Elonaの魔法戦士は四方世界に逝く   作:緋色の鎮魂歌

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うみみゃぁ!


02 おやすみ…明日…また朗らかな芽を吹いておくれ

ガタゴト、ガタゴト

 

 

あなたは荷車を引きながらゆっくりと草原を進む。あれから、泣き疲れて眠った耳長を荷台に寝かせ、たき火の前で寝ずの番を引き受けていたあなたは空が白み始めたのを見ると移動を始める。彼女らは未だ起きてはこない。無理もない、とあなたは思うだろう。あんなことがあった後だ、いくら吐き出したからと言っても、精神的疲労も肉体的疲労も回復しきっていないのだ。

 

《魔法の地図》によってこの先に道があることはわかったので、彼女らを起こさないように荷車を引きながら進む。ここまでくる道中、何の敵対勢力にも襲われなかったので、安堵する反面残念でもある。どうせなら盗賊団の一つや二つ出て来てもいいものではないかとあなたは思う。そうすれば、この世界の人類の大まかなレベルが知れたと思うのだが、と残念に思う。

 

そんなこんなで歩みを進めていると、道が見えてくる。道につき、さてどちらに進めばいいかとあなたが考えていると、道の先から何やらある程度の人数の集団がやってくる。近づいてきた姿を見るに、隊商のような集団であるとあなたは思う。

 

「よう。あんた、こんなとこで何やってんだ?」

 

隊商の護衛として先頭を歩いていた重装備の男戦士があなたに話しかけてくる。気さくに話しかけてくる彼ではあるが、その気配や瞳は一分の隙もなく警戒しているのが判る。それに隊商の護衛に就いている彼の一党(パーティー)の全員が周囲に気を配りながらも、あなたに対しての警戒も全く疎かになっていないことから、この一党がかなり高位の一党なのではないかとあなたは思う。

 

そんな彼らに警戒されている事について、このまま警戒されていてもいいか、と思うあなたではあったが、今荷車で眠っている彼女らのためにも一応、警戒を解いておこう。

 

あなたは、自身が旅の者であり、小鬼(ゴブリン)共の巣で女性二名を救出したと、また今は町に向かっているのだとあなたは言った。

 

「ッ!…そうか。彼女らを助けてくれたこと、礼を言う…確かに、見たことがある、確か十日ほど前にギルドで彼らを見たことがある。俺たちがこの隊商の護衛に出る直前だった筈だ」

 

「確かに、見たことあるね。この耳長の弓手、最近新しくできた白磁の男戦士の一党だった筈ね……他の奴はどうなったね」

 

重装戦士の言葉に、様子を窺いに来た呪術師と思しき男があなたに聞く。あなたは懐から取り出した白磁の認識票を彼らの前に差し出す。彼らはそれだけで察したのだろう、一言、そうか、と呟くと目を伏せた。

 

「彼らを助けられなかったのは惜しかったが、それでも彼女らだけでも助けられたのは僥倖だ。ギルドに代わり礼を言う」

 

重装戦士の礼をあなたは受け取り、彼女らを町まで運ぶために隊商に同行してもいいだろうか、とあなたは問う。重装戦士と隊商の長の了承を得て、隊商に同行する運びとなった。隊商の最後尾につき、隊商の歩みに合わせて街に向かっていく。時折、数匹の魔物が散発的に襲ってくるが、一党の活躍により、全くの脅威となっていなかった。

 

あなたは、安心する心の何処かで退屈もしている。散発的な魔物の襲撃はあっても、あなたの目から見たら所詮最弱(プチ級)。せめてちょっと強い(グリズリー級)くらいの敵が出てきたり、盗賊団の一つや二つ出てきても構わなかったのにとも思う。まあ、それにしても安全な行路であるのならば、何も問題はないのだが。

 

ここはやはり、あなたの住んでいた世界(ノースティリス)ではないのだと、改めて実感させられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、凡そ五時間ほど歩き、あなたと隊商一行は街にたどり着くことができた。そこは辺境の街といった様子ではあるが、昼過ぎであることも関係するのか、なかなかの活気に満ちていた。重装戦士が隊商の長と話している間、あなたは先程の男呪術師から彼女らをどうすればいいのかを聞いていた。

