ご主人さまとエルフさん   作:とりまる。

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飛び散る火花

 

「随分とあっさり許しましたね」

 

 鎧をガシャガシャ言わせながら走っているユリアが、ご主人さまの背中にしがみついてるボクを見て苦笑を浮かべました。

 

「置いといてもトラブルに巻き込まれる姿しか思い浮かばなかったからな」

 

 顔は見えませんがご主人さまがため息を付いたのが解ります。

 

 大体ボクがトラブルに巻き込まれる時ってご主人さまと離れてる時ですしね、そこが危険地帯でも側にいる方が安全って酷いのです。まるで山道脇に設置された街灯イン夏の夜ってレベルで危険フラグがはい寄ってくるのです。

 

「ソラはモテ体質だからね!」

「どこで覚えたんですかそんな言葉……」

 

 背中に翼状の光を作り出し、空中を泳ぐように飛行しながら随行するフェレが朗らかに笑います。ほんとどこで覚えたのか小一時間問い詰めたいのです、おおかたコイバナ好きな侍女連中でしょうけれど。

 

「それにしても、まだ冒険者が居たのか?」

「いや、恐らく国軍の方だろう」

 

 葛西さんが首をひねっていますが、冒険者が大使館を襲う理由がありません。

 

 駐屯している兵士は色こそ違えど一応フォーリッツ軍準拠の格好をしているはずですからね。恐らく王国軍が冒険者を陽動か足止めに使って、アラキスさんを討ち取ろうとしているのでしょう。

 

 ご主人さまと葛西さんを外せば戦力は王国側の方が上ですから、判断としては間違いではありません。ほぼ同時に軍で仕掛けてきたのはちょっとだけ予想外でしたけれど。

 

「人間ってのは狡い真似ばかりで嫌になるぜ」

 

 ケッと吐き捨てたのは大きなお腹を揺らして走るゴランさん、それに苦笑を返したのは意外にもルルでした。

 

「正々堂々ばかりじゃ勝てるものも勝てないし、ここは戦術を褒めるべきだと思いますよー」

 

 彼女もご主人さまについて勉強しているようで、ちょっとずつ今までののんびりした飼い猫から鋭い野良猫みたいな雰囲気に変わりつつあります。

 

 まぁ外にいる時限定ですけど。何も出来ずに負けたのがよほど悔しかったみたいです。

 

「――! 前方に敵影あり!」

 

 突然ルルが鋭い声を上げると、ご主人さまと葛西さん達はそれぞれ左右に分かれて森の中へ潜みました。

 

「じゃ、俺達はこのまま潜伏しながらゲリラ戦で敵を叩いていく」

「解った、気をつけろよ」

 

 樹の影から顔を出した葛西さんがそう告げると、身振り手振りで指示を出しながらゆっくりと森の横道へと消えていきました。それを見送った後、ご主人さま達も移動を慎重に行いながら確認された敵軍へと近づいていきます。

 

 襲撃者はやはり王国側の騎士だったようで、大使館の門が崩れてちょっとした乱戦が起こっています。敵側にはいつぞやの縦ロールや黒幼女の姿も見受けられました。

 

 指揮を取っているのは金色の髪をオールバックにした強面の男。

 

 アラキスさんの側近だったはずの虎耳の女性と、ほか数人の騎士で縦ロールに挑んでいますが、軽くあしらわれているようです。見る限りでは数も実力も敵側の方が優勢なようですね。

 

「我々はムーンフォレスト軍のものである、此度の侵略、いかなる理由があっての事か!」

 

 戦闘準備と手の動きで示したご主人さまがボクをユリアに預けると、結界を張ってから立ち上がり、数人ほど部下を引き連れ彼等の前へと姿を現します。

 

 それを見た黒幼女と縦ロールの顔が反射的に引き攣りましたが、指揮官らしきオールバックの男は不敵に口元を歪めただけです。

 

「畜生風情が生意気な口を聞くものだ、ただの獣の寄せ集めではないか。これで国などとは笑わせる、貴様らには獣の暮らしがお似合いよ」

 

 彼の嘲るような言葉に獣人達のボルテージが一気に上がります。なんだかんだで出来たばかりの"自分たちの国"に愛着を持ってるようですから、バカにされた事は許せなかったのでしょう。

 

「侵略行為の理由について聞いているのだが?」

 

 流石に不快感を露わにしたご主人さまでしたが、相手は全く怯みません。

 

「ふん、我等は貴様らを国などと認めておらぬ。よってこの森で何をしようと貴様らに憚る事など何もない! しばし待っておれ、反逆者共を処理した後、貴様ら家畜にも身の程を思い知らせてやる」

 

 あぁうん、なんかいいですねこういうの。先ほどの偽善馬鹿よりよっぽどスッキリした悪役なのです。やっぱぶっ飛ばすなら相手はこうじゃないといけませんよね。

 

「そういう訳には行かないな、アラキス殿下と我々は同盟を結んでいる。何よりこの森での暴虐な振る舞い、ムーンフォレスト王として許しておくことは出来ん!」

 

 一方でご主人さまもちょっとは王様も板についてきたようでした。抜剣したご主人さまが剣の切っ先をオールバックに向けて、声を張り上げます。

 

「森の同胞よ! 今こそ我等の意地を見せる時! 驕り高ぶった愚かな略奪者に、我等の力を思い知らせてやれ!」

「「オォォォォォ!!」」 

 

 まだかまだかと待ち構えていた獣人達が一気呵成に飛び出します。第二回戦スタートなのですよ。

 

 

 銃士隊は厳しい訓練を勝ち抜いたエリート揃い、接近すれば獣人の身体能力を駆使して縦横無尽に剣を振るい、少しでも距離が開けばハンドガンによる速射性のある魔法の追撃。

 

