天童一族の養子として転生したけど技名覚えられなくて破門された。   作:紅銀紅葉

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モデル・ロリのイニシエーター、紅銀紅葉です。
私が紅蓮のようにブラブレ世界に転生したらいっぱい勉強してイニシエーターの浸食抑制剤を注射から座薬に改良します。やましい気持ちは一切ありません。


いつも財布に千円以上は入っていない里見君では救えない幼女もいる。

 な、なに~? 蓮太郎が駆けつけてくれたまではいいけど、夏世が街の手前でガストレアの大群を足止めしているだって~? 

 そいつは大変だってことで向かおうとしたら立ち上がることもできなくて草。

 仕方がないので菫先生から貰ったAGV試験薬? とかいうゲームのエリクサーみたいのが入った注射器ぶっ刺してみたら地獄を見た。なにこれめっちゃ痛い。マジでマキシマム・ペインって感じ卍

 あのクソババアふざけやがって。死体とばっか遊んでるから脳みそも腐ってんじゃねえのか。

 菫先生は嘗てないくらい神妙な顔つきで「出来れば使うなよ」などと言っていたが、これは痛すぎますね。許せませんよ。

 ともあれ気持ち悪いくらいに全快したので良しとする。もうひと踏ん張り、気合い入れていきましょう。

 

 あ、『七星の遺産』は翠ちゃんが壊したってさ。やったね。

 

 

 

 ■

 

 

 

「本当に、キリがないッ」

 

 戦いながら、夏世は叫ぶ。

 

 目の前にはステージⅠからステージⅣまでさまざまなガストレアの大群。

 

 フルオートショットガンを構え、撃つ、撃つ、撃つ。

 倒した数が三十を超える頃には数を数えるのも馬鹿らしくなってやめた。

 

 ステージⅣともなれば流石に苦戦するが、それでも過去に討伐されたというステージⅤガストレア、タウロスの右腕的存在だったガストレアのような特異性がなかったのは不幸中の幸いか。その他のガストレアにもそれほど脅威を感じない。

 元来自分はイルカの因子から得られる高い知能によるバックアップが主な立ち位置で、戦闘向きのイニシエーターではない。そんなか弱い自分でも頑張れば殺しきれる。

 

 しかし夏世が守る蛭子影胤との決戦場からは、今も絶えず戦闘音が繰り返されている。自分がここを離れれば、この辺りから集まった数え切れない程のガストレアたちは大挙して押し寄せることだろう。そうなれば今回の作戦が失敗することは目に見えている。

 

 蓮太郎には「劣勢になれば逃げる」なんて言ったが、すでに逃げられるような状況ではない。逃げるわけにはいかない。

 

 戦況は楽ではない。敵の数もわからないため策もない。生き残る術も、多分もう存在しない。

 

 夏世の立ち回りから徐々に慎重さが削られていって、段々と捨て身の突撃が目立ち始める。

 

 ステージⅠガストレアを踏み付けにしながら突撃してくるステージⅣガストレアに散弾を浴びせながら、辺りを見渡した。大小さまざまなガストレアは、やはり数え切れない。その血走った赤い瞳は、そのどれもが夏世を捉えていた。

 

 

 

 ■

 

 

 

「邪魔だ死ねボケェ‼」

 

 大喝一声。

 苛立ちを込めに込めて放った拳がガストレアを蹂躙する。

 

 とはいってもこの程度ではガストレアは絶命しない。バラニウム製の武器もないし勝ち目ないじゃーんってタイミングでボロボロの夏世を発見。

 

 ヤッホーと手を振ると夏世は驚いた様子だったが、すぐさま現実に戻り戦闘を再開する。

 

「無事だったか」

 

「おかげさまで。それより蛭子影胤はッ? 里見さんと延珠さんはどうなったのですかッ」

 

「知らん。まだ戦ってんじゃん?」

 

 街の方角を指さす。微かにだが衝突音が聴こえてくる。

 

