東側諸国による異世界『解放』録   作:スターリニウム

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第16話 電撃訪問!

ーー11月27日 午後7時10分頃 アルテガ・ソビエト社会主義共和国 ピオネールスカヤ

 

あのアルテガシア王国がソビエト連邦を構成する共和国の一つとなってから数日が経過しており、更に旧アルテガシア王国の王都だったグラスティンは名前が変更され、異世界への開拓の意を込めてピオネールスカヤという名前になっていた。

 

アルテガシア王国が統治していた頃に比べると多少だが都市の規模が拡大していたが、その分ソビエトによる社会主義化も進んでいた。市街地にある広場の中心にはレーニン像が建てられ、住宅密集地から少し離れた場所では、社会主義国家となった国ではよくある集合住宅の建設が始まっていた。

 

おまけに道路も車一台分が通れるぐらいに拡張し、石畳だった道路の一部はアスファルトに舗装され、そして王城があった場所は新しい広場となってそこに中央掲示板が建てられた。

 

中央掲示板には求人情報やピオネールスカヤに住まう人々への連絡事項等の紙が貼られていたが、その中でも特に異世界の人々を注目させていたのは社会主義国家ではお決まりの『プロパガンダ』である。

 

『国営製鉄所が異世界の地で開業!ドワーフや屈強な精神の持ち主を求む!』

 

『平和と社会主義の番につけ!』

 

『我々は諸国を平和的な対話に招くが、挑発には断じて対抗する。』

 

アルテガシア王国の統治時代は迫害を受けていた亜人族であったが、戦後すぐにソビエト連邦がアルテガシア王国をソビエト共和国として編入した結果、亜人族もソビエト国民の一人という扱いになり、学校や様々な仕事をするのも許された。

 

時折ピオネールスカヤにある富を目掛けて盗賊や海賊が出没してくる事もあるが、街を防衛しているソビエト連邦軍異世界人部隊や、KGB主導の国境軍によって街の平和は守られていた。

 

更にソビエト連邦はピオネールスカヤ周辺の立地の良さから元々飛竜がいた飛行場は空軍基地に改造するべく、長い滑走路や格納庫の建設も始まっていたりと大変忙しい雰囲気だった。

 

「久々に来てみたんだが、戦時中に来た時よりも街が発展しているな~。そう思わないか?」

 

「ああ、確かに前よりかはだいぶ発展しているな…。」

 

ピオネールスカヤのパトロールに当たっていたとあるソ連兵の二人は、建物の建設や道を行き交う馬車やソビエトの軍事車両を見ながら会話をしていた。

 

会話をしている最中、別の国からここに来たのかは分からないが、商人達の会話がすれ違い様に聞こえた。

 

「亜人族なんぞ、とっとと追い出しゃいいのによ全く!」

 

商人達が通り過ぎると、一人のソ連兵が聞こえないように会話をし出す。

 

「…相変わらずここの世界は亜人族を嫌う人間がいっぱいだな。」

 

「そりゃそうだ、人間は必ず何か差別をしたくなる生物だ。俺らが前いた世界でも似たような事があったじゃないか、黒人差別とかな。結局どこの世界に行こうが、差別意識はどこも変わらないのが当たり前だ。そんなもん何百年何千年経ったって変わりはしない。」

 

「そうだなぁ…ん?」

 

ふと仮設の病院の方へと目を向けると、病院の入り口辺りから丁度入院していた患者が退院してきた所だった。

 

ハーフエルフの女性と男性が楽しげに会話をしているが、女性の腕には生後間もない赤ん坊が抱えられていた。

 

「こりゃタイミングがかなり良いな。」

 

「ははは、ああいうのを見ると俺らが国民をしっかり守らないとなって改めて思わされるよ。」

 

「ああ、さぁてこれで今日もパトロールは終わ……お?」

 

ウゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜!!

