"化け物"が跋扈する世界で頑張る"彼"のお話   作:焼肉大好き

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"化け物"が跋扈する世界で頑張る"彼"のお話

 ──貴女が次に生まれる世界は人外たるモンスターが跋扈する世界です。

 

 ──炎を吹き、電撃を自在に発する化け物がそこかしこに存在します。

 

 ──貴方はそんな危険極まる世界で生きる事となります。

 

 ──人と獣のみの世界で暮らしていた貴方には酷な事でしょう。

 

 ──そこで、特別に一つだけ、望みの力を来世の貴方に授ける事とします。

 

 ──その力を活用し、より良き来世を送ってください。

 

 ──では……どんな力を望みますか? 

 

 

 

 

 さて、問題です。

 ひょんな事から命を落とし、気が付けば真っ白で広大な空間。

 そしてそこに響き渡る神々しい声を聴き、千々に乱れ混乱の極みに達する中でのこの話と提案を受けた際、普通ならば何を望むでしょう? 

 

 強者の庇護? 絶大な運? 圧倒的な異能? 

 たぶん人によって様々な答えがある問題です。十人十色です。千差万別です。

 

 そんな中、一人の男性はこの話を聞き、至極単純に"強靭な肉体"を望みました。

「凄い怖い化け物が沢山居る? ならそれに対抗できる身体を持ってれば安心やで! 俺ってあったまイイー!」ってね。うーん、なんて脳みそ残念筋肉なのでしょう。

 まぁ「労働基準法? 何それ美味しいの?」状態のまっくろくろすけ企業にて20連勤を終えた後にふらのふらの頭で何を考えたのか飲酒かました結果、前後不覚になって階段から足滑らせてお陀仏したポンコツだった男性ですので仕方が無いでしょう。深く考える事は苦手なのです。

 

 兎にも角にも、こうして男は"強靭な肉体"という力を与えられて異世界に新生しました。

 第二の人生を送れるとは望外の極み。得られた力を駆使して絶対に幸せになってやるぞー! とやる気満々でした。

 モンスターをばったばったと倒し、いっちょ英雄にでもなってやるかな? 歴史に名を遺す勇者を目指すのも悪くはない。両親が早世してしまった前世では出来なかった親孝行も頑張るぞい! あぁ……俺格好良い。やばい、俺の時代来てるキテル……! という感じに。

 とは言え、その勇者云々という部分の意気込みも最初だけでしたが。

 

 えぇ、最初だけです。「おぎゃーッ!」と生まれて、両親の愛情を一身に受け、徐々にこの世界が何であるか、何処であるかを知るまでは。

 

 

 

「ほーらママでちゅよー。抱っこしてあげまちゅねー」

 

「次はパパの番だよ。ほーらべろべろばぁ!」

 

「ピカチュー! ピカピッカ!」

 

「はははは、ピーちゃんも抱っこしたいのかい?」

 

「ばぶーっ!!? (意訳:モンスターが跋扈する世界ってここ"ポケモン"かよぉおお!!?)」

 

 

 

 はい、そうです。彼の転生した世界はポケットモンスター、縮めてポケモンが存在する世界だったのです。

 この男性も前世においてまだ両親が健在であった頃に触れた事のある国民的──いや、世界的に有名なゲームの世界であったと判明したのです。

 

 確かに化け物だらけで危険極まる世界でしょう。火焔に電撃、暴風や地割れなんぞ日常茶飯事なのですから。

 ですが何だかんだで、そんな超常的な力を持つポケモン達と折り合いをつけてそれなりに仲良く楽しく暮らしているのがこの世界でした。ポケモンは友達。人類のパートナーなのです。

 そんな世界でモンスターを駆逐して勇者になる? いやー無理ですね。たぶんポケモン虐殺の罪に問われて世紀の犯罪者コースまったなしですよ。

 それゆえ彼はアホな考えはすぐさま捨てて、平和にこの世界で生きていく事に決めました。

 想像とは全然違ってはいたが、これはこれで楽しく幸せに暮らせて行けるだろうと。血生臭い英雄譚? そんなのは即行でゴミ箱に放り込みましたとさ。

 

