ご主人さまとエルフさん   作:とりまる。

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そして始まるがーるずとーく

 

 酔っぱらい(リアラさん)の連日の襲撃を乗り切り、営業を続けたボクたち。

 

 同情もあったのか、半月も経つ頃には一部の保守派を除いて多くの人たちがやや好意的に接してくれるようになりました。といってもそれはあくまでボクとルルとユリア、あとフェレに対してだけで、ご主人さまや葛西さんには1歩も2歩も引いた立場でしたが。

 

 とはいえ、それも嫌っているよりは怖がっているというか、警戒から来る反応なのできっと時間が解決してくれるはずです。保守派の説得はリアラさんが頑張ってくれているみたいですしね。

 

 ある程度の懐柔策が完了した後、ボクたちは更に取り扱う商品を増やすための行動に出ることになりました。ご主人さまによると最終目標はNAISEIだそうです、要するにフォーリッツの馬鹿どもに対抗するため、密かにここの文明レベルというか、地力を上げたいみたいです。

 

 ここを強化しつつ、戦闘を最大限避けるために大陸中から人を集め強い共同体を作り出す。やがては国として各国に存在を認めさせ、彼等も含めた人々が安全に暮らせる場所を創りだそうという計画を聞かされていました。

 

 これはリアラさんにも話していて双方納得済みなのだとか。

 

 相変わらずボクの知らない所で話が進んでますが、楽なので良しとしましょう。

 

 

「……ふあ!?」

 

 ある朝、目を覚ますとそこにおっぱいがありました。どうやらユリアがボクを抱きしめて寝ていたようです。顔の位置が数センチ上にズレていたら窒息死してましたね、家の中でも油断できません。

 

 身体を引き剥がして背筋を伸ばしたあと、寝ているご主人さまやルル、フェレを踏まないように注意しながら巨大なベッドを降りて、散らばっている下着の中から自分のものを探して身に付けます。

 

 ……キャミソールは見つかったのにパンツがな……無いものは仕方ありませんね、うん、顔を洗うついでに部屋に戻って新しいのに換えましょう。過去を気にしてはダメです。肉食魚が大事そうに握りしめている物も無視します。気にしたらこの過酷な環境では生きていけません。

 

 ていうか今更ですが何でフェレがいるんでしょうか。寝る前までは居なかったはずなんですけど。お互いに「そういう感じじゃない」らしくて、こういう事に混ざるつもりはないって話だったはずですが……。

 

 ボクにはこの状況を理解できそうにないのです。首を傾げながら扉を開けて廊下に出ます。

 

 自室に戻って着替えを済ませて、顔を洗って食卓へ行くと、いつの間にやらユリアが起きていました。既に朝食の準備をはじめているようです。

 

「あ、おはようございますお嬢様」

「おはようです、ご主人さまたちはまだ寝てますか?」

 

 コップに水差しから水を注ぎながら、あくびを噛み殺して挨拶をして。ボクもエプロンを着け、流しで野菜の皮を剥くのを手伝います。

 

「良くおやすみでしたので、そのままです。ところでなんでフェレがいたんでしょうか……」

「ボクも理解できません。たぶん妖怪の仕業なのです。気にしてると疲れるだけです」

 

 結構付き合いが長くなってきてますが、なんとなくふわふわした子だというのはわかりました。相手の行動原理とか考えるとドツボに嵌るタイプです。

 

「大変ですね、お嬢様も……」

「ハハハハハハ」

 

 しょりしょりと音を立ててじゃがいもの白い身が顕になっていきます。中々上手になってきましたねボクも。

 

「旦那様に助けてもらっては?」

「あいつが一番危険なのですよ」

 

 虎を恐れて龍の口腔に飛び込むこと。ひとはそれを本末転倒と呼ぶのです。

 

「……おはよう」

 

 そんな事を話しているうちにご主人さまも起きたようです。既に顔を洗ったのか、タオルで顔を拭いながら台所へやってきました。

 

「おはようございます」

「おはようです」

 

 ユリアがコップに水を注いで持って行くと、ご主人さまはそれを飲み干して「ありがとう」と言いながらユリアとキスをしました。数秒ほどでくちづけを終えるとそのままボクの方へ真っ直ぐ向かってきます。

 

「ソラもおはよう」

「パスで」

 

 刃物持ってる時に近づかないで下さい、ぐさっていきますよぐさって。

 

「お、は、よ、う」

「パ、ス、で!」

 

 だから危ないって言ってるでしょうが、痛い思いしないとわからないのですかこの変態は! 自由になって多少自重するかと思ったらやっぱ全然変わってないじゃないですか。無理矢理キスしようとするのはやめてください!

 

「旦那様、危ないですからそのへんで」

「チッ」

「ぜぇ、ぜぇ……ちょっとは自重しやがれなのです」

 

 たまにはいいかとちょっと許してやったらすぐコレですよ。ほんと変態はどうしようもないのです!

