天童一族の養子として転生したけど技名覚えられなくて破門された。   作:紅銀紅葉

14 / 31
妹に創作ノートなんて見られでもしたら俺死んじゃうよ

200?年?月?日

 

 母さんが死んだ。

 昨年父さんが死んでから家計は苦しく、少しでも母さんを楽させてやろうとアルバイトを掛け持ちしてやってきた俺だったが、限界が来たのか倒れてしまった。

 連絡を受けた母さんは慌ててパート先を飛び出して、そして……。

 バイトと大学の両立で、最近は母さんとあまり話せていなかった。俺は、何のために働いてたんだろうな。もう何もかもが面倒くさい。

 

 今は親戚たちから離れて、母さんの棺桶の横で日記を書いている。

 俺の扱いやら父方祖母の母さんへの嫌味とか、もううんざりだ。疲れた。

 日記を書き終わったら、母さんにお別れしよう。明日からまた忙しくなる。

 

 ──ああ、それにしても、眠気がひどい。

 

 

 

200?年?月?日

 

 気が付いたら俺は死んでいた。棺桶を枕にして眠っていたらしく、気化したドライアイスを吸い込み過ぎた結果らしい。神様が言っていたから間違いない。

 とりあえず知らない世界に転生させてくれるとのことなのでお言葉に甘えることにする。

 

 それにしても俺は誰の棺桶と同衾していたのだろうか。最近葬式などいった記憶がないのだけど……まあいいか。

 

 

 

2019年●月■日

 

 転生しちゃいました。名前は■■紅蓮。この世界での記憶はない。前世の記憶も曖昧だ。

 前世はたしか苦学生。でもいまは小学生。両親はいない。でも両親の友人を名乗るオジサンが俺を養子として招き入れてくれるんだって。

 実感わかない。つい数か月前に記憶取り戻したばかりだし仕方ないけど。

 

 クッソ田舎から近未来感溢れる東京へのお引越し。田舎では気付かんかったけどめちゃ近未来的。2019年だっけ? はー、すごいね。

 

 ちなみにお義父さんはオジサンじゃなくてオジイサンだった。

 

 

 

2020年●月■日

 

 天童紅蓮としての生活にもだいぶ慣れてきた。

 

 お義父さん、お義母さんとの関係は良好だし、お義父さんの息子夫婦とその子供たち──木更や和光兄さんとも上手くやっている(他の三人の兄たちはそこまで仲良くもないのだが)

 それでも神様が言っていた通り、俺の転生特典は『家族に愛される』ことらしい。和光兄さんからは特に甘やかされている(木更とは腹違いで仲も悪いようなので、遺恨のない素直な弟というものに憧れていたのかもしれない。木更を除けば末っ子だし)

 数々の政治家を輩出してきたエリート一家ではある意味チート能力ともいえるだろう。お金持ちやったー! 

 

 その他にも前世の学習チートを駆使して神童だなんだともてはやされたりと充実した日々を満喫している。このスタートダッシュを無駄にしないよう頑張ろう。

 

 そして今日から木更と一緒に天童式抜刀術とやらを習います。木更は俺より先輩なので稽古場では高弟として扱うよう、助喜与師範に言われた。

 ちっちゃなプライドはかなぐり捨てて「姉弟子!」と呼んでやったら満更でもなさそうな顔をしていた。可愛い。

 なんでも弟というものに憧れがあるのだとか。お前もか。

 

「そういうのはお父さんお母さんに言いなさい」という俺の言葉はそのままオジサンに伝わってしまったらしい。晩御飯のあとめっちゃ怒られた。ちくせう。

 

 でもこんなにちっちゃい木更が武術て、必要あるんか? 将来的には真剣使うとか言ってたし。こんな平和な時代に……いや、木更は可愛いからな、護身術は大事だよな。師範に頼んで合気術も教えてもらおう。

 

 

 

2021年●月■日

 

 木更ちゃんてば超ワガママ。俺が持ってるものはなんでも欲しがるし、気が付いたときには俺の本やゲームは彼女に奪われている。

 あの……そのゲーム俺のなんすけど。というか鍵付きの引き出しにしまってたはずなんすけど……。

 どうして……? 

 

 

 

2021年●月■日

 

 人類が、ガストレアに敗北したらしい。

 ショックが大きすぎた。しばらく日記をかける気がしない。

 

 

 

2021年●月■日

 

 弟ができた。名前は里見蓮太郎。歳は木更と同じくらい。

 両親を亡くしたばかりで酷く落ち込んでいる。俺にも何かしてやれることはないだろうか。

 

 

 

2021年●月■日

 

 蓮太郎の両親の葬式が行われた。蓮太郎は理解できない様子で、何時間も同じ説明を受けていた。まだ数える程度しか話していない弟だが、見ている俺も辛くなってくる。

 両親と思われる黒い炭が届けられ、蓮太郎がおそるおそるそれをつかむと、砂礫のように崩れて零れ落ちていった。

 蓮太郎は半狂乱となりお坊さんに殴りかかると、天童の屋敷を飛び出していった。

 

「お父さんとお母さんは死んでなんかいない!」

 

 その言葉が頭から離れない。

 

 

 

2021年●月■日

 

 お義父さんに連れられて蓮太郎が帰ってきた。二日ほど難民キャンプで過ごしたらしい。

 ボロボロで死にかけのようだったが、大きなけがもなくすぐに回復するとのこと。

 

 本当に良かった。

 

 

 

2021年●月■日

 