 

「一応二人とも地母神の神殿に連れて行けばいいと思うね。地母神の神殿は彼らの教義として『守り、癒し、救え』の教えを守ってるね。傷ついた彼女らも回復するまでの面倒は観ておいてくれるね」

 

それに何より、あの女神官は地母神の神殿出身ね、と男呪術師が言う。どうやらこの世界(四方世界)にも土着の信仰があるらしい。そこの神殿に連れて行けばいいのか、とあなたは言うと呪術師は頷く。あなたたちが話していると、重装戦士が話し終わったのか、あなた達の方へとやってきた。

 

「地母神の神殿には俺たちも同行しよう。一応、これでも翠玉等級の俺達が着いていったほうが、何かと説明もつくだろうしな」

 

その申し出にありがたい、とあなたは言う。この世界で翠玉等級なる位がどれ程のものなのかは判りかねるが、彼らの武具や立ち振る舞いを見るにそこそこの地位があるものと考えていいと思ったからだ。

 

早速あなた達はその神殿に向けて移動する。彼ら一党は重装戦士、呪術師、軽戦士、拳闘家といった中々の前衛的な一党である。

 

さて、それはさておき、数分ほど荷車を引くと、目的の地母神の神殿が見えてきた。軽く柵に囲まれた神殿は、外壁こそ少し傷んではいたが、丁寧に手入れが行き届いた神殿であり、その信仰の厚さが伺えた。そして、神殿の前に荷車を止め、重装戦士の一党に連れられ神殿の中に入っていく。

 

神殿の中は手入れが行き届いており、幾人かの神父やシスターらしき人物が見受けられた。その最奥にはおそらく地母神であろう像とそれに祈りを奉げる司祭がいた。司祭はあなた達に気づいたのか、ゆっくりとこちらに振り返った。

 

「おお、重装戦士殿、それに一党の皆様。よくお戻りになられた。本日は如何なされた」

 

「司祭殿、この御仁が小鬼共に辱めを受けていた女冒険者たちを救い出したのだが、彼女らは憔悴していてな。それにその内の一人は地母神の出らしいのでな。ここにおいてはくれまいか頼みに来たのだ」

 

重装戦士の説明を受けたあなたが会釈をすると、司祭は微笑み頷いた。

 

「もちろんですとも。傷付いた者を守り、癒し、救うのは我らの教義です。それに、私共の出の神官を救って下さったとなれば無碍にはできますまい」

 

司祭は、傍にいた神父たちに彼女らを病室に運ぶように指示する。神父たちが動き出すと重装戦士が頭を下げる。

 

「感謝する、司祭殿。 彼女等が一日でも早く元の生活に戻れるよう願っている」

 

「私どももそう願うばかりですな」

 

そう言って重装戦士たちは離れていく。それを見てあなたは司祭に近づいていき懐から金塊(鑑定済み 本物)を渡す。司祭は驚いたように受け取れないというが、あなたはそれを押し付ける。あなたとて一柱(収穫のクミロミ)を信仰する信奉者である。これは、この教会への寄付と彼女らへの援助という形で受け取ってほしい、と押し付けると、司祭は困ったように笑い受け取ってくれた。

 

 

 

 

 

 

「旅の旦那。すまないが、ギルドまで一緒についてきてくれないか? 我々だけでは事情の説明がな」

 

外で待っていた重装戦士の言葉にあなたは頷く。あなたもこの世界のギルドとやらに行ってみたいと思っていたところであった。ついでなら、冒険者として登録するのもいいかもしれないと思っているあなたに断る理由なんかない。

 

一党とともに移動していくと、街の中でもそこそこ大きな建物に着く。中に入ると、幾人かの冒険者らしき者たちが思い思いの時間を過ごしている。ギルドのほかに酒場が併設されているのか、昼間から酒を飲む者もいれば、武器や道具の手入れをしている者、単純に話し合っている者など様々である。

 

重装戦士が冒険者をかき分け中に進んでいくと、周囲の冒険者が彼らに話しかけている。その中でも、あなたを目にした者たちは訝し気な視線を送ってくるが、彼らに続き奥に進んでいく。

 

「あっ、重装戦士さん!おかえりなさい!! お戻りになられたということは、ご依頼(クエスト)達成の報告ですか?」

 

