
もみじ「何か変なものでも食べちゃった?」
ノゾミ「ううん。実を言うと魔法の使いすぎでー…なんて言っても通じないかな。魔法なんて」
もみじ「ううん。私の仲間にいるもん。魔法使い」
「またまたぁ」と笑い飛ばすノゾミ。もみじはこういう時に自分の名前を出すといいと言われていたのでリタの名前を出した
ノゾミ「…!?ちょっっと待ってよ…?リタって…もしかしなくても300年を生きる皆既日食…?」
もみじ「うん。リタに魔法使いに出くわして信じてもらえなかったら自分の名前を出して納得してもらえって」
ノゾミ「それ言われたら信じるしかないね…。リタといえば魔法使いの間じゃマジで生ける伝説上だもの」
もみじ「そんなにすごいの?」
ノゾミ「魔法ってね、今じゃ使える人がかなり限られているんだけど私が知る限り不老不死の魔法使いは三人いる。その内の一人にして火、水、風、雷。そして裏属性の闇、氷、地、光の中でも特に使用者の少ない地属性を完璧に扱える魔法使い。それがリタだよ」
もみじ「やっぱりその魔法のエキスパートとかいるの?」
ノゾミ「昔は居たらしいんだけど現代は不明だね…。私も光と闇の簡単なのしか使えないし」
指先で小さな白と黒の光球をくるくる回すとそれを握って消すノゾミ。少し考える顔をするともみじに問う
ノゾミ「なんで…。私ほとんど治ってるの?思い出した…」
彼女が思い出したのはワイルドエリアまで追い回され、傷だらけになっていたはずの自分。なぜそんなケガが綺麗に治っていたのか不思議にも不気味にも思ってしまった
もみじ「…その事で言わなきゃ行けないことがあるの。あなたは…、まなこにゲットされたんだ」
スッと青ざめる顔。錯乱一歩手前でもみじが付け加える
もみじ「ただ、あなたを助けるために」
ノゾミ「助けるため…?」
もみじ「うん。あなたは重症だっただけじゃなく酷く衰弱してた。ポケモンセンターでも助かるかわからないほどね。だからまなこはあなたをボールに入れた。捕まえたポケモンの傷を癒すヒールボールで」
ノゾミ「それじゃあ…さっきの人間…。まなこは私のために…?」
もみじ「でも納めてもあなたの傷は完治しなかった。ポケモンセンターのジョーイさん曰く…。ヒールボールじゃなかったら死んでたそうだよ」
ノゾミ「…。そっか…」
もみじ「まなこはただ助けたかっただけ。だから逃がしてと言えば逃がしてくれると思うよ」
立ち上がって去ろうとするもみじ、それにノゾミが声をかける
ノゾミ「少し…。考えさせてほしい。まだ心の整理とか付かないし…」
もみじ「うん。お大事に」
もみじ「…」
ノゾミ「どうしたの?」
もみじ「これだけは教えておいてあげるね」
まなこ「…」
フェルム「どうしたんだい?そんな怖い顔して」
まなこ「…。助けたのが間違いだったのかなぁって…。私は助けたかった。でもそれを相手が望まなかったらさ、嫌がらせだよね…」
フェルム「まなこ、あんたって本当に優しいんだね」
まなこ「え?」
フェルム「あたしん時もそうだった。あんたは他人にはすごく優しくできる。でも…自分には厳しい。厳しすぎるって言った方が似合うくらいにね」
ズヴァイ「確かにな」
ひぐらしを除く面子が集まる。皆優しい呆れ顔だ
ズヴァイ「俺と出会った時も単身でワイルドエリアに行ったくらいだしな」
スイカ「エリー(カジッチュ)を捕まえる時だって、本来はフォーマンセルのレイドバトルに一人で挑んで私達四人に指示してましたよね?」
アリサ「わたしらはさ、まなこの事嫌ってないしもっとちゃんと頼ってくれてもいいんだよ?」
モルル「ま、簡単に言えばまなこはもっと胸張りな、私は命を助けたんだってね。誇りに思っていいとあたしは思うけど」
もみじ「まなこ、覚えてる?私達が初めて出会った時の事」
遅れてもみじが歩いてくる。まなこは思い返して泣きそうになっていた
もみじ「あの頃のまなこは毎日がつまらないって顔してた。でも私にコレクションを見せたり香水の匂いを当てた時。まなこの眼はきらきらしてた。思い出すとここ一番のまなこの眼は強く輝いて自信に満ち溢れてた。それは厳しさよりも自分らしさが勝ったから。違う?」
まなこ「そう…。なのかな…?」
もみじ「…」
ひょいと口に飴を一欠片入れて姿を変えるもみじ。一発まなこの背中を叩くと元の姿に戻る
まなこ「いっつ!?」
もみじ「大丈夫!まなこの判断は間違ってなんかない!もし間違ってたら私達と変えよう!」
まなこ「もみじ…。そうだね、ごめんね。みんな」
モルル「ありがとだろ?ったく」
まなこ「うん。さて…、どうしよっか?」
ノゾミ「まなこ…。だっけ?」
そこにノゾミが現れた。まなこは返事をして近づく
まなこ「さっきは驚かせちゃったよね。ごめん」
ノゾミ「ううん。私こそ。それよりちょっと話し…したいんだけど、いいかな?」
ノゾミ「改めて、私はノゾミ、ノゾミ・スカイパステル。まずは助けてくれてありがとう」
まなこ「そんな、人として当然でしょ?」
ノゾミ「人として…、ね。その…、もみじの事は知ってた?」
まなこ「どういうこと?」
もみじ「あー…」
