天童一族の養子として転生したけど技名覚えられなくて破門された。   作:紅銀紅葉

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前話投稿日の翌日に日間ランキングに入っていたみたいです。評価、お気に入りありがとうございます。



FAQ第九話の主役は保脇なので、保脇は第二の主人公といっても過言ではないのでは?

 天童民間警備会社はアットホームな職場だ。なにせゴキブリとまで仲良くなれる。

 そんなぬるま湯に浸かりすぎたのだろうか。今この瞬間、アジュバント内の空気は最悪に近かった。

 

 目立ち過ぎたのもあって俺たちは、拠点に場所を移していた。

 アジュバントの登録が完了していないため、分隊用テントはもらえていない。そんな理由で各自持参した折りたたみ椅子を円形に並べて座っている。

 俺を起点に時計回りで夏世、レンタル王(?)、将監、里津である。情報量が多い。

 というか俺の両隣がキツイ。なんだこの今カノと元カノの板挟み(物理)になったかのような気持ちは。

 彼女たちは彼女たちで互いに警戒しあっているようだし。今一番に警戒すべきはレンタル王(?)じゃない? 違う? 

 

「さて、では今いるメンバーだけでも軽く自己紹介しようか」

 

 レンタル王(?)の提案。非常にありがたいがお前が仕切るのかよ。

 まあこの沈黙は誰にとっても良いものではないので提案には乗るけど。あの将監でさえ気まずそうにしているし。

 

 では最年長の私から、とレンタル王が立ち上がる。

 

「じゃあ変態からよろしく」

 

「待て! 私は変態ではない!」

 

 堂々と嘘をつくな。

 

「我が名はレンタル王……IP序列は七百六十位だ」

 

 序列を聞いて舌を巻く。

 七百六十位。ふざけたナリだが、この場では一番の高序列者だろう。

 

「っていやいやいや、序列はさっき聞いた。本名を言え本名を」

 

「それはできない相談だ」

 

「帰れ!」

 

 叫ぶも無視される。クソッ、こんな変態の心の声なんざ聴きたくねえぞ……。

 ウンザリしていると、顔を覆って『死にてえ……』しか呟かなくなっていた将監がくぐもった声で答えた。

 

王監(おうげん)伊熊王監(いくまおうげん)だ。司馬重工の民警部門に所属している」

 

「ム……」

 

「げえ、マジで兄弟なんだ」

 

「司馬重工って……実力者揃いで有名なところですよね?」

 

 里津がおえ、と舌を出して顔色を悪くし、夏世は所属を聞いて驚いていた。

 将監が『兄貴』と口走ったときは正気を疑ったが、本当らしい。渋々とライセンスを差し出されたので写真を見るとなかなかのイケメンだ。しかしボディビルダーの身体に爽やかなイケメンの顔を取ってつけたコラ画像のように見える。正直言って気色悪い。

 そんな俺たちの動揺を知ってか知らずか、王監は戦闘スタイルの説明に移る。

 

 王監は鬼の金棒みたいな武器──金砕棒を地面に置くと、拳大もある石を拾ってくる。

 

「ここに石があるだろう?」

 

「あ、ああ……」

 

「これをこうして、こうだ」

 

 掌に置いた石を握りしめると、さして力んだ様子もないというのに、砂礫と化して零れ落ちた。

 どういうことなの……。

 いや、やり切った感出してるけど子供たちはドン引きで、将監はまだ凹んでいるからな。

 気持ちを強引に切り替え疑問を口にする。

 

「てかアンタ、イニシエーターはどうしたんだよ?」

 

「いない」

 

「は? なんで」

 

 民警は元囚人や犯罪者まがいの連中も多くいるため、相棒(バディ)殺しなんて事件も少なくはない。人殺しを強要するような男の兄なのだ。その可能性は十分にありえる。

 

「そう警戒するな。俺のイニシエーターは過去の事件で片足を失っていてな。本人はやる気なのだが、大人として……いや、保護者として仕事はさせられん。ここ数年は俺一人で依頼をこなしている」