カウンターに控えていた受付嬢らしき栗色の髪の女性が重装戦士の姿を見止め、声をかけてくる。

 

「そうだ、隊商の護衛依頼完了を報告しに来た。これが証明書だ、確認してほしい」

 

「はい、承りました! ………確かに、ご本人様の署名ですね、こちらがご依頼達成の報酬になります!ご確認ください! それで、そちらの方は一体どういったご用件ですか?」

 

重装戦士と受け答えをしていた受付嬢があなたっを見止めると、重装戦士に問う。重装戦士は少し渋い顔になると、事情を説明する。

 

「彼は旅の御仁らしいのだが、小鬼の巣に囚われていた白磁等級の女冒険者二名を救出したそうなのだ」

 

「それは本当ですか!!? 確かに、十日程前に小鬼討伐の依頼を受けた白磁等級の冒険者一党が未だ戻っていませんでした。……それで、女冒険者以外の方たちは」

 

受付嬢の言葉に、あなたは懐から取り出した二つの白磁等級の認識票をカウンターに置く。認識票の一部がひしゃげたり血痕が付いていたのを確認すると、受付嬢は沈痛な表情を浮かべる。

 

「…そうですか、それでも、認識票の回収と、彼女らの救出を行って下さり、ありがとうございます。 それで、巣の方にはどれ程の小鬼が残っていますでしょうか?まだそれなりに――――」

 

受付嬢が確認を問う前にあなたは言った。皆殺しにした、と。

 

「全滅、ですか? すみませんが、巣の規模などはどの程度だったのですか?」

 

困惑する受付嬢に、あなたは答えた。

 

巣の中に居たのは凡そ三十七匹。その内、武器持ちが十数匹。また、体格の二回りほど大きな個体が一匹と杖持ちの術使いが一匹、それに、やたら着飾っていた統率者らしき個体が一匹。

 

あなたが巣の内情などを説明していると、周囲の、いや、ギルド内全体がざわついていた。

 

田舎者(ホブ)呪術師(シャーマン)がいる群れだと…」

 

「三十七匹の統率者(リーダー)付きの群れとか、青玉等級の依頼だぞ」

 

「…ええと、しょ、少々お待ちください!!」

 

周囲のざわつく冒険者を他所に、受付嬢はカウンターの奥に引っ込んでいく。ザワザワとギルド内がざわついていること数分、奥から現れたのは、先程の受付嬢と身形からおそらくここの長であろう人物、それに赤褐色の髪を持つ女性であった。

 

「すまない、私はここのギルドを取り仕切っている者だ。貴殿の報告と翠玉等級重装戦士の報告を受けてきた。 貴殿からの報告を疑う訳ではないのだが、もう一度言って貰って良いだろうか」

 

ギルド長の言葉にあなたはもう一度同じ報告を行う。すべてを話し終えた時、ギルド長は傍に居た赤褐色の女性に問うた。

 

「《看破(センスライ)》の結果はどうだ」

 

「…嘘を言っている反応はありません。しいて言うなら、場所がどの辺りかわかっていないので、そこで少し反応した位です」

 

「……そうか」

 

看破(センスライ)》があなたはどういうモノか知らないが、おそらくうそ発見器の様なものなのだろうと、あなたは思う。魔導書の様なもので存在するのであれば是非とも欲しいものだ。

 

「報酬に関しては、依頼に設定されていた報酬だけになるが、それでもよろしいか?」

 

あなたはそれで構わない、と言う。小鬼の巣を見つけたのも、彼女らを助けたのも偶然だったのだから。そうこうしている内に、先程の受付嬢が報酬の入っているであろう袋を持ってきた。当然だが、袋はとても軽い。

 

「それでだ、旅の御方。あなたはこの後どうなされるおつもりか?」

 

ギルド長のなにかを探る様な声音の問いかけに、あなたは答えた。自分は旅する者である、ここへ流れ着いたのも何かの縁あってのことかもしれないので、しばらく(飽きるまで)はこのあたりにいる、と。そういうと、ギルド長は言葉を選ぶように言った。

 

「そうか……できることであるのなら、あなたにはここで冒険者となってほしい、と思っている」

 