 そんなこんなでこの世界を受け入れた彼はすくすくと成長し、何事の無く平穏無事な日々を送っていきました。

 友達と一緒に公園を駆け回って遊んだり、両親と一緒に山にピクニックに出掛けたり、唐突な落石や山崩れを薙ぎ払って消し飛ばしたり、学校で一から勉強をし直したり、科学の力ってスゲーと驚いたり、暴走したポケモンの群を肉体言語で黙らせたり、誕生日の記念にポケモンリーグの仕合を観戦しにいったり、親子喧嘩した時に八つ当たりでちょっと山に大穴を穿ちトンネル開通させたり、トレーナースクールに通ってみたり、偶然出会ったミュウツーと激戦を繰り広げたり、いつの間にか地元の野生ポケモンからヌシ扱いさてていたり、謎の組織に拉致されそうになったり、イラっと来たから逆に攻め込んで壊滅させたり、国際警察からのスカウトを断ったり、近所のお姉さんに告白して見事玉砕したり、友達や舎弟ポケモンと残念会のパーティを開いたり等々……。

 

 とてもとても充実した毎日を過ごしていました。

 

 

 そんな中、転機が訪れます。

 そろそろジム巡りでもして本格的にプロのポケモントレーナーを目指して行動を起こそうかとしていた矢先に、両親が転勤となったのです。

 行き先はアローラ地方。ポケモンリーグの存在しないド田舎地方です。

 当初はその事を知り一緒に向かうのを躊躇していましたが、近々リーグが設立され、その際に初代アローラチャンピオンを決める大会が開かれるという情報を聞き、態度が一変しました。

 彼の頭に在るのは「初代チャンピオンとかすげぇ格好良くね? これは是非とも就任したい……」という考えだけでした。一応、中身の精神年齢は結構な大人なのですがね。野生ポケモンと触れ合ってるうちに脳みそまで野生化してしまった様です。

 

「アローラかぁ……何かどっかで聞いた地方だな。カントーとかホウエンとかは覚えてるんだがどこじゃろか?」

 

 すでに原作知識なんぞ記憶の彼方な野生児は、飛行機の窓から映る空と海と島々の光景を眺めながら独り言ちました。

 地元にて「人間ポケモン」「歩く天災」「ツボツボ砕き」「地図屋泣かせ」「ポケモントレーナー(本人の方が強い)」「破壊神」等と言った異名を持った生物兵器。そんな彼がアローラに上陸とか絶対に碌でも無い事しか起きないでしょう。

 でもそこは諦めて下さい。彼の地元もさっさと諦めて、そして慣れました。

 

「選抜して連れて来た舎弟は3匹居るし、残りはゆっくりとアローラに着いてから吟味しよーっと。俺と拳を合わせられる程に強い奴はいるかなー」

 

 何かおかしなことを言っていますが気にしないでください。

 えぇ、本当に。

 

「怖がらずについてきてくれるのは居るのか否か……。あー楽しみだなー」

 

 同時刻、アローラの守り神のカプさん達に悪寒が奔りましたとさ。

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 その日、メレメレ島のポケモン達は身体の震えが止まりませんでした。

 何かとてつもない、強大で恐ろしい力を持った理解不能な化け物がこの地に降り立ったと本能で察知したのです。

 メレメレ島の守り神である、戦い大好きカプ・コケコであってもそれは同じであり、かつてこれ程までに戦慄した覚えはありませんでした。

 

 湧きだすのは恐怖。同時に、高揚感。

 己の全身全霊をもってして敵うか否かという相手がやってきた事にカプ・コケコは歓喜しました。

 

 ──血沸き肉躍る戦いをしようではないか、好敵手よ! 