 

 その話を聞いて俺は内心謝罪した。

 本来なら、イニシエーターが使い物にならなくなれば、IISOに申請して別のイニシエーターと再契約する。序列は下がるが、そうでもしなければ食っていけなくなるのだから当然といえば当然だ。

 しかし解雇されたイニシエーターは問題のあるプロモーターのもとへ送られて命を落とすか、資格を剝奪されるかくらいの選択肢しか残されていない。

 この男は少女を守るため命をかけて戦っているのだ。

 

「ということはアンタ単体の戦闘力でその序列なのか」

 

 聖天子狙撃の犯人──序列九十八位のティナ・スプラウトもだが、それはイニシエーターの能力と、『NEXT』の機械化兵士の能力によって保持された数字だ。

 ただの人間がその偉業を成し遂げたというのか。引く手あまただったろうに、何故俺のところに? そう思ったところで一つ思い出した。

 

「なあ、王監さん。アンタ、俺が所属してる『呪われた子供たち』の支援団体にお菓子やおもちゃの寄付してねえか?」

 

 そう尋ねると彼は目をそらした。まじでか。

 届けられた物資に添えられた手紙には、いつも同じマークが書かれていたのだ。レンタル王のマスクの模様とそっくりの。それで気が付いた。

 うーん、見た目さえ良ければ最高に尊敬できる大人なのだが。人を見た目で判断するのは良くないが、パンツ一丁に覆面というこのスタイルは犯罪者級だった。

 

 続いて将監の番となる。彼は身内の恥(?)を気にしてか魂が抜けてしまったかのようにグデングデンだった。

 所属(三ケ島ロイヤルガーダーさん)と戦闘スタイル(バスターソードを用いた前衛)だけ言ってまた座ってしまう。お、お疲れですね。

 

 続いて里津。俺をチラチラと気にしていた。

 

「序列元五百五十位、モデル・シャーク。この占部里津にかかればアルデバラン討伐だって余裕だね」

 

 彼女は曲刀(カトラス)を曲芸じみた手捌きで操ってみせる。アジュバント内最高到達序列に恥じない動きだ。

 が、しかし。

 

「今の序列を言いなさい」

 

「『なさい』ってアンタ、いつまで保護者のつもり? やめてよ、他人なんだからさ」

 

「さっさと言え」

 

「う……。八千五百位……」

 

 悔し気に答える。まあ、ペア組み立てで何の功績もないのだから妥当な順位だろう。

 東京エリア壊滅の瀬戸際。猫の手も借りたい時期ということもあって、序列剝奪処分を解消されたそうだ。

 

 そこで何かに気付いた夏世が「あっ」と声を上げる。

 

「……里津さんのピアスの一つ、紅蓮さんとお揃いなんですね」

 

 ジト目で言われて同時に耳を隠す。油断した。里津の品性の感じられないピアスたちの中に一つ、控えめなデザインのものが揺れている。

 クソッ、これでは互いに未練タラタラみたいではないか。

 違うんだ夏世! 俺はお前一筋だぞ! なんて言えるわけがないので黙っておく。

 里津は顔を真っ赤にしながら俺を睨みつけて、席に着いた。

 

 そして夏世。明らかに里津を敵視している様子だ。

 

「千寿夏世です。モデル・ドルフィンのイニシエーターで、紅蓮さんとのIP序列は二千位です」

 

「ただの雑魚じゃん。そんなんで分隊長なんか務まるの?」

 

「私が元千五百八十四位、紅蓮さんはあなたと同じ元五百五十位なので差は無いと思うのですが。ああすみません、いま現在の序列では六千五百もの差がありましたね」

 

 嫌だな、怖いな。とても十歳児の会話とは思えない。しかも内容は修羅場だ。

 

「今回の作戦では司令塔兼後衛を務めさせていただきます」

 

 夏世は自らの因子の説明(IQが二百十あるなど)を説明すると、よせばいいのに里津がまたしても突っかかってくる。

 

