どうぞお楽しみください。
ー午前10時40分 東の超大陸『ノージア』大陸 フォーランツ連邦 首都ナターバンティー
異世界で最大の国土を領有していて、唯一ジェット機を運用しているフォーランツ連邦や、恐らくソビエトより先進的な生物学を利用した生物兵器によって、辛うじて対抗しているバーネング皇国が属している大陸、ノージア大陸。
この大陸は赤道を通り越すぐらい南北に伸びているので、その分サイズは大きい。そのためこの大陸の気候は寒帯から熱帯まであらゆる気候が合わさっているので、その国ごとに様々な特色を持っている。
そこはまるで地球のアメリカ大陸ぐらい大きいであろうこの大陸は、なんと陸地の約4割がフォーランツ連邦が占めている。
フォーランツ連邦は熱帯から亜寒帯まで広範囲に国土を持っている国であり、その大きさは他の列強をも圧倒するレベルのデカさである。
フォーランツ連邦の心臓部である首都ナターバンティは、ノージア大陸内で最大の都市を誇っており、比較的快適な温帯に属している都市だ。
市街地の一部ではちょっとした高層ビル等が建っていたりとアメリカのニューヨークに近いような光景をしていた。
整備された道路、そこに行き交う自動車、通りに点在する地下鉄の駅、そして上空ではフォーランツ連邦の航空会社が運用する旅客機が飛んでいる。きっとこの世界にあるどっかの都市へとこれから向かっていくのであろう。
ナターバンティは今日も活気的で忙しい日々を迎えている。
ーーフォーランツ連邦 首都ナターバンティ とあるレストランにて
大勢の客で賑わうナターバンティにあるとあるレストラン、その中にある窓際の席では、二人の若い男性が楽しげに食事をしていた。
「…久々にここへと来たんだが、やっぱりここは相変わらず味は旨い。」
「そうだな、やっぱこれだけ客が来ちゃうのも無理はないよな〜。」
すると、少し離れた位置にあるテレビからニュースが始まった。彼ら含めレストランの客は皆食べるのを止めて、テレビに注目していた。
《皆様どうもこんにちは、国際ニュースの時間となりました。本日はご覧の内容をお伝え致します。》
金髪で長髪な若いハーフエルフのキャスターの言葉でニュースは始まった。
《…本日午前9時頃、二重帝国の帝都オーブルにて、我が国含む世界の代表者7名による七大列強国会談が開催されました。この会談では、主に新興国のソビエト連邦がこの会談の主題として取り上げられており、我が国からは外交長官のオーソン氏が会談に出向きました。なお、この会談がどのような結果となったかはオーソン外交長官が帰国してからのお話になるでしょう。一部専門家によれば、今回の会談は列強国による文明圏外国家や亜人国家に対する、絶対的な支配を更に強めるものではないかとしており、今後は恐らく一部列強国による資源や領土などの略奪戦争が行われるのではないかと危惧しています。では次に…》
「へぇ〜一部列強国による略奪戦かぁ…」
「今後も相変わらず俺らは安泰だ、良かった良かった。ただそいつらに従わされる国の気持ちに少しは同情したくなるな…。」
「だな。特にバーネングのやつら、どんだけ俺らと戦う気持ちが満々なんだよ。そんなに戦いたいぐらいご自慢の動物兵器があるんなら今でもこっちに戦争を吹っ掛けりゃいいってのによ。」
「いいや、あいつらは訳の分からないぐらい改造しまくった動物とやらを陸海空共に主戦力としてる国だぜ?そんなショボい兵器なんかで俺らの戦車や航空機なんかは簡単に潰す事なんてどうせ出来ないさ。」
「ハッハッハッハ!そうだな。あいつらは元々次の世代のために遺すべきだった技術を無駄遣いしながら多種類の生物兵器を作ってるくせしてよ、俺らの軍が配備したジェット戦闘機のような革命的な兵器を生み出したって話は聞いたことがないなぁ〜。」
「それを言うのも無理はないんじゃないか?ま、バーネング皇国が飛竜の派生型かなんかは知らんが、そいつで軍の数自体を上げることは出来ても、技術に進歩も何も見られなかったらどのみち衰退していくだけだろうぜ。だって俺らの国だけじゃないぜ航空機を運用している国は。」
「ああ。エルナヴィアやリルヴァイン、ついにはあの二重帝国ですら航空機を運用してるんだよなぁ…あと謎の国ソビエトもか。」
「どのみち昔から空の覇者として君臨し続けていた飛竜がただのデカイ的となる日はもう近いさ。」
「それをバーネングは改造しまくって運用し続けている、とんでもない連中だよな…。航空機を作るのにそんなに特殊な技術が必要だったか?」
「必要だろ、特にエンジンはな。ただいくらあのバーネングでもそれくらいは出来るだろう。だが今のバーネングにはそれが出来ない、なんでかって?生き物の改造に金を注ぎ込み過ぎて新しい技術を作る暇ですら無くなったからだよ。」