 

突如街全体に鳴り響き出すサイレン。それを耳にした外を出歩いていた人々は急いで近くの建物へと避難し、戦車や装甲兵員輸送車(APC)といった装甲車両の車列に、周辺の警備に当たっていた異世界人部隊は急ピッチで持ち場へと移動をする。

 

《こちらアルテガ軍管区司令部。全部隊に緊急連絡!ただいまレーダー上に飛行物体がここピオネールスカヤに向けて近づいている。国籍は不明。各部隊はいつ攻撃されてもいいよう直ちに持ち場につけ。それから仮設飛行場にいる稼働できる戦闘機部隊は即急にスクランブル発進し、国籍が判明次第強制着陸せしめよ!》

 

「はぁ…また国籍不明の軍が来ちまったよ。」

 

「ま、面倒な事にならないといいがな…。」

 

 

ーーアルテガ・ソビエト社会主義共和国から南東約500km地点

 

月光が暗い海を淡く照らす中、上空を時速340kmで飛行する迷彩柄をした一つの細長い機体があった。連合王国の旧式複座戦闘機の『ウィラ』である。

 

武装は7.7mm機関銃2門だが、後部機銃があるため後ろにつかれても反撃ができ、更に230kg爆弾を2個も積める。

 

ちなみに連合王国では戦闘機を名付ける際には特有の固有名詞で決められる事が多い。

 

「あと3分の1ぐらいの距離ですよー!」

 

「はい!?何て?」

 

「あとですねー!3分の1ぐらいで!到着しますよー!」

 

「分かりました!!」

 

空を駆け抜ける風の音とプロペラエンジンの爆音で互いが話す言葉が上手く聞き取れない。

 

「ハァー本当に上手くいくのかこれ…?もしあのソビエトが予想通りの軍事大国だったら私はどうすればいいんだ全く…。」

 

ジョルイルは不安で仕方なかった。何しろちゃんとした下準備もされないまま、アータートン首相のせいで半ば強引に行かされたからだ。その行き先が未だに誰も足を踏み入れた事のない国ソビエト連邦だなんて。今でもジョルイルの表情は暗い…途方もないプレッシャーが彼を更に緊張させる。

 

そんなジョルイルの様子を高い高度から察知されないように確認をしているのは、可変翼戦闘機のMiG-23の群れだ。

 

《こちらプラーミャ1、目標の飛行物体を確認した。外見はレシプロ戦闘機だと思われる。年代は第二次世界大戦時かそれ以前の機体をしているな…。》

 

《おいおい、異世界でも俺らみたいな航空機が存在するのかよ。てっきり空はどこもドラゴンみたいなのだけだと思ってたぜ。》

 

《プラーミャ3、まだ任務は終わっていないぞ。君らにはこの後国籍不明機に対して領空侵犯措置を行ってもらう。応じなければ撃墜して構わないが、民間機だった場合原則攻撃は禁止だ。》

 

()()()()()()

 

そう言うとMiG-23の群れは急降下し、ジョルイルが乗る戦闘機と同じ高度ぐらいまで下げた後、ジョルイルが乗る戦闘機と同じ速度まで下げ始める。

 

 

同じ頃、ジョルイルは不安や緊張を解すため外を見ながら自分を落ち着かせていた。

 

「綺麗だなぁー…」

 

そう呟いていると、いきなりパイロットからの大声が聞こえてジョルイルはびっくりする。

 

「…ジョルイルさん!後ろを見て!」

 

「…ん?わっ!?な、何なんだあれは!速すぎるッ…!」

 

突如後ろに現れた謎の飛行機およそ4機がジョルイルの乗る戦闘機に急接近してきた。数秒後MiG-23戦闘機およそ4機はジョルイルの戦闘機と並行しながら飛行する。

 

「ジョルイルさん、機体を…!」

 

ジョルイルは並行しながら飛行している機体に目を向ける。その機体は明らかに他の国にはない洗練されたフォルムをしており、尾翼には社会主義国家の象徴の『赤い星』が描かれていた。

 

「あの赤い星をした国籍マークは見たことがありません!しかもあんな翼はどこにもありません!あれは間違いなく噂のソビエト軍です!」

 