 蓮太郎も少しだけ屋敷に慣れてきたので、天童流を習うこととなった。木更は抜刀術を推していたが結局蓮太郎は戦闘術を習うそうだ。残念。

 そういえば、「蓮太郎が弟じゃなくて残念だったな」と言うと。

 

「あら、お兄様、全然そんなことないわ。ちょうど私だけの使用人が欲しいと思っていたところだったの」

 

 こっわ。俺の妹こっっわ。

 俺は蓮太郎の肩に手を置き、諦めろと首を横に振った。

 

「ええッ? 助けてくれないの?」

 

 蓮太郎は泣き出しそうになりながらも訴えたが、俺にはどうすることもできない。強く生きろ。

 

 

 

2021年●月■日

 

 木更の両親が殺害された。

 現場近くにいた使用人によると、屋敷内に突如としてガストレアが現れたらしい。

 いくら天童流の免許皆伝であるオジサンでも、武器も持たずに敵う相手ではなかった。せめて戦闘術や合気術などの免許皆伝であれば……いや、今更詮無きことか。

 そして現場には木更と蓮太郎もいたそうだ。

 木更は掠り傷ですんだようだったが、ショックが大きすぎたようだ。意識を失ってそのまま病院に運ばれていった。

 そして問題は蓮太郎だ。木更を庇ったことで右手右足をガストレアに喰われ、左目を抉られたらしい。

 お義父さんが駆けつけた時にはすでに命の灯は尽きかけていて、助かる見込みは限りなく低いそうだった。

 

 神様、神様、神様! 

 頼む……! 蓮太郎を連れて行かないでくれ──! 

 

 

 

2021年●月■日

 

 蓮太郎は一命を取り留めた。

 木更も目を覚ましたので今日は見舞いに行こうと思ったのだが、日向兄さんに止められた。

 理由を尋ねたが教える気はないようだ。不信に思った俺は夜中行なわれていた家族会議に聞き耳をたてた。

 

 微かにしか聞こえなかったため断片的な情報しかない。

 

「親父殿の裏切り」「告発」「ガストレア」「始末」

 そして「木更と蓮太郎も殺すべきだった」

 

 

 嘘だろう? 込み上げる吐き気に耐えながらその場を後にした。

 どうすればいい。俺一人で何ができる。誰に相談すればいい。誰か、誰かいないか、信用できる大人は。

 そうだ紫垣さん、あの人なら……。

 

 

 

2021年●月■日

 

 日記を見返しつつ紫垣さんに相談してみた。

 やはり紫垣さんは信用できる。彼に相談してよかった。まだ詳しくは調べられていないが、隙を見て天童の保管庫にでも忍び込めたら……。

 

 相談を終えてから『日記帳に記すのは不用心すぎる』と怒られた。ちゃんとしまってると伝えるとノートを奪い取られ、表紙に『創作ノート』と書き足された。

 ちょっと待ってくれ。

 見つかんなけりゃ大丈夫だろガハハじゃねえんだよ。

 

 挙句裏表紙にはデッカい五芒星まで書きやがった。それも頂点それぞれに羽まで付いている。中二病的センスだ。絶対に狙ってやってる。

 

 こんなの見られたら俺の心が死んじゃう。

 

 

 

2021年●月■

 

 ようやく蓮太郎が帰ってきた。

 蓮太郎は機械化兵士とかいうサイボーグになってしまったらしい。色々と不便が付きまとうことだろう。兄としてしっかりサポートしてやらねば。

 

 ところで日記帳に覚えのない折り目があった。誰かに見られた……? そう簡単に見つかるような場所には置いていなかったが……。いや、見られたなら内容的に処分されているだろうし、今のところ兄たちから疑われているような様子はない。

 俺の気のせいだろうか。

 

 しかしこれまで不用心にもほどがあったな。やはり俺はアホなのだろうか。

 日記は今日でやめて、このノートも明日紫垣に頼んで処分しよう。

 

 

 

 ■

 

 

 

 その日、グリューネワルトのもとに一人の少年が運び込まれた。

 少年の名は天童紅蓮。知人の紹介によるものだったが、彼は既に死にかけていた。

 

 少年は何者かの襲撃から甥を庇ったそうで、彼の右手右足は刀か何かで切り落とされていた。さらには頭にも斬撃跡があり生きているのが不思議なくらいだった。

 

 彼の引き取られた天童一族と言えば、数々の政治家を輩出してきたエリート一族だ。ガストレアの侵略が始まって以降、強引な手段に出ることも多々あっただろうから、彼らに恨みを持つものは少なくないだろう。

 それにしてもまだ幼いこの子がこのような目にあうなど許されることではない。この子は何も知らない。なにも悪くない。

 機械化兵士プロジェクトが始まって以降、数々の患者を担当してきたグリューネワルトだったが、明確な殺意を目の当たりにして、憤りを覚えずにはいられなかった。

 

 直ちに手術をと思ったが、機械化兵士プロジェクトのノウハウをもってしても彼を救えそうもない。

 葛藤していたところで医療スタッフが声を上げた。彼が意識を取り戻したようだ。

 しかし彼が死にかけていることは依然変わりなくて、悩んでいる時間はもう残されていない。

 

 グリューネワルトは心の中で紅蓮に謝罪し二枚のペラ紙を突きつけた。

 死亡診断書と、新世界創造計画の契約書。彼は厳かに問うた。

 

「生きたいか……死にたいか……どっちだ?」

 

 

 




最近の悩みはツイッターで「コックカワサキにしか欲情しない異常性癖者」と勘違いされていることです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。