 更に軽装なので身軽に樹の幹に飛び乗って一方的に銃撃したりと、森のなかではやりたい放題です。

 

「あぁぁ、だから嫌だったのですわ!!」

 

 素早い動きと転移を組み合わせて戦っていた縦ロールが泣き言を吐いて銃弾の中を逃げまわってます。

 

 流石は連射可能で威力もある飛び道具、対人なら反則的な強さです。といっても一定以上の実力者には障壁であっさり防がれてしまうみたいですがね、あの指揮官みたいに。

 

「ふん、小賢しい真似を……それを差し引いても情けない奴らだ」

「私は貴方みたいに体力馬鹿じゃありませんの!」

 

 といっても流石に銃で縦ロールはどうにも出来ないようです、暫く避け続けて慣れた彼女によってひとり、またひとりとこちら側の戦力も削られていきます。

 

 獣人に関しては防具の性能と常備される回復薬で即死以外なら何とかなりますが、戦線復帰には暫くかかるでしょう。ちょっとまずいかもしれません。

 

「ふぅ、段々慣れて来ました……!?」

 

 縦ロールが横に体ごと飛び込むようにして地面を転がります。彼女の首があった位置を音もなく漆黒の刃が通り抜けました。

 

 いつの間にか背後に迫っていたルルが舌打ちをしてその場を飛び退き、距離を開けてから縦ロールをにらみます。

 

「いつぞやの猫じゃありませんの、随分と腕を上げましたわね……冷や汗をかきましたわ」

「確実に仕留めたと思ったんだけどなー。まぁいいや、それよりあの糸目野郎はどこ?」

 

 漆黒の短剣を手の中で弄びながら口を開くルル、ていうかやっぱ根に持ってたんですね。

 

「……あいつなら出家しましたわ」

「「はい?」」

 

 思わず声が漏れてしまいました、出家って、え?

 

「どうやら帰りの馬車の中で兵士たちからゴミのように扱われたのがよっぽど堪えたみたいで、戻ってすぐに暫く部屋に引きこもったと思ったら、暫くして頭を丸めて教会に修行僧として……」

「えー……」

 

 開いちゃったんですね……何かの扉を。

 

「そういうわけで、彼はここには居ません、残念でしたわね」

「そっか、じゃあアンタを倒して憂さ晴らしさせて貰うから」

「出来るものならどうぞ、命までは取らないから安心してかかってきなさいな」

 

 ぽかーんとするボクを置いてけぼりにして、暫く話していたと思いきやふたり共吹っ切れたような顔で切り合いを始めてしまいました。いやールルって結構好戦的だったんですね、新たな発見です。

 

 素早い動きで縦ロールを翻弄しながら、近づいて短剣で切りつけたり距離をとって拳銃を撃ったりと中々にスタイリッシュな戦い方をしています。

 

 ですが落ち着いた動きで捌いている縦ロールには有効打は与えられていません。

 

 しかも一瞬で姿を消したかとおもえば、次の瞬間には懐に飛び込まれてたり、近づいたと思ったら距離を開けられてたり。

 

 転移をうまく使って立ち回る縦ロールの動きは、見ている限りでもルルのテンポを乱しています。

 

 ご主人さまと葛西さんが馬鹿みたいに強いだけで、彼女たちも普通であれば圧倒的な実力者なんですよね。

 

 指揮官らしき男も強者っぽくはあるのですが、ご主人さまを警戒しているのか周りを騎士で固めて奥地に引っ込んでしまっています。

 

 ご主人さまは一人一撃の勢いで騎士たちを仕留めて回ってます。しかし指揮官の顔にはまだまだ余裕が張り付いていました。

 

 敵の数が多いのですよ。まとめて吹き飛ばすには周囲に味方が多すぎる乱戦状態。なかなか時間がかかりそうです。

 

 それにしても指揮官のあの余裕、何か策でもあるのでしょうかね。

 

 戦いを離れた場所から眺めていると、奇妙な風切り音が聞こえたとおもいきや……漆黒の大鎌が回転しながらボクめがけて飛んできました。

 

「危ないっ!?」

 

 咄嗟にユリアが叩き落としてくれた為に事なきを得ましたが、ちょっとびっくりしました。というか結界張ってるはずなのに普通にすり抜けてきましたよ、どうなってるんです!?

 

「やっと、やっと見つけたのよ……」

 

 地獄の底から響くような声が、鎌の飛んできた方向から聞こえました。

 

「あの屈辱、一度たりとて忘れた事はないの、今日こそお前を八つ裂きにしてやるのぉぉぉ!!」

 

 復讐に燃える黒いまな板が、どす黒いオーラをまき散らして叫んでいたのでした。

 





◇◆ADVENTURE RESULT◆◇
NO BATTLE
◆【ソラ Lv.105】
◆【ルル Lv.43】
◆【ユリア Lv.46】
◇―
================
ソラLv.105[1057]
ルルLv.43[431]
ユリアLv.46[461]
【RECORD】
[MAX COMBO]>>40
[MAX BATTLE]>>40
【PARTY-1(Main)】
[シュウヤ][Lv125]HP3623/3700 MP3450/4560[正常]
[ソラ][Lv105]HP70/70 MP1245/1685[正常]
[ルル][Lv43]HP780/950 MP25/42[正常]
[ユリア][Lv46]HP2340/2540 MP54/91[正常]
[フェレ][Lv40]HP445/445 MP1290/1450[正常]
[マコト][Lv85]HP5310/5500 MP103/170[正常]
================
「がるるるるるるる!!」
「いけません、あの黒いまな板……怒りに支配されてます!」
「お嬢様……」
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