「ハッハハ…いや待て、だとしたらあの連中はとんでもない生き物を作ってんじゃないのか?」
「まあ、それはあり得るんじゃないか…?どんなものかは知らんがな…。」
ーー首都ナターバンティ ナターバンティ国際空港
《全従業員、先程レーダー上に大きな機影と小さい機影複数機を捉えた。まもなくでオーソン外交長官を乗せた政府専用機がここに到着する。各員は政府専用機がいつ到着してもいいように準備をせよ。》
管制塔からの指示により、タラップやリムジンが政府専用機が駐機する予定のエプロンへと移動を始め、その近くにいた職員も急ぎ足で向かった。リムジンがエプロンに到着した頃には、既に政府専用機は着陸をしており、指定された所へと向かっていた。
《こちらグースター、たった今着陸をした。ちゃんと予定のエプロンは準備が整っているか?》
《こちら管制塔、心配ご無用です。外交長官のリムジンも予め用意しておきました。》
《そうか…その職員らには後で礼を言っといておくよ。》
《了解。》
政府専用機は指定されたエプロンへと段々と近づいてきていた。この政府専用機もジェット機である。
そして政府専用機がエプロンに到着すると、タラップ車は機体左前部分のドアにタラップを寄せ付け、位置を確認した後そのドアが開いた。そこから出てくるのはオーソン外交長官。大勢の護衛を率いながらタラップを降りていく。
「お疲れ様ですオーソン外交長官!」
「ああ、帰ってきたぞ。ところで国内あるいは周辺で何か異常は生じたか?」
「いえ、特に大事は発生しておりません。国民は今も平和に暮らしております。あとそれから大統領からの伝言をお伝えします。」
「ふむ、一体どんな用事なんだ?」
「大統領曰く、貴官は帰り次第『トムソンヒルズ』へと向かうようにと仰有ってました。」
「大統領官邸か?こんなときに一体何の用事なんだ?まさか非常事態だからすぐに来いというパターンじゃないだろうな?」
「……じゃないと良いですがね。」
オーソンはタラップの階段を降りると、そこには複数台のリムジンが用意してあった。オーソンとその護衛はいずれかのリムジンに乗り込み、そのまま『トムソンヒルズ』へと発進した。
「それにしても何故大統領閣下が私なんかを呼び出したんだ?外交的な問題か何かか?」
「それが、大統領はあの伝言以外そこまで詳しく言っておられなくてですね…その詳細がイマイチ不確かなんですよ。」
「そうか……」
しばらく走っていると、前方から白色の三階建ての小さな宮殿みたいなのが見えてきた。この建物が『トムソンヒルズ』、フォーランツ連邦大統領官邸である。
正門前に到着すると、護衛の一人がドアを開けて、オーソンは車から降りる。だが正門の周りにはフォーランツ連邦の報道陣が集っており、メモ帳やペンを構えた者、ポラロイドカメラを構えた者が彼に注目していた。中にはミッチェル撮影機の様な物を持ちいつでもフィルムを巻く準備をしていた。
「オーソン外交長官!今回の会談の心境は如何でしたでしょうか!?」
「外交長官は他の列強国に対してどういう立場を表明しましたか!?」
「外交長官!どうか一言お願いします!」
必死に情報を聞き出そうとする報道陣に対して護衛は邪魔だと強引にどきながら入り口を通った。だがオーソンは一回だけは良いだろと護衛を止めさせ、報道陣に対して質問の答えを言った。
「……我々フォーランツ連邦政府は、あくまで傍観の立場とさせて頂きました。我々の尊重すべき国民を下手に危険に晒すわけにはいきません。我々連邦政府は…来るべき時が来るまで待ちます。」
そう言ったのを最後にオーソン外交長官は大統領官邸へと向かっていった。
ーー『トムソンヒルズ』 大統領執務室
「大統領閣下、先程オーソン外交長官を乗せたリムジンが到着いたしました。」
執務室にあるデスクに座っている灰色のフサフサした髪に、銀色のメガネをかけた少し年老いた男がいた。彼はフォーランツ連邦で最高権力を持つ大統領のローヴェイク・シュラーデル大統領だ。
「おぉ戻ったかオーソン!して、あの会談の件だが、あの対応策で良かったぞ。」
「お言葉を頂き感謝します。」
「まあいい、君があの他の列強どもの欲望に絡まれた会談から帰ってこれたことだ、まあゆっくりここで休みたまえ。コーヒーも用意してやろう。」
「あ、ありがとうございます。」
オーソンは近くにある椅子とテーブルへと向かった。すると、大統領執務室のドアからノックがしてきた。
「大統領閣下、そろそろ言われたお時間ですのでこちらに来ましたが、まだでしょうか?」
「大丈夫だ、入ってくれたまえ。」
ドアからは、一人の若い茶髪の男性が入室してきた。彼はフォーランツ連邦軍需大臣のアルシュト・ハフィングトン。最近就任したばかりの若手大臣である。