 

 

「今日は生活用品を作って持っていこうと思う」

「生活用品ですか?」

 

 ボクたちは焼いたパンとポテトサラダ、ウィンナーとオムレツを朝食にいただきながら、今後の予定を話していました。 

 

「いきなり便利すぎる物を大量に持ち込んでも毒になるし、受け入れられないだろう。だからまずは簡単な物からだな」

 

 ご主人さまとしてはまず胃袋を掴んでから、徐々に生活必需品を行き渡らせて依存度を上げていく心づもりのようです。中々に腹黒いですね、あちらにとっても不利益になる内容じゃないのでボク達も良心がさほど痛まないのですが。

 

「何を持っていくのですか?」

「まずは灯りになるランタンと、火種……まぁライターみたいな奴からだな」

 

 このへんは都会でもちょっと出せば手に入る類のものです。ご主人さまの技術で作れば結構チート性能になるでしょうし、妥当なところでしょう。

 

「ソラと……フェレ、ルルは仮称ライターを、俺とマコトとユリアは焼き鳥の仕込みだ、皆、今日も頑張って」

 

 ご主人さま、フェレの視線に負けましたね、まぁ魔力量的に考えれば適材適所ではありますが。

 

 食事を終えると、各々が自分の担当する作業をするために動き出しました。ボクはご主人さまから設計図を貰い、アトリエでフェレとルルに指示をしながら道具を製造。ご主人さま達はキッチンで下ごしらえ。

 

「それで、先輩って正直な所シュウヤさまの事どう思ってるんですか?」

 

 魔法陣の掘られた加工済みの屑魔石と、筒状の道具を組み合わせる作業をしている途中で突然目を輝かせたルルが身を乗り出してきました。

 

「わたしも聞きたい!」

 

 何でフェレまで乗ってくるんですか……。

 

「別になんとも、敢えて言うなら雇用者で友人……ですかね」

 

 他にいいようがないのです、実際に友情は感じてますが、恋愛感情とかはいくら考えてもありませんから。普通に答えたつもりなのですが、ルルとフェレは物凄い胡散臭そうに思っている顔をしました。

 

「嘘ですよねそれ、あんだけいちゃついておいて恋愛感情がないとか……」

「それ、ぜったいウソ」

 

 あまりにも酷い言いがかりなのです……。

 

「本当ですよ、異性として意識したことはないのです」

「それなのにえっちできるんですか?」

 

 …………ん? あれ、確かに? い、いや、いやいや、あれは無理矢理、そう無理矢理な訳でボクの意思は介在していませんでした。それに最近だって借金の支払い代わりにやっているだけなので、そういう意味じゃありません。

 

 そう、これは借金支払いのために仕方なくやっていることで、男女の機微とかは関係ないのです。よし理論武装完了。

 

「わたし知ってる、そういうのビッチっていうんだよね」

「その呼び方やめてくれません!?」

 

 何とんでもない事言ってるのですかこの馬鹿魚類は、風評被害にも程があるのですよ!

 

「もしくはハイエロフですね、流石せんぱい」

「ちょっと、ひどすぎます!!」

 

 ていうか何が流石なんですか何が!? そんな不名誉な名詞にハイを付けないで下さい。頭おかしいんじゃないですか。

 

「わたしはソラがビッチでも大好きだよ!」

「だからビッチじゃねぇのです、いい加減にしないと刺し身にしますよ!?」

 

 こっちにはイルカとクジラにうるさい連中もいないのです。容赦しませんよボクは。

 

 それにボクが経験した相手なんて、ご主人さまのハーレム員で、しかも半分以上はご主人さまの差金じゃないですか。しかも主人以外は女性ですよ、ビッチ呼ばわりはいくらなんでもあんまりです。

 

「ああもう、同じコイバナならボクなんかより葛西さんの方が面白いでしょ! 今の彼はいじり甲斐がありますよ!? 片思いはどうなってるんですか」

「露骨に話題をそらしましたね……まぁいいか、昨日になってアプローチしようとしたみたいですよ」

「本当ですか?」

 

 おぉ、意外な展開ですね。あの子、クリスも前にちらりと彼氏募集中みたいなこと言ってたのでチャンスはあると思うんですけど……。夜中に寂しくもぞもぞする辛さを理解できる身の上としては成功を祈りたいです。

 

「結局直前でヘタレてましたけどね」

「ダメじゃないですか……」

 

 ヘタレの汚名は返上ならずでしたか、哀れな。

 

「まこっちゃんみたいなのを、ふにゃちんっていうの?」

「「……」」

 

 本当に、どこでそんな言葉を覚えてくるんですかねこの海豚(うみぶた)は。

 

 

 ランプとライターを3人で合計100セットずつ作り上げて、今日の行商メンバーであるご主人さま達に託した後。お留守番となったのはボクとフェレと葛西さんでした。

 

 いってきますのキスを全力で阻止しながら送り出し、今日は酔っぱらいの相手から解放されることを喜んでいる時、その悪夢は訪れたのです。

 

「おーい、ソラ、おるかのー?」

「…………」

 

 幻聴だと自分に言い聞かせながら部屋の窓から扉の方を見れば、そこには酒瓶を抱きしめたひどく残念なハイエルフの姿があったのでした。

 




◇◆ADVENTURE RESULT◆◇
【EXP】
BATTLE TOTAL 12
MAX Combo 3
◆【ソラ Lv.81】+5
◆【ルル Lv.31】+4
◆【ユリア Lv.29】+3
◇―
================
ソラLv.81[812]→[817]
ルルLv.32[327]→Lv.33[331] <<LevelUp!!
ユリアLv.30[307]→Lv.31[310] <<LevelUp!!
【RECORD】
[MAX COMBO]>>34
[MAX BATTLE]>>34
【PARTY-1(Main)】
[シュウヤ][Lv77]HP1432/1432 MP2530/2530[正常]
[ソラ][Lv81]HP60/60 MP733/733[疲労]
[ルル][Lv33]HP735/735 MP36/36[正常]
[ユリア][Lv31]HP1540/1540 MP88/88[正常]
【PARTY-2(Sub)】
[フェレ][Lv25]HP252/252 MP830/830[正常]
【PARTY-3(Sub)】
[マコト][Lv42]HP1550/1550 MP128/128[正常]
================
【Comment】
「ついに家にまで押しかけられました」
「たべてうたって! 宴会ってたのしいよねー!」
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