バツが悪そうにするもみじ。まなこたちは何の事を言われているのかわからなかった
もみじ「うん。大丈夫、そろそろ最低限まなこには言わなきゃって覚悟してたもん」
突然脱ぎ始めるもみじ。真面目なズヴァイは何も言わず後ろを向く
もみじ「大丈夫だよ。背中だから」
そう言ってズヴァイを向き直させるもみじ。「すまん」の一言後、ズヴァイが見たのは絶句した仲間たち。そして…
まなこ「なにそれ…?」
もみじ「私だよ」
その小さな背中には…、おぞましい数の傷痕。中でも一際存在感を放っていたのは左肩あたりから腰部にまで及んでいる大きく、変色している一生傷だった
もみじ「これは私がてゐ劇に助けられる前。トレーナーを語ってた奴から受けた傷。幸い顔と手には無いんだけどね」
逆にその言葉で全員が察する。なぜ活発なもみじがミニスカートや半袖では無いのかを
アリサ(なるほどね…。だからお風呂も一人だけ違う時間に入ってたんだ…。私らん中じゃ最年少かなって思ってたけれど、てゐ劇って中々裏があるんだね)
まなこ「誰…?」
もみじ「まなこ?」
まなこ「誰!?そんなことした奴!!ぶっ殺してやる!!」
もみじ「落ち着いて。もう死んでるから。ベノが殺した」
激昂するまなこをいつも以上の冷静さでなだめるもみじ。まなこはもみじの背中にすがり付いて泣き出した
まなこ「私…もみじが…。人間にこんな酷いことされたなんて知らなかった…!なんでこんな事できるの…!?何考えてるのソイツ!!」
もみじ「なんでだろうね?私達はポケモンだからそんな人間の気持ちや思考なんてわからない。でもまなこは別。私が出会った中で優しくて誰かを思いやれる人間。そして…私の大切な親友だから。これでわかった?次はあなたの番だよ」
服装を戻し、悔し泣きするまなこの涙をハンカチで拭うとノゾミと向き合わせる
フェルム(自分を使って勇気を出させるなんて中々出来たもんじゃない。もみじはやっぱり私らが思ってる以上に大人なんだ。見ている世界も、思ってる事も)
ノゾミ「…。まずは私もこれを見てほしい」
右目だけを出したロングヘア。その前髪を上げて閉じた左目を見せるノゾミ。緊張しているのか息が荒くなっているのが感じれた
ノゾミ「行くよ…!」
開かれた左目、そこには…眼球が無かった
まなこ「っ!?」
ノゾミ「私が人間で言う五歳くらいの時。私の両親はハンターに殺された」
スイカ「それってルミナスメイズで…?」
黙って頷くノゾミ。まなこはルミナスメイズ?と聞きなれない言葉に首を傾げる
モルル「ルミナスメイズってのはガラルにある深い森の事はだよ。だいたいワイルドエリアに行けばガラルにいるポケモンの大半は居るんだけど中にはこの子、ノゾミのガラルポニータみたいに生息圏が限られてる子もいるんだ」
スイカ「それを狙って狩りをするハンターはとても多いです。おそらくノゾミさんのご両親が殺された理由も…」
ノゾミ「うん。角や毛皮。体毛に肉とガラルのポニータやギャロップには利用価値がある。殺さなくても高く売れるらしいね」
淡々と話すノゾミ。その口振りから今回が二度や三度目ではないことにまなこは気が付いていた
まなこ「その眼は…」
ノゾミ「五歳の時、私は目を抉られた。運動神経が死んでる私は両親の犠牲を無駄にしたんだ。逃げきれなくて、でも目を奪い返して、そして私は…、左目を対価に魔術に手を染めた」
ボゥっと白と黒の光を混ぜ合わせるノゾミはそれを球遊びがつまらない子供のような顔でみていた
ノゾミ「その結果がこれだよ。相変わらず運動神経は死んでるし魔法はちゃっちぃのばっか。オマケに買い物に来て殺されかけて…。笑っちゃうよね」
まなこ「笑わないよ」
ノゾミ「えっ…」
まなこ「私は、私達は絶対笑わない。ノゾミが不幸だって言うなら私達が幸せにしてみせる!」
ノゾミ「…。出会って二日もたってないのに口説くのが上手いんだね。わかった。そこまで言ってくれるなら私と勝負しよ」
立ち上がってまなこを近づくノゾミ。指を差して宣言する
ノゾミ「私をルミナスメイズまで送ってほしい。その道中で私がまなこをトレーナーとして認めたなら仲間になる」
まなこ「もし認められなかったら?」
ノゾミ「私を入れたっていうヒールボールを踏み壊してもらうだけだよ。君とはそこでさようなら」
まなこ「わかった。約束ね」
互いに握手する二人。その部屋の外では…
ひぐらし「…」
静かに悲しい顔をしたひぐらしがいた
ひぐらし「私は…やっぱり要らないのです…?」
次回予告
まなこ「最初のジムがあるターフタウンにたどり着いた私達はジムチャレンジに挑もうとした時、ベノさんと再会した。喜びもつかの間に私達はある条件を出される」
もみじ「次回!スナッチコロシアム!」
ひぐらし「次回も見るですぅ…」
お疲れ様でした。皆がそれぞれ葛藤するという物語、まなこは他人を傷つけないようにどうすればいいのか。もみじは打ち明けなきゃいけないという覚悟とノゾミへ勇気を与え、ノゾミは憎み続けた人間という存在を信じてみようと前に進み、ひぐらしは自身の存在意義について…。今でも沢山居ますがまだ賑やかになります。彼女達の成長をお楽しみください