「ハン、イニシエーターのくせに戦えないとかダサ。序列だって相棒頼りなんじゃないの?」

 

「ッ。後衛が全くいないことに問題があります。それに、プロモーターが戦いやすい盤面を作るのが得意なだけであって、戦えないわけではないですし」

 

 薄く焦りのような感情。

 生身での火力不足は夏世が一番気にしていることだ。夏世の周囲には優秀なイニシエーターが多く、オールラウンダーのティナちゃんは、全ての肉体的スペックで夏世を上回る。プロモーターも近距離特化の変態的な武闘家ばかりなので辛いところだ。蓮太郎も木更も彰磨もおかしいよ! 俺は普通。

 

「俺にも自己紹介させてくれ」

 

 キャットファイトを仲裁して軽く天童式戦闘術の型を見せる。

 王監の拍手にだんだんと気分も上がってきた。

 木を叩き折り、爆発四散させ(彰磨のパクリ)、飛距離のある拳撃(木更のパクリ)、飛距離のある爆発四散(意味不明)を披露して残心。

 

「──あ」

 

 気が付けば全員がドン引きしていた。

 またオレ何かやったいました?(笑)

 

 

 

 ■

 

 

 

「また断られたんですけど」

 

 三ペアが揃った俺と夏世は、申請に向かったものの、またもや「お断りします」を食らってメンバーの元へ帰ってきていた。

 

「申請直前で団長の我堂長正(がどうながまさ)に見つかってさ、人数が六人に達していないことがバレた」

 

 アジュバント結成の条件は三ペア六人。王監さんのイニシエーターが不在のため、一人足りないこととなる。

 俺たちとしてはそのままゴリ押すつもりだったのだが、不運なことに俺と王監さんが我堂長正と知己の仲だった。勿論王監さんの事情も知られている。構成員名簿も確認されてお説教である。クソジジイ。バーカバーカ、ハゲ。

 

「ンなもんテキトーな奴引っ張ってくりゃいいだけじゃねえか」

 

「無理ですよ、高序列者ばかりの分隊に投入されて、マトモに機能する民警ペアなんてそういませんよ。好き勝手動く前衛ばかりとなると猶更です」

 

 将監が興味なさげに言うと、その意見は即座に夏世に否定される。

 け、喧嘩しないでね……? 将監のイニシエーターではなくなったからか、今日の夏世は攻撃的だ。

 

「とっとと死んでくれりゃあ関係ねえだろ」

 

 苛立たしそうに将監が吐き捨てるが、そんなことは許されない。

 俺は里津と王監を見る。

 

「三ケ島ロイヤルガーターと司馬重工で手の空いてる民警は……」

 

「司馬重工は難しい……というかアジュバントの誘いを全て断ってきてしまった」

 

 使えねえ。

 

「ウチ……っても契約のときに顔出したくらいだけど、向こうも難しいと思うよ。『蛭子影胤テロ事件』で高序列ペアの多くを失ったからって歓迎されたくらいだし。この人、会社内でも嫌われてるみたいだし」

 

 そういって親指で将監を指す。

 

「自業自得ですね」

 

「やめたれ」

 

 酷い言われようである。たしかに復帰直後のプロモーターに背中を預けるのは嫌かもしれないけど。

 

「うあ~、クソ仕方ねえ。取り敢えずダメもとで未織と聖天子に掛け合ってみて…………あ、聖天子に頼めばいいのか」

 

 一人、手の空いているイニシエーターに心当たりがある。

 それに気が付いた俺は、自然にポン、と手鼓を打っていた。

 

 アジュバントに足りない優秀な後衛の補充、そして上手くいけば聖天子のプロジェクトに参加させるイニシエーター候補が自由になる。

 自分にしてはいいアイデアなんじゃないか? 

 尻ポケットから携帯を取り出すと、早速聖天子の番号を呼び出した。

 

 

 




レンタル王が司馬重工所属なのは、司馬重工経営の『スーパー銭湯シバ』で番台やってたからです。あとノリ。
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