「大統領、なぜ軍需大臣をこちらにお呼びになさったんですか?」
「君が知っての通りだ。あの件についてだよ。」
「なるほど…。」
「あの、そろそろ始めて良いでしょうか…?」
「ああ、始めてくれ。ちなみに君からの説明はあそこの長い机でやる。」
大統領からの指示で、オーソンとアルシュトは長い机と向かった。そして三人はそこに座り、対面するかのように話を始めた。
「……さて、聞かせてくれないかね軍需大臣。バーネング皇国の動向とやらを。」
「分かりました。ではまず何故わざわざバーネング皇国の動向をここで話すのかといいますと…実はバーネング皇国に定期偵察しに行っていた連邦空軍の偵察機が、偶然我々の知らない兵器や施設等を発見したのです。」
「ほぅ…で、どういうやつなんだ?」
そう言うとアルシュト軍需大臣は、鞄から偵察機が撮影したであろう数枚の写真を机に置いた。
「こちらでございます。」
最初に置かれた写真には、海と接していないにも関わらず、戦列艦らしき船が陸上にあるドックらしき所に並んでいる姿が映されており、もう一枚はバーネング皇国の軍事基地を映した写真なのだが、明らかに異様な翼をした飛竜が偶然にも映っていた。
「…こちらが私の言っている兵器でございます。写真をご覧の通り、海上でもない陸地に戦列艦らしき軍艦が並んでいるのが分かるかと思います。更にこれを、この写真に映っているのは至って普通の基地です。ただぼやけていて分かりにくいですが、ここにある飛竜の翼は異形な姿をしてるのが見えています。恐らくこのような形は今まで前例のないタイプではないでしょうか。」
ローヴェイクやオーソンはそれらの写真をまるで子供のようにとても興味深そうに見ていた。陸地にある戦列艦のような軍艦に、改造の結果生まれた異形な翼をした飛竜。どれもが彼らの常識にそぐわないものだらけだった。
「…なあアルシュト、ちょっと確認するが、これってちゃんとバーネング皇国で偵察機が撮影をしたやつなんだよな?」
「あ…当たり前ですよ。だとしたら一体何処の軍だって言うんですか…?」
「いや、すまない。あまりにも信じられん写真をいきなり見せられたもんでな、ハッハッハ…」
ローヴェイクはコーヒーを一呑みすると、机にあるその中から一枚写真を取り、じっくりと眺める。
(バーネングの奴等め…我々が戦争をあまり仕掛けて来ないのを良いことに次々と生物兵器を生み出してやがるな…。二流の領土と国力のくせして何が列強だ…生物学が他より進んでいるのが一番の取り柄ぐらいじゃないか…ったく。)
そう考え込んでいると、ローヴェイク大統領は何かアイデアを思い付いたのか手に持っている写真を机にすぐに置いた。そして不気味な笑みを浮かべながらアルシュト軍需大臣に呟く。
「なぁアルシュト…そういえば例の『新型兵器実験計画』はどれくらい進んでおったか覚えてるか…?」
「あの『スーデンクス計画』でしょうか?確か…兵器本体はもう既に完成していた気がしますね…。ですが何故今それを?」
「その計画についてなんだがな…」
「…?」
「『スーデンクス計画』の実験日を12月12日から11月30日に早めてくれないか?」
ローヴェイク大統領のこの提案にオーソンやアルシュトは思わずギョッとする。
「そ、それは無茶ですよ!確かに兵器本体は完成しています。ですが実験施設はまだ整っていないんですよ!?それにこの実験は下手すれば他の列強を刺激させてしまう可能性が──」
「では何だ?我々はあんな邪魔くさい二流国家なんかに対して平和に共存していこうとでも言いたいのか?」
「いや、そういう訳では…」
「アルシュト、君の気持ちは分かる。確かにこの実験は下手すれば他の列強も真似して似たような兵器を作り出す可能性も高い。だがな、他の列強どもは我々の力を多少なりとも見くびってるかもしれない。つまりこれは、バーネング含め他の列強に対する
「りょ、了解です…。」
「…あとオーソン、君にも少し頼みたい事がある。」
「はい、何でしょうか?」
するとローヴェイク大統領はデスクに置いてあった文書をオーソンの前に持ってきた。その文書には、バーネング皇国とフォーランツ連邦国境にある三大湖周辺に膨大な資源が埋まっているという事が書かれていた。
だが実際に本当に膨大な資源が埋まっている訳ではなく、バーネング皇国を平和的に破滅に導く為の偽装工作された文書なのである。
「この偽装工作された文書を次なるバーネングとの会談の際に話題に上げてみてはどうかね?なに、奴等は生物兵器の開発のせいでどうせ資金難だ。ちょっと甘い手口さえ出せばすぐに食い付く。」
「わ…分かりました。ですがこの数値でいいんですか?」
「何度も言わせないでくれ、心配する事はない。」
「は、ハッ!」