天童一族の養子として転生したけど技名覚えられなくて破門された。   作:紅銀紅葉

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プロローグ2です。夏世は蓮太郎の家でお泊り会してます。


ピザって十回言ってみ?ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ。お前ら呑気にピザ食ってる場合じゃねーからな

 東京エリア外周区・第三十七区、天童流道場。

 

 廃墟化した広い道場中央に、男が二人。

 

 天童流戦闘術・九段──天童紅蓮。

 天童流神槍術・皆伝──天童和光。

 

 そのどちらもが武の道を極めた天童流最高峰の達人である。

 

 張りつめた空気の中、先に動いたのは和光だ。天童式神槍術『八面玲瓏の構え』──攻防一体の構えを取る。

 紅蓮も構える。攻の型『水天一碧の構え』。

 すかさず和光が防の型『鉄心石腸の構え』となり、紅蓮は攻防一体の型『百載無窮の構え』に構え直す。

 流れるように和光が『麟鳳亀竜の構え』を取れば、紅蓮は『金剛不壊の構え』に切り替える。

 

 天童流には攻略法と呼ばれるものが存在し、攻の型には防の型、防の型には攻防一体の型、攻防一体の型には攻の型から攻め崩すべしという三竦みの法則がある。

 そのため互いの手の内を知り尽くした門下生同士の戦いになると必然的に技の読み合いが生まれる。

 

 型から型への変型時の捌きに継ぎ目がなく、その変型が目まぐるしく行われる様はさながら演武のようで、それが戦いだということを忘れて美しくも見えてくる。

 

 コンマ秒のズレもない変型を行う紅蓮を前に、和光は感嘆していた。数年前とは比べ物にならない。最後に手合わせしたのはいつだっただろうか。その時は勝利した和光だったが、それでもあわやといったところまで追い詰められたのだ。今度も勝てるとは限らない。

 思考しながらも、流れるように型を変えていく。『八面玲瓏の構え』──『水天一碧の構え』──『鉄心石腸の構え』──『百載無窮の構え』──『麟鳳亀竜の構え』──『金剛不壊の構え』──『八面玲瓏の構──「だぁーッ! もうめんどくせぇッ!」

 

 叫ぶと同時、油断なく型を組み替えた紅蓮に変化が表れた。

 バサリ、と衣服を突き破って漆黒の翼が生えたかと思うと、背中からジワリジワリと黒が広がっていく。目を見張る和光。その視線は彼が幼いころに観た特撮ヒーローのようなブラックスーツに覆われた紅蓮に注がれている。

 和光が攻めあぐねているとあっという間に全身を漆黒で覆った紅蓮が、型を捨てて床を踏み砕き飛び出してくる。

 前方に身体を落下させながらの超速速攻。門下生時代は自主練習でしか使用せず、バレそうになれば『あ、あっぶね~、転んだだけですよ~』で押し通してきた、恥知らずにも程がある紅蓮オリジナルの攻の型。

 加えて全身──脚を覆う翼が筋肉(バネ)の代わりとなって紅蓮の超速を神速に至らせる。

 気が付いたころにはもう遅い。紅蓮の拳が和光の槍を叩き折っていた。

 

「──降参だ」

 

 しばしの沈黙を打ち破り、和光が苦々しく負けを認めると、それまでの真剣な表情は何処へやら、憎たらしい顔で紅蓮が飛び跳ねる。

 

「ッしゃオラァ! ようやく勝てたぜッ!」

 

 和光は舌打ちして槍を置いた。深く息を吐いて気持ちを切り替える。

 

「やるようになったじゃないか、紅蓮。見違えたぞ──それで、用件とは一体なんだ?」

 

 振り向いた紅蓮の眼は、全く笑っていなかった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「ほらよ」

 

 全身を覆っていた翼を背中に戻し、ダメになった服を着替えた俺は、兄さんに書類束を手渡した。

 

 兄さんは素早く書類を捲っていく。そこにはアルデバランにバラニウム浸食液を注ぎ込まれた三十二号モノリス──過去に和光が発注を取りまとめたモノリスの詳細情報が記されている。

 

「クソッ、一体どこでッ?」

 

 兄さんが唸ると、俺は右上腕部をトンと指差して笑った。

 

「ウチは神出鬼行が売りだからね」

 

「天童の保管庫に忍び込んだというのか? 一体どうやって──いや」

 

 今更詮無きことだなと呟く兄さんに、俺は目を細める。

 

 本来モノリスが発する磁場に耐えられるのはステージⅤガストレアのみのはずなのに、ステージⅣガストレアでしかないアルデバランが接近するどころか数十分に渡って取りついていられた理由。

 俺は兄さんが持つ書類に視線を落とした。そこには天童和光の悪事が記されている。ガストレア大戦末期の混乱に乗じて、バラニウムに混ぜ物をして安くモノリスを作り、浮いた費用を懐に入れていたといった内容だった。

 純度が下がり磁場が弱まったモノリスは、強大なガストレアには通用しない。

 

「和光兄さん、アンタが裏でやってる悪事に関しては何も言わないし、知りたくもない。けど、こちらに害が及ぶというなら黙ってはいられないよ。今回のパンデミックは兄さんが引き起こしたようなものだ」

 

 兄さんは何も言わない。そもそも俺の言葉が届いていないように見える。

 

「……今回俺は、アジュバントを組んで戦争に参加することになった」

 

 ようやく兄さんが顔を上げた。これだけの悪人でも、俺のことを愛しているのだ。

 

「い、嫌だ、死んでしまうぞ」

 

「死ぬ気なんてサラサラないけど、もしそうなればそれは兄さんのせいだよ」

 

「そんな、私は……」

 

 積み重ねてきた罪の重さを、ようやく理解し始めたころだろうか。

 

「でも俺は死にたくないし、兄さんは俺を死なせたくない。そこで提案だ」

 

 サディスティックな調子で口元を歪める。

 

「『日本純血会』――ぶっ潰すの手伝ってくれない?」

 

 

 

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