「な、あなたは馬鹿なのですかッ? もし彼らが負けたらどうします? 東京エリアの壊滅まで一刻の猶予もありません。ここは私一人でも十分食い止められます。ですから──」

 

 賢い子だ。この短い会話でもう、奇襲組が全滅したことを察している。

 

「うるさいな。こちとら肉も骨も潰されかけて立ち上がれないくらい弱ってんだ。そんな大怪我人にこれ以上戦わせようなんて性格悪いぞお前」

 

「衣服以外は無傷に見えるのですが」

 

「菫ちゃんのお薬使ったから」

 

「AGV試験薬を使ったのですかッ?」

 

 夏世は悲鳴をあげた。

 

「うん。あれ痛いね」

 

「本当に馬鹿なんじゃないですかッ⁉」

 

 夏世曰くあれは、二十パーセントという超高確率で被験者をガストレア化させる代わりに、バラニウムの再生阻害をも上回る再生能力をもたらす劇薬だという。

 

 あぶねー。そういうことはちゃんと言っとけよやぶ医者。あれ言ってたっけか? 忘れた。

 

「とにかく俺はもう戦いたくないの。『七星の遺産』の破壊には成功したらしいし、あの状態の影胤に負けることもねーよ」

 

 言い切って俺も戦闘を再開する。夏世はまだ疑っているようだが、こちらを責めるような視線はもうなかった。

 

「共闘前に確認したいことはッ?」

 

「いくつもありますがッ」

 

「仮想訓練で十分掴めたんじゃあなかったのかよ」

 

「あれは対人戦に限ります! この数のガストレアを相手取るのは想定外ですよッ」

 

 ですよねー。

 

 その時携帯が鳴り、着信を訴えてきた。

 

『紅蓮さん、私です』

 

「ドーモ。手短に頼むぜ、今ちょっと忙しいんだ」

 

『見えています。ただ事態は一刻を争います、落ち着いて聞いてください』

 

 そういえば偵察飛行している無人機ががあるんだっけか。

 

「おい、まさか蓮太郎の奴」

 

『いえ、彼らの手によって蛭子影胤追撃作戦は成功しました。しかし──』

 

「なんだよ煮え切らないな」

 

 一呼吸置いて発せられたそれは、死刑宣告にも等しいものであった。

 

『──ステージⅤガストレアが姿を現しました』

 

 一瞬、『大絶滅』の文字が脳裏を過ったが、そんな場合ではないと絶望を振りほどく。

 

「で、俺はどうすりゃいい?」

 

『は?』

 

 聖天子は面食らったようで声が裏返る。

 

「だから、俺にできることは?」

 

 彼女は息をのむと、すぐに持ち直したようで指示を出す。

 

『現在里見ペアが『天の梯子』に向かっています。あなた方には──』

 

「なるほど了解、足止め続行な」

 

『あ、ちょっと紅蓮さ──』

 

 ガストレア大戦期末期の巨大兵器──通称『天の梯子』

 金属飛翔体を亜光速まで加速して撃ち出すレールガンモジュール。

 

 蓮太郎がそちらに向かっているのなら問題ない。

 

「夏世!」

 

 銃声に負けないよう、怒鳴るように名前を呼ぶ。事情を説明すると彼女は戦闘の手を休めることなく力強い応答。さすがは千番台、頼りになる。

 

「しばらくすれば彰磨たちも合流するはずだ。お前は俺のサポートと、倒したガストレアのトドメを頼むッ」

 

「はい!」

 

 それからほどなくして、凄まじい光が辺りを過ぎ去り──聖天子から吉報が届いた。

 

 

 

 ■

 

 

 

 救助に来たヘリに乗せられて帰路につく。

 本音を言えば怖くて仕方がないのだが、同乗している兄弟子の存在がそれを表に出すことを許さなかった。

 

 それぞれの奮闘を称えあった後、彰磨と翠ちゃんは落ちるように眠ってしまった。

 

「今回はありがとうございました」

 

 俺と夏世の間に訪れる沈黙に、往路での様子が思い起こされるが、彼女はすぐに口を開いた。

 

