天童一族の養子として転生したけど技名覚えられなくて破門された。   作:紅銀紅葉

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二章エピローグ2です。次回から三章。


【悲報】保脇、社会的生存ルート突入

「よし夏世、あそこのお兄さん……いやオジサンだな、オジサンを全力で罵倒してこい。毒舌キャラの破壊力を見せてやれ」

 

「知っていますか、紅蓮さん? 『呪われた子供たち』のほとんどは五感に優れていて、人間なら全く気にならないような匂いにも敏感なんです」

 

「つまり?」

 

「彼の加齢臭と口臭は殺傷力が高すぎます。近付きたくありません」

 

「天童紅蓮貴様ああああ!」

 

「え? 今のは俺悪くなくない?」

 

 聖居。

 暗殺者ティナ・スプラウトの捕縛、依頼主と思われる斉武宗玄も大阪エリアに戻ったことで、今回の護衛の依頼は無事解決となった。

 その功績が認められた俺たちは新たに仕事を任され、序列も微妙に上がった。

 今日は仕事の打ち合わせだ。

 

「なんだよ保脇護衛隊長──あッ、〝元〟護衛隊長だったなメンゴ」

 

 そう、保脇は『聖天子狙撃事件』解決直後、護衛隊長を解任されていた。色々としでかしてきた悪事をチクったのと、それから今回の無能さなど理由は様々だが、これで俺はハッピーなので理由なんざどうでもいいです。もう少しでクビにできたんだけどなー。

 取り敢えずテヘペロ、と可愛く舌をチロリと見せて謝罪しておいた。

 

「餌を吐き戻したインコの真似ですか? お上手ですよ」

 

「よせよ、そんな褒めるな……ん? 夏世お前、最初なんつった?」

 

「うがああああッ! おちょくるのもいい加減にしろよッ」

 

 俺と夏世の話を遮って発狂する保脇。ガシガシと頭を掻きむしって暴れている。滅茶苦茶怒ってんじゃんコイツ。ウケるわ。

 

「なんだよ、なんでそんな怒ってんのお前」

 

「なんでッ? なんでだとッ? よくもまあ抜け抜けと──」

 

「まあいいや、興味ないし。そろそろ羽柴さんたちも来るだろうし落ち着こうぜ、な?」

 

「ッ! 殺すッ、殺してやるぞ天童紅蓮!」

 

「はいはいすごいね」

 

 今にも襲い掛かってきそうな保脇。城ヶ崎と芦名は、その様子を安全圏から死んだ魚のような眼で眺めている。なに、疲れてんの? 

 

 程なくして数名の護衛官を引き連れて聖天子とその秘書、清美さんが現れた。その中には新護衛隊長の羽柴さんの姿も見える。

 

「紅蓮さん、よく来られましたね」

 

 微笑みを湛えながら歩み寄ってくる聖天子は、どこか浮かれた少女のようにも見えた。

 

「うわあん、聖天子様~。ジャイアンが虐めるよ~」

 

「目上の方をからかってはなりませんよ」

 

 クスクスと笑う聖天子様と俺を睨む保脇は、憤怒の形相だ。

 

「ところでコイツ……夏世だけど聖居に入れちゃって大丈夫なのかよ?」

 

 聖天子を前にして落ち着かない様子の少女に視線を落として言う。これまで呪われた子供たちを聖居内に招き入れるなど信じられないことだった。

 

「貴方と夏世さんには何度も命を救われてきました。信頼するには十分な功績があります。お二人には是非、新プロジェクトにご参加いただきたいのです」

 

 新プロジェクト──聖天子直属のイニシエーター部隊の設立。これから先聖天子と直接会うことも少ないだろうし、条件もかなり厳しい。それでも東京エリアの差別意識を考えれば、思い切ったものであった。

 俺と夏世のペアはそのためのテスターという名誉ある役割を与えられたのだ。

 

「どうするよ、夏世?」

 

「断れる雰囲気ではないでしょう?」

 

 生意気なやつ。答えを聞いた聖天子は一安心といった様子で息を吐いた。

 

「要件ってこれだったのか? 内容は清美さんからも聞いてたから断るつもりなんて最初からなかったんだけど……」

 

 清美さんをちらりと見る。視線に気付いたのか、眼鏡をクイと上げる動作。今日も秘書秘書してますね。

 

 聖天子は真剣な表情を作ると、厳かに尋ねた。

 

「いいえ、本題はここからです。

 ──『蛭子影胤テロ事件』に引き続き、今回の護衛依頼の完遂、そして超高序列者の打倒。わたくしは、あなたたちのような有為の人材が東京エリアを守護してくれていることを誇りに思います。

 これからも、東京エリアのために尽力してくださいますね?」

 

 聖天子の思惑を察して、俺はその場に跪く。

 幸いにも俺は、以前の式典でのやり取りを覚えていた。夏世も俺の隣に並んで動作を真似た。

 

「はい、この命に代えても」

 