 

 普段は遺跡の森の奥で静かにしているカプ・コケコは、理外の存在がこの島に降り立ち、そして住処を定めて落ち着くのを待った後、曇天の空へと飛び立ちその場へと向かいました。

 

 ──さぁ戦いだ! 戦いだ! 戦いだ! 命を懸けた、至高の戦いを今ここ──げぼぁ!? 

 

 そして、カプ・コケコはその好敵手の居る場所に到着する前にぶっ飛ばされました。

 引っ越し先の家に到着し、テンションが上がった少年が「引っ越し記念日に曇り空とかありえんね。ちょっくら晴らすわ」といった軽い気持ちで空に向かってぶっ放した"はかいこうせん"が運悪く直撃してしまったのです。

 

 空を覆い太陽光を遮断する分厚い雲が一撃の元に消し飛び、気持ちの良い青空が強制的に「こんにちは!」させられました。お天気アナウンサーはきっと何が起きたか理解できず、ポワルンは逆に何が起こったのか本能的に察知してしまい、SAN値直撃で泡を吹いて気絶しました。

 

 少年は他所で色んな存在が驚天動地していること等気にせず「偉大なる未来の初代アローラチャンピオンを天が祝福しているぜ!!」と嘯きました。

 そして両親に怒られ、げんこつを貰った後に家の中に引きずり込まれるのでした。説教2時間コースです。

 

 ちなみにカプ・コケコは運良く(?)即死は免れ、這う這うの体で塒に帰る事が出来ました。

 今時の人間は気合入れれば「はかいこうせん」を撃てる事くらい予想していなかったカプ・コケコが悪いですね。仕方ない仕方ない仕方なくねぇよ。

 

 なお、吹き飛ばされたカプ・コケコの戦意は折れず、かならず逆襲してやると心に誓いました。

 普通ならば対抗心も敵愾心も粉々に砕かれるところなのに、ここは流石としか言いようがないですね。バトルジャンキーの面目躍如です。

 

 とは言え今の満身創痍ではすぐに再戦は無理無茶無謀の極み。

 そこで後日、何とか動けるようになった際にふらふらと飛びながら、地元の野生ポケモンをシメて誰が上でどっちが下かを理解()させている真っ最中の少年の前に現れて"かがやきのいし"を投げつけておきました。

 

「カプゥーコッコ! (意訳:今相手するのはちょっとキツイから島巡りでもしてきて。その間に傷を癒して鍛え直しておくから。リベンジマッチでは勝たせてもらう!)」

 

「ほぉ……面白い。俺に真正面から喧嘩売りに来る奴がいるとはアローラのポケモンにも見所がある奴が居るようだ」

 

 ──強者は強者を知る。

 少年とカプ・コケコの間に言葉の壁など存在はしません。目と目で通じ合います。とはいえ完全には理解できないので何となく分かる程度です。まぁそれで充分ですが。

 

「見た目的に飛行/電気かな? スピードタイプで紙装甲物理型と見た。ふむむ……物理は間に合ってるんだよなぁ」

 

 微妙にずれた観察眼を発揮し、ふらふらと飛んでいくカプ・コケコを品定めする少年。

 彼は投げつけられた石を受け取り、アローラ地方に居るであろうまだ見ぬ強敵達に思いを馳せながら帰路に着くのでした。

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 島巡り。

 それはアローラ地方において、子供が一人前に成長するために存在する儀式である。誰でもどんな奴でも11歳になれば挑戦できるようになるこの地方独自の伝統行事である。

 各地方に存在するジム巡りに相当する行いであり、各島に居る"キャプテン"や"島キングor島クイーン"から与えられる試練を熟していく事となる。

 

 そんな島巡りだが、基本的に始める際にその島の頂点たるトレーナーの"島キングor島クイーン"からポケモンが授けられるのが通例となっている。

 ポケモンと共に旅をし、心を通わせ喜びも苦しみも分かち合い旅を行い成長していってほしいという考えが有るのだとか無いのだとか。

 

 とにかく、そんな島巡りで授けられるポケモンの中にその子は居た。

 ニャビーという名の猫好きにはたまらん姿をした"ひねこポケモン"である。

 

 ──優しい人間さんだったらいいなぁ。たくさん遊んでくれるかなぁ。一緒に冒険楽しみだなぁ。

 

 育ての親である島キングのハラの元、同期のアシマリやモクローと共にすくすくと育ち、夢と希望を胸に秘めて日々を過ごしていたそのポケモンは、ついにその時を迎える事になりました。

 丁度この頃、島中を圧迫するかの様な凄まじい存在感を放つ"ナニか"が現れた影響のせいで気分がすぐれない中での事でした。

 

 ──怖い"ナニか"が居て嫌だなぁ。恐ろしいなぁ。でも島巡り出来たら離れられるし良かったなぁ。

 

 自分は運が良い。ナイスタイミングであると落ち込んでいた機嫌も右肩上がりです。

 とは言え一緒に島巡りをするか否かは相手のトレーナーに選ばれた場合での事。その為には同時にお披露目されるであろう同期の二匹に競り勝たねばなりません。

 本当は全員一緒が良いですが、流石にそれは出来ないとニャビーも理解しています。

 

 ──悲しいなぁ。でも仕方が無いよねぇ。皆で頑張ろうねぇ。

 

 誰が選ばれても恨みっこなし。

 誰が選ばれても祝福しよう。

 誰が選ばれても精いっぱい頑張ろう。

 

 この事を約束し、ドキドキしながら互いに励まし合い、仲良く眠りにつくのでした。

 

 

 

 そして──運命の時がやってきました。

 そして──彼らは遭遇しました。

 そして──夢も希望もバッキバキに叩き折られました。

 

 

「ふーん、お前たちが俺の旅のお供立候補者か。でもなぁ……もう手持ち3匹居るし、俺についてこられるの否かか、うむむ。……少し試してやろう」

 

 

 眼前に居たのは人間の子供でした。

 いえ、人間の子供の姿をした"ナニか"でした。

 悍ましい程のエネルギーをその身に秘め、全身が泡立つかの様な闘気を全身に纏っている──まさしく"化け物"です。

 荒れ狂う大海の大波、吹き荒ぶ嵐の風雨、鳴り響く曇天の轟雷。そんな圧倒的な自然が人の形をとったかの様な威圧感を内包する存在が眼前に立ち、お披露目された三匹を見下ろしていました。

 

 ──あぁ、自分たちは生贄に捧げられたのかぁ。

 

 ニャビーは己の命運の果てを覚悟しました。

 現前の"ナニか"は渋い顔をしながらじろじろと自分達を品定めするかのように見てきます。

 その視線に耐えられず、まずアシマリが気絶しました。

 

「……この子は駄目だな。選んだら可哀想な事になる」

 

 続いてモクローが泡を吹いて意識を失いました。

 最後に残ったニャビーはその様を震えながら確認します。

 喉の奥が震え、鼻がツンと痛くなり、大きなお目目から涙がぽろぽろと自然に流れ落ちて行き、終いには失禁までしてしまいました。

 ニャビーは己のあまりの醜態に悲しくなりました。

 

 ですが、ニャビーは意識を手放しませんでした。

 理外の存在である"化け物"を前に恐怖で雁字搦めになりながらも、決して。

 いえ、それどころか震える身体を無理やりに動かして前に出ます。"化け物"の近くへ、気絶した同期の二匹を守るかのように、精いっぱいの威嚇を込めた鳴き声と共に。

 その心には、せめて一矢報いたいという思いと、寝食を共にした友達を助けたいという願いがありました。尊すぎる……。

 

「ニ、ニャァ……」

 

「──ッ! なんと、逆に向かってくるとは見上げた根性だ。ふむ、それでは俺で良いって事なのか?」

 

「ヒャフ……フー!」

 

「──────素晴らしいッ! うん、俺も君に決めた!」

 