「おかげで、直接的ではないにしろ、将監さんの仇を討つことができました。これであの人からも文句を言われずに済みそうです」

 

 気恥ずかしくなって視線を逸らす。

 

「……で、これからどうするんだ。お前は、伊熊将監のとこに戻るのか」

 

「将監さんもあれで引退を考えるような人ではありませんしね。義肢を買って、リハビリをして……。暫くは活動を休止することになるでしょうけど」

 

 夏世は楽しげに目を細める。

 

「私、天童さんとペアを組めて良かったです。はぐれてしまったり、再会してからも戦闘続きで対話の余裕なんてありませんでしたけど、それでも」

 

「十歳児が悪女みたいなこと言うんじゃねえよ……」

 

「失礼ですね」

 

 ムッとする夏世を見て苦笑する。俺としたことが、ほんの少しドギマギさせられた。

 

 すると今度は、声を暗くして言う。

 

「天童さんは、人を殺したことがありますか?」

 

 躊躇いながらの質問に、俺はスッと目を細める。

 

「それ、皆に聞いてんの?」

 

「そういうわけでは……」

 

「……俺はまあ、あるよ。民警としての仕事も手広くやってると、ヤクザとか、傭兵みたいな連中とか、人との衝突は避けられないしな。極力避けてはいるけどさ」

 

「私も、あります。将監さんの命令で競争相手の命を奪いました。今回の件だって、将監さんと挑んでいたら、きっと人を殺していました」

 

「……それで、お前はどう感じた?」

 

「怖かったです。手が震えました。でもそれだけです」

 

 ………………。

 

 それきり押し黙る夏世に俺は、ハアアアと深く息を吐いて、

 

「あー、クソ仕方ねえな。取り敢えずお前は、将監のリハビリが終わるまで俺と契約しろ。あ、『イニシエーターは道具』だとか『選ぶ権利はない』とか無しな。少なくとも聖天子様は東京エリア救った人間に対してそこまで薄情じゃねーよ」

 

 左手でガリガリと後頭部を掻きながら、空いた右手を差し出した。

 

「これでいーかよ?」

 

 果たして彼女は腹黒い笑みを浮かべる。

 

「不束者ですが、よろしくお願いします」

 

 握り返された手により一層力を込めて、彼女との契約は成立した。

 

 

 




▼天童紅蓮

 見切り発車だったので一話時点で名前も性格も容姿も決まっていなかった。
 名前は天童家の養子ということでカッコイイ名前にしたかったのと、蓮太郎の「蓮」も入る名前にしたかったから。
 菫が原作小説三巻で「この宇宙で一番美しいものがなんだか、知ってるかい?」と蓮太郎に問いかけるシーン大好きなんですよね。アニメエンディングテーマの「トコハナ」の歌詞にもありますね。
 身長は蓮太郎と彰磨の中間くらい。
 髪型は基本黒髪にスパイラルパーマをあてた量産型大学生。菫に量産型大学生スタイルを馬鹿にされてからは前髪を上げるなどしてしている。養子であることを気にして、髪をセットするときはかなり束感を出すようにしているのだとか。 
(一定以上の社会的地位さえあれば)人間変わろうと思えば変われるものだと思っているので、そうせずに犯罪に手を染めるような人間を毛嫌いする。影胤とは一生分かり合えないだろうし同情することもない。
 過去に何があったかは知らないが、大怪我して運ばれた先はまさかのグリューネワルトの研究室。
生体強化兵(バイオブーステッドソルジャー)』と呼ばれる強化人間に。筋組織を弄られているためパワーもスピードも(呪われた子供たちほどではないが)超人的。あと感覚が鋭いらしい。
 転生者で、転生特典は「家族に溺愛される」こと。(すべての兄が溺愛しているわけではない)
 最近の悩みは、元相棒に着信拒否されていること。

▼里見蓮太郎

 紅蓮のことを慕っており、彼が彰磨と切磋琢磨する様子を間近で見てきた彼は、原作よりちょっとだけ強く、ちょっとだけ機械の身体への忌避感が薄い。
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