「よろしい。わたくしとIISOは協議の結果、天童紅蓮紅蓮と千寿夏世ペアをIP序列五千位から二千位まで昇格させます。

 これからもよろしくお願いしますね、紅蓮さん」

 

 

 

 ■

 

 

 

 聖居を出ると、夏世と共に天童民間警備会社を目指した。

 駅を降りてしばらく歩くと、天童民間警備会社の入るテナントビル──『ハッピービルディング』が見えてくる。

 しかしもともとボロかったビルは、それどころかあちこち崩落しており、青の防水シートなどで補強されていた。

 木更の抜刀術、えーと、う、うねうねびくびく? そんなかんじの技で床を斬り、襲撃者との戦闘を有耶無耶にしたといったところだろうか。他の階の従業員には申し訳ないことをした。

 

 階段を上がっていくと、事務所からは騒がしい声が聞こえてきた。

 

「おーす、顔見に来たぞ」

 

 扉を潜ると従業員たちの出迎えの声。

 蓮太郎に延珠ちゃん、そして快復した木更だ。元気そうで良かった。

 木更に声をかけようとしたところで見知らぬ少女が顔を出した。

 

「里見さん……ついにやっちゃいましたか。金髪女児の誘拐……逮捕は免れませんよ」

 

「嗚呼、兄として不甲斐ない」

 

「攫ってきたんじゃねぇよ!」

 

「じゃあ誰この子。お前の相棒は友達を民間警備会社に連れてきちゃうような残念な子なのか?」

 

「妾はそんなことしないぞッ」

 

「つうかアンタらも知ってるだろ、コイツは──」

 

 からかって遊んでいると、件の少女はコップを差し出してきた。

 

「どうぞ、お水です」

 

「ああどうも」

 

 気が利く子だ。木更とは大違いだ。

 コップに口を付けると、少女は自己紹介を始めた。

 

「天童紅蓮さん、ですよね? 私はティナ・スプラウト……です」

 

 ほーんよろしくと思ったところで違和感があふれ出した。ゴボリと音を立てながらむせて、俺は口を膨らませながら洗面所に駆け込む。

 ──コイツ、まさか雇ったのかよッ⁉

 

「噴き出してきたッ!」

 

「器用だな」

 

「俺は天童だ。みんなの鑑。無様な姿なんて、さらせない。具体的に言うと野良犬にあげるビーフジャーキーを野良犬の目の前で食ったりはしない」

 

「どうして知っているのよッ」

 

「え……木更、お前そんなことしてたの? さすがに引くわ……じゃなくてッ」

 

 キー! とヒステリーを起こす木更を無視して蓮太郎に詰め寄る。

 

「俺だってさっき知ったんだよ……、木更さん曰く『雇っちゃった♪』だとよ」

 

「生活環境悪すぎてとうとう頭沸いたのか? 可哀想に」

 

 騒いでいると、ティナが所在なさげにしていることに気が付いた。

 

「ああ、ごめん。知ってるとは思うけど、俺、天童紅蓮。こっちは相棒のピカチュ──痛ッッッタァ⁉」

 

「千寿夏世です。よろしくお願いします」

 

 コイツついに殴りやがった! 

 

 ティナははにかみながら一歩前に出て、事務所のみんなに頭を下げた。

 

「今日から天童民間警備会社でお世話になることになりました。よろしくお願いします、皆さん!」

 

 ま、まじかよ……。いいのかこれは……ああ、ダメだ、満足気な表情の木更を見て諦める。

 

「まあいいや。それよりティナちゃん、これからどこで寝泊まりするんだ? まさか事務所とか言わねえよな」

 

「もちろん私の家で預かるわよ」

 

「……。ティナちゃん、よ~く考えたほうが良いぞ。あの女社長、『私出来る女です』みたいなオーラ出してるけど、生活レベルは底辺ぶち破って地獄以下だ。ついでに幼女の成長する分のおっぱいを常日頃から盗んでる」

 

「やっぱり!」「許せませんね」

 

 延珠ちゃんと夏世が怒り、ティナちゃんが何か恐ろしいものを見るような目で木更を見た。

 

「木更さんにそんなへんてこな妖怪みたいな能力はない! 子供の頃から一緒に風呂に入ってきた俺が保証する」

 

「お前気持ち悪い」

「なんで蓮太郎が答えるのだッ」

「サイッテー! 里見くんサイッテー!」

 

「おい待った! 今のは誤解だ!」

 

「私先に帰っていいですかね?」

 

 どったんばったんと繰り広げられる大乱闘に、収集が付かなくなってくる。

 上階の闇金がびっくりして様子を見に来て、延珠ちゃんの肘鉄がモロに入り気絶させ、蓮太郎とティナちゃんが悲鳴を上げ、いつの間にか夏世が帰り、ハイになった木更が殺人刀を振り回す。

 

 そんな日常をしっかりと噛みしめて俺は、家族の幸福がいつまで続くようにと願うのだった。

 

 

 




『雲嶺毘却雄星』
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