すると航空無線からノイズと共に何かの声が聞こえてきた。MiG-23からの警告だ。

 

《…ああ…らは…ビエト…空…だ。警…貴機はソ…ト領空を侵犯し…る。》

 

「やはりあの飛行機はソビエト連邦のやつみたいだな…。」

 

パイロットは所々邪魔になるノイズを無くすために周波数を調整し始める。そして少しの間いじっているとはっきりと聞こえる周波数へと被った。

 

《こちらはソビエト連邦空軍だ。そこの国籍不明機に警告する、貴機はソビエト連邦の領空を侵犯している。速やかに領空から退去せよ。繰り返す…》

 

するとジョルイルはパイロットの持っている航空無線に向かって話し始めた。パイロットはそれを止めさせようとしたが、下手して墜落したら元も子もないので操縦に集中する。

 

「こちらはリルヴァイン連合王国空軍の戦闘機。ソビエト連邦空軍の皆様、領空を勝手に侵犯してしまって申し訳ない。戦闘機に乗っているが、ソビエト連邦の国土を攻撃するつもりはないし、貴方らを攻撃する意思はない。だから攻撃はしないでくれ!」

 

 

領空侵犯措置をしていたソ連空軍はジョルイルの発言に困惑しており、仲間同士でどう対応するか会話をしていた。

 

《こちらプラーミャ3。連合王国空軍の戦闘機様、攻撃するつもりはないってさ。》

 

《こちら司令、国籍不明機の所属がどこかは分かった…だが目的が何なのかどうかはさておき、そいつを基地に強制着陸させる事に変わりはない。翼を振ってこちらの指示に従えとその戦闘機に伝えろ。》

 

《プラーミャ3、了解!…ああ連合王国空軍機に告ぐ、今から我々の所属する基地へと案内をする。こちらの指示に従ってもらいたい。》

 

そう伝えるとプラーミャ3は機体の翼を左右に少し振り、『我々に続け』と指示を見せる。

 

《わ、分かりました、従います…。》

 

こうしてジョルイルの乗る戦闘機はピオネールスカヤ付近にある仮設空軍基地に向かう事になった。

 

 

「あのソビエト連邦の飛行機…いったいどうやって飛んでいるんだ!?プロペラの類いみたいなのは一切見当たらなかったぞ!」

 

「ええ。それもそのはず、外から聞こえてくるのは明らかにプロペラじゃ出せない音ですよ。もしかしてこの音…フォーランツ連邦の戦闘機から出るエンジンに似たような音がしますよ!」

 

「それは確かなのか…?だとすれば、ソビエト連邦はフォーランツと同じかそれ以上の文明を築いている国家という事になるな…ああ神様、私はこんな軍事大国ソビエト連邦に押し込み外交をやって良いものだろうか…。」

 

ジョルイルとパイロットは驚きのあまり今起きている事が理解出来ていなかった。ソビエト連邦は文明圏外国家との戦争をたった数日で終わらせた事のあるそれなりの軍事大国だとは聞いていたが、彼らの予想を遥かに上回るレベルの兵器や文明力に列強国出身の彼らでさえ頭が追い付いていけなかった。

 

「あれと似たような兵器をソビエト連邦が何機所有しているのかはこの時点では分からない。ただあれだけの先進的な技術力を持っている国だ、陸も海も空に比べて貧弱なはずは多分ないだろう。私でも分かる…いくらバーネングのような列強でもこの国を一度でも敵に回してしまえば、負けてしまうのは確実に敵に回した側なのだと…。」

 

「ジョルイルさん、その話はやめてくださいよ…。こっちまで寒気がしてきます…。」

 

パイロットはそう言いながらもソ連空軍のMiG-23戦闘機に後ろからついていき、数分後にはピオネールスカヤ上空に差し掛かっていた。

 

そしてこの後、ジョルイルやパイロットは異世界人としては初めてソビエト連邦本土へと降り立つ事になる。

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