「フー……ニャ?」

 

 次の瞬間、"化け物"から恐ろしい気配が消え去りました。

 そして眼前にはどこにでも居るかのようなただの人間の子供が立っていました。

 

「やぁやぁ初めましてこれからよろしくだな! 俺が君のパートナーとなるトレーナーだ。まさかアローラに越してきて数日で俺の威圧に耐えられる奴が見つかるだなんて何て運が良いのだろうかね! 手加減したとはいえ、こんな小さなポケモンが成し遂げられるとは思わんかったぞ。連れて来た舎弟共でも君くらい小さかった頃では耐えられまいて。いやー流石島キングと呼ばれる人に選ばれただけあるよ君は! それじゃ頑張って鍛えてアローラ初代チャンピオンとして一緒に殿堂入りしようじゃないか! いやいやこの素質ならアローラ地方のみならずチャンピオンズリーグまで戦い抜けれるかもな!? うはははははは!!!」

 

「ニャ、ニャウ?」

 

 大はしゃぎをする少年にひょいっと掴まれ、天高く抱え上げられながらニャビーは困惑します。

 "化け物"は何処に行ったのだろうか? この少年は誰なのだろうか? 自分はどうなるのだろうか? 

 そんな数々の疑問を置き去りに周囲は動き始めます。

 ニャビーの行いが、せめて抵抗してやろうと"化け物"に立ち向かったというモノではなく、互いにパートナーとして認めたが故に歩み寄ったと受け取られてしまったままに。

 

「ニャビー……よく頑張りましたなぁ」

 

 心底安堵したかのような笑みを浮かべる島キングがニャビーを抱える少年と話をします。

 それはニャビーが心を壊さずに無事でいてくれた事や震えながらも相手を受け入れた素晴らしい勇気への称賛からの喜びもありましたが、何よりも無事(?)に彼を島巡りに送り出す事が出来そうだと分かっての事でした。

 

 引っ越してきてすぐに生身で野生のポケモンをボコボコにして従わせていたとか、"はかいこうせん"を空に撃ちだし曇り空を晴天にした等の変な噂がされていたが故に、その在り方や性格をじっくりと見定めて行こうと島キングは考えていました。

 ですが、なんとその件の少年が島の守り神であるカプ・コケコから直接島巡りをするようにと接触を受けたというではありませんか。

 こんな事は前代未聞であり、カプ・コケコの性質を良く知っているハラからすれば「はよこの子供を島巡りさせろ!」という事であろうと予測も出来ました。

 故に時間をかける事も出来ず、旅立ちの儀として彼に旅の相棒となるポケモンを選ばせる場を開いたのです。

 そしてもしもここで選出が出来なければ、例えカプ・コケコの異にそぐわない事となろうとも、規格外の彼をこの場に止めて監視し続けようと覚悟をしていたのです。

 

 事実、彼は恐ろしい存在でした。

 出会った当初は何処にでも居る11歳の少年でしたが、選出の為にニャビー達を出した途端にその身に纏う雰囲気が激変したのです。

 数々の強豪と戦ってきたハラですら戦慄する程の力の奔流。それを幼い少年の体に一身に抑え込み、自在に操っている彼という存在は脅威でしかありませんでした。

 

 そんな者の前にまだまだか弱いニャビー達を晒してしまった事への後悔は強く、すぐさま止めようともしました。

 ですがまさか小さなニャビーが大海の様な広く深い心と勇気をもって少年を受け入れてくれたが故に踏みとどまったのです。勘違い? そんなの知りません。ハラさんもいっぱいいっぱいだったんです。許してあげて。

 いやぁ、島キングって大変っす。

 

「ハラさん、ありがとうございます! この子は大事に大切に、そして強靭且つ無敵に育てて見せますので楽しみにしててください!」

 

「うむ、楽しみにしておるぞ。……ただし、無茶はいかんぞ? やりすぎもな?」

 

「もちろんですよー、はっはははは!!」

 

「ニャウー?」

 

「おぉそうだ! お前も俺の仲間になるんだし同僚となる舎弟共を紹介してやらんとな! 出て来ぉいお前等ぁ!」

 

 なんかいい雰囲気になって流されるままのニャビーの前に少年がモンスターボールを3つ程放り投げます。

 何時の間にか少年の相棒にされてしまった事はもう仕方が無いから受け入れるとして、これからを頑張ろうかな? と考えていた超絶前向きなニャビーの前にポケモンが現れました。

 これから一緒に旅をして沢山の時間を一緒に過ごす仲間です。

 仲良くしたいなぁ、お友達になりたいなぁ、と考えていたニャビーの思いはしかし、すぐさましおしおに萎みそうになってしまいました。

 

 

「バンガァアアアア!! (意訳:新入りぃいい!! これから四露死苦なぁああ!)」

 

「ガブリャアアアア!! (意訳:お前小さいのに根性有るじゃねぇか! 尊敬するぜ!)」

 

「グロォオオオオス!! (意訳:アニキの訓練は死ぬほど苦しいけど一緒に頑張ろうな!)」

 

「ニャ、ニャァ……(意訳:ヒ、ヒェッ……)」

 

 

 先の"化け物"程ではないが、凄まじい威圧感とパワーを周囲に撒き散らす三匹が、大地をズドンッと揺らしながら眼前に「こんにちは!」します。

 揃いも揃って全身が傷だらけで、標準体格の2倍以上はあろう巨躯を誇る少年の"舎弟"達。彼の全力の威圧を真っ向から受けてもビクともせず、日々殴り合いながら鍛え上げられた600族の益荒男共。

 

 俺が地上最強、と山で王者面してたらシメられた舎弟1号──バンギラス! 

 人間とか雑魚だろ、と喧嘩売りに来て返り討ちの舎弟2号──ガブリアス! 

 お散歩楽しいな、と徘徊していたら捕まっていた舎弟3号──メタグロス! 

 

 少年には伝わらないが、彼の事を"アニキ"と呼び慕う舎弟筆頭にして生粋のバトルジャンキー共。

 とある元チャンピオンである緑色な青年が偶然にも彼等を見た時に発した第一声が「うわぁ……」であった程の錬度を持つマジキチ。

 かつて謎の組織を崩壊させた際は少年よりも大暴れして数多くの構成員を心身共に再起不能にしたトラウマメイカー。

 

 そんな規格外を率いた"化け物"――少年を前にして、"彼"――ニャビーは今日二度目の失禁を盛大に大放出するのであった。

 

「よーし、それじゃあお前は俺のチャンピオンへと至る偉大なる一歩目を共に踏み出した仲間って事で特別に超強化大特訓メニューを組んでやる! 四六時中飯も寝る時一緒だぁ! 頑張ろうな、ニャビー君!」

 

「「「バンブリャロオォオオオオス!(意訳:よろしくぅぅぅぅううう!!!)」」」

 

「ニャ…ニャーーーーーンッ!!(意訳:や…やらぁああああああ!!)」

 

 

 ――こうして、純粋無垢な心優しい一匹のポケモンが地獄へと叩き落されたのでした。めでたしめでたし…っと。

 

 

「ニャーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!(意訳:お家かえりゅうううううう!!!)」

 

「ははは、こやつめそんなに嬉しいか! いやぁ骨のある子でおいちゃん嬉しいでぇ!!」

 

「メタブリャラァァアアアアアアス!(意訳:ヒャッハー!!地獄にようこそぉおおおおお!)」

 

 




整理してたら昔書いたのが出てきたんで記念にポイーと投下してみた模様。
たぶんこの後ニャビー君はスカル団が薙ぎ払われ、ヌシポケモンが泣いて土下座し、各プテンや島キング&クイーンが真っ青にし、伝説やUBと真正面からぶつかったりする"化け物"と一緒にアレコレ大冒険する事になるんやろなぁって。


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