冒険者。つまり、冒険者ギルドに所属しろということか、とあなたは問う。ギルド長はそうだ、と頷く。あなた自身冒険者となってみるのも悪くはないとは思っている。しかし、先程の話の中で白磁や青玉や翠玉などといった等級の話が出るに、等級の上がるにつれて自分の思ったようにはいかないことも多くなるのではないかと、あなたは面倒くさくなることだろうとも思う。

 

あなたは、ギルド長に、旅の者である自分が何時かはこの地を離れるつもりであることを告げ、その間でもいいのであれば、冒険者になることも吝かではない、と言った。

 

実際、あなたがこの世界で生きていくためにも、先立つ物(お金)は必要であるし、そうでなくとも、身分証くらいにはなるであろうと、単にそういった魂胆であった。

 

「そうか! その間だけでも構わない、ありがとう」

 

ホッ、としたようなギルド長が受付嬢に指示すると、受付嬢は一枚の紙を取り出した。

 

「これは冒険者登録に必要な冒険記録用紙(アドベンチャーシート)になります。ここに必要事項の記入をしていただくのですが、文字の読み書きはできますか?」

 

受付嬢の言葉に、あなたは首を横に振る。代筆になるが、それでもよろしいですか、という言葉にあなたは頷き、料金は先程の報酬から引いてもらってくれ、と言った。

 

「では、代筆いたしますので、お答えくださいね。まずは…」

 

受付嬢の質問にあなたは答える。歳などすでにいくら経っているのか判ってはいないが、それ以外は何となく答えていっている。

 

「では、最後に、職業は如何なされますか?」

 

受付嬢の言葉にあなたは自身の職業である、魔法戦士と答えた。魔法戦士という言葉に、ギルド内が少しざわつく。

 

「魔法戦士、ですか? 魔術と剣技を使いこなせると、いうことですか?」

 

あなたは受付嬢の言葉に頷いた。実際、剣だけでなく、斧や鎌も使えるので、もしかすれば、万器使い(オールラウンダー)になるのかもしれないが、魔法戦士という言葉でこれだけ反応しているのであれば、言わないほうがいいのであろうと、あなたはそれ以上は何も言わなかった。

 

「わかりました。……これにて、冒険者登録は完了となりました。こちらが、冒険者の身分証である第十位の白磁等級身分証です。何かあった時にも必要ですから、無くさないで下さいね」

 

冒険記録用紙の記入を終えたあなたは、白磁等級の身分証を手に入れた。あなたは、ついいつもの癖で無意識化で《鑑定の魔法》を使用する。

 

 

――――☆祝福された来訪者の証明証《白磁の等級認識票》

 

 

なんと、アーティファクトである。それは、鋼でできており、あなたに白磁等級の身分を授けるものであり、言語理解の能力を授けるものであった。あなたはそんなものが周りの人にもついているのかと思い、あなたの生来の収集癖がわずかながらに刺激されたのも、また事実である。

 

そんなことはさておき、あなたはそれを身に着ける。これで、この世界の一応の身分証得たあなたはこれ以上、何かすることはないのかと受付嬢に問う。受付嬢の首肯を見たあなたは重装戦士の一党に二三事あいさつなどを済ませるとギルドを出て行ったのだった。

 

「……いったい何者なんだ、彼は」

 

ギルド長の言葉はこの中の全ての者の心を代弁した物であり、紡がれた言葉はギルド内に溶けていった。

 

 

 


 

・重装戦士の一党

あなたと出会った翠玉等級の一党。その実力は紅玉等級に届くものであり、直に昇格されるであろうと目されている。メンバーは只人の重装戦士を筆頭に只人の男呪術師、女軽戦士、男拳闘家となっている。

 

・プチ級

elonaの中でのモンスター集団の脅威度。一番弱い脅威であるが、油断しているとファンぶって死ぬこともある。

 

・☆祝福された来訪者の証明証《白磁の等級認識票》

あなたのために収穫のクミロミが直々に祝福した(弄くった)白磁等級の身分証。他の者からは普通の白磁の身分証に見える。

 

―――それは鋼でできている。

―――それはPVを0上げ、DVを0上げる。

―――それはあなたにこの世界の言